神話の牢獄

おにぎり

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4、封印の空間

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 鋭く、尖った音が響いた。はじめに一枚の岩が剥がれ落ち、続いていくつかの岩が崩れた。

 またか。緊張の糸が張る。
 前にもこんなことがあった。あれはたしか、マラという魔王が誕生した時のことだ。


 地面の下。地下の水脈よりも、もっと下の方。今まで感知することすらできなかった何かが、ドクンと拍動した。

 水脈より、もっと粘っこい何かが、地を巡り始めている。
 人であった頃の、動機に似た感覚だ。

 拍動は収まるどころか、強く唸るようにして動いている。無いはずの鼓膜が震えて、目の前が真っ白になっていく。一体、この地で何が起きているのか。
 しばらくしてから拍動は徐々に弱まり、やがて感知することすら出来なくなった。


 それから数日は静かな、何も無い日が続いたのだが、事件はその後起きた。
 再び拍動が始まったかと思うと、今回は弁が外れたかのように何かが流れ始めた。

 これはまずいかもしれない。
 水脈と同じように、この流れている何かを動かすことはできないだろうか。
 そう思って意識を向けてみると、少しずつではあるが動かすことができると分かった。


 しかし、その試みが実は間違いであった。
 衝撃を受けたその地脈は形を変形させて、俺の真下で膨らみ始めた。なんとか抑え込もうとしても、俺の力はあまりにも無力であった。

 水脈に触れるかどうかまで大きく膨らんだ直後、地殻が崩壊したような音と共にその地脈が爆発した。
 地下にドクドクと広がっていく粘液のようなもの。
 やがて洞窟内に漏れだしたそれは一点に集まった後、禍々しい力を放出し始めた。

 それから起こったことは言うまでも無い。
 数日後、俺の洞窟内には魔王という存在が闊歩し、その手下までもがうじゃうじゃいる空間へと変貌してしまった。

 それから英雄が誕生して魔王が倒されるまでの長い間、洞窟は魔王軍最大の要塞となってしまった。

 俺は忘れていた。魔王軍の要塞は英雄リノン・ミキにより封印されたが、今もなお俺の奥深くで眠っていることを。


 思い出したくない記憶。悪魔のようなようなあの時代。繰り返してはいけない歴史だ。


 崩れた岩の向こう。砂埃が舞ってよく見えないが、暗く大きな空間が広がっている。
 今の、岩が崩れたあの音は……まさかな……。
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