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本編
第二十九話:とある条件と里帰り
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「――わかった、そこまで言うなら俺も付き合う」
「えっ……?」
琉璃がそうしたいなら、自分も協力しようと思った。
本当は、琉璃をあんな目に遭わせたミコトのことを許せてたわけじゃない。
でも、ミコトも親とのいざこざでああなってしまったところが似ている部分もあって他人ごとに思えないところがあった。
「――どっ、どうして?」
「そりゃあ……お前が、伯父に謝りに行くのについて行ってくれるんだから俺も何かしたいと思ってな」
琉璃はてっきりミコトを毛嫌いして何もしてくれないと思っていたから、砕波の発言に少し驚いた表情だった。琉璃にさせてもらっているばかりでは申し訳ない。ただし、これはミコトのためではなくあくまで琉璃のためである。
ミコトは似ている境遇から少し同情的にはなれるが、琉璃にしたことは別問題……。
しかし、琉璃がそこまでミコトに手を差し伸べたいのならその手伝いをしたいと思った。
「ありがとう、砕波さん……」
「いいさ、お前には俺は世話になりっぱなしだしな。」
ミコトの件は、ミコトに対面出来たら自分も協力することを約束した。
――ヴヴヴヴ……
「――あっ、ダグラスさんからだ。」
携帯のバイブ音に気付きダグラスからの連絡が入り、琉璃は携帯を手に取って電話に出た。
《もしもし? ユリ……、フリッグから伝言で『出来た』ってさ》
「本当? ――分かった。」
《……俺が迎えに行くから、帰るとき連絡頂戴》
そう言い終わるとダグラスとの通話が切れて、琉璃は携帯を仕舞った。
「作り終わったって、でも……もうちょっと見て行こうよ」
そういう琉璃の眼を止まらせたものを見て、もう少し見たいと言った理由に砕波は呆れながらも納得した。
〈この先、つい恐怖!? ゾクっとしちゃう! だが、美しい! サメコーナー!〉
そんな煽りの看板が目に留まって目をうきうきさせる琉璃に、興奮しすぎだと苦笑いしながらも砕波は付き合うことにした。
「わぁ、いるいる……。――あっ、オオセがあんなところにいた」
「オオセか……、擬態するサメだっけか」
「そうそう、大抵海底の砂とかに擬態してるんだよね。」
見つけにくい鮫を水槽越しで見つけて喜んだりしながら、コーナーを順番に見て行った。
「おっ、ジュゴンだってよ……。何か見せつけるみてェだな」
鮫のコーナーを抜けると、すぐ近くにジュゴンの水槽がありダイバー姿の女性のスタッフがジュゴンの水槽の中で手を振ってジュゴンに釘付けになっている観客にアピールする。
「おー、餌投入して来たぞ。お~~、食いっぷりいいな」
「そういえば、ジュゴンって人魚のモデルだって言われてたっけ」
「あそこまで胴は太くねえよ」
ジュゴンの姿を見て「かわいい!」という観客の子供の声に交じりながら、砕波は飼育員が見せるジュゴンの餌やりについ釘付けになってしまっていた。ジュゴンを見ていた琉璃は
そんな冗談じみた会話をしているうちにもう電車に乗ったころには、すっかり日が沈もうとしていた。
「あのジュゴンさ……、海に帰りたいって思ったことあるのかな?」
「――えっ?」
電車の中で揺られている間、あの水族館のジュゴンを見ているとそうぼやいたのが聞こえて琉璃が砕波の方を見る。
「俺はさ……親父と不仲だったからよ、あんまり家に帰りたいなんて思ったことなかったからさ。あのジュゴンは海に帰りたいとか思ったことあったのかなって思ってさ」
「……」
「悪い、こんな話しても変な話だよな……」
狭い水槽の中で生活するのは自分はごめんだと言ったが、ジュゴンはジュゴンであんな水槽では泳ぎ足りなくて窮屈な思いはしないのだろうか、そんなことを考えてしまって砕波はさっきの呟きは聞き流すよう琉璃にお願いする。
「砕波さんは……、家に帰りたいって思ったことはないの?」
琉璃は、父親や継母との不仲で家に帰りたい気持ちはなかったのか確認してきた。砕波は正直に「ない」と答える。
「家に帰ったらイヤミばっかだったし、“サメの人魚”と言う理由で親父からも蔑まれていたし……だから帰りたいって思ったことはなかった」
実母を亡くして以来、鮫の人魚だと言う理由で蔑まれていた自分にとってあの家は帰りたくなかった。目が合っても継母にはイヤミをネチネチと言われ、父親からは歌声さえも嫌われていたから……。
そんな家に帰っても、もちろん居場所なんて一つもない。だから外で発散していた。
「だったら、ぼくのいる場所は……砕波さんの帰りたい場所になれるかな?」
「――えっ!?」
琉璃は突然そんなことを言い出して、砕波は戸惑いを隠せなかった。琉璃は琉璃で、
家では誰にも心を開けなかった砕波に自分が砕波の安心できる場所になれたらと思っていた。
「もし、謝りしに終わって……ぼくが今の学校を卒業したら、一緒に暮らさない?」
琉璃は砕波と同棲することを提案してきたのだった、琉璃のいきなりの同棲提案に砕波も驚きを隠せなかった。
「――まっ、マジで言ってるのか?」
「うっ、うん……」
琉璃は顔を赤くして本気だと答える、その言葉に砕波も顔を赤くして琉璃を抱きしめると……
「お前って奴は……」
「えへへ……」
こんなにも直球な約束をしてくる琉璃に呆れていたものの、こんな自分を好いてくれる琉璃をうれしいと思った。
「人魚向きの、仕事って……何だろうな?」
琉璃に頼ってばかりいるのも情けない話なため、もし東の人魚界へのけじめをつけ終わったら、自分にもできる仕事を探そうと砕波は思った。
――水族館から帰るとフリッグから水中呼吸薬に2つ分とサンプルを貰い、サンプルを伯父に渡して試してもらった。
伯父は早速サンプルを使い、琉璃の持って来たものが本物かどうか試してみた。
伯父はサンプルの効果に驚いており、その際に来てくれていたフリッグが分家でも“魔女の子孫”であることを自ら明かし、伯父はフリッグの作るものが本物であることを認めた。
「それでだが……、ここからでも東の人魚界には行けるのかい?」
「行けると言えば行けますが……一度、詠寿王子の婚約者である明澄様のところに行って泊めてもらった方がいいのでは?」
伯父が質問をすると、フリッグはそう返答し一度明澄に通してもらった方がいいと答える。
「でも、住んでる場所が……」
「大丈夫、そういうことの為にノゼルがいるんでしょ?」
「――あっ、アタシが案内係!?」
「――他に誰がいるのさ!」
明澄の住んでいる場所が分からないと琉璃が困惑するとフリッグは、明澄が住んでいる国に寄って行き、そこから明澄を通して東の人魚界まで行ったほうが色々と都合がいいと提案したのち、ノゼルを案内係に推薦してきた。
「ノゼルは仲良いんでしょ? 明澄様と」
「わかった、わかったよ……やるよ」
砕波が人間界で暴れた一件が許された後、もう明澄は帰国している為明澄のところに寄るには飛行機を使って行かなければならないが、ノゼルは飛行機が苦手なためげっそりした顔を浮かべていた。
「まあ、取りあえず電話してみるから……」
ノゼルは電話を借りると、明澄につながる電話番号を掛けた。
しばらく呼び出し音が響き渡ったが、ガチャっと電話に出た音が聞こえた。
「あ~~、もしもし……? ノゼルです、明澄サマ。今度そっちに琉璃さん達が来るからちょっとよろしくできないかな?」
《――えっ!? どうしたの!?》
「実はね……」
ノゼルが砕波の代わりに砕波たちが東の人魚界に行って、実家帰りし砕波が今までのケジメとして不知火王に謝りに行きたいので泊まる場所を提供してほしいことを伝えた。
《分かった、そう言うことなら……》
「頼みますよ、明澄様……」
《――あっ、でも一つ条件が……》
「――えっ?」
明澄は承諾するものの、条件付きだと言うことを伝えその条件がいったい何なのか聞いてみると……
《砕波に……クリアに会ったらちゃんと謝ってほしいの》
「……クリアってアンタの御付の世話係してる子ですかい?」
明澄が出した条件は【クリアに謝ってほしい】というものだった、その真意は一体なんなのかノゼルは砕波の代わりに聞くと……、
《砕波……初対面の時クリアを引っ叩いたでしょ?》
「あっ……」
“クリア”と言われて誰だったか覚えてなかった砕波はクリアの事を思い出せずにいたところ明澄の言葉であの時、明澄との初対面で手を出そうとしたのを止めようとした使用人見習いだったことを思い出した。明澄の話から今でもクリアは、世話係として明澄の傍で仕えているようだった……。
明澄はクリアを友人としても使用人としてもとても気に入っている為、その件はまだ根に持っていることを教えられ砕波は過去の所業のひとつを蒸し返さればつが悪くなる。
《いいんですよ、明澄様……。もう気にしてませんから》
《駄目だって、何も悪くないのに理不尽に殴られたら怒らないと……!》
向こうでクリアと明澄の会話が聞こえてくる、その会話が丸聞こえだった砕波は小さい声で「わかった、約束する」と答えた。
「アンタ、何したんだ?」
「いろいろ……」
呆れかえった目でフリッグに振られ、砕波は目をそらして誤魔化した。
「まぁ、ちゃんと謝ったらクリアって子は許してくれるでしょ……いい子だし」
明澄との会話が終わった後、ノゼルがクリアは数回しかあったことはないが懐が深い性格なので謝れば分かってくれるとフォローを入れる。先程の会話で少し里帰りを称した明澄への仮住まいの部屋にお邪魔することに気が重くなりそうだった。
――そして、里帰りする当日……。
「それじゃあ、頑張って行っておいでよ」
「うん……」
飛行場にはフリッグ達も見送りに来てくれており、琉璃達は明澄のいる国に旅立とうとしていた。
「ミコトの件は俺達にも任せてくれ。」
「うん……」
飛行機に乗る際も琉璃はミコトが心配だった、ダグラスはミコトの件は自分たちも何とかするから元気を出すよう激励をする。せめてミコトの様子を伺ってから旅立ちたかったが、ミコトが面会を拒否している為結局会うことが出来なかった。
「じゃあ、行ってくるね……」
搭乗時間の知らせを聞いて、琉璃達は手を振ってダグラスたちと叔父たちに別れを告げて旅立った。
数時間も飛行機に乗り、到着した時には砕波たちの里帰りについて行っていたノゼルの顔はげっそりとしていた。
「本当に飛行機苦手なんだ……」
「高いところ駄目みたいなんスよ……」
飛行場に降りるとトイレから吐しゃ物を吐いて帰ってきたノゼルがまだえずきながらも、琉璃たちと合流する。
「さて……、迎え来てないのかな」
琉璃達は飛行場を後にしようと玄関ホールのところで人を探していると、こっちを見て手を振っている二人を見つけた。
「あっ、明澄サマじゃないですか」
「おーい、ノゼル君。……従兄弟とは楽しくやれた?」
明澄が迎えに来ており、琉璃達を見つけ歩み寄るとノゼルにフリッグと一緒に楽しくやれたか聞いて来た。明澄の後ろには、この間明澄が砕波にちゃんと謝ってほしい子でもあるクリアがついてきていた。
「お久しぶりです、ノゼルさん。」
「おうクリア、出張世話係……相変わらずやってるのかい?」
「――ええ。」
ノゼルはクリアに労いの言葉を掛け、クリアはそれに答える。
クリアを前にして砕波は改まり、咳払いを少しした。
「よっ、よぉ……。」
「――えっ、あっ……、砕波様。お久しぶりです、と言ってもあの時見習いだったからあまり覚えていないでしょうけど……」
クリアも砕波を前にして少し戸惑っていたようでぎこちない言葉で砕波に挨拶をする、砕波がクリアに苦手意識を持たせてしまったことを証明する態度だった。
「えっ……?」
琉璃がそうしたいなら、自分も協力しようと思った。
本当は、琉璃をあんな目に遭わせたミコトのことを許せてたわけじゃない。
でも、ミコトも親とのいざこざでああなってしまったところが似ている部分もあって他人ごとに思えないところがあった。
「――どっ、どうして?」
「そりゃあ……お前が、伯父に謝りに行くのについて行ってくれるんだから俺も何かしたいと思ってな」
琉璃はてっきりミコトを毛嫌いして何もしてくれないと思っていたから、砕波の発言に少し驚いた表情だった。琉璃にさせてもらっているばかりでは申し訳ない。ただし、これはミコトのためではなくあくまで琉璃のためである。
ミコトは似ている境遇から少し同情的にはなれるが、琉璃にしたことは別問題……。
しかし、琉璃がそこまでミコトに手を差し伸べたいのならその手伝いをしたいと思った。
「ありがとう、砕波さん……」
「いいさ、お前には俺は世話になりっぱなしだしな。」
ミコトの件は、ミコトに対面出来たら自分も協力することを約束した。
――ヴヴヴヴ……
「――あっ、ダグラスさんからだ。」
携帯のバイブ音に気付きダグラスからの連絡が入り、琉璃は携帯を手に取って電話に出た。
《もしもし? ユリ……、フリッグから伝言で『出来た』ってさ》
「本当? ――分かった。」
《……俺が迎えに行くから、帰るとき連絡頂戴》
そう言い終わるとダグラスとの通話が切れて、琉璃は携帯を仕舞った。
「作り終わったって、でも……もうちょっと見て行こうよ」
そういう琉璃の眼を止まらせたものを見て、もう少し見たいと言った理由に砕波は呆れながらも納得した。
〈この先、つい恐怖!? ゾクっとしちゃう! だが、美しい! サメコーナー!〉
そんな煽りの看板が目に留まって目をうきうきさせる琉璃に、興奮しすぎだと苦笑いしながらも砕波は付き合うことにした。
「わぁ、いるいる……。――あっ、オオセがあんなところにいた」
「オオセか……、擬態するサメだっけか」
「そうそう、大抵海底の砂とかに擬態してるんだよね。」
見つけにくい鮫を水槽越しで見つけて喜んだりしながら、コーナーを順番に見て行った。
「おっ、ジュゴンだってよ……。何か見せつけるみてェだな」
鮫のコーナーを抜けると、すぐ近くにジュゴンの水槽がありダイバー姿の女性のスタッフがジュゴンの水槽の中で手を振ってジュゴンに釘付けになっている観客にアピールする。
「おー、餌投入して来たぞ。お~~、食いっぷりいいな」
「そういえば、ジュゴンって人魚のモデルだって言われてたっけ」
「あそこまで胴は太くねえよ」
ジュゴンの姿を見て「かわいい!」という観客の子供の声に交じりながら、砕波は飼育員が見せるジュゴンの餌やりについ釘付けになってしまっていた。ジュゴンを見ていた琉璃は
そんな冗談じみた会話をしているうちにもう電車に乗ったころには、すっかり日が沈もうとしていた。
「あのジュゴンさ……、海に帰りたいって思ったことあるのかな?」
「――えっ?」
電車の中で揺られている間、あの水族館のジュゴンを見ているとそうぼやいたのが聞こえて琉璃が砕波の方を見る。
「俺はさ……親父と不仲だったからよ、あんまり家に帰りたいなんて思ったことなかったからさ。あのジュゴンは海に帰りたいとか思ったことあったのかなって思ってさ」
「……」
「悪い、こんな話しても変な話だよな……」
狭い水槽の中で生活するのは自分はごめんだと言ったが、ジュゴンはジュゴンであんな水槽では泳ぎ足りなくて窮屈な思いはしないのだろうか、そんなことを考えてしまって砕波はさっきの呟きは聞き流すよう琉璃にお願いする。
「砕波さんは……、家に帰りたいって思ったことはないの?」
琉璃は、父親や継母との不仲で家に帰りたい気持ちはなかったのか確認してきた。砕波は正直に「ない」と答える。
「家に帰ったらイヤミばっかだったし、“サメの人魚”と言う理由で親父からも蔑まれていたし……だから帰りたいって思ったことはなかった」
実母を亡くして以来、鮫の人魚だと言う理由で蔑まれていた自分にとってあの家は帰りたくなかった。目が合っても継母にはイヤミをネチネチと言われ、父親からは歌声さえも嫌われていたから……。
そんな家に帰っても、もちろん居場所なんて一つもない。だから外で発散していた。
「だったら、ぼくのいる場所は……砕波さんの帰りたい場所になれるかな?」
「――えっ!?」
琉璃は突然そんなことを言い出して、砕波は戸惑いを隠せなかった。琉璃は琉璃で、
家では誰にも心を開けなかった砕波に自分が砕波の安心できる場所になれたらと思っていた。
「もし、謝りしに終わって……ぼくが今の学校を卒業したら、一緒に暮らさない?」
琉璃は砕波と同棲することを提案してきたのだった、琉璃のいきなりの同棲提案に砕波も驚きを隠せなかった。
「――まっ、マジで言ってるのか?」
「うっ、うん……」
琉璃は顔を赤くして本気だと答える、その言葉に砕波も顔を赤くして琉璃を抱きしめると……
「お前って奴は……」
「えへへ……」
こんなにも直球な約束をしてくる琉璃に呆れていたものの、こんな自分を好いてくれる琉璃をうれしいと思った。
「人魚向きの、仕事って……何だろうな?」
琉璃に頼ってばかりいるのも情けない話なため、もし東の人魚界へのけじめをつけ終わったら、自分にもできる仕事を探そうと砕波は思った。
――水族館から帰るとフリッグから水中呼吸薬に2つ分とサンプルを貰い、サンプルを伯父に渡して試してもらった。
伯父は早速サンプルを使い、琉璃の持って来たものが本物かどうか試してみた。
伯父はサンプルの効果に驚いており、その際に来てくれていたフリッグが分家でも“魔女の子孫”であることを自ら明かし、伯父はフリッグの作るものが本物であることを認めた。
「それでだが……、ここからでも東の人魚界には行けるのかい?」
「行けると言えば行けますが……一度、詠寿王子の婚約者である明澄様のところに行って泊めてもらった方がいいのでは?」
伯父が質問をすると、フリッグはそう返答し一度明澄に通してもらった方がいいと答える。
「でも、住んでる場所が……」
「大丈夫、そういうことの為にノゼルがいるんでしょ?」
「――あっ、アタシが案内係!?」
「――他に誰がいるのさ!」
明澄の住んでいる場所が分からないと琉璃が困惑するとフリッグは、明澄が住んでいる国に寄って行き、そこから明澄を通して東の人魚界まで行ったほうが色々と都合がいいと提案したのち、ノゼルを案内係に推薦してきた。
「ノゼルは仲良いんでしょ? 明澄様と」
「わかった、わかったよ……やるよ」
砕波が人間界で暴れた一件が許された後、もう明澄は帰国している為明澄のところに寄るには飛行機を使って行かなければならないが、ノゼルは飛行機が苦手なためげっそりした顔を浮かべていた。
「まあ、取りあえず電話してみるから……」
ノゼルは電話を借りると、明澄につながる電話番号を掛けた。
しばらく呼び出し音が響き渡ったが、ガチャっと電話に出た音が聞こえた。
「あ~~、もしもし……? ノゼルです、明澄サマ。今度そっちに琉璃さん達が来るからちょっとよろしくできないかな?」
《――えっ!? どうしたの!?》
「実はね……」
ノゼルが砕波の代わりに砕波たちが東の人魚界に行って、実家帰りし砕波が今までのケジメとして不知火王に謝りに行きたいので泊まる場所を提供してほしいことを伝えた。
《分かった、そう言うことなら……》
「頼みますよ、明澄様……」
《――あっ、でも一つ条件が……》
「――えっ?」
明澄は承諾するものの、条件付きだと言うことを伝えその条件がいったい何なのか聞いてみると……
《砕波に……クリアに会ったらちゃんと謝ってほしいの》
「……クリアってアンタの御付の世話係してる子ですかい?」
明澄が出した条件は【クリアに謝ってほしい】というものだった、その真意は一体なんなのかノゼルは砕波の代わりに聞くと……、
《砕波……初対面の時クリアを引っ叩いたでしょ?》
「あっ……」
“クリア”と言われて誰だったか覚えてなかった砕波はクリアの事を思い出せずにいたところ明澄の言葉であの時、明澄との初対面で手を出そうとしたのを止めようとした使用人見習いだったことを思い出した。明澄の話から今でもクリアは、世話係として明澄の傍で仕えているようだった……。
明澄はクリアを友人としても使用人としてもとても気に入っている為、その件はまだ根に持っていることを教えられ砕波は過去の所業のひとつを蒸し返さればつが悪くなる。
《いいんですよ、明澄様……。もう気にしてませんから》
《駄目だって、何も悪くないのに理不尽に殴られたら怒らないと……!》
向こうでクリアと明澄の会話が聞こえてくる、その会話が丸聞こえだった砕波は小さい声で「わかった、約束する」と答えた。
「アンタ、何したんだ?」
「いろいろ……」
呆れかえった目でフリッグに振られ、砕波は目をそらして誤魔化した。
「まぁ、ちゃんと謝ったらクリアって子は許してくれるでしょ……いい子だし」
明澄との会話が終わった後、ノゼルがクリアは数回しかあったことはないが懐が深い性格なので謝れば分かってくれるとフォローを入れる。先程の会話で少し里帰りを称した明澄への仮住まいの部屋にお邪魔することに気が重くなりそうだった。
――そして、里帰りする当日……。
「それじゃあ、頑張って行っておいでよ」
「うん……」
飛行場にはフリッグ達も見送りに来てくれており、琉璃達は明澄のいる国に旅立とうとしていた。
「ミコトの件は俺達にも任せてくれ。」
「うん……」
飛行機に乗る際も琉璃はミコトが心配だった、ダグラスはミコトの件は自分たちも何とかするから元気を出すよう激励をする。せめてミコトの様子を伺ってから旅立ちたかったが、ミコトが面会を拒否している為結局会うことが出来なかった。
「じゃあ、行ってくるね……」
搭乗時間の知らせを聞いて、琉璃達は手を振ってダグラスたちと叔父たちに別れを告げて旅立った。
数時間も飛行機に乗り、到着した時には砕波たちの里帰りについて行っていたノゼルの顔はげっそりとしていた。
「本当に飛行機苦手なんだ……」
「高いところ駄目みたいなんスよ……」
飛行場に降りるとトイレから吐しゃ物を吐いて帰ってきたノゼルがまだえずきながらも、琉璃たちと合流する。
「さて……、迎え来てないのかな」
琉璃達は飛行場を後にしようと玄関ホールのところで人を探していると、こっちを見て手を振っている二人を見つけた。
「あっ、明澄サマじゃないですか」
「おーい、ノゼル君。……従兄弟とは楽しくやれた?」
明澄が迎えに来ており、琉璃達を見つけ歩み寄るとノゼルにフリッグと一緒に楽しくやれたか聞いて来た。明澄の後ろには、この間明澄が砕波にちゃんと謝ってほしい子でもあるクリアがついてきていた。
「お久しぶりです、ノゼルさん。」
「おうクリア、出張世話係……相変わらずやってるのかい?」
「――ええ。」
ノゼルはクリアに労いの言葉を掛け、クリアはそれに答える。
クリアを前にして砕波は改まり、咳払いを少しした。
「よっ、よぉ……。」
「――えっ、あっ……、砕波様。お久しぶりです、と言ってもあの時見習いだったからあまり覚えていないでしょうけど……」
クリアも砕波を前にして少し戸惑っていたようでぎこちない言葉で砕波に挨拶をする、砕波がクリアに苦手意識を持たせてしまったことを証明する態度だった。
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