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戯れ始まり
動画見ながら
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家を出ようとした直前、富塚君からメールが来て、一人で富塚君の家まで来れるか? というものだった。一応、富塚君の住所を教えてもらって歩いて行ったけれど、少し迷ってしまい、遅れてしまったな……なんて思いながら富塚君の家を訪ねたら、何かもう餃子の具と皮が用意されてあった。
「あのぉ、怒ってる?」
「いや、怒ってないよ?」
「じゃあ、何でもう作っちゃったの?」
「いや、まだ包んではないから。それに暇だったし、作り方はこの紙に書いといたから、これ見て家で作ってみ? 美味しいよ」
「どうだか……食べてみなきゃ分かんないじゃん!」
「それをこれからやるんでしょ?」
「そうですね……」
で、料理教室の先生である富塚君はテキパキと作って行く。
私だって小さい頃、やった記憶があるのに上手く出来ず、見かねた料理教室の先生である富塚君が焼くことになった。
俺の夕飯は俺が守る! と言ったところか……。
「ホットプレートで焼くんだね!」
「うん、今日はね……羽根付き餃子にしたいから」
そう言いながら富塚君はさらっと餃子を作り上げてしまった。そして、そのまま一つ頂くと……。
「どう?」
「美味しい……!」
負けた。この富塚君が書いたらしい手書きの紙を一枚もらおうか……。
「ねえ、富塚君」
「ん?」
飲み物を用意してくれてる富塚君がこちらを見た。
「会社で書く字より綺麗で読みやすいね、これ!」
「ああ、まあ、日下だからね」
「それ、どういう意味?」
「分かりやすいようにしときましたってこと。じゃあ、食べようか?」
「うん。ねえ、富塚君はエプロンしてないんだね? それなのに私にはエプロンとかって言うんだね」
「まあ、俺は良いんだ。日下みたいに汚したり、落としたりしないから」
「う、二の句が継げない……。今度からはちゃんと持って来るね、エプロン……」
「うん、じゃあ、いただきます」
「いただきます……」
パクパクと食べている。ちょっと夕飯には早いけど良いか……。
「ねえ、今日って確かイベントだよね? 会社の」
「うん、ああ……見たい?」
「え? いや、もう終わってる時間じゃ……。行くの?! 今から?」
「いや、行かない。去年のがあるから見せようかなって」
「どこにあるの?」
「俺の携帯」
そう言って、富塚君が向かいの席からこちらにやって来て、隣に座り込み、スマホを弄り出した。
「……ああ……、これ、これ……、ほら、去年のやつ」
見せてくれた短い動画には梅沢さんや課長がニコニコと来てくれた人にお茶を配っていた。
「持ち回りなんだ。まあ、派遣さんはやらないんだけど。いつかはやれって言われるかもね。課長、こういうの嫌いだから」
「私も嫌い! というか、このままではやっぱり派遣切られると思うんだよね。間違いが多いから」
「でも、それだけでしょ? 日下は。他の人なんて普通に遅れて来たり、休み出したりしても電話なかったりしたひどい人がいたよ? それに比べればマシでしょ。それにそんな人でも一回は更新されてるし、大丈夫。日下は気にし過ぎて上手く出来てないだけだから、俺だけ見てれば?」
「え?」
そう言って、顔を見合わせてしまった。
ドキドキする。何でだろう……こんな間近で見るのは初めてだから? それとも、この距離感……かなりパーソナルスペースが浸食されている気がする。近い、近過ぎる!!
「どうした?」
「いや……餃子、食べよう? 冷めちゃうのもったいないし!」
「うん、食べれば?」
「いやぁ、美味しいなぁ……これ、本当!」
うう……そんなことしかもう言えないよぉ!
「く、ふふ……」
「何? 突然笑い出して!」
「いや……可愛いなと思って」
「え?」
「バカみたいに可愛い」
「はい? どこが」
「照れてんの?」
「え?!」
いや、どこでその判断をしたのか分からないけど、うん……ってもう言ってしまおうか。でも、まだそれを認めたくなくて、私は黙って食べ続けることにした。
これじゃあ、五月三日のお出掛け、心配になって来る。けれど、その日は無情にもやって来てしまうのである。
「あのぉ、怒ってる?」
「いや、怒ってないよ?」
「じゃあ、何でもう作っちゃったの?」
「いや、まだ包んではないから。それに暇だったし、作り方はこの紙に書いといたから、これ見て家で作ってみ? 美味しいよ」
「どうだか……食べてみなきゃ分かんないじゃん!」
「それをこれからやるんでしょ?」
「そうですね……」
で、料理教室の先生である富塚君はテキパキと作って行く。
私だって小さい頃、やった記憶があるのに上手く出来ず、見かねた料理教室の先生である富塚君が焼くことになった。
俺の夕飯は俺が守る! と言ったところか……。
「ホットプレートで焼くんだね!」
「うん、今日はね……羽根付き餃子にしたいから」
そう言いながら富塚君はさらっと餃子を作り上げてしまった。そして、そのまま一つ頂くと……。
「どう?」
「美味しい……!」
負けた。この富塚君が書いたらしい手書きの紙を一枚もらおうか……。
「ねえ、富塚君」
「ん?」
飲み物を用意してくれてる富塚君がこちらを見た。
「会社で書く字より綺麗で読みやすいね、これ!」
「ああ、まあ、日下だからね」
「それ、どういう意味?」
「分かりやすいようにしときましたってこと。じゃあ、食べようか?」
「うん。ねえ、富塚君はエプロンしてないんだね? それなのに私にはエプロンとかって言うんだね」
「まあ、俺は良いんだ。日下みたいに汚したり、落としたりしないから」
「う、二の句が継げない……。今度からはちゃんと持って来るね、エプロン……」
「うん、じゃあ、いただきます」
「いただきます……」
パクパクと食べている。ちょっと夕飯には早いけど良いか……。
「ねえ、今日って確かイベントだよね? 会社の」
「うん、ああ……見たい?」
「え? いや、もう終わってる時間じゃ……。行くの?! 今から?」
「いや、行かない。去年のがあるから見せようかなって」
「どこにあるの?」
「俺の携帯」
そう言って、富塚君が向かいの席からこちらにやって来て、隣に座り込み、スマホを弄り出した。
「……ああ……、これ、これ……、ほら、去年のやつ」
見せてくれた短い動画には梅沢さんや課長がニコニコと来てくれた人にお茶を配っていた。
「持ち回りなんだ。まあ、派遣さんはやらないんだけど。いつかはやれって言われるかもね。課長、こういうの嫌いだから」
「私も嫌い! というか、このままではやっぱり派遣切られると思うんだよね。間違いが多いから」
「でも、それだけでしょ? 日下は。他の人なんて普通に遅れて来たり、休み出したりしても電話なかったりしたひどい人がいたよ? それに比べればマシでしょ。それにそんな人でも一回は更新されてるし、大丈夫。日下は気にし過ぎて上手く出来てないだけだから、俺だけ見てれば?」
「え?」
そう言って、顔を見合わせてしまった。
ドキドキする。何でだろう……こんな間近で見るのは初めてだから? それとも、この距離感……かなりパーソナルスペースが浸食されている気がする。近い、近過ぎる!!
「どうした?」
「いや……餃子、食べよう? 冷めちゃうのもったいないし!」
「うん、食べれば?」
「いやぁ、美味しいなぁ……これ、本当!」
うう……そんなことしかもう言えないよぉ!
「く、ふふ……」
「何? 突然笑い出して!」
「いや……可愛いなと思って」
「え?」
「バカみたいに可愛い」
「はい? どこが」
「照れてんの?」
「え?!」
いや、どこでその判断をしたのか分からないけど、うん……ってもう言ってしまおうか。でも、まだそれを認めたくなくて、私は黙って食べ続けることにした。
これじゃあ、五月三日のお出掛け、心配になって来る。けれど、その日は無情にもやって来てしまうのである。
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