甘くてほろ苦い、恋は蜜やかに。

米粉あげぱん

文字の大きさ
35 / 64
ep.5

5-2


 ≪こちらこそお疲れ様。最後まで居られなくてごめんね。ぜひコーヒーも連れてって≫

 三神峯から返信が来たのは午前5時半を回った頃で、ちょうどいつもの癖で早くに目が覚めた御堂が日課であるジョギングに行こうとしていたタイミングだった。

 ≪おはよう。早いね。俺はこれからジョギングに行くよ≫

 三神峯も同じように早くに目が覚めたのだろう、朝からメッセージのやりとりができることに心が浮足立つ。するとスマートフォンが突然震えだした。メッセージの通知ではなく、三神峯からの電話だった。はやる気持ちを抑えて、通話ボタンをタップする。

「おはよう、景。どうしたの?」

『あ……。おはよう。ごめんね、朝早くに』

 浮かれた気持ちはすぐに冷静になった。電話越しの三神峯の声は、心なしか疲れているような声色だったからだ。

「いや、俺は起きてたからいいんだけど……。……景、眠れなかった? それとも、何かあった?」

 そう問えば、三神峯は何かをためらうかのように息をこぼした。電話の向こうからは車が通る音と、ガラガラとスーツケースのようなものを引きずるような音がする。早朝でもスーツケースを引いている人はいるが、通行人が引いている音ではない。てっきり家にいて起きたばかりなのだと思っていたが、彼は家の中にいるのではないのだろうか。

 嫌な予感が、御堂の中に走った。

「景、今どこに」

『……違うんだ。声、聞きたかっただけ。ちょっと嫌な夢見ちゃって。ごめん、こんなしょうもないことで電話しちゃって』

「今どこにいる? 外だよな?」

 夢を見た、なんて嘘だ。御堂はそう確信した。強がる三神峯を諭すように、少しだけ口調を強める。

「景、俺は迷惑なんかじゃないよ。むしろ今電話してきてくれてることも嬉しい。それだけお前は、俺を頼ってくれてるんだろ」

『……っ』

「ね、大丈夫。だから教えて。今どこにいる?」

 今度は優しく、宥めるように三神峯に問いかけた。御堂のその言葉に三神峯は言葉を詰まらせ、ガラガラと転がしていたスーツケースであろうの音が止まった。何度もためらったあと、三神峯は小さく呟く。
感想 1

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

君に二度、恋をした。

春夜夢
BL
十年前、初恋の幼なじみ・堂本遥は、何も告げずに春翔の前から突然姿を消した。 あれ以来、恋をすることもなく、淡々と生きてきた春翔。 ――もう二度と会うこともないと思っていたのに。 大手広告代理店で働く春翔の前に、遥は今度は“役員”として現れる。 変わらぬ笑顔。けれど、彼の瞳は、かつてよりずっと強く、熱を帯びていた。 「逃がさないよ、春翔。今度こそ、お前の全部を手に入れるまで」 初恋、すれ違い、再会、そして執着。 “好き”だけでは乗り越えられなかった過去を乗り越えて、ふたりは本当の恋に辿り着けるのか―― すれ違い×再会×俺様攻め 十年越しに交錯する、切なくも甘い溺愛ラブストーリー、開幕。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

【完結】それより俺は、もっとあなたとキスがしたい

佑々木(うさぎ)
BL
一ノ瀬(27)は、ビール会社である「YAMAGAMI」に勤めていた。 同僚との飲み会に出かけた夜、帰り道にバス停のベンチで寝ている美浜部長(32)を見つけてしまう。 いつも厳しく、高慢で鼻持ちならない美浜と距離を取っているため、一度は見捨てて帰ろうとしたのだが。さすがに寒空の下、見なかったことにして立ち去ることはできなかった。美浜を起こし、コーヒーでも飲ませて終わりにしようとした一ノ瀬に、美浜は思いも寄らないことを言い出して──。 サラリーマン同士のラブコメディです。 ◎BLの性的描写がありますので、苦手な方はご注意ください *   性的描写 *** 性行為の描写 大人だからこその焦れったい恋愛模様、是非ご覧ください。 年下敬語攻め、一人称「私」受けが好きな方にも、楽しんでいただけると幸いです。 表紙素材は abdulgalaxia様 よりお借りしています。

年上の恋人は優しい上司

木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。 仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。 基本は受け視点(一人称)です。 一日一花BL企画 参加作品も含まれています。 表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!! 完結済みにいたしました。 6月13日、同人誌を発売しました。

2人でいつまでも その2

むちむちボディ
BL
前作「2人でいつまでも」からの続きです。