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略奪で得た幸せは格別に甘い蜜の味?

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『衝撃の事実』って、まさにこういう事を言うのだろう。
私はまだ散らかった頭の中で、志穂から聞いた話を反芻してうなだれた。
結局、壮介の話は全部嘘だったんだと今更ショックを受けた。
行き着いた結論は、壮介は私と一緒に暮らしていた2年間ずっと紗耶香と付き合っていただけでなく、私と別れる2か月前には既に紗耶香と入籍までしていたのだ。
私は一体、壮介のなんだったんだろう?
今となってはどうでもいい話かも知れない。
部屋で一度だけ会った『みいな』という女は何者だったのか?
壮介は私に嘘をついて、偽嫁を用意して芝居を打ってまで、紗耶香と自分を守りたかったんだ。
ああ、それは私も同じか。
私も順平を偽壮介に仕立て上げようとしたんだから。
だけどやっぱり、恋人と友達にずっと裏切られていたんだと思うとショックだった。
男女の仲もどうなるかわからないけど、女の友情も脆いものだ。
道理で紗耶香と連絡が取れなかったわけだと合点がいく。
紗耶香は私の事を友達なんて思っていなかったんだろう。
……私は大事な親友だと思っていたのに。
もう文句を言う気力もない。
今更何を言ったところで時間が戻るわけでも、私と壮介の仲が元通りになるわけでもない。
もちろん、私と紗耶香も友達には戻れない。
私が何も聞かなかった事にしておけば、すべてが丸く収まるのかな。
こんな真実なら知りたくなかった。
壮介に別れようと言われてから、なんで私がこんな目に遭うのかと思っていたけど、奪った側の気持ちを考えた事はなかった。
壮介に選ばれた紗耶香は、どんな事を考えていたのか。
私という婚約者のいた壮介を自分だけのものにできて、紗耶香はきっと幸せだと思っているに違いない。
他人を不幸にして手に入れた幸せは、どんな味がするんだろう?
人の不幸は蜜の味って言うくらいだから、やっぱりその甘さは格別なのかな。
苦い汁を吸わされた私には、どんなに考えてもわからない。
『誰かを傷付けてまで幸せになりたいとは思わない』と思ったけれど、ごく普通の恋愛をして、ごく普通の結婚をしたくて、いつ消えてしまうかわからない順平との恋愛に終止符を打ったのは私だった。
何も言わずに急にいなくなった私を、順平がどう思っていたかはわからない。
だけどまっすぐに愛してくれた順平から目をそむけて逃げ出した私は、きっと順平を傷付けた。
そうしてまで別の幸せを求めた私も、同じなのかも知れない。
そこに確かな愛情がなかったからなのか、見せ掛けだけの幸せはすぐにメッキが剥がれ落ちて、ちっとも甘くなんかなかったけれど。
こういうの、何て言うんだっけ?
都合の悪い事やつらい事は、全部忘れてしまえたらいいのに。
そうすればきっと、私の中には順平と過ごした楽しかった頃の記憶しか残らない。



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