シロワニの花嫁

水野あめんぼ

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本編

第三十一話:告げられた御礼

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クエシスは正体を現すなり、隠すためとはいえ数々の無礼を働いたことへの謝罪もかねて一礼する。

「今まで黙っていて申し訳ありませんでした、彼らのことを信用してくれるか気がかりだったため慎重になっていたため名乗り出るのをつい躊躇してしまいまして……」

「クエシス……」
「おや、長門。出てきてしまったのか?」

今まで名乗り出なかった理由を明確に述べていると、クエシスが出てきた場所から一人の人間が姿を現した、その後ろにはクリアもいた。

「――クリア!」
「! ――明澄様、ご無事で!?」
「大丈夫、それよりも詠寿さんが……」

「! 王子、貴方怪我を……!?」

クリアは明澄の元に急いで駆け寄り明澄に心配そうに聞くと自詠寿の方が重症だと明澄は答え、詠寿は大した怪我ではないと言ってはいるがかなりの量を出血している。

「王子!? まさかこいつに……!」
「――早く! 医務班、早く王子を治療しろ!」

厳生も駆けつけ、詠寿は撃たれたことで重傷を負ったことに気付いた。アリヴがクローディオ率いる医務班に詠寿の治療を命ずると医務班は慌てて駆け寄り、詠寿の元に寄って治療を施してくる。その中にはリョウジもルメルダもいた。

「そういえば、阿久津さんが動けなくなったのは?」
「あぁ、それは俺が彼の飲み物に“魔法の薬”を混ぜて飲ませましたので」

 何故突然阿久津の身体が動かなくなったのか聞くと、差し入れと称してその特殊な魔法薬が入った飲み物を渡して飲ませたので、彼はその魔法薬の作用で動けなくなったのだとクエシスは答えた。

「さて、こいつはどうしてくれようか」
「まさか、このままで済むとは思っていませんよねぇ?」

「――クソ! この魚臭ぇ化け物が!」

アリヴ達は拳を鳴らして阿久津に静かに憤慨しつつ、じわじわ歩み寄る。悪あがきと言っても過言でない差別的な罵言を阿久津は吐き続けていた。

「――化け物は貴方の方でしょ、この人でなし!」

明澄が割り込み、罵言を吐く阿久津にそう言って論破したのだった。阿久津はそう言われ舌打ちして黙り込んだ。明澄は怪物は阿久津の心だと論破することで、漸く何かが吹っ切れた気がした。

「まぁ、待ちなさい人魚さん達。この馬鹿男をどうするかはだからね? 取りあえず矢は引っこ抜いてそれから縛り上げてくれるとこちらとしてはありがたい。クエシス、出来るな?」

「――はいはい。」

長門は声を上げてアリヴ達にそうお願いした後、クエシスに阿久津に掛けている魔法を解いて貰うようお願いした。

「安心しな、俺はちゃんとした警察だ。その男は監禁罪及び殺人未遂の容疑で逮捕する。人間は人間が基づいた法で裁くべき、そうでしょう?」
「アリヴ、彼に任せよう。彼の言う通りにしてやってくれ」

「……分かりました」

警察手帳を見せながら、長門はアリヴ達がいるところに歩み寄って阿久津の身柄を素直に渡して自分たち人間の警察に任せるように説得してくる。最初は信用していいのか分からずどうするか詠寿の方を見ると、詠寿は警察であることは嘘ではなさそうなので長門を信用することにして聞き入れることにするよう命じた。アリヴ達は阿久津の腕を後ろに回して紐で縛り上げた後、矢を抜いてやった。

「王子様……どうも、初めまして。クエシスがここに在中している間一緒に同居していた“長門ながと広海ひろみ”と申します。」

長門は本名を名乗り、長門はクエシスが居候していた家の同居人だと言うことを明かした。

「――やっぱりあの時、んだな?」
「――えっ!?」
「覚えていらっしゃらないだろうけど、俺は貴方にそこにいる明澄君が襲われているから何とかしてくれって言われた時に駆けつけた人間ですよ?」

「「――!?」」

二人はその言葉に耳を疑った、そして明澄は彼の顔をよく見た。
記憶の泉で見せて貰った詠寿の記憶に出てきた顔を思い出して照らし合わせると、若干大人びているが顔が一致することに気付いた。

「――あの時の!」

明澄はもう6年も前の事だから忘れていたが、その言葉で長門のことを漸く思い出した。

「――二人とも大きくなったな?」
「まさか、俺の正体知っていて……」
「――あぁ。俺、目は良いから君が下半身魚だった時は目を疑ったよ。でも、君の必死の声で嘘ではなさそうだと思って了承したんだ。すぐいなくなっちゃったのは残念だったけど。」

もしや自分の正体に気付いていて自分の言葉を信じてくれていたのか詠寿が聞くと長門は頷き、
最初は人魚だったことに目を疑ったが、詠寿自身が悪そうな子ではなさそうだと思って話を信じたと
長門はあの時の事を明かした。

「それに俺人魚に過去に助けられたことあるんだよ、ユートピア号って船が大時化で転覆した際溺れかけた所を人魚に引き上げてくれたことあったんだ。」

「――待ってくれ、ユートピア号って……! 俺が乗っていた船じゃないか!」
「……リョウジさん!?」

 長門は明澄達に昔人魚に助けられたことがある過去を明かしてくると、治療を手伝っていたリョウジが目を見開いて話に割って入って来た。

「アンタは……?」
「俺は、阿佐ヶ谷亮二。訳があって今人魚界に籍を置いているが昔、君が乗っていたユートピア号は俺が乗っていた船だ……俺はだった。」
「! ――あの船の生き残りがまだいたのか!?」

リョウジは名前を名乗った後、自分は長門が乗っていた船の船員であったことを教えるとその事実に長門は驚いていた。

「リョウジ、彼は、長門は……リヴェラが助けた人間の子の一人だったんだよ」
「――リヴェラが!?」
 
 クエシスは、長門はリヴェラが助けた人間の一人だったことを明かし、長門はリョウジと違って岸に近い場に溺れてた事やその時にリヴェラの姿を朦朧とした意識の中捉えたらしいと話した。

「クエシス、阿佐ヶ谷さんは一体何者?」
「リョウジは……だ」

「……そうか、そうだったんだ。彼女はもうこの世にいないとクエシスから聞いた、残念だよ」

長門は、リョウジはリヴェラとどういう関係なのか聞くとクエシスがリョウジはリヴェラの夫であることを教え何故リョウジもリヴェラを知っているのか納得したようだ。

「偶然、水浴びしているところを彼に見られてしまって。連れて行かなきゃいけないと思ったが俺には完全治療の手がかりを探さなきゃいけなかったし、長門が人魚に会いたかったと言っててさ……話をしているうちにすっかり仲良くなっちゃったわけ」

クエシスは長門とどういう経緯で仲良くなったのか詳しく説明した、仲良くしているうちに人魚に優しくしてくれた理由を尋ねるとリヴェラに会いたいからと長門は話してくれたのだと言った。
最初は長門を連れて行かないと掟違反になるのでどうするか戸惑ったが、それを聞いた長門は人魚界にはついて行くから会って欲しい人達がいると言われて少しの間留まる事を決めたらしい。

「それに……リヴェラに感謝を言いたいのは、長門だけじゃないんだ」

――ザッ

クエシスが長門以外にもリヴェラにお礼を言いたい人たちがいる事を明かした途端、大勢の人々が明澄達の前に姿を現した。明澄の前に姿を現した大人数の人間たちは、詠寿の姿を見て驚いている。
アリヴ達は警戒して矛を向ける、いきなり姿を現した集団は「怪しい者じゃない」と慌てて弁解していた。クエシスは、彼らは無害だと主張した。

「彼らは、リヴェラに命を助けられた人間たちだよ」
「――!?」

「その人間たちが俺たちに何を……?」

クエシスは、彼らもユートピア号に乗っていた乗客でリヴェラに命を救われた人間たちだということを明かした。彼らの目的は一体なんなのか詠寿は尋ね、その言葉を聞いた集団の中のリーダーらしき人物が詠寿の元に歩み寄ってくるが衛兵たちが怪しんで行く手を阻もうとする。衛兵たちの行動に詠寿はその人物を自分の前に来させるよう衛兵たちに命じた。

「――こんにちは、人魚の王子様。リヴェラさんに会えない今、貴方とはどうしても話したくて……」

リーダーらしき中年男性は一礼して歩み寄り、どうしても詠寿と話したかった理由を淡々と明かす。

「私はこれでも環境庁に勤めている者です、人魚が今環境汚染のせいで人口減少に頭を悩ましているとクエシス君から聞きました。それで我々はリヴェラさんに助けられた身でもありますし、微弱ながらも手助けしたいんですよ」

リーダーである中年男性は人魚たちの事情をクエシスから聞いて微弱ながらも人魚たちが生きていける手伝いをしたいと述べる。その言葉に詠寿を含む人魚たちも、明澄も驚いた表情をしていた。

「貴方達の仲間を減らした原因が人間われわれであるならば私たちは詠寿王子、貴方達を含む人魚たちの力になりたいと我々は話しているんです。世の中には阿久津あの男のような人間がいるとは分かっています、でも我々は貴方の夢を手助けする手伝いをしたいんですよ……私たちも人魚と共存したいから」

自分たちが環境を破壊したせいもあって人魚たちが苦しんでいるなら、その償いもしたいのだ先程差別的な発言をしていた阿久津のような人間がいると分かっても、リーダーである中年男性は詠寿の夢と自分たちの夢は一緒だと話した。

「我々を信じてくれなくてもいいです、ただ……貴方達人魚に出来る限りの協力をしたい。貴方にお会いしたかったのも、リヴェラさんの墓に我々は彼女に感謝していると貴方に伝えて欲しかったから。どう受け取るかは自由です、好きに受け取ってください」

 自分たちの事を信じてくれなくてもいいが、ただ自分たちはリヴェラに感謝していると伝えてほしいと中年男性と長門はお願いした。その言葉を聞いて詠寿も考え込むと……。

「一応、父にこの話はしておこう。アリヴ……頼めるか?」
「――承知しました。」

詠寿は長門たちの話を聞いて、長門たちの話を不知火王たちに伝えてくれるか聞くとアリヴは、詠寿の命令を聞き入れ承諾する。その言葉に長門たちが連れてきた集団グループは喜び始めた。

話が終わるとクローディオたちも治療を終えてこれで大丈夫と一言添えると、クローディオ以外の医務班のメンバーは離れていく。明澄が先程の事もあって不安そうに歩み寄ると詠寿は大丈夫と促した。

クローディオとクエシスが兄弟の再会をしている間、詠寿はあることを思い出した。
詠寿はクローディオとクエシスを呼んだ、案の定「何ですか?」とクローディオ達が尋ねてくる。

「……実はさっき妙なことがあってな」

詠寿と明澄はクローディオたちに阿久津に襲われている間、詠寿は悪癖が出てしまって阿久津を危うく殺しかけたことや、明澄の一声で通常の悪癖が出た時より早く我に返ることが出来たと話した。

「それって、薬は服用していなかったってことですか!?」
「――あぁ。」

クローディオは詠寿が話してくれた体験談に驚き、薬の服用はしていなかったか改めて確認する。
クローディオとクエシスは驚いた顔をしたままお互いに顔を合わせる、そして……

「その辺の心理状況とかもっと詳しく話してもらえませんか?」
「――え!?」

「「それ重要な手掛かりかもしれませんよ、悪癖を治せるかもしれません」」

二人に詰め寄られ明澄達は思わず物怖じするが、二人は口揃えてその体験談は詠寿の持病を治せるヒントになるかもしれないと話した。
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