228 / 268
縁は異なもの味なもの
1
しおりを挟む
お好み焼きのあとは焼きそば、そして最後のシメのそばめしまできれいに平らげ、パーティーはお開きとなった。
潤さんと伊藤くんと瀧内くんは1階の部屋で、私と葉月は2階の部屋で布団を並べて床に就いた。
「あー、よう食べたなぁ……。お腹いっぱいや……」
「うん、すごく美味しかったよ」
「そら良かった」
葉月は嬉しそうに笑いながらお腹をさする。
「それにしても良かったなぁ……」
「何が?お好み焼き?」
「ちゃうやん、志織と三島課長やんか。事故のこともあったし、一時はどうなることかて心配しとったけど、うまいこと落ち着いてくれてホンマに良かった」
私と潤さんはみんなにかなり心配をかけていたようだ。
お互いに相手を想って自分の気持ちに蓋をしてしまおうとしていた私たちのじれったさに、きっとみんなイライラしていたことだろう。
それでも見放したりせずに、ときに背中を押しながら、ずっと見守ってくれていたみんなには本当に感謝している。
「ごめんね、いろいろ心配かけて……」
「ええねん、そんなんこれから二人で幸せになってくれたら全部チャラや。それに私も志岐のことでは迷惑かけたしな」
「二人で幸せになってくれたらええんやで」
葉月の関西弁を真似してそう言うと、葉月は声をあげておかしそうに笑った。
「志織の関西弁はまだまだやなぁ……」
「そう?けっこううまくなったと思うんだけど」
「そんくらい一緒におるんやな、私ら」
「そうだね」
これから先もきっと私は、関西弁がもっと上手になるだろう。
何年か先にはお互いに子どもを連れて一緒に食事なんかしていたりして。
子ども同士も仲良くなってくれたらいいな。
まだ少し先の未来を思い描くと、ほんの少しくすぐったい気持ちになった。
「いつか子どもができたら、子どもたちも仲良くしてくれるといいね」
私がそう言うと、葉月は少し眠そうに目をこすりながらこちらを見た。
「子どもかぁ……。そうか、『はとこ』っちゅうやつになるんやな」
「ああ、親がいとこ同士だもんね」
「人の縁って不思議なもんやなぁ……」
そう呟きながら、葉月はゆっくりまぶたを閉じた。
準備はみんなで少し手伝ったとは言え、料理のほとんどを取り仕切っていたのだから、相当疲れていたのだろう。
「お疲れ様、葉月。ありがとう」
私が小さく声をかけると、葉月は微かに笑みを浮かべて寝息をたて始めた。
葉月の布団を胸の辺りまでなんとか右手だけで引っ張り上げ、私もゆっくりと横になってまぶたを閉じると、あっと言う間に眠りに就いた。
翌朝は8時頃に目覚めた。
隣を見ると、葉月はまだ気持ち良さそうに寝息をたてている。
部屋のドアを開けてみても、階下から話し声は聞こえてこない。
今日は土曜日で仕事が休みだし、ゆうべお酒を飲みながら夜更かししたこともあって、みんなまだぐっすり眠っているようだ。
喉も渇いていることだし着替えて下りようと、バッグから洋服を引っ張り出す。
平日の朝はいつも出勤前で時間がないので葉月に手伝ってもらうけれど、今日は少し時間はかかったものの、なんとか一人で着替えを済ませることができた。
骨折して2週間も経つとギプス生活にも少し慣れてきたみたいだ。
葉月を起こさないようにそっと部屋を出てリビングに行くと、潤さんがソファーに座って新聞を読んでいた。
「おはよう、潤さん。もう起きてたの?」
「おはよう。入院中は6時に起床だったからな。今朝も同じ時間に目が覚めた。一緒にコーヒー飲もうか」
「うん、ありがとう」
潤さんは松葉杖をついてキッチンに行き、コーヒーメーカーをセットする。
コーヒーが出来上がるのを待つ間、二人でソファーに座っていると、潤さんは私を抱き寄せて髪を撫で、頬や唇に何度もキスをした。
退院して自宅に戻って来られたものの、昨日はみんなが一緒で二人きりにはなれなかったから、今のうちにイチャイチャしとこうと思っているのかも知れない。
昨日の分までと言わんばかりに、潤さんが私に甘えてくるのがなんだか嬉しい。
「もしかして潤さん、ゆうべ部屋が別々で寂しかったの?」
私が尋ねると、潤さんは私をギューッと抱きしめた。
「そうだなぁ……。寂しいっていうか、志織と一緒がいいなぁと思いながら寝た。志織は?」
「疲れてたし、あっという言う間に寝たけど……寝る前に葉月と少しだけ話した」
「なんの話?」
「潤さんと私がうまく収まって良かったって言ってた。お互いに子どもができたら、その子たちははとこ同士になるんだねって」
私がそう言うと、潤さんは斜め上を見ながら何か考えたあと、楽しそうに笑みを浮かべた。
「子どもかぁ……。3人くらいは欲しいな」
「うちも3人兄妹」
潤さんと伊藤くんと瀧内くんは1階の部屋で、私と葉月は2階の部屋で布団を並べて床に就いた。
「あー、よう食べたなぁ……。お腹いっぱいや……」
「うん、すごく美味しかったよ」
「そら良かった」
葉月は嬉しそうに笑いながらお腹をさする。
「それにしても良かったなぁ……」
「何が?お好み焼き?」
「ちゃうやん、志織と三島課長やんか。事故のこともあったし、一時はどうなることかて心配しとったけど、うまいこと落ち着いてくれてホンマに良かった」
私と潤さんはみんなにかなり心配をかけていたようだ。
お互いに相手を想って自分の気持ちに蓋をしてしまおうとしていた私たちのじれったさに、きっとみんなイライラしていたことだろう。
それでも見放したりせずに、ときに背中を押しながら、ずっと見守ってくれていたみんなには本当に感謝している。
「ごめんね、いろいろ心配かけて……」
「ええねん、そんなんこれから二人で幸せになってくれたら全部チャラや。それに私も志岐のことでは迷惑かけたしな」
「二人で幸せになってくれたらええんやで」
葉月の関西弁を真似してそう言うと、葉月は声をあげておかしそうに笑った。
「志織の関西弁はまだまだやなぁ……」
「そう?けっこううまくなったと思うんだけど」
「そんくらい一緒におるんやな、私ら」
「そうだね」
これから先もきっと私は、関西弁がもっと上手になるだろう。
何年か先にはお互いに子どもを連れて一緒に食事なんかしていたりして。
子ども同士も仲良くなってくれたらいいな。
まだ少し先の未来を思い描くと、ほんの少しくすぐったい気持ちになった。
「いつか子どもができたら、子どもたちも仲良くしてくれるといいね」
私がそう言うと、葉月は少し眠そうに目をこすりながらこちらを見た。
「子どもかぁ……。そうか、『はとこ』っちゅうやつになるんやな」
「ああ、親がいとこ同士だもんね」
「人の縁って不思議なもんやなぁ……」
そう呟きながら、葉月はゆっくりまぶたを閉じた。
準備はみんなで少し手伝ったとは言え、料理のほとんどを取り仕切っていたのだから、相当疲れていたのだろう。
「お疲れ様、葉月。ありがとう」
私が小さく声をかけると、葉月は微かに笑みを浮かべて寝息をたて始めた。
葉月の布団を胸の辺りまでなんとか右手だけで引っ張り上げ、私もゆっくりと横になってまぶたを閉じると、あっと言う間に眠りに就いた。
翌朝は8時頃に目覚めた。
隣を見ると、葉月はまだ気持ち良さそうに寝息をたてている。
部屋のドアを開けてみても、階下から話し声は聞こえてこない。
今日は土曜日で仕事が休みだし、ゆうべお酒を飲みながら夜更かししたこともあって、みんなまだぐっすり眠っているようだ。
喉も渇いていることだし着替えて下りようと、バッグから洋服を引っ張り出す。
平日の朝はいつも出勤前で時間がないので葉月に手伝ってもらうけれど、今日は少し時間はかかったものの、なんとか一人で着替えを済ませることができた。
骨折して2週間も経つとギプス生活にも少し慣れてきたみたいだ。
葉月を起こさないようにそっと部屋を出てリビングに行くと、潤さんがソファーに座って新聞を読んでいた。
「おはよう、潤さん。もう起きてたの?」
「おはよう。入院中は6時に起床だったからな。今朝も同じ時間に目が覚めた。一緒にコーヒー飲もうか」
「うん、ありがとう」
潤さんは松葉杖をついてキッチンに行き、コーヒーメーカーをセットする。
コーヒーが出来上がるのを待つ間、二人でソファーに座っていると、潤さんは私を抱き寄せて髪を撫で、頬や唇に何度もキスをした。
退院して自宅に戻って来られたものの、昨日はみんなが一緒で二人きりにはなれなかったから、今のうちにイチャイチャしとこうと思っているのかも知れない。
昨日の分までと言わんばかりに、潤さんが私に甘えてくるのがなんだか嬉しい。
「もしかして潤さん、ゆうべ部屋が別々で寂しかったの?」
私が尋ねると、潤さんは私をギューッと抱きしめた。
「そうだなぁ……。寂しいっていうか、志織と一緒がいいなぁと思いながら寝た。志織は?」
「疲れてたし、あっという言う間に寝たけど……寝る前に葉月と少しだけ話した」
「なんの話?」
「潤さんと私がうまく収まって良かったって言ってた。お互いに子どもができたら、その子たちははとこ同士になるんだねって」
私がそう言うと、潤さんは斜め上を見ながら何か考えたあと、楽しそうに笑みを浮かべた。
「子どもかぁ……。3人くらいは欲しいな」
「うちも3人兄妹」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
424
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる