甘くてほろ苦い、恋は蜜やかに。

米粉あげぱん

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ep6.5

6.5-3

「……心配してくれてありがと。気を付けて掃除するから大丈夫だよ。それより驚かせてごめんね。ベッドに戻ってもいいけど、ソファーで待ってる?」

「……そ、そう……? じゃあ、ソファーにいるね」

「テレビ見てていいよ」

 まだ顔を青ざめさせている三神峯を宥め、ソファーで待っているように促せば彼はぺたぺたとスリッパを引きずってソファーに座った。マグカップはもらいものの安物だったせいかあまり細かくは割れなかったようだ。割れた大きな破片を集めて新聞紙に包み、細かい破片は掃除機で片づけた。
 朝から余計な作業が増えてしまったことはたしかだが、震えて怯えるようなほどのものではない。三神峯の様子をちらりと窺うと、彼はテレビをつけることはなくただただ膝を抱えて座っているようだった。

(あの怯え方、自分の不注意で怪我をしたから、とは思えないけど)

 先ほどの三神峯の様子を思い出しながら掃除機を片付けてリビングに戻れば、三神峯がおずおずとソファーから顔を出して尋ねてくる。

「大丈夫……?」

「うん、もう大丈夫だよ。ごめんね、せっかく寝てたのにすっかり起こしちゃったね。先に顔洗ってくる?」

 こくりと頷いた三神峯は、左手の包帯と顔の湿布を剥がした。露わになった痛々しい痣と傷につい目をそらしそうになったが、包帯と湿布を受け取りながら新しいタオルを渡す。

「顔洗ってきたら消毒して新しい湿布貼ろうか」

「消毒、まだみるよね……」

 青ざめた顔色を隠すように弱々しく笑った三神峯を洗面所へ向かわせて、御堂は寝室から湿布や包帯が入った救急箱を持ち出した。気分が晴れるようにとつけたテレビからはがんに効果的な新しい飲み薬の承認が下りた、というニュースが流れてきた。耳にしたことがある薬剤の名前に目を向ければ、それは御堂が所属する会社で発表した薬剤の話だった。

(うちの製品じゃん、これ。プレスリリースしたばかりだけど、結構でかい病院で使いたがってるんだよな)

 健康的な細胞までも攻撃してしまう従来の抗がん剤とまた違い、がん細胞のみを攻撃できる薬だ。この形の薬剤で特許を得たのは国内初で、これまでの課題であった強い副作用も軽減されることから現代医療への期待が大きくなる、という特集だ。

 たしか事前の研修会では保険が適用されて患者負担はかなり軽減されるから会社としても売上の期待度が高いと言っていたはずだ。解説をしていた専門家が話し終えたあと、これで日本の寿命はまた延びますね、でも少子高齢化という観点から見るとどうなんでしょう、とコメンテーターの薄っぺらいコメントに少しだけ苛立ちを覚えた。その裏でどれだけの人がどれだけの時間と苦労をかけて飲み薬の形にまで開発しているのだ、と思うようになったのは、きっと三神峯と直接関わったからだろう。
 呆れた御堂がチャンネルを変えようとしたところで三神峯がリビングのドアを開けた。
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