甘くてほろ苦い、恋は蜜やかに。

米粉あげぱん

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ep.5

5-6


「これ、どうした? 展示会のときはこんな傷なかっただろ」

「あ、えっと……昨日、割れた試験管を片付けようとしてたらバランス崩しちゃって、うっかり手をついたら……」

「うわ……」

 それは痛い。想像しただけで何ともない左手が痛む気がするほどだ。無理に触ってごめんね、ともう一度謝れば、三神峯は首を傾げて和樹が謝ることじゃないよ、と言った。なんとなくその様子に違和感を覚えたが、それ以上詮索はしなかった。

 それから少し歩いたところのマンションの前で、三神峯は足を止めた。

「ここだよ。送ってくれてありがとう」

「……本当に大丈夫?」

 このまま三神峯を一人にしていいものなのだろうか、御堂は自分に問いかける。まだ不安定な気もするが、疲れている三神峯をこれ以上どこかに連れ出すことはできないし、家に上がり込むなどという厚かましいこともできない。三神峯にはゆっくり休んでほしい。

「大丈夫。色々ごめんね、ありがとう」

 三神峯は名残惜しそうにスーツケースを持つ御堂の手に重ねて言葉を続ける。

「こういうことは慣れてる、はずだったんだけど。一昨日和樹に色々話を聞いてもらってからどうしても、和樹の声が聞きたくて……。たぶん、和樹に大丈夫、って言ってほしかったんだと……、――あれ……」

 涙が、三神峯の頬を伝った。

 無意識のようで、三神峯自身も驚いている。

「……景」

「ごめん、そんなつもりじゃ……」

「もういいよ。強がらなくていい。たった数日前に会ったばかりの俺だけど、景が一生懸命仕事をしているのは十分にわかったよ。だから――、……景?」

「ちが、う……」

「景、どうした?」

 涙を拭っていた三神峯の動きがゆっくりと止まり、御堂の呼びかけにも答えずに膝から崩れ落ちた。

「景!!」

 慌てて抱えた三神峯の顔は真っ青というよりも血の気がなく、すでに彼に意識はなかった。
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