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ep.6
6-1
「――……」
(あったかい……)
目が覚めると、見慣れない天井が目に入った。視線を巡らせて部屋を見渡せば自分の部屋でも病院でもない、誰かの部屋だ。部屋はほとんど無臭だが、どこか嗅いだことのある心地の良い香りがする。この香りは香水なのか、柔軟剤なのか。
(たしか、和樹が来てくれて一緒に帰って……)
職場を出る頃、どうしようもなく御堂の声が聞きたくなってメッセージの返信が来たと同時に電話をかけてしまった。何かを察した彼はすぐに向かうと言ってわざわざ駆けつけてくれた。御堂の顔を見た瞬間、これまで我慢していた気持ちが堰を切ったように溢れてしまいそうになったのを覚えている。
(今考えるとすごく恥ずかしいことをしたんじゃ)
徐々に鮮明になってくる記憶に、今さらになって羞恥が湧いてしまう。恥ずかしさを隠すように毛布を引き上げようとすれば、お世辞にも綺麗とは言えないが左手が包帯で丁寧に巻かれていることに気づいた。
――たしか、左手には絆創膏を貼っていただけのはずだ。よく見るとベッドのそばには薬局の名前が入ったビニール袋と、手当てに使ったであろう包帯やガーゼの残りが置いてある。
(これ、誰が手当てしてくれたんだろう……)
「……あ、起きてた?」
「かず、き?」
ふと小さな音を立てて引き戸が開いて、御堂が顔を出した。三神峯が起きていることに気づいた御堂はベッドのそ
ばに膝をつくと、端麗な顔を歪めて三神峯の頭をそっと撫でる。撫でられた感触と一緒に、ひやりとした冷たいものが頭の側頭部に当てられた。手を伸ばせば、それは今しがた御堂が持ってきたであろうタオルに包まれた保冷剤だった。
(そういえば、主任に殴られたとき……)
そういえば水道に頭を打ったかもしれない。徐々に鮮明になる記憶よりも、三神峯は御堂がこの場にいることに理解が追い付かなかった。
そんな三神峯に、御堂は優しい手つきで撫でながら問いかける。
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