社内恋愛狂想曲

櫻井音衣

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See you lover,so goo!~修羅場遭遇~

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「佐野には彼氏がいるのに婚約者のふりを頼むなんて申し訳ないから、さっきの話は本当に真に受けなくていいよ。変な心配させてごめんな」

私が婚約者のふりをするかどうか迷っているとでも勘違いしたのか、三島課長は私を気遣ってくれている。
三島課長があまりにもいい人過ぎて、なんだか申し訳なくなってきた。
それに比べて私の彼氏は、私の部下と浮気をして、平気で嘘をつくような、どうしようもない男なんですけどね……と、心の中で毒づいてみる。

「あ、でも練習にはぜひ参加して欲しいな。今日はもう遅いし、サークルについての詳しいことはまた別の日にでも話そうか」
「わかりました」

車の時計はすでに11時を回っている。
お店から一番家が遠かったから私が最後だったわけだけど、三島課長が自分の家に帰り着く頃には一体何時になるんだろう。

「練習の後はいつも三島課長がみんなを送ってらっしゃるんですか?」
「俺んちが会社のすぐ近くだから、いつも伊藤と瀧内はうちから車で一緒に体育館に行って、帰りも送ってる。佐野も参加するようになったら帰りはちゃんと送るから、安心して来てくれればいいよ」

どこまで面倒見がいいんだ、この人は?
ここから会社の近くまで帰ろうと思うと、家に着くのは相当遅い時間になるはずだ。

「遠いのに送ってもらってすみません。ありがとうございました」
「どういたしまして。俺が勝手にやってることだからホントに気にしなくていいよ。じゃあ、おやすみ」 

車を降りて頭を下げると、三島課長は笑って軽く手を振り帰っていった。
車を見送りマンションに入ろうとすると、エントランス脇の植え込みの辺りで人影が動いた。
少しビックリしてそちらを見ると、護が植え込みのブロックに腰かけて私の方をじっと見ていた。

「おかえり志織、遅かったね」
「ごめん、急に大事な用ができて……」 

護はゆっくりと立ちあがり、私に近付いてきて右手をギュッとつかんだ。
その手の力は驚くほど強く、私の顔を覗き込むようにして見つめる目には威圧感がある。

「志織が今日会おうって言ったのに連絡もなかったから、ずっとここで待ってたんだけど……」
「午後から急ぎの仕事で必死になって、連絡しそびれてた。ホントにごめんね」

連絡もせず待たせてしまって悪かったと思い素直に謝ると、護は手を握る力はゆるめず、口元に笑みを浮かべた。

「ふーん、そっか。とりあえず喉乾いたし、お腹も空いたから部屋に入れてよ。志織の晩御飯楽しみにして来たんだ」

そういえば晩御飯を作る約束だったのに、買い物に行っていないから家にはたいした食材はなかったはずだ。

「ごめん、週末忙しくて買い物にも行けなかったから、たいしたものは作れないんだけど……」
「志織の作った料理ならなんでもいいよ」

正直言ってこんな遅い時間から料理はしたくないけど、自分から言い出したことだからしょうがない。
それに私の落ち度で長い時間待たせてしまったんだから、何も食べさせないで帰すわけにはいかないだろう。

「わかった、簡単なもので良ければ……」
「じゃあ早く志織んち行こう」

護は私の手をグイグイ引いてマンションの中へ入り、エレベーターのボタンを押した。
エレベーターの扉が開いて中に乗り込んでも、護は私の手を離さない。
なんだか今日の護はいつもと様子が違う気がする。

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