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覚悟を決めろ!
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それから瀧内くんは私と三島課長に作戦の詳細を簡単に説明して、「潤さんの気分がもう少し良くなるまでそばについていてあげてください」と言い残し、ひと足先に店内に戻った。
三島課長は少し気まずそうに水を飲んでいる。
「なんか……また巻き込んでごめんな……」
三島課長が申し訳なさそうにポツリと呟いた。
「大丈夫ですよ、気にしないでください」
私がそう答えると、三島課長は小さくため息をついて、頭を私の肩に乗せる。
思いがけず三島課長に甘えられて、私の鼓動は急激に速くなった。
「少しだけこうさせてもらっていいか?」
「……はい」
三島課長はそのまま静かに語り始めた。
「前も話したと思うけど……芽衣子……下坂課長補佐は、俺が昔付き合ってた人で……俺を捨てて歳上の上司と結婚した。それが家庭を顧みず恋に走って俺と父親を捨てた母親の姿と重なってさ……それから俺は女性不信になって、異性を感じる女性に触られることも二人きりになるのもダメなんだ。胸が苦しくなって、息の仕方もわからなくなる」
「……でも私は平気ですよね?」
「うん……佐野は……志織は別だから」
また三島課長から『志織』と名前を呼ばれただけで、胸の奥がキュッとしめつけられる。
だけどそれは苦い痛みではなく、甘い疼きのように思えた。
しかし私だけが別というのはどういう意味だろう?
やっぱり女らしさとか可愛げのない私は、異性として見ていないと言うことだろうか?
そう思うと少し落ち込む。
「本当は彼女とは毎日顔を合わせるだけでも苦痛で、息が苦しくなってつらいんだ。仕事上の立場もあるから邪険にすることもできないし、なんとか気合いで乗りきって来たんだけど……気がつけばいつもすぐそばにいるし、やたら体に触られるし……俺、もう限界……」
三島課長が私にこんな弱音を吐くなんて、相当参っている証拠だ。
なんとかして助けなければ、三島課長は壊れてしまうかも知れない。
「大丈夫です、絶対私が助けますから」
「ありがとう……。情けないところばっかり見せてごめん」
男の人がこれほどまでに自分の弱さをさらけ出すことなんて、なかなかないと思う。
もしかしたらこれも私にだけ見せてくれるのかなと思うと、とても愛しく感じた。
私は無意識に、三島課長の頭をそっと撫でる。
「私の前では無理しなくていいんですよ?私、こう見えてけっこう強いんですから。肩くらいいくらでも貸します」
「うん……。頼もしいな、志織は……」
頼られるのは嫌いじゃない。
好きな人に頼られるならなおさらだ。
「俺、やっぱりもう一度頑張ってみようかな……」
三島課長は私の肩に体の重みを預けたまま呟く。
「頑張るって……何をです?」
「うん……。すぐそばにいるのに、嫌われたり避けられたりするのが怖くて、何も言えずに俺の方を見てくれるのを何年も待ってたけど……ずっと待ってるだけじゃ、全然気付いてもらえそうにないから。もし結果がダメだったとしても、自分の気持ちをちゃんと伝えないと、俺は一歩も先に進めないんだ、きっと」
三島課長がずっと前から好きな人に、勇気を出して告白しようとしているのだと思うと、胸がキシキシと軋んだ音をたてて痛んだ。
下坂課長補佐が恋人でなくたって、三島課長に好きな人がいることには変わりない。
だったら私も、玉砕覚悟で三島課長に気持ちを伝えてみようか。
もしかしたら三島課長は、私に気持ちをぶつけられると困った顔をするかも知れない。
だけどこのまま三島課長が他の誰かと幸せになるのを見ているだけでは、私も一歩も前に進めない気がする。
「だったら私も……玉砕確定でも一度くらい頑張ってみようかな……」
私がそう言うと、三島課長は急に身を起こして強ばった顔で私を見た。
「……相手は有田課長?」
噂が三島課長の耳にも入っていたことに驚き、慌てて首を横に振った。
他の人にどう思われても、三島課長にだけは誤解されたくない。
「違いますよ!有田課長は上司としては尊敬していますけど、恋愛感情とかまったくないですから!三島課長まで変な噂を信じないでください!」
全力で否定すると、三島課長の表情が少し和らいだ。
「そうか……。だったら……この間話したかったけど話せなかったこと、聞いてくれるか?二次会のあとでいいから」
「……わかりました」
この間と言うのは、おそらく私が偽婚約を解消したいと言った日のことだろう。
一体それがなんの話かはわからないけれど、やっぱり話したいと言うことは、きっと大事な話に違いない。
「その前に目の前の問題をなんとかしないとな……。志織、もう一度俺の婚約者になってくれる?」
「もちろんです」
私が素直にうなずくと、三島課長は少し笑って私の頭をポンポンと優しく叩いた。
久しぶりに見た三島課長の笑顔と、私に触れる優しい手の感触にホッとする。
さっきより顔色もずいぶん良くなったようだ。
「それじゃあ……店の中に戻ろうか」
「はい」
三島課長は少し気まずそうに水を飲んでいる。
「なんか……また巻き込んでごめんな……」
三島課長が申し訳なさそうにポツリと呟いた。
「大丈夫ですよ、気にしないでください」
私がそう答えると、三島課長は小さくため息をついて、頭を私の肩に乗せる。
思いがけず三島課長に甘えられて、私の鼓動は急激に速くなった。
「少しだけこうさせてもらっていいか?」
「……はい」
三島課長はそのまま静かに語り始めた。
「前も話したと思うけど……芽衣子……下坂課長補佐は、俺が昔付き合ってた人で……俺を捨てて歳上の上司と結婚した。それが家庭を顧みず恋に走って俺と父親を捨てた母親の姿と重なってさ……それから俺は女性不信になって、異性を感じる女性に触られることも二人きりになるのもダメなんだ。胸が苦しくなって、息の仕方もわからなくなる」
「……でも私は平気ですよね?」
「うん……佐野は……志織は別だから」
また三島課長から『志織』と名前を呼ばれただけで、胸の奥がキュッとしめつけられる。
だけどそれは苦い痛みではなく、甘い疼きのように思えた。
しかし私だけが別というのはどういう意味だろう?
やっぱり女らしさとか可愛げのない私は、異性として見ていないと言うことだろうか?
そう思うと少し落ち込む。
「本当は彼女とは毎日顔を合わせるだけでも苦痛で、息が苦しくなってつらいんだ。仕事上の立場もあるから邪険にすることもできないし、なんとか気合いで乗りきって来たんだけど……気がつけばいつもすぐそばにいるし、やたら体に触られるし……俺、もう限界……」
三島課長が私にこんな弱音を吐くなんて、相当参っている証拠だ。
なんとかして助けなければ、三島課長は壊れてしまうかも知れない。
「大丈夫です、絶対私が助けますから」
「ありがとう……。情けないところばっかり見せてごめん」
男の人がこれほどまでに自分の弱さをさらけ出すことなんて、なかなかないと思う。
もしかしたらこれも私にだけ見せてくれるのかなと思うと、とても愛しく感じた。
私は無意識に、三島課長の頭をそっと撫でる。
「私の前では無理しなくていいんですよ?私、こう見えてけっこう強いんですから。肩くらいいくらでも貸します」
「うん……。頼もしいな、志織は……」
頼られるのは嫌いじゃない。
好きな人に頼られるならなおさらだ。
「俺、やっぱりもう一度頑張ってみようかな……」
三島課長は私の肩に体の重みを預けたまま呟く。
「頑張るって……何をです?」
「うん……。すぐそばにいるのに、嫌われたり避けられたりするのが怖くて、何も言えずに俺の方を見てくれるのを何年も待ってたけど……ずっと待ってるだけじゃ、全然気付いてもらえそうにないから。もし結果がダメだったとしても、自分の気持ちをちゃんと伝えないと、俺は一歩も先に進めないんだ、きっと」
三島課長がずっと前から好きな人に、勇気を出して告白しようとしているのだと思うと、胸がキシキシと軋んだ音をたてて痛んだ。
下坂課長補佐が恋人でなくたって、三島課長に好きな人がいることには変わりない。
だったら私も、玉砕覚悟で三島課長に気持ちを伝えてみようか。
もしかしたら三島課長は、私に気持ちをぶつけられると困った顔をするかも知れない。
だけどこのまま三島課長が他の誰かと幸せになるのを見ているだけでは、私も一歩も前に進めない気がする。
「だったら私も……玉砕確定でも一度くらい頑張ってみようかな……」
私がそう言うと、三島課長は急に身を起こして強ばった顔で私を見た。
「……相手は有田課長?」
噂が三島課長の耳にも入っていたことに驚き、慌てて首を横に振った。
他の人にどう思われても、三島課長にだけは誤解されたくない。
「違いますよ!有田課長は上司としては尊敬していますけど、恋愛感情とかまったくないですから!三島課長まで変な噂を信じないでください!」
全力で否定すると、三島課長の表情が少し和らいだ。
「そうか……。だったら……この間話したかったけど話せなかったこと、聞いてくれるか?二次会のあとでいいから」
「……わかりました」
この間と言うのは、おそらく私が偽婚約を解消したいと言った日のことだろう。
一体それがなんの話かはわからないけれど、やっぱり話したいと言うことは、きっと大事な話に違いない。
「その前に目の前の問題をなんとかしないとな……。志織、もう一度俺の婚約者になってくれる?」
「もちろんです」
私が素直にうなずくと、三島課長は少し笑って私の頭をポンポンと優しく叩いた。
久しぶりに見た三島課長の笑顔と、私に触れる優しい手の感触にホッとする。
さっきより顔色もずいぶん良くなったようだ。
「それじゃあ……店の中に戻ろうか」
「はい」
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