4 / 8
IQ指数2の会話
お寺さんにごめんなさいしようか
しおりを挟む
私の彼女は下ネタが好きである。生粋の下ネタ好きで最近はもはや下ネタと共に生きている。友人や家族といる時は面白い下ネタを控えめに出すだけだが、私といる時は容赦がない。
あらゆる言葉を下ネタに聞き間違え、あらゆるものを下ネタに見間違え、そしてそれを嬉しそうに報告してくるのだ。
普段殆ど下ネタを言わない私が下ネタを発すると、それはそれは嬉しそうに繰り返してくるほどだ。普段言わない人が言うのが"イイ"らしい。
その日、私たちは夜ご飯を探しに福岡の街を彷徨っていた。水炊きにするか、屋台にするか、はたまた鉄板餃子にするか……。悩んだ末に、もつ鍋に決めた。選択肢になかったことはご指摘を控えていただきたい。突発的にもつの気分だったのだ。
鍋の中でプリプリと踊るもつを求めて、少し冷え込んだ街を歩いた。アスファルトにローファーの音を響かせながら、手を絡ませて隣にいる彼女の存在を噛み締める。
「こっち、渡った方が早いかな?」
「今は赤だから次で渡ろう?」
方向音痴の彼女が暗闇に迷わないように、そっと進む方向へと手を引く。
通り過ぎていく自転車の男の子たちの笑い声が冷たい空気を纏う夜の街に響き、車のエンジン音がそれを消し去っていく。
大通りに突き当たり、青信号が点滅する前に渡ろうとすると、ロキの視線は前方に釘付けになっていた。
大きなお寺がある。
「……大きいね、家かな?」
東京の大都会の真ん中で育ったロキは、街に馴染んだ形で建っている大きな寺院や神社をあまり見た事がない。観光でも訪れることがないようだった。
「ううん、ここはお寺だよ」
そう答えると、門の近くまで寄って行ってじっと見つめ出した。何か門戸に書いてある。どうやらお寺の名前のようだった。
「ぜん……けんざん」
「ふけんざんかな?」
見間違いを訂正して返すと、そのまま言葉を一瞬詰まらせたあと、嬉しそうに瞳を輝かせてこちらを振り向いた。
「まんこうじ!まんこうじだって!!」
満面の笑みだ、眩しい。輝いている。とても嬉しそうだ。
「そ、そうだね。」
「ふふ、まんこうじだって……。」
あまりのニヤケっぷりに、私まで笑いが侵食してくる。
「まんこうじだね。ふふ。」
「!!今、まんこうじって言った!!」
繋いでいた手が嬉しそうににぎにぎと握りしめられる。
「ふふ…お寺に、失礼…ふふ……。」
「えー?何考えてるのー?」
キリッとした眉毛が凛々しい外見とは似合わない、あどけない可愛らしい声と表情が私を覗き込んでくる。
そのまま談笑しながら路地を歩き、もつ鍋屋に到着して席に着く。運ばれて来たもつ鍋にカセットコンロでグツグツと火を通していると、1つのもつがプルンと浮かび上がって来た。
綺麗な桃尻の形をしていた。
「ロキちゃん、これ」
「んー?」
「おしり……ふふっ……。」
彼女は鍋に浮かんだもつを見つめたあと、呆れ顔でこちらをみて、しょうがないなぁと言うように笑った。
「全くノアは……。」
心外である。
“まんこうじ"に喜んでいた人に呆れられるのは全くもって心外である。
「おしりじゃん!」
「そうだね、ノアのおしりみたいだね。」
反発の意味も込めて強めに主張したが、猫撫で声で返された。1人Instagram用にお尻型もつの写真を撮る私を横目に彼女が笑う中、夜は更けていくのであった。
下ネタを愛するところも含めて、今日も彼女が世界一可愛いようだ。
※まんこうじというお寺はございません。まんぎょうじの読み違いです。
あらゆる言葉を下ネタに聞き間違え、あらゆるものを下ネタに見間違え、そしてそれを嬉しそうに報告してくるのだ。
普段殆ど下ネタを言わない私が下ネタを発すると、それはそれは嬉しそうに繰り返してくるほどだ。普段言わない人が言うのが"イイ"らしい。
その日、私たちは夜ご飯を探しに福岡の街を彷徨っていた。水炊きにするか、屋台にするか、はたまた鉄板餃子にするか……。悩んだ末に、もつ鍋に決めた。選択肢になかったことはご指摘を控えていただきたい。突発的にもつの気分だったのだ。
鍋の中でプリプリと踊るもつを求めて、少し冷え込んだ街を歩いた。アスファルトにローファーの音を響かせながら、手を絡ませて隣にいる彼女の存在を噛み締める。
「こっち、渡った方が早いかな?」
「今は赤だから次で渡ろう?」
方向音痴の彼女が暗闇に迷わないように、そっと進む方向へと手を引く。
通り過ぎていく自転車の男の子たちの笑い声が冷たい空気を纏う夜の街に響き、車のエンジン音がそれを消し去っていく。
大通りに突き当たり、青信号が点滅する前に渡ろうとすると、ロキの視線は前方に釘付けになっていた。
大きなお寺がある。
「……大きいね、家かな?」
東京の大都会の真ん中で育ったロキは、街に馴染んだ形で建っている大きな寺院や神社をあまり見た事がない。観光でも訪れることがないようだった。
「ううん、ここはお寺だよ」
そう答えると、門の近くまで寄って行ってじっと見つめ出した。何か門戸に書いてある。どうやらお寺の名前のようだった。
「ぜん……けんざん」
「ふけんざんかな?」
見間違いを訂正して返すと、そのまま言葉を一瞬詰まらせたあと、嬉しそうに瞳を輝かせてこちらを振り向いた。
「まんこうじ!まんこうじだって!!」
満面の笑みだ、眩しい。輝いている。とても嬉しそうだ。
「そ、そうだね。」
「ふふ、まんこうじだって……。」
あまりのニヤケっぷりに、私まで笑いが侵食してくる。
「まんこうじだね。ふふ。」
「!!今、まんこうじって言った!!」
繋いでいた手が嬉しそうににぎにぎと握りしめられる。
「ふふ…お寺に、失礼…ふふ……。」
「えー?何考えてるのー?」
キリッとした眉毛が凛々しい外見とは似合わない、あどけない可愛らしい声と表情が私を覗き込んでくる。
そのまま談笑しながら路地を歩き、もつ鍋屋に到着して席に着く。運ばれて来たもつ鍋にカセットコンロでグツグツと火を通していると、1つのもつがプルンと浮かび上がって来た。
綺麗な桃尻の形をしていた。
「ロキちゃん、これ」
「んー?」
「おしり……ふふっ……。」
彼女は鍋に浮かんだもつを見つめたあと、呆れ顔でこちらをみて、しょうがないなぁと言うように笑った。
「全くノアは……。」
心外である。
“まんこうじ"に喜んでいた人に呆れられるのは全くもって心外である。
「おしりじゃん!」
「そうだね、ノアのおしりみたいだね。」
反発の意味も込めて強めに主張したが、猫撫で声で返された。1人Instagram用にお尻型もつの写真を撮る私を横目に彼女が笑う中、夜は更けていくのであった。
下ネタを愛するところも含めて、今日も彼女が世界一可愛いようだ。
※まんこうじというお寺はございません。まんぎょうじの読み違いです。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ほのぼの学園百合小説 キタコミ!
水原渉
青春
ごくごく普通の女子高生の帰り道。
帰宅部の仲良し3人+1人が織り成す、ほのぼの学園百合小説。
♪ 野阪 千紗都(のさか ちさと):一人称の主人公。帰宅部部長。
♪ 猪谷 涼夏(いのや すずか):帰宅部。雑貨屋でバイトをしている。
♪ 西畑 絢音(にしはた あやね):帰宅部。塾に行っていて成績優秀。
♪ 今澤 奈都(いまざわ なつ):バトン部。千紗都の中学からの親友。
※本小説は小説家になろう等、他サイトにも掲載しております。
★Kindle情報★
1巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B098XLYJG4
2巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B09L6RM9SP
3巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B09VTHS1W3
4巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0BNQRN12P
5巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CHFX4THL
6巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0D9KFRSLZ
7巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0F7FLTV8P
Chit-Chat!1:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CTHQX88H
Chit-Chat!2:https://www.amazon.co.jp/dp/B0FP9YBQSL
★YouTube情報★
第1話『アイス』朗読
https://www.youtube.com/watch?v=8hEfRp8JWwE
番外編『帰宅部活動 1.ホームドア』朗読
https://www.youtube.com/watch?v=98vgjHO25XI
Chit-Chat!1
https://www.youtube.com/watch?v=cKZypuc0R34
イラスト:tojo様(@tojonatori)
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
さくらと遥香(ショートストーリー)
youmery
恋愛
「さくらと遥香」46時間TV編で両想いになり、周りには内緒で付き合い始めたさくちゃんとかっきー。
その後のメインストーリーとはあまり関係してこない、単発で読めるショートストーリー集です。
※さくちゃん目線です。
※さくちゃんとかっきーは周りに内緒で付き合っています。メンバーにも事務所にも秘密にしています。
※メインストーリーの長編「さくらと遥香」を未読でも楽しめますが、46時間TV編だけでも読んでからお読みいただくことをおすすめします。
※ショートストーリーはpixivでもほぼ同内容で公開中です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる