⊕ヒトのキョウカイ⊕【未来転生したオレは、星を軽くぶっ壊すチート機械少女と共にこの幻実(せかい)で生きて行く…。】

Nao

文字の大きさ
120 / 207
ヒトのキョウカイ4巻(オレいつの間にか子持ちになっていました。)

29 (不可侵領域)

しおりを挟む
 ナオが自分の部屋に帰って30分…。
 時刻は午後10:00に近づいていた。
 クオリアは部屋に戻り、今日作ったばかりのもう1着に着替える…。
 今までのクオリアのイメージを根底から崩す程、可愛い白いワンピースだ。
 スカートは大量のフリルで作られ、胸元に赤いリボン…。
 クオリアが普段しないノースリーブで右肩に『歯車の中に海とそこに浮かぶ雪と氷の南極大陸』が描かれたエレクトロンのマークが見える。
 背中の上半分が大きく空いていて 肌が見え、それを×字に紐で固定されていてる。
 背中にブラのラインが見えない事から、下着を付けていない事が分かり、腰にある切れ込みからも肌が覗かせている。
 自分の可愛らしさを完全に前に出し、所々に開いて見えている肌から、服の内側の幼い身体を想起させる計算され尽くされた設計…。
 つまり勝負服だ。

 ARの服で擬装《ぎそう》を行い クオリアが部屋を出て、階段を使い、ナオの部屋に行く。
 途中何人かの女子生徒と会ったが、擬装されたこの服に疑いを持つことなく素通りし部屋の前まで来た。
 クオリアがドアノブを回すと…ストレージの中のインスタントキーが認識されロックが外れ、同時に鍵が自己消滅する。
 ガチャ…。
 ドアを開き中に入り、ドアを閉めて擬装を解く…。
 ナオの不可侵プライベートエリアに入り、部屋を見る。
 照明が落ちているので 当たりは真っ暗だが、自動感知式のエアコンが動いているので ナオはいるはずだ。
 クオリアは 目の光度を調節し、部屋の中に入る…。
 部屋は 驚くほど何もない…家電系は 全部要らないのは分かるが、動いているのはホームサーバーだけで後は備え付けのベッドがあるだけだ…。
 ナオはこちらに背中を向け、ベッドで寝ている。
 クオリアが一歩づつ踏みしめ…ナオに近づく。
 ナオは警戒心が強く、少しでも物音を立てれば すぐに起きて銃を抜く…。
 それなのに、ピクリとも動かずそのまま寝ている。
 ナオの寝息が聞こえるので、VR空間にフルダイブしている訳では無いだろうし、完全に寝ていたら 寝息は止まる…口のスピーカーから疑似的に音が流れているだけだからだ。
 つまり、起きているのは明白…。

 来ないでくれ…寝てると思って去ってくれ…いや、オレが寝ているフリをしていると察《さっ》して出て行ってくれ。
 頭の中の身体が震え、義体に反映しそうになるのを必死で食い止め、願う。
 オレを観測無いでくれ…。

 ナオの人生は…多分、優秀である事を求められた人生…。
 虚勢《きょせい》を張って自分を追い詰め、周囲の期待に応える為、努力する…。
 それでも人の性能の限界があるから ある程度で落ち着くが、義体化して限界能力が上がった事とワームが現れた事で、更に追い詰められた。
 このままでは 仲間を守って身勝手なヒーロー願望で戦死してしまう…。
 本人にとっては それで満足だろうが、相棒パートナーにとっては迷惑極まりない。
 クオリアはベッドに座り、寝ているナオの頭をゆっくりと撫《な》でる…微細な振動を検知…震えている。
「ナオ…キミは十分な程、良くやっている…。」
 ナオがピクリと動く。
「ナオトの時も…ナオになった時も…キミは全力で生きている。
 キミの存在価値が無くなる事は無いし、私がそうさせ無い。」
 今思えば最初からだ。
 ナオは周囲の環境にすぐに適用し、私を助け、キューブを移動し自己に悩みながらも、自分のブレインを機械としてアプリを入れた。
 空間ハッキングの時も 今回のレースでもそうだ…。
 私もあそこまで出来てるとは思っていなかった。
 でも…自分を虐め過ぎだ…。
「せめて、プライベートエリアここで 私の前では、キミはヒーローの仮面を外して欲しい。」
「……。」
「私達は『相棒パートナー』なのだから…。」
「…っ。」
「私は、キミをある程度は予想出来ているし、それを込みで受け入れているつもりだ。」
 クオリアがケーブルを取り出し、ナオの首に接続…もう片方を自分の首に取り付け、ナオの横に背中を見る形で横になる。
「キミが来るのを待ってる。」
 ナオの耳に小声でそう言い…クオリアは眠った。

 オレにケーブルを挿し、クオリアの気配が動かなくなった。
 クオリアは オレの背中に向いて眠っている。
 ARウィンドウには『接続許可待ち』と仮想空間への移動コードが表示されている。
 オレがクオリアを見る…。
 普段のクールなクオリアに比べ眠っている顔は数段と幼く見える。
 そしてオレの目線が下へと向かい クオリアの白く可愛い服が見える。
 背中と腰から肌が見え、服の中身を想像させるような服…。
 スカートにはフリルが沢山付いていて、普段のクオリアのイメージとは違う印象を受ける。
 クオリアは可愛い系も好きなのか…もしかしたら、マジックの時の魔法少女は可愛い服は クオリア自身が望んだ事かもしれない…いや…『一応外に出られる』レベルに収まっているが、肌面積の多さからして、オレを誘う為の服である事は確実…。
 どっちにしろ…オレの性癖は完全に把握されているんだろうな…。

 オレはロリコンだ…。
 厳密に言えば大人の女が嫌いな為、どんどん低年齢化して言った結果…ロリコンと呼ばれるような少女が好みになった。
 流石に10歳以下のペドは合わないが、そのせいか、第二次性徴期始めの胸が少し膨らみ始め、くびれが出るか出ないか位の超ピンポイントの少女が好みになってしまった。
 これに該当するのが、クオリアとロウ…もう少し立てばカズナもか…。
 成長が早い種族とは言え、5歳児と3歳児がストライクゾーンに入っている時点でもう、色々と世間的せけんてきにはヤバイ気がするのだが…。
 ジガに言われた時に、性器を取り付けなかったのも『無けりゃ手を出せないだろう』と言った保険の意味もあった。
 なら、クオリアはどうか?
 10歳ボディのクオリアは くびれ始めの腰と出始めた胸を持つドストライク…しかも歳を取っても体型が変わらない事を考えれば、これ以上の条件は無い。
 性格も、感情的になり理屈が通じなくなる事も無く、オレが好きなコンピューターのように嘘を付けない。
 まぁクオリアは『言いたくない事は 言わない』ので少し信用に欠けるが、仮面を被り、虚勢で生きているオレが言えた義理じゃない。
 後は何だ?年齢か?
 クオリアは13歳…オレが死んだ時が20歳で今はボディに精神が引かれて、16歳のトヨカズと13歳のレナの間位で落ち着いている…見た目年齢は もっと低いが…。
 同年代だと思えばヤってても不自然おかくないか…。
 と言うかこの都市では10歳で成人だし、クオリアは頭の中で何年の加速をしているか分からない…
 しかも機械で人じゃないし、それにヤるのはVRでなのだから、クオリアには一切傷つかず『YESロリータNOタッチ』の精神にも抵触はしない。
 と、こう考えている時点で気になるのは世間体せけんていで、クオリアとヤる事を正当化さえ出来てしまえば、手を出して仕舞えるんだろうな…。
 クオリアの手を…少し躊躇ちゅうちょしつつも触れる。
 人の体温より暖かい小さな手を握り、横になる。
 クオリアからの接続を許可…接続先を入力…。
 せめて この部屋だけは自分に正直に生きよう…。
「ダイブ」
 オレが小さくそう つぶやいた。


 ピースクラフトに向かってくるワームの為に皆でVRでDLの訓練をし、現実に戻ってたらナオは ベッドに寄りかかりホルスターのロックを外していつでも抜けるようにして眠り始めた…普段、寝ている最中でも警戒しているナオが 寝息をしていない…。
 相当に疲れていたのだろう…完全に意識が無く眠っている。
 クオリアは ナオの隣でブレインキューブ内の自分の部屋に行き…スリープ状態に入った。
 クオリアがブレインキューブ内で作業をしていると有線で外部アクセスがあった…。
 原因はジガで 有線ケーブルでジガと私を繋げた見たいだ。
 クオリアが接続許可をし、クオリアの部屋に招待する。

「ロリコン?」
 ソファーに座り、作業するクオリアが作業を止めて言う。
「まぁ厳密には違うんだが…おおむね…。」
「別にそこまで珍しい性癖でも無いだろう。」
 今の時代…VR空間内であれば望む事は何でも出来る。
 女性を切り刻む性癖、強姦を好む性癖、様々な性癖を現実世界に持ち込まない限り、これらは合法で 現実世界での性犯罪の減少にも繋がる為、むしろ推奨されていたりする。
「てっきり、切り刻む系や頭を拭き飛ばす系の特殊性癖かと疑ったが、それに比べれば子供が性的対象なのは普通だろう…。
 むしろ子供を守ってくれるなら、プラスなのでは?」
 そもそも子供の『可愛い』は弱者の子供が強者の大人に守らせる為の処世術なのだから、大人であるナオが引っかかっても何ら不思議は無い。
「合意が無く手を出さない内はな…。」
「ナオに強姦の性癖が?」
「いや…てか良いのか?
 オマエ何だぞ…。」
「とは言っても、相手はナオなのだろう…。
 そりゃあ不特定多数にされるなら問題だが相棒パートナーなら普通の事だろうし、むしろナオの為に リサイズする事も検討していたから、手間が省けてこちらとしては助かった。」
「……。
 一応母親の1人って事で忠告したんだが…『合意』って事で良いんだな」
「ああ…合意する。
 それにしても、何故なぜ分かった?
 私には、自分の価値が無くならない様に必死に足掻あがいているように見えたが…。」
「それも合ってる…。
 今日ウチが、風呂で営業していただろう…。」
「ああ…あれか。」
 ジガの言動が平常時と少し違っていたので何かあると思っていたが…。
「悪乗りもあったが、ち〇こが無くなって、性的感性が失われているかどうか確かめていたんだが、見る所は見ていてるのに 目から『恐怖』が感じられた。」
 ジガのカメラの映像をクオリアに見せる。
 拡大してみると確かに恐怖を感じている。
「つまりナオは 大人の女性が怖い?
 確かに ナオと風呂に入る時はいつも隣で洗ってるな…。」
 クオリアが瞬時に過去の映像データを調べる。
 周りが大人の女性だらけ だから逃げて来てたのか…。
「多分ナオは 女のえげつない所ばかりを見て育ったんじゃないのか?
 この場合だと、自分に都合の良いバーチャルに行くか低年齢化するか…同性に走るか。」
「それでロリコンか…。」
「そう…そもそも、義体の小型化、軽量化技術が進んだのも、ナオの世代が…少女型ヒューマノイドの需要を爆上げ させたからだしな…。」
「その情報は知っている…表向きには孫が欲しいから…実際は少女型セクサロイドが欲しかった。」
 エロは技術革新を産む…VRや義体技術がまさにそうだ…。
「そう…で、問題なのは、ナオは過去の価値観を引きずって社会的抹殺を恐れているって事。
 友人や人脈がすべて吹っ飛んでこの時代に来た訳だから、ナオのプレッシャーは相当だろうな。」
「つまり、そっちのコミュティに誘導して 仲間を増やさせるか…私が引き受けるか…。
 ナオのメンタルの問題もある。
 どっちにしろ私が必要だな…。」
「なら、ナオの事は任せた…。
 こう言った事は本来はウチの担当なんだが…今回ばかりは無理だからな…。」
 ジガがソファーから立ち上がり、ドアの方向に行く。
「あっそれと…オマエの求愛行動は 相手にとって洗脳と同じだからな…。
 ナオの人生を壊すんじゃねーぞ…。」
 扉のドアノブを握るとジガは量子光となって消えた。

 事態が、どう転ぶかまだ分から無いが問題は この戦いを生き残ってからだ…。
 砦学園都市に戻ったら…少しずつ会う機会を増やして砦祭で不可侵領域ナオの部屋に行く。
 後はアドリブだな…。
 そう思いクオリアは また作業に移った。

 ダイブして見るとそこは水中だった…前のスキューバとは違い身体が軽く『タートル』が無くても泳げる。
 上から照らされる光が水を青く照らしとても幻想的だ…。
 光の中から、少女が泳いで降りてくる。
 少女の名前はクオリア…ダイブ前のあの服を着ていてフリルだらけのスカートがクラゲの様に揺れる…服は濡れ、若干透けていて、更に美しく見える。
 ナオが上を見上げ、クオリアが手を伸ばす。
「キミは誰?」
「今のオレは…キミかな?」
 Tシャツ姿のナオがクオリアの手を掴《つか》み引き寄せる。
 冷たい水の中でクオリアの手から体温を感じる。
「You's need me?(あなた、達には私は必要?)」
 クオリアが抱きつき…口を合わせる…。
 キスは数秒…顔を離し見つめ会う。
 水で服がめくれて見えるクオリアの肌…。
 浮力によって引き離されるナオとクオリア…クオリアは、まだ抱きしめてくれはしない。
 ナオは思いっきり引き寄せクオリア強く抱きしめた。
「I need you(私にはあなたが必要)」
 クオリアもナオを抱きしめる。
 今度は、ナオが覚悟を決めた様子で、クオリアに長いキスをした。
『待ってた…。』
『オレもさ…。』
 青い水の中…2人の男女は、肌を重ねた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

第1王子だった私は、弟に殺され、アンデットになってしまった

竹桜
ファンタジー
第1王子だった主人公は、王になりたい弟に後ろから刺され、死んでしまった。 だが、主人公は、アンデットになってしまったのだ。 主人公は、生きるために、ダンジョンを出ることを決心し、ダンジョンをクリアするために、下に向かって降りはじめた。 そして、ダンジョンをクリアした主人公は、突然意識を失った。 次に気がつくと、伝説の魔物、シャドーナイトになっていたのだ。 これは、アンデットになってしまった主人公が、人間では無い者達と幸せになる物語。

隠れ居酒屋・越境庵~異世界転移した頑固料理人の物語~

呑兵衛和尚
ファンタジー
調理師・宇堂優也。 彼は、交通事故に巻き込まれて異世界へと旅立った。 彼が異世界に向かった理由、それは『運命の女神の干渉外で起きた事故』に巻き込まれたから。 神々でも判らない事故に巻き込まれ、死亡したという事で、優也は『異世界で第二の人生』を送ることが許された。 そして、仕事にまつわるいくつかのチート能力を得た優也は、異世界でも天職である料理に身をやつすことになるのだが。 始めてみる食材、初めて味わう異世界の味。 そこは、優也にとっては、まさに天国ともいえる世界であった。 そして様々な食材や人々と出会い、この異世界でのライフスタイルを謳歌し始めるのであった。 ※【隠れ居酒屋・越境庵】は隔週更新です。

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

竜皇女と呼ばれた娘

Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ 国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

処理中です...