転生草の約束

おにぎり

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第一章、草の友達

7、正義とか神託

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「お、おい!今何が起きたんじゃ!」

 神様の声だ。

 やばい。しらばっくれようかな……
 俺が何も言わずにいると、神様の声が近づいて来た。

「どうせお主の仕業じゃろう!」

 怒ってそうな感じ。かなり怒鳴り声に近い。

(俺じゃないよ)
 俺は小さく、呟くように言った。

 神様は大きくため息をついてから言う。

「人族の脅威を生み出していたというのに、これじゃ台無しなのじゃ!しかしお主、ここがエーリング界で良かったのぉ。もし外でやったら、天罰を与えんといかんところじゃったわい」


 うーむ。何か、気になることが多すぎるな。

 俺は気になることを聞いてみた。

「神様、人族の脅威って、何だ?」

「うむ。よくぞ聞いてくれたのぉ!」

 神様はそう言うと、俺にことの顛末を教えてくれた。


 以下が神様が説明してくれたことである。

「かつて、この世界が暴力により支配されていた時代。弱肉強食が当たり前だった時代に、わしは人族を作り出した。

 わしは人族を魔獣のように牙や角を持たず、魔族のように魔法も扱えない。最弱の種族として生み出したのじゃ。

 それはなぜかって?暴力が正義であるこの世界を、愛で満たしかったのじゃ。こう見えて、わしは平和主義での。

 人族はわしの期待通り、世界を愛で満たしてくれたのじゃ。その道のりは険しいものじゃった。

 暴力に打ちひしがれながらも、怯むことはあっても、決してそれに屈することはなかったのじゃ……」



 そう言って、神様は、何かを思い出すかのように小さく息を吐いた。

「そうだったのか。でも、まるで今は違うような言い方をするんだな」

 俺がそう聞くと、神様は大きく頷いて続けた。


「そうじゃ。人族はある時、暴力に加担し始めてしまったのじゃ。その役目である、愛を忘れての。

 わしはそれを止めようと、愛の賢者を召喚した。もう一度、愛を思い出して欲しくて。じゃが、ダメじゃった……

 やつらはしぶとい。その結束力は半端ではない。

 世界の危機を救おうお言っておる。じゃが今では、彼らの存在自体が、世界の危機になってしまっておるのじゃ」



 大きくため息をつく神様。
 人族は、そんなに愚かなのか?暴力による支配。愛を忘れた存在。

 元々最弱だった?けど、今では世界に危機をもたらすまでに……


 なぜ、愛を忘れてしまったんだ、人族よ。


「今回が、人族に対する最後の警告のはずじゃったんじゃ。
 お主にその役目を、世界を愛で満たす最後の番人を担ってもらうはずじゃった。じゃが、少しばかり下手をこいてな」


 それってまさか……

「座標をミスって、最後の警告ができなくなった?」

「そうなのじゃ」

 神様、あなたという人は……

 俺は腹立たしかった。人族に対しても、神様に対しても。

 できることなら、俺が人族を救ってあげたかった。なんで、俺は草に……


「それに、事態は深刻なんじゃ!以前、お主に勇者の体を用意したと言ったじゃろう。
 用意した体に、他の魂が宿ってしまったのじゃ!」


「一体、それはどういう……」

 俺は神様が言っている意味が分からなかった。


「インパシオ王国の初代国王。人族で、最初に暴力によって世界を支配しようとした者の魂が、勇者の体に宿ってしまったのじゃ!

 暴力を打ち滅ぼすはずの勇者が、今となっては愛を滅ぼそうとする存在に変わってしまったのじゃ!」


「そんな、とんでもないこと……じゃあ、どうするんだ!そんな存在が生み出されたのなら……」

「暴力の勇者は、暴れ回るじゃろう。世界を支配するために。
 そうなればもはや、人族を滅亡させる他ないじゃろう。実際、わしは人類の脅威は用意しておった」


 人族よ。正義とはなんだ。
 お前たちの正義は、愛のはずだろう!
 一度でいい、思い出してくれ!


 しばらくして、神様が呟いた。

「じゃが……」

「じゃが?」

「お主が……何か変なものををあの山に飛ばしてきたんじゃ!それで、消滅してしまったのじゃ!
 わしが用意しておった、人族滅亡のための脅威を!研究所も、すべてパーじゃ!失くなった!」


「あ……」

「お主のせいじゃ!」

「それを言ったら……神様が座標をミスったのがそもそもの……」

「そ、それを言うでない!」


 なんか、申し訳ないことをした。だが、一応は日本人で、元人類だ。

 この世界の人族の危機を救えたとも言える、かもしれない。それはそれで……


 突然、神様が顔を上げた。

「そうじゃ……お主が、お主がやれば良いんじゃ!」

「え、何を」

「お主が、今の人族を、救えば良いのじゃ!わしはちと本気を出した力は、お主に宿っておる!」

「えっと、それはつまり……」

「ここで、遂に台本の登場じゃ!元々はお主が勇者の体を得てから言うつもりだったのじゃが……」


 そう言って、神様はゴソゴソと何かを探し始めた。そして見つかったのか、くしゃくしゃの紙を広げる音が響いた。


 ――――
 不運にもその命を謳歌できなかったものよ
 ここに神託を授ける
 暴力から世界を救い、世界に愛の名を轟かせよ
 ――――
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