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ep.6
6-4
しおりを挟む「景……?」
「あ、和樹……」
目を覚ました和樹が瞬きを数回した後、心配そうな表情を浮かべると三神峯の頬に触れた。
「どした? どこか痛い?」
親指で目元を拭われて初めて、また涙がこぼれていることに気づく。きっとこの涙は、御堂が心配するようなものではない。三神峯は御堂の手を取って頬に寄せた。
「……違う、違うよ、和樹。和樹がいることに安心しちゃったんだ。……ありがとう」
「――……景」
御堂は噛みしめるように名前を呼んで、何か言いたげな三神峯の言葉を待った。
今伝えなければ、いつ伝えるんだ。意を決して、三神峯は言葉を続ける。
「ずっと言えなくてごめんね、……和樹のこと、大好きだよ」
御堂はきゅう、と愛おしさに胸が締め付けられた。思わず彼の右手を両手で包み込むように握る。言葉の続きを、祈るように。
三神峯は声を震わせて言葉を続けた。
「だから、俺と、付き合ってください」
「っ、景……!」
思わず三神峯を抱き寄せて首筋に顔を埋め、三神峯の存在を確かめるかのように強く抱きしめる。三神峯は慌てたように御堂を押し返そうとした。
「か、和樹、俺、さっき会社出る前に歯は磨いたけど昨日シャワーしてないから汚いよ……」
「汚くないよ」
まだ腕の中で三神峯は戸惑いを隠せていない様子だったが、そんなこと微塵も気にならなかった。御堂は三神峯を解放し、そのままベッドに乗り上げる。ギシ、と鳴ったスプリングの音がやけに部屋に響いた気がした。
「……俺、今人生で一番幸せだと思う」
「…………」
「ねえ、キスしていい?」
まだ色が戻らない唇を指でなぞりながら御堂は尋ねた。頬を染めて見つめてくる三神峯が堪らなく愛しい。小さく頷いたと同時に、髪、額、目元、頬、鼻と何度も触れるだけのキスを落とした。
「ん、和樹、くすぐったい……」
「ん……」
「っ……」
唇にキスを落とすと、ぴくり、と肩を跳ねさせた。反応するたびに固く結んでしまう唇がまた可愛い。角度を変えて何度もキスをするうちに、御堂の唇に吸いついてくるようになってくる。御堂はキスを止め、耳元で低く囁いた。
「景、口開けて」
「ふっ……」
「そう、上手」
「ん、ふ……あ」
舌を絡めて歯列をなぞる。飲み込めなかった唾液が三神峯の小さな口の端からこぼれて、彼の顔を汚したのがひどく扇情的だった。
「あ、ん……っ、かずき」
「ん、もう少し」
御堂の首に手を回した三神峯が限界だと訴えてきたが、まだこの甘美な口内を堪能したかった。
「あう、和樹……」
最後に唇を食んで解放すれば、三神峯は肩で呼吸をくり返しながら御堂を見つめてくる。その瞳は、まるで――。
「……もっとしたい?」
「……うん」
「いい子だね、景……」
御堂はもう一度、三神峯の唇に噛みついた。
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