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本編
第六話:危険な男 *
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--数時間後。
「……うっ」
明澄はベッドの中で目を覚ました。
「ーー大丈夫か?」
詠寿が心配そうに具合を聞いてくる。明澄がずっと眠っている間、詠寿は付き添ってくれていたらしい。
「あっ、はい……大丈夫です。」
「そうか……」
明澄が大丈夫だと言うと詠寿は安堵していた。
「すまない、砕波が迷惑をかけたな?」
「いえ、先輩のせいじゃないですよ……」
砕波が明澄にちょっかいを掛けたことを、詠寿が代わりに詫びる、詠寿のせいではないと明澄は詠寿は謝罪しなくていいと答えた。
「……“砕波”って言いましたっけ? 彼、先輩とはいったいどんな関係なんです?」
「砕波は、俺の父の弟の息子。つまり……俺の“いとこ”なんだ。」
明澄は詠寿と砕波はどんな関係なのか聞くと詠寿は砕波とは従兄弟同士に当たることを明かした。
詠寿は明澄を心配してかあまり砕波の話題は出したくはなさそうな顔をする。
「……どうして、あんな険悪な仲に?」
それでも明澄は質問を続けて、何故詠寿と砕波はあんなにも仲が悪いのか質問をぶつけた。
「……俺の父と叔父は昔から仲が悪くて、今でも叔父は王位を継いだ父を妬んでイヤミやらなんやらぶちまける。砕波もそんな叔父の血筋か影響か分からないが俺に対してなにかと噛みつくし、もともと相性も悪いとお互い気付いているからなのか……あんな感じになるんだ。」
国王である自分の父と叔父は昔から仲が悪く、今でも叔父は国王である父といがみ合う仲であることを詠寿は明かしてくれた。詠寿は昔から嫌がらせを受けていたせいか砕波とは元々相性が悪いのと父親たちの不仲もあってお互いあのような態度になってしまうのだと明かす。
「へっ、へぇ……」
(権力でいがみ合うと碌なことないって本当なのかも……)
明澄はそれを聞いて王族の権力争いの片鱗を見た気分になった。
「砕波は、俺が気に入ったやつ等にかならず俺への当てつけで嫌がらせをする奴だから……本当にすまない。」
「ーーいえ、先輩が謝る事じゃ……」
砕波のしょうもない嫌がらせにため息を吐きつつ、砕波の嫌がらせに明澄を巻き込んでしまったことに申し訳なさそうに詠寿は頭を下げて来て明澄は驚いて気にしなくていいと頭を上げるように促す。
「――あっ、厳生様。お疲れ様です。」
扉越しから明澄のいる部屋の門番をしている衛兵の声が聞こえた。
「詠寿様はこちらに……?」
「――はい、いらっしゃいます。」
――コンコン
今度は厳生の声が聞こえ、厳生は詠寿がこちらにいるか確認してきた。衛兵は正直にいると答えたのち、厳生は明澄の部屋の扉をノックをしてノックの音が部屋に響く。
「――詠寿様、厳生です。クリアから先程砕波様の件を聞いたのでその件について聞きに来ました。」
「……入れ。」
厳生は用件を言うと入室の許可を貰おうと用件を言うと、詠寿は厳生の入室を許可した。
――カチャッ
「失礼します……。」
戸を開けて一礼をした後、厳生は明澄たちのいるベッドまで近づいてくる。
「詠寿様、明澄様に大事はなかったのですか?」
「あぁ……医者にも見てもらったが強く掴まれた痣以外何ともないと、気分を落ち着かせるよう心掛ければ大丈夫だと言っていた。」
厳生は明澄の容体は問題ないか詠寿に聞くと、医者によれば明澄の容体は腕を強く掴まれて痣を作った以外には何も問題ないと答えたと詠寿は話した。
「明澄様、身体のご加減は大丈夫ですか?」
「あっ、はい。……大丈夫です、もう落ち着きました。」
強く掴まれて痣のできた腕を気にしつつも、明澄は正直に答えた。
「砕波様は、貴方に何も言いませんでしたか?」
砕波は明澄の気に障るような真似をしていないか厳生は聞いた。
『いいや、かえって気に入ったわ。詠寿のような腑抜けに置いておくのなんて持腐れじゃねえか、俺のモノになれよ!』
――ぞくっ
ふるふる……
「――明澄。」
砕波が自分に対してはなった言葉が一瞬過ってしまい、連れて行かれそうになった恐怖が再燃して体が小刻みに震えてしまい、詠寿は心配して声を掛ける。
「――言われたんですね?」
「……はい。」
砕波に何か言われたと明澄の反応で厳生は察し、厳生の察しの通りだと明澄は正直に答えた。
「ボクの事、『気に入った』って、『俺のモノになれ』って……」
明澄は厳生に砕波に言われたことをありのままに伝えた。
「厄介ですね。砕波様の耳に届いていただけでなく、明澄様を一目見て気に入られてしまうなんて……」
眉間を押さえながら厳生は頭を悩ませる、これからも明澄にちょっかいを掛けるかもしれないと言う懸念が過って頭を抱える事しか出来ない。
「しかし、一体誰が明澄様の情報を?」
「誰が明澄を目にして砕波に情報を流したのだ、遣いの者たちにはあれほど砕波には明澄のことは何も言うなと言ったし」
遣いの者たちには砕波の視界にはなるべく避けるように、明澄の情報を砕波に入れない様にしていたはずなのにもう耳に届いているのは不審に思い、詠寿も厳生も頭を悩ませていた。
疑うのは悪いかもしれないが、疑いを掛けるとすれば遣いの者しかないのだがもうすでに厳生がかわりに厳しく問い詰めると、迎えに来た遣いの者たちは砕波には一切話していないと潔白を主張して首を横に振ったとの事だった。
「――待て、そのトレイに乗っている物は何だ?」
「――?」
扉の方からまた衛兵たちの声が聞こえた。
「えっと、詠寿様に明澄様にお出しするよう言われていた気分が落ち着くお茶です。」
次はクリアの声が聞こえてきた。衛兵に呼び止められ、用件と手に持っているものの正体をクリアは正直に話す。
「クリア、早く入りなさい。お茶が冷めてしまいますよ。お前達もクリアはお茶を持って手が塞がっているのですから扉を開けてあげなさい」
「え!? あっ……、厳生様!?」
「分かりました……よし、早く入れ。王子もいるのだから無礼のないようにな!」
厳生が詠寿に替わるように入室する様に発破をかけた後、衛兵たちに扉を少し開けてやるように言った。
厳生がいるとは思わなかったのかクリアは厳生の声に驚いて戸惑う。
入室の許可が下りる声が扉越しに聞こえ衛兵たちは納得して粗相がないよう言いつけ、クリアに早く入る様に促す。
――キィッ
「失礼します、クリアです。お待たせしました。」
クリアはトレイを持ったまま一礼した後、お茶を持って来たことを報告する。
「お茶をお持ちしました、何処に置きましょう?」
「あっ、ここに台があるからここに置くと良いかも……」
「あっ、はい……有難うございます。」
クリアはお茶を乗せたトレイをどこにおけばいいのか聞いてきたので、置く場所に困っていたクリアに明澄は自分が寝ていたベッドの空く横に有る小さい丸テーブルを指定してあげた。
クリアは明澄の指定した丸テーブルの上にトレイを置いてからトレイからカップを外し、皿付きのカップを明澄に手渡した。
「ありがとう、クリア君」
そうお礼を言ってカップを手にとってお茶を啜る。一口飲むと不思議と気分と心が落ち着いてきた……。
「――落ち着きましたか?」
「うん、ありがとう。」
「そうですか、よかった……あんなことがあったから心配で。」
効果があったか聞いて来たので明澄はあったと正直に答え、それを聞いたクリアは胸を撫で下ろした。
「クリア君も大丈夫? 叩かれたでしょう?」
「あぁ……大丈夫です、気にしないでください。」
クリアが砕波に叩かれたことを思い出した明澄は何ともないのか聞いたので、クリアは自分は大丈夫だと答え……
「――それより、明澄様が心配です。砕波様は明澄様を手に入れたいとおっしゃっていましたし」
クリアは、今後も砕波が明澄を手に入れたいという欲求を満たしたいと言っていたことが気がかりなのと詠寿への嫌がらせで明澄に何かしらの危害を加えそうだと心配する。
「クリアの言う通りですね。砕波様が貴方様の当てつけもかねて明澄様にまた手を出そうとするかもしれません。衛兵たちにも砕波様を明澄様の部屋に絶対に入れないよう呼びかけるのは良いとして、何か対策も練らないといけない気がします。」
「――そうだな。」
厳生は砕波の性格を考えて、今後明澄に何かしらのちょっかいを掛けられぬように対策をした方がいいのではと詠寿に聞くと、厳生の意見に賛同すると同時に詠寿は話を一旦区切り……、
「明澄、念のためもう一応言っておく。砕波は危険な奴だ、お前も奴には十分警戒してくれ。」
改めて砕波には十分気を付けるように呼びかける。クリアに平気で手を上げる砕波を見て砕波は王族としても男としても禄な者じゃないと感じていた明澄は……、
(あんな男のものになんて意地でもなりたくない……)
――そう思っていた。
「……わかりました。」
そしてその忠告に明澄は了承する。
「今日のところはお前の部屋の近くの警備は強化するよう衛兵たちには伝えといてある、だから安心して眠ってくれ……」
明澄の部屋の周りの警備は強化するよう言って置いてあるため安心して眠るように詠寿は優しい声で促し邪魔しない様にベッドから席を外す。そして……
「――おやすみ。」
「ーー!」
最後にそう言って詠寿は部屋を去って行った、詠寿に続き厳生とクリアも部屋から去って行こうとする。
「ーーあのっ!」
「……?」
明澄は詠寿を呼び止めたは良いが、どういえば分らなくなり……
「おや、おやすみなさい……。」
詠寿にそう返答する、詠寿はその言葉にふっと笑い明澄の部屋を出て行った。詠寿たちの気配が遠くなったのを見越すと肩の力を抜く。
「なんだか、懐かしい気がした」
詠寿の優しい言い方にどこか懐かしさを感じた。
もしかして、自分は昔どこかで詠寿にあったことがあったのではとでさえ思えた。
しかし、思い出せそうで思い出せない……。
もどかしい気持ちに駆られながらも明澄は布団にあらたまって入って寝息を立てた。
・
・
・
衛兵たちが巡回している中、衛兵たちの目を欺くものが一人いた。
「ーーふぅ、警備厳しくなってんな。きっと砕波の旦那のせいだな。」
そう一人の青年は警備が厳しくなったことに愚痴りながらも王宮のある一室を目指した。
青年が目的の部屋にたどり着き、その部屋に入った時だった。
「んぁ……ひぃ、あっあ、嫌、そこぉ!」
青年の目的の部屋に少年の甲高い嬌声が聞こえてきた。
「ふぁあ! もっ……もうお許しください!」
ずぷっ、ずぷっ……
「んー、ここか? オラよ!」
部屋にいたのは砕波とクリアとは別の召使いの少年だった。
砕波は嗜虐的な笑みを浮かべてさらに少年のナカと激しく突き上げる。
砕波と少年は薬を飲んで人の姿へと化けて行為に及んでいたのだった。
少年と砕波は別に恋人同士ではない、ただ砕波は気に入った召使いを男女問わず気紛れに性欲のはけ口にしているだけなのだ。奥まで突き上げられ、召使いの少年はこれ以上自分のナカを突き上げないでと懇願する。
――ぱんぱん!
「ふぁあ、ひっ、あっあぁ! ひぁ、あぁぁ――!」
――がくっ
少年の懇願も聞かず、砕波は何度も腰を突き上げると少年は絶叫して気絶する。
「ちっ、気ぃ失っちまったか……起こすか」
セックスしていた相手の召使いの少年が気を失ってしまったことに舌打ちし、砕波は一度自分のそそり立ったモノを少年の秘部からだした後、少年を起こそうとしたが……、
「おっと、そのままの方がよろしいかと?」
「――!?」
ストップがかかり、声がした方向を振り向くと黒いフードをかぶった青年がいつの間にか壁に寄り掛かって立っていたのだ。
「おぅ……なんだ、お前か。気が付かなかったぜ? さすが“ミミックオクトパス”……擬態のプロ」
砕波は怒るどころか、青年を見るなり歓迎する。砕波に歓迎された少年の足元からは蛸の足が見えていた。
「――たくっ、勘弁してくださいよ。カネ貰うためにいちいち衛兵の眼を気にしながら来るこっちの身にもなって欲しいもんだ。アスミ様にさっそくちょっかいかけましたね?」
「そう言うなよ……約束通り、金はそこだ」
砕波が明澄にちょっかいを掛けたせいでこの部屋にたどり着くのに時間がかかったと青年は文句言うと、
明澄の情報をくれた青年に砕波は少し鬱陶しそうに金を用意したことを伝えテーブルを指差す。
「ところで、どうでしたかい? アスミ様はよ」
青年はテーブルに有る金を確認しながら明澄を目にした感想はいかがだったか砕波に聞いて来た。
そう聞かれた砕波は……、
「あぁ、大した上玉だったよ。見ただけで欲しくなった……」
嗜虐的な笑みを浮かべて青年に答えた。
「……うっ」
明澄はベッドの中で目を覚ました。
「ーー大丈夫か?」
詠寿が心配そうに具合を聞いてくる。明澄がずっと眠っている間、詠寿は付き添ってくれていたらしい。
「あっ、はい……大丈夫です。」
「そうか……」
明澄が大丈夫だと言うと詠寿は安堵していた。
「すまない、砕波が迷惑をかけたな?」
「いえ、先輩のせいじゃないですよ……」
砕波が明澄にちょっかいを掛けたことを、詠寿が代わりに詫びる、詠寿のせいではないと明澄は詠寿は謝罪しなくていいと答えた。
「……“砕波”って言いましたっけ? 彼、先輩とはいったいどんな関係なんです?」
「砕波は、俺の父の弟の息子。つまり……俺の“いとこ”なんだ。」
明澄は詠寿と砕波はどんな関係なのか聞くと詠寿は砕波とは従兄弟同士に当たることを明かした。
詠寿は明澄を心配してかあまり砕波の話題は出したくはなさそうな顔をする。
「……どうして、あんな険悪な仲に?」
それでも明澄は質問を続けて、何故詠寿と砕波はあんなにも仲が悪いのか質問をぶつけた。
「……俺の父と叔父は昔から仲が悪くて、今でも叔父は王位を継いだ父を妬んでイヤミやらなんやらぶちまける。砕波もそんな叔父の血筋か影響か分からないが俺に対してなにかと噛みつくし、もともと相性も悪いとお互い気付いているからなのか……あんな感じになるんだ。」
国王である自分の父と叔父は昔から仲が悪く、今でも叔父は国王である父といがみ合う仲であることを詠寿は明かしてくれた。詠寿は昔から嫌がらせを受けていたせいか砕波とは元々相性が悪いのと父親たちの不仲もあってお互いあのような態度になってしまうのだと明かす。
「へっ、へぇ……」
(権力でいがみ合うと碌なことないって本当なのかも……)
明澄はそれを聞いて王族の権力争いの片鱗を見た気分になった。
「砕波は、俺が気に入ったやつ等にかならず俺への当てつけで嫌がらせをする奴だから……本当にすまない。」
「ーーいえ、先輩が謝る事じゃ……」
砕波のしょうもない嫌がらせにため息を吐きつつ、砕波の嫌がらせに明澄を巻き込んでしまったことに申し訳なさそうに詠寿は頭を下げて来て明澄は驚いて気にしなくていいと頭を上げるように促す。
「――あっ、厳生様。お疲れ様です。」
扉越しから明澄のいる部屋の門番をしている衛兵の声が聞こえた。
「詠寿様はこちらに……?」
「――はい、いらっしゃいます。」
――コンコン
今度は厳生の声が聞こえ、厳生は詠寿がこちらにいるか確認してきた。衛兵は正直にいると答えたのち、厳生は明澄の部屋の扉をノックをしてノックの音が部屋に響く。
「――詠寿様、厳生です。クリアから先程砕波様の件を聞いたのでその件について聞きに来ました。」
「……入れ。」
厳生は用件を言うと入室の許可を貰おうと用件を言うと、詠寿は厳生の入室を許可した。
――カチャッ
「失礼します……。」
戸を開けて一礼をした後、厳生は明澄たちのいるベッドまで近づいてくる。
「詠寿様、明澄様に大事はなかったのですか?」
「あぁ……医者にも見てもらったが強く掴まれた痣以外何ともないと、気分を落ち着かせるよう心掛ければ大丈夫だと言っていた。」
厳生は明澄の容体は問題ないか詠寿に聞くと、医者によれば明澄の容体は腕を強く掴まれて痣を作った以外には何も問題ないと答えたと詠寿は話した。
「明澄様、身体のご加減は大丈夫ですか?」
「あっ、はい。……大丈夫です、もう落ち着きました。」
強く掴まれて痣のできた腕を気にしつつも、明澄は正直に答えた。
「砕波様は、貴方に何も言いませんでしたか?」
砕波は明澄の気に障るような真似をしていないか厳生は聞いた。
『いいや、かえって気に入ったわ。詠寿のような腑抜けに置いておくのなんて持腐れじゃねえか、俺のモノになれよ!』
――ぞくっ
ふるふる……
「――明澄。」
砕波が自分に対してはなった言葉が一瞬過ってしまい、連れて行かれそうになった恐怖が再燃して体が小刻みに震えてしまい、詠寿は心配して声を掛ける。
「――言われたんですね?」
「……はい。」
砕波に何か言われたと明澄の反応で厳生は察し、厳生の察しの通りだと明澄は正直に答えた。
「ボクの事、『気に入った』って、『俺のモノになれ』って……」
明澄は厳生に砕波に言われたことをありのままに伝えた。
「厄介ですね。砕波様の耳に届いていただけでなく、明澄様を一目見て気に入られてしまうなんて……」
眉間を押さえながら厳生は頭を悩ませる、これからも明澄にちょっかいを掛けるかもしれないと言う懸念が過って頭を抱える事しか出来ない。
「しかし、一体誰が明澄様の情報を?」
「誰が明澄を目にして砕波に情報を流したのだ、遣いの者たちにはあれほど砕波には明澄のことは何も言うなと言ったし」
遣いの者たちには砕波の視界にはなるべく避けるように、明澄の情報を砕波に入れない様にしていたはずなのにもう耳に届いているのは不審に思い、詠寿も厳生も頭を悩ませていた。
疑うのは悪いかもしれないが、疑いを掛けるとすれば遣いの者しかないのだがもうすでに厳生がかわりに厳しく問い詰めると、迎えに来た遣いの者たちは砕波には一切話していないと潔白を主張して首を横に振ったとの事だった。
「――待て、そのトレイに乗っている物は何だ?」
「――?」
扉の方からまた衛兵たちの声が聞こえた。
「えっと、詠寿様に明澄様にお出しするよう言われていた気分が落ち着くお茶です。」
次はクリアの声が聞こえてきた。衛兵に呼び止められ、用件と手に持っているものの正体をクリアは正直に話す。
「クリア、早く入りなさい。お茶が冷めてしまいますよ。お前達もクリアはお茶を持って手が塞がっているのですから扉を開けてあげなさい」
「え!? あっ……、厳生様!?」
「分かりました……よし、早く入れ。王子もいるのだから無礼のないようにな!」
厳生が詠寿に替わるように入室する様に発破をかけた後、衛兵たちに扉を少し開けてやるように言った。
厳生がいるとは思わなかったのかクリアは厳生の声に驚いて戸惑う。
入室の許可が下りる声が扉越しに聞こえ衛兵たちは納得して粗相がないよう言いつけ、クリアに早く入る様に促す。
――キィッ
「失礼します、クリアです。お待たせしました。」
クリアはトレイを持ったまま一礼した後、お茶を持って来たことを報告する。
「お茶をお持ちしました、何処に置きましょう?」
「あっ、ここに台があるからここに置くと良いかも……」
「あっ、はい……有難うございます。」
クリアはお茶を乗せたトレイをどこにおけばいいのか聞いてきたので、置く場所に困っていたクリアに明澄は自分が寝ていたベッドの空く横に有る小さい丸テーブルを指定してあげた。
クリアは明澄の指定した丸テーブルの上にトレイを置いてからトレイからカップを外し、皿付きのカップを明澄に手渡した。
「ありがとう、クリア君」
そうお礼を言ってカップを手にとってお茶を啜る。一口飲むと不思議と気分と心が落ち着いてきた……。
「――落ち着きましたか?」
「うん、ありがとう。」
「そうですか、よかった……あんなことがあったから心配で。」
効果があったか聞いて来たので明澄はあったと正直に答え、それを聞いたクリアは胸を撫で下ろした。
「クリア君も大丈夫? 叩かれたでしょう?」
「あぁ……大丈夫です、気にしないでください。」
クリアが砕波に叩かれたことを思い出した明澄は何ともないのか聞いたので、クリアは自分は大丈夫だと答え……
「――それより、明澄様が心配です。砕波様は明澄様を手に入れたいとおっしゃっていましたし」
クリアは、今後も砕波が明澄を手に入れたいという欲求を満たしたいと言っていたことが気がかりなのと詠寿への嫌がらせで明澄に何かしらの危害を加えそうだと心配する。
「クリアの言う通りですね。砕波様が貴方様の当てつけもかねて明澄様にまた手を出そうとするかもしれません。衛兵たちにも砕波様を明澄様の部屋に絶対に入れないよう呼びかけるのは良いとして、何か対策も練らないといけない気がします。」
「――そうだな。」
厳生は砕波の性格を考えて、今後明澄に何かしらのちょっかいを掛けられぬように対策をした方がいいのではと詠寿に聞くと、厳生の意見に賛同すると同時に詠寿は話を一旦区切り……、
「明澄、念のためもう一応言っておく。砕波は危険な奴だ、お前も奴には十分警戒してくれ。」
改めて砕波には十分気を付けるように呼びかける。クリアに平気で手を上げる砕波を見て砕波は王族としても男としても禄な者じゃないと感じていた明澄は……、
(あんな男のものになんて意地でもなりたくない……)
――そう思っていた。
「……わかりました。」
そしてその忠告に明澄は了承する。
「今日のところはお前の部屋の近くの警備は強化するよう衛兵たちには伝えといてある、だから安心して眠ってくれ……」
明澄の部屋の周りの警備は強化するよう言って置いてあるため安心して眠るように詠寿は優しい声で促し邪魔しない様にベッドから席を外す。そして……
「――おやすみ。」
「ーー!」
最後にそう言って詠寿は部屋を去って行った、詠寿に続き厳生とクリアも部屋から去って行こうとする。
「ーーあのっ!」
「……?」
明澄は詠寿を呼び止めたは良いが、どういえば分らなくなり……
「おや、おやすみなさい……。」
詠寿にそう返答する、詠寿はその言葉にふっと笑い明澄の部屋を出て行った。詠寿たちの気配が遠くなったのを見越すと肩の力を抜く。
「なんだか、懐かしい気がした」
詠寿の優しい言い方にどこか懐かしさを感じた。
もしかして、自分は昔どこかで詠寿にあったことがあったのではとでさえ思えた。
しかし、思い出せそうで思い出せない……。
もどかしい気持ちに駆られながらも明澄は布団にあらたまって入って寝息を立てた。
・
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衛兵たちが巡回している中、衛兵たちの目を欺くものが一人いた。
「ーーふぅ、警備厳しくなってんな。きっと砕波の旦那のせいだな。」
そう一人の青年は警備が厳しくなったことに愚痴りながらも王宮のある一室を目指した。
青年が目的の部屋にたどり着き、その部屋に入った時だった。
「んぁ……ひぃ、あっあ、嫌、そこぉ!」
青年の目的の部屋に少年の甲高い嬌声が聞こえてきた。
「ふぁあ! もっ……もうお許しください!」
ずぷっ、ずぷっ……
「んー、ここか? オラよ!」
部屋にいたのは砕波とクリアとは別の召使いの少年だった。
砕波は嗜虐的な笑みを浮かべてさらに少年のナカと激しく突き上げる。
砕波と少年は薬を飲んで人の姿へと化けて行為に及んでいたのだった。
少年と砕波は別に恋人同士ではない、ただ砕波は気に入った召使いを男女問わず気紛れに性欲のはけ口にしているだけなのだ。奥まで突き上げられ、召使いの少年はこれ以上自分のナカを突き上げないでと懇願する。
――ぱんぱん!
「ふぁあ、ひっ、あっあぁ! ひぁ、あぁぁ――!」
――がくっ
少年の懇願も聞かず、砕波は何度も腰を突き上げると少年は絶叫して気絶する。
「ちっ、気ぃ失っちまったか……起こすか」
セックスしていた相手の召使いの少年が気を失ってしまったことに舌打ちし、砕波は一度自分のそそり立ったモノを少年の秘部からだした後、少年を起こそうとしたが……、
「おっと、そのままの方がよろしいかと?」
「――!?」
ストップがかかり、声がした方向を振り向くと黒いフードをかぶった青年がいつの間にか壁に寄り掛かって立っていたのだ。
「おぅ……なんだ、お前か。気が付かなかったぜ? さすが“ミミックオクトパス”……擬態のプロ」
砕波は怒るどころか、青年を見るなり歓迎する。砕波に歓迎された少年の足元からは蛸の足が見えていた。
「――たくっ、勘弁してくださいよ。カネ貰うためにいちいち衛兵の眼を気にしながら来るこっちの身にもなって欲しいもんだ。アスミ様にさっそくちょっかいかけましたね?」
「そう言うなよ……約束通り、金はそこだ」
砕波が明澄にちょっかいを掛けたせいでこの部屋にたどり着くのに時間がかかったと青年は文句言うと、
明澄の情報をくれた青年に砕波は少し鬱陶しそうに金を用意したことを伝えテーブルを指差す。
「ところで、どうでしたかい? アスミ様はよ」
青年はテーブルに有る金を確認しながら明澄を目にした感想はいかがだったか砕波に聞いて来た。
そう聞かれた砕波は……、
「あぁ、大した上玉だったよ。見ただけで欲しくなった……」
嗜虐的な笑みを浮かべて青年に答えた。
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