シロワニの花嫁

水野あめんぼ

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本編

第十二話:王子として

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一方、明澄と詠寿は、厳生達が待機していた中庭に戻ってきた。

「もう、よろしいのですか?」

「あぁ、大丈夫だ。明澄……この王宮の一番の絶景、見てみたいか?」

厳生はもう用は済んだのか詠寿に聞いいてきたので、詠寿は厳生の質問に答えつつ明澄に王宮一の絶景を見てみないか聞いて来た。

「――えっ?」
「人魚の街並みや市場とかもっと遠くの方も見れるぞ? ……どうだ?」

詠寿は明澄のいる部屋よりも、もっと遠くの景色が見られることを教える。

「……見てみたいかも」

 明澄は詠寿の誘いに乗ることにした、人魚たちの暮らしに少し興味があった明澄は人魚たちの街並みが一体どうなっているのか違う視点で見てみたいと思っていたのだ。

「――そうか、なら行こう」

詠寿は明澄のOKの返事に喜ぶと、早速絶景の見える塔まで案内する。もちろん、厳生達の同行付きではあったが。見張り台でもある塔の天辺まで付いてくると……

「ほら、ここだ明澄。」

目的の宮廷内で絶景が見える塔まで詠寿は案内し終わると、さっそく外を眺めるように言ってくる。
詠寿に言われたとおりに外を見てみると街の風景と人魚界の外が良く見えてきた。

「――わぁ! すごい、部屋で見た景色とはまた違う。」

塔からの絶景を眺めて、軟禁されている部屋の窓から見る景色の違いに明澄は思わず感嘆の声を上げてしまう。窓から見ていた景色からでは人魚界の外のサンゴ礁ははっきり見えなかったものの、塔から見た景色では鮮明に見える。

「窓から見える景色がここに比べるとちっぽけに見えるだろう?」

詠寿にそう聞かれ、明澄は返答に迷うものの詠寿の言っていることは自分と考えていることが同じだった為、「はい。」と正直に答えた。

「これを使えばもう少し町の情景や城下町の様子がはっきり見えてくると思いますよ。」

厳生は見張り番が良く使う箱に保管してあった単眼鏡モノスコープを、明澄に差し出した。

「あっ、本当だ……。」

単眼鏡から覗くと人魚姿の子供たちが、公園らしき遊び場で楽しそうに遊んでいる姿がはっきり見えて思わず感想を零す。

「あの町中にクリア君の実家とかあったりするの?」
「ございますよ、僕の実家は宮殿から見て西側の……、“人魚姫慰霊碑通り”の方に有ります。」

 明澄は単眼鏡を一旦おろし、クリアはあの城下町のどこかの出身であの城下町のどこかにクリアの実家はあるのか聞くと、クリアは自分の実家は宮殿から見て西側にある“人魚姫慰霊碑通り”と呼ばれる場所に位置すると答えた。

「“人魚姫慰霊碑通り”?」
「……クリアの実家がある地区には、詠寿様のご先祖様の妹君である人魚姫の慰霊碑が建てられているのですよ」
「人魚姫って……あの童話のモデルの?」
「――ええ。」

クリアが名指しした場所に明澄は疑問符を浮かべると、厳生が代わるようにクリアの実家が滞在する地区の名前の由来を教える。明澄はあのアンデルセン童話の人魚姫のモデルになった人魚姫か確認して聞くと厳生はそう答える。

「……人魚姫の亡き後妹の死と失恋を哀れんだ俺の先祖おばあちゃんがいつでも愛するわが妹の供養が出来るようにと、当時のこの国王でもあった夫に慰霊碑を建ててやって欲しいと願い出たらしい。クエシスを含む魔女の子孫たちも年に一回は彼女の供養をしに訪れるとのことだ。」

今度は詠寿が代わって人魚姫の慰霊碑が建てられるまでの歴史を明澄に教える。
人魚界の大魔導師・クエシスを含める人魚姫の魔女の子孫たちは年に一回人魚姫の慰霊碑を供養しに来ると言う習慣が身についていることも補足として教えた。

「彼女への懺悔ですか……?」
「――だろうな、でも俺達は……今の世代の王族はクエシス達の先祖の事はもう咎めちゃいないよ。
でも、クエシス達を含む子孫たちはまだそこは消化できていないんだと思う。」

 クエシスを含む魔女の子孫たちは人魚姫を結果彼女の死を招いた先祖の行いを悔いて供養の習慣がついているのかと明澄の質問に、詠寿は自分たち王族の見解ではクエシス達はまだ許されてはいけないのだと思い込んでいる節があるのではないかと答える。

「……先輩からすればそろそろ自分達を許してやって欲しいって思っているんですか?」
「俺からすれば魔女の子孫たちは先祖の分までもう十分償ったと、この人魚界に貢献したと思っているからな。」

「そうか……」

 詠寿自身は魔女の子孫たちが先祖に代替わりして懺悔するのはもうそろそろ止めても構わないと思っているのか明澄は聞くと詠寿は魔女の子孫たちに対する気持ちを素直に答える。

明澄は詠寿の答えにそう相槌を打つと、城下町に目をやる。

「明澄、お前から見たらこの人魚界はどう思う?」
「――えっ!?」

 詠寿は話題を変え、明澄から見た人魚界はどう映るか聞いて来た。勿論、明澄はいきなりそんなことを聞かれても困惑するばかりだった。どう答えればいいのか迷っていると……

「率直な感想でもいい、聞かせてくれ。」

詠寿は簡単な感想でも構わないと答えを催促してきた。人魚界を見た時の明澄の目にはこの人魚界は人間である明澄にとってどう映ったか知りたかった為、詠寿は率直な感想でもいいから知りたかったのだ。
明澄は少し悩みながら……、

「とても素敵で綺麗なところだと思います、人間界にはとても再現できない世界がこの人魚界には有ると思います。」

 ここにはがあり、澄み渡る海の中の景色は人間の手ではなかなか表現できない世界だと思うと明澄は正直に評した。

「――そうか。でもな、俺は人間界にいた時に色々思ったことがある。」
「どんな……?」

詠寿が大学に行って人間界に溶け込み、いろいろ見て回って思ったことがあると伝える。
明澄はどういうことを見て感じたのか、詠寿にそう問う。

「――人間達が自然破壊をするせいで、人魚族の人口が徐々に減っていることは厳生から聞いたな?」

「――えっ!? はっ、はい。」

 厳生から掟を聞かされた時に人魚族は現在環境破壊による生存場所減少のせいで人口減少にも悩まされている事もあって明澄を連れ去った原因となる“掟”を作ったことを聞かされたことを詠寿は覚えているか確認してきた、明澄はその話は憶えていたので正直に答える。

「人魚にも、人間が生み出す破壊性のせいで……人間をよく思わない人魚も残念ながらいるんだ。曽祖父様おじいさまは反感を買いつつも強行してこの掟を作ったが直した方がいい部分もあると俺は思っている」

「……」

詠寿は明澄に人間を快く思わない人魚が残念ながらいることはいると、人間である明澄にはっきり教えた。そして自分の曽祖父が定めた掟についてどう思っているのか詠寿は明澄に話す。

「確かに俺も、だと思う節はある。でも、科学という者を作った天才の種族でもあると俺は思ってはいるんだ」

 詠寿にしても人魚から見れば人間は破壊活動を平気でしてしまう愚かな生物だと思う節はあると詠寿は正直に答えたのち、しかしながら科学と言う便利性に富んだ力を生み出した頭のいい生物だということも評していると詠寿は答える。

「先程も言ったが人魚族には人間を嫌う輩は少なくはない、でもすべての人間が破壊しつくすことを好む連中ではないと俺は思っている……明澄、お前にしてもそうだ。人間は破壊性もあれば創造性も豊かな種族だと俺は思っているよ」

先程も言ったように人魚族は人間を嫌う者たちもいるが、詠寿からすれば明澄を含めすべての人間がそうではないと思っている事を伝える。

「……」

明澄は真面目に人魚族の事を考えている詠寿に驚き、ただ黙って話を聞くことしか出来ない。
厳生もただ何も言わず詠寿の言葉に耳を傾けているだけであった。

「人間は歴史から見ても他種族の存在をなかなか受け入れたがらない、そこから差別意識と言う悲しい感情を生む生物でもあると俺は感じてもいる。だが……それはまだ人間が俺達人魚族の事を知らないからだ。俺自身は人間から分かって貰える事を待っていては分かり合えぬままだと思うしこちらから歩み寄るべきだと考えてもいる。」

「先、輩……?」

詠寿は、人魚の歴史と人間の世界で学んだことを参考にして考えたことを語る。
明澄は詠寿の事は元々真面目な人物だとは心の中では評していたものの、ここまで人魚族が今あるべき姿や人間についていろいろ考えている人物だとは思わず明澄は驚くばかりだった……。

「俺は、王の一人の後継者として……人魚族をいずれ人間たちと分かり合える日を実現させたいと思っている。人間と共存できる世界に俺はしたいと思っている。明澄、お前の為にも。」

そして詠寿は王になれば自分がやりたいことを明澄に明かした。

「“人間との共存”、それが人魚族が生き残れるヒントになるかもしれないから。」

「……」

語り終えると詠寿は塔から見える絶景を真面目な顔をして睨んでいた、明澄は詠寿が明かしてくれた考えや城下町を眺める詠寿の姿を見て思った。

――彼も、なのだと。

改めて痛感したのだった……。

「お兄様、明澄お兄様~~。」
「……?」

ふと下を見ると勉強の時間を終えた瑠璃音がヴィオレを連れて手を振っている。

「一緒にお茶しましょ~?」

大声で瑠璃音は明澄達をお茶に誘った、明澄たちは瑠璃音達がいるもとに行くために塔を降りて行った。

「瑠璃音、もう勉強は済んだのか?」

「む~~、失礼ね! ちゃんと勉強済ませました!」

詠寿は瑠璃音に勉強を終えたのか確認をする、瑠璃音は府真面目に勉強をはかどらせなかったと思われたが面白くなかったらしくやるべきことはやったとふくれっ面で反論する。

「――申し訳ありません。勉強を終えた途端、明澄様の元に行くって言いまして……」

「お兄様ばっかり狡い、あたくしだって明澄お兄様とお話したりしたい」
「瑠璃音、お前なぁ……」

ヴィオレが申し訳なさそうに瑠璃音がここまで探し回って来た理由を明かすと、瑠璃音は明澄の腕に抱きつき詠寿に自分も明澄と話をしたいと言う。瑠璃音の相手をしたら明澄もさすがに疲れると思った詠寿は、呆れつつも振り回さない様言いつけようとするが……、

「あー、でもそう言う約束だったものね? お茶、一緒にしようか。」

明澄は瑠璃音が去る間際に約束を取り付けていたのは自分なので、改めて瑠璃音にそう聞く。

「――本当!? うふふ……じゃあ、一緒に行きましょう!」

「あぁっ、お待ちください……姫様!」

瑠璃音は遠慮なしに明澄の手を引いてお茶会をしようと思っているテラスに、明澄を誘導する。
ヴィオレは瑠璃音を慌てて追い掛けようとする。

はぁ……っ

「ヴィオレ、お茶が終わったらクリアを呼んでやってくれ……クリア、頼めるか?」

呆れてため息をしつつ詠寿はヴィオレにお茶会が終わったらクリアを呼ぶように言いつけ、お茶会が終わった後クリアに明澄を部屋まで迎えに行くように命じた。

「――あっ、はい……勿論です。」
「御意にございますわ。」

クリアとヴィオレは詠寿の命令を承諾し、それぞれ自分たちの業務へ戻って行った。

――明澄が瑠璃音に誘われるまま、お茶会に参加してお茶とお菓子をいただいていた時にいそれを見つめる視線があったことに明澄たちは気付いていなかった……。

「ふぅーん、あれが噂の“明澄様”か……。」

「砕波様が言っていたけど本当に美人だね。」
「――はぁっ!?  どこが?」

窓越しで明澄に視線を向けていた一人が明澄を目にしてそう答えるともう一人が明澄をみて美人だと評する。すると最後の一人は嫌そうに反応する。計三人の視線が明澄を見ていたことに明澄は気付いていなかった。

「なぁに、ヤキモチか? ……最近、砕波様に抱かれていないから嫉妬?」
「――煩い!」

「よぅ、例の奴は持って来てくれたか?」

一人が明澄を美人と評した時に嫌そうな顔をした一人をからかい、からかわれた一人はムキになって反論すると一人の声が会話を遮って来た。声がした方向に目をやると砕波が三人がいる部屋の壁に寄り掛かって頼んだものを持って来てくれたか聞いて来る。

「――えぇ、もちろん。これ飲ませるとか、鬼畜ですねぇ?」

「だってどうしても欲しいんだよ、明澄あいつが……」

明澄を影から見ていた者たちは砕波にある物を渡す、それは液体が瓶に収められたものだった。

「ふん……これを使われて、お前は正気でいられるかな?」

 瓶をかざしながら砕波が笑みを浮かべていたのを誰も知る由もなかった……。
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