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収穫祭
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「具体的にはまだまだだけどね……私には和装が似合いそうだから神前式にしようとか、近いうちに私の親にも挨拶に行かないとなーって話したくらいかな」
三島課長との会話を思い出して適当に答えると、奥田さんはまた大きなため息をついた。
きっと護と私が結婚の話をしているのだと思って落ち込んでいるんだろう。
私が結婚を考えている相手が、護とは別の人だとアピールするにはどうすればいいだろう?
「彼氏さんは佐野主任の作ったごはん、喜んで食べてくれるんですよね?」
確かに護は私が作った料理を喜んで食べていたけど、三島課長は食べるだけじゃない。
「うん、まぁ……。私の作った味噌汁が好きだから、毎日飲みたいって。でも彼も料理は得意だから、美味しいもの作って食べさせてくれたりもするよ。ピーマンの肉詰めとかレバニラ炒めはお互いに好きだから、一緒に作ったりもするかな」
やや脚色も加えてみたけれど、護は味噌汁より肉料理が好きだし、ピーマンとレバーは大嫌いで、まったく料理はできないから、これで少しは伝わっただろうか。
「あれ……?彼氏さん、ピーマンの肉詰めとレバニラ炒め……ホントに好きなんですか?」
「うん、ホントだけど……なんで?」
「私が作ったらピーマンとレバーは大嫌いだって言って、一口も食べてくれませんでしたよ?」
「そうなの?それは残念だったね。でも好き嫌いは人それぞれだからね、私の彼氏は両方好きだよ」
私がそう言うと、奥田さんは野菜炒めの人参を箸でつまんだままポカンとしてしまった。
また嘘をついてしまったけれど、これで護が自分のところに来ないのは、私と会っているからではないとわかったはずだ。
「つかぬことをお聞きしますけど……佐野主任の彼氏さんって、歳下ですよね?」
「えっ?違うよ、私より3つ上。だから年齢的にもそろそろ結婚したいって言ってる」
できるだけそれらしく答えると、奥田さんは人参を口に入れて首をかしげた。
「歳上……?じゃあ私の勘違い……?」
奥田さんはおにぎりをかじってまた首をかしげながらぶつぶつと呟く。
どうやら私の彼氏が護ではないということに気付き、私が捏造した話を信じたようだ。
「早く食べないとお昼休み終わっちゃうね。少し急ごうか」
「あっ、はい」
急いでお弁当を食べ終わった後、奥田さんはお弁当箱を片付けながら、何度も首をかしげた。
「さっきからどうしたの?今はもう時間ないけど……仕事の後で良ければ、話を聞くくらいはできるよ?そうだ、金曜日だし飲みに行こうか」
お酒の勢いを借りて護の裏の顔を奥田さんにも教えてやろうと、初めて自分から奥田さんを飲みに誘った。
もしかしたら断られるかなと思ったけれど、奥田さんは至って素直にうなずいた。
「それじゃあお言葉に甘えて……話を聞いてもらってもいいですか?」
「いいよ、今日はとことん飲もう。そうだ、せっかくだから私の友達も呼んでいい?何かいいアドバイスしてくれるかも!思いきり飲んでパーッと騒いで、イヤなこと全部忘れちゃおう!」
「それもいいですね」
なんとかうまく奥田さんを誘うことに成功した私は、スマホを持ってトイレに走り、個室の中で急いでメッセージを入力した。
【奥田さんを連れて行くから、今夜一緒に飲みに行こう。瀧内くんと伊藤くんと護を誘ってくれる?】
葉月に送信すると瞬く間に返信が届く。
【わかった!なんやようわからんけど誘っとく!】
おかしな日本語ではあるけれど、私がことを起こそうとしていると察してくれたのだということだけはわかった。
【詳しくはまた後で】
手短にメッセージのやり取りを終えてオフィスに戻り、午後の仕事の準備に取りかかる。
先輩に誘われたら、よほどのことがなければ断りきれないはずだから、何も知らない護はのこのこやって来るだろう。
あとはみんなの前で護を切り捨てるだけだ。
定時を30分ほど過ぎた頃になんとか仕事を終えて片付けを済ませ、休憩中に葉月と決めた待ち合わせの店に奥田さんと一緒に向かった。
葉月たちは先に到着して飲み始めているらしい。
なんとか護を確保することにも成功したようだ。
葉月には事前に、私の婚約者は三島課長ということにして、名前は出さないでと頼んでおいた。
伊藤くんと瀧内くんも話を合わせてくれる手はずになっている。
葉月には昼間の奥田さんとのやり取りを簡単に説明してあるけれど、果たしてうまくいくだろうか。
案内された個室の座敷の前に立つと、葉月たちの笑い声が聞こえてきた。
お酒が入ってそれなりに会話も弾んでいるようだ。
少し緊張しながら個室の障子を開くと、こちらに背を向けて座っていた護が振り返り目を見開いた。
私はあえて護とは目を合わせず、奥田さんが逃げ出さないように腕をつかむ。
「遅くなってごめんね。今日はうちの部署の若い子連れてきたよ」
「お疲れさん、待ってたでー!」
「あっ、久しぶりだね、橋口くん」
久しぶりに会った後輩に挨拶するような口調で声を掛けると、護は目を泳がせて「はい」と答えた。
かなり動揺しているらしい。
三島課長との会話を思い出して適当に答えると、奥田さんはまた大きなため息をついた。
きっと護と私が結婚の話をしているのだと思って落ち込んでいるんだろう。
私が結婚を考えている相手が、護とは別の人だとアピールするにはどうすればいいだろう?
「彼氏さんは佐野主任の作ったごはん、喜んで食べてくれるんですよね?」
確かに護は私が作った料理を喜んで食べていたけど、三島課長は食べるだけじゃない。
「うん、まぁ……。私の作った味噌汁が好きだから、毎日飲みたいって。でも彼も料理は得意だから、美味しいもの作って食べさせてくれたりもするよ。ピーマンの肉詰めとかレバニラ炒めはお互いに好きだから、一緒に作ったりもするかな」
やや脚色も加えてみたけれど、護は味噌汁より肉料理が好きだし、ピーマンとレバーは大嫌いで、まったく料理はできないから、これで少しは伝わっただろうか。
「あれ……?彼氏さん、ピーマンの肉詰めとレバニラ炒め……ホントに好きなんですか?」
「うん、ホントだけど……なんで?」
「私が作ったらピーマンとレバーは大嫌いだって言って、一口も食べてくれませんでしたよ?」
「そうなの?それは残念だったね。でも好き嫌いは人それぞれだからね、私の彼氏は両方好きだよ」
私がそう言うと、奥田さんは野菜炒めの人参を箸でつまんだままポカンとしてしまった。
また嘘をついてしまったけれど、これで護が自分のところに来ないのは、私と会っているからではないとわかったはずだ。
「つかぬことをお聞きしますけど……佐野主任の彼氏さんって、歳下ですよね?」
「えっ?違うよ、私より3つ上。だから年齢的にもそろそろ結婚したいって言ってる」
できるだけそれらしく答えると、奥田さんは人参を口に入れて首をかしげた。
「歳上……?じゃあ私の勘違い……?」
奥田さんはおにぎりをかじってまた首をかしげながらぶつぶつと呟く。
どうやら私の彼氏が護ではないということに気付き、私が捏造した話を信じたようだ。
「早く食べないとお昼休み終わっちゃうね。少し急ごうか」
「あっ、はい」
急いでお弁当を食べ終わった後、奥田さんはお弁当箱を片付けながら、何度も首をかしげた。
「さっきからどうしたの?今はもう時間ないけど……仕事の後で良ければ、話を聞くくらいはできるよ?そうだ、金曜日だし飲みに行こうか」
お酒の勢いを借りて護の裏の顔を奥田さんにも教えてやろうと、初めて自分から奥田さんを飲みに誘った。
もしかしたら断られるかなと思ったけれど、奥田さんは至って素直にうなずいた。
「それじゃあお言葉に甘えて……話を聞いてもらってもいいですか?」
「いいよ、今日はとことん飲もう。そうだ、せっかくだから私の友達も呼んでいい?何かいいアドバイスしてくれるかも!思いきり飲んでパーッと騒いで、イヤなこと全部忘れちゃおう!」
「それもいいですね」
なんとかうまく奥田さんを誘うことに成功した私は、スマホを持ってトイレに走り、個室の中で急いでメッセージを入力した。
【奥田さんを連れて行くから、今夜一緒に飲みに行こう。瀧内くんと伊藤くんと護を誘ってくれる?】
葉月に送信すると瞬く間に返信が届く。
【わかった!なんやようわからんけど誘っとく!】
おかしな日本語ではあるけれど、私がことを起こそうとしていると察してくれたのだということだけはわかった。
【詳しくはまた後で】
手短にメッセージのやり取りを終えてオフィスに戻り、午後の仕事の準備に取りかかる。
先輩に誘われたら、よほどのことがなければ断りきれないはずだから、何も知らない護はのこのこやって来るだろう。
あとはみんなの前で護を切り捨てるだけだ。
定時を30分ほど過ぎた頃になんとか仕事を終えて片付けを済ませ、休憩中に葉月と決めた待ち合わせの店に奥田さんと一緒に向かった。
葉月たちは先に到着して飲み始めているらしい。
なんとか護を確保することにも成功したようだ。
葉月には事前に、私の婚約者は三島課長ということにして、名前は出さないでと頼んでおいた。
伊藤くんと瀧内くんも話を合わせてくれる手はずになっている。
葉月には昼間の奥田さんとのやり取りを簡単に説明してあるけれど、果たしてうまくいくだろうか。
案内された個室の座敷の前に立つと、葉月たちの笑い声が聞こえてきた。
お酒が入ってそれなりに会話も弾んでいるようだ。
少し緊張しながら個室の障子を開くと、こちらに背を向けて座っていた護が振り返り目を見開いた。
私はあえて護とは目を合わせず、奥田さんが逃げ出さないように腕をつかむ。
「遅くなってごめんね。今日はうちの部署の若い子連れてきたよ」
「お疲れさん、待ってたでー!」
「あっ、久しぶりだね、橋口くん」
久しぶりに会った後輩に挨拶するような口調で声を掛けると、護は目を泳がせて「はい」と答えた。
かなり動揺しているらしい。
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