転生草の約束

おにぎり

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第一章、草の友達

8、夕日

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 神様それは……

 俺が何を言おうとしていることに気がついたのだろうか。再び、プツンといって神様の声は聞こえなくなってしまった。

 いつも逃げやがって……



 要は、世界を暴力から解放しろってことだろ?
 解放しなければ、人族は滅びる。

 その元凶は?インパシオ王国の初代国王なる人物。
 そいつの魂が、勇者の肉体を借りている。

 けっこうやばくて草。

 まぁ、結局やることもないし、神託を受けてみるかな。



 話は変わるが、俺は召喚魔法で召喚した岩に名前をつけることにした。

 何がいいかと悩んだ結果、とてもいい名を思いついた。

 その名はずばり——


 Celestial Impact  天からの衝撃


 読み方は、セレスティアル・インパクト。

 天の、天体の、という意味を持つセレスティアルと、
 衝撃、打撃、という意味を持つインパクトを組み合わせた。

 この名の由来は、まるで巨大隕石のように空から降り注ぎ、打撃を与えたことに由来する。

 今は見る影もないあの山に、この岩が衝突した。その時の光景は、今でも鮮明に覚えている。
 少し、トラウマになるほどに……


 セレスティアル・インパクトは少し長いから、普段はスティーヌと呼ぼう。

 なんか、西洋っぽい名前になったけど、五右衛門とかよりは合ってるよね?


 この頃、俺はスティーヌに話しかけることが多くなっている。

 イマジナリーフレンドと言われればそれまでだが、今の俺にはそれが必要だった。だって、誰も話し相手がいないんだもん!


 スティーヌ!実は俺、気づいたことがあるんだよ!
 俺はお前のことを、我が腕のように操れるんだ!

 トンカチのように地面に叩きつけることもできるし、ブーメランのように投げることもできる。

 まぁ、そんなことをすれば一瞬で地形が終わってしまうんだけどね

 そう思って、俺はふわふわと浮かぶ巨岩を見た。



 スティーヌは今、こう言っている(気がする)。

 私を誰だとお思いで?

 地面に叩きつけるのはおよしなさい!

 ブーメランにして遊ぶのもやめてちょうだい。

 私は、最強の岩なのよ?

 そんな下品なこと、できるはずがないわ。


 スティーヌ、そんなことを言わないでおくれよぉ。


 気持ち悪いわね!

 罵倒されたいのかしら?

 そうなのね?

 じゃあ、罵倒しないであげるわ。


 そ、そんなぁ!


 時々、自分で言っていて恥ずかしくなる。
 だが、こうもしていなければ、精神が壊れてしまうのだ!

 誰も話し相手がいない。それはそれでいいのだが、話し声が聞こえないのが辛い!

 この辺りに生き物もいない!辛いことこの上ない。



 あぁ、スティーヌ、君が羨ましいよ。君は空をひとっ飛びで、どこまででもいけるんだろう?

 いつも風を感じて、羨ましいではないか。


 それに比べて俺は……
 ただ、周囲の草木を枯らして体を大きくするだけ。動くこともできずに、ただ地中に根を張り続ける。

 この辺りの栄養は全て吸収してしまった。
 根はこれ以上伸びない。

 俺が歩けたなら、どれだけ良いことか!
 あぁセリーヌ、慰めておくれよ……



 私はスティーヌよ!

 名前を間違わないでちょうだい。

 それにあんた、諦めるんじゃないわよ!

 私を召喚したのはあなたなのよ?

 何処の馬の骨とも知らない男と思われたら、私の威厳に関わるわ!



 うん。そうだよな?スティーヌ。ありがとう。

 スティーヌもそう言っていることだし、いっちょ試してみるか!

 ……とは言っても、まだ魔力は回復していない。自力でなんとかできる方法があればいいのだが。


 よし、ここは魔法発動と同じく、イメージが大切だと思う。

 まだこの体を理解していない。だからこそ、動かし方のイメージは大切に違いない。


 俺は埋まった右足を、地面から出すことをイメージした。

 足の裏に感じる土の圧力。踏ん張る太もも張り具合。全てイメージした。

 しかし……何も起きなかった。

 やはり、この力から抜け出すのは叶わないのだろうか。



『諦めるんじゃないわよ!』
 スティーヌのその言葉が、俺の脳裏に響いた。

 そうだよな。諦めちゃいけないんだ!
 俺はここから出る。出なくてはいけないんだ!


 その時、俺の思考が何かに動かされた気がした。その思考は気付かぬうちに、直感として俺の意識の上に現れた。

 そうか……

 俺はもう、人間じゃないんだ。見ろ、今の俺の姿を!
 堂々たるこの太い幹!枝別れを繰り返し、大きな影を地面に落とす葉の傘!

 そしてなんと言っても、地中深くまで根差したこの巨大な根!


 だからそう!

 俺の足は、2本じゃないんだ。根の数だけ、足があるじゃないか!

 要は、俺はタコ人間ってことだ!

 うん、ちょっとダサいかもしれないが……でも例えるとしたら、絶対にそうなのだ!


 ということは、イメージの仕方を変えなくてはいけないぞ。

 地中に埋まる無数の根が地面を突き破り、地上に這い出てくる。

 砂に埋もれたタコが再び海を歩き出す時のような、あのイメージだ。


 よし、この感じだ!!!いけぇぇ!!


 突然、体の中で何かが動き始めた感じた。これが何かと言われれば、俺自身にも分からない。

 魔力ではない。しかし、俺の奥深く中で眠っていた何か。

 それが全身を駆け巡り、俺の体を動かした。


 徐々に高くなる視点。
 腰から下に風を感じる。土が剥がれ落ち、埋まっていた大きな根が姿を現した。

 遂に全ての根が地上に這い出すと、ゆっくりと俺の体を支え始め、やがて重心を安定させた。


 四方八方に広がった根はそれぞれが意思を持っているように動いている。

 しかし、俺が何かを掴もうと思えば、根は俺のイメージ通りに動いてくれる。

 かなり繊細な動きまでしてくれて、まるで象の鼻のようである。



 さ、流石は私の召喚主ですわ!
 褒めてあげるわ!


 スティーヌも喜んでくれている。


 り、立派な根っこじゃない。
 そ、そ、その……
 なんだ?顔を赤らめて。


 ……うん。流石にここまでだ。
 イマジナリーフレンドの限界といったところ。

 流石に、それ以上のことはちゃんと人間にしてもらいたいところ。


 まぁ、とにかくだ!
 根っこの動かし方も分かったことだし、栄養が豊富な地に移動しようと思う!

 神様の裏庭であるこの地、エーリング界から出ることも実現できるかもしれない!


 そうすればケリーとの約束だって叶う。

 人がいれば、世界樹の条件だって達成できるかもしれない。

 そうすれば、世界に愛の名を轟かせることだって……


 さぁ、行こうではないか!スティーヌよ!


 俺は、足元で枯れたケリーとその実を持っていくことを忘れなかった。

 1本の根を渦巻き状にして即席の鉢にすると、土を抱えて、その中にケリーの実を入れた。

 いつかおれが、お前の夢を叶えてやるよ。そして、約束を果たそうじゃないか。

 俺はオレンジに光る夕陽に向かって、スティーヌとともに歩き始めた。
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