私の主人が自分を悪役令息だというのですがそれは大きな問題ではございません

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私の主人、仮面をえり好みされる

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煌びやかなとした電飾が輝く部屋の中でクルーピエの鳴らすベルの音が響きました。
「ルージュの16で」
シニフェ様は迷う事なくそう告げ、他のプレイヤーもめいめい数字を口にしていきます。全員が掛け終わるのを確認するとクルーピエはホイールを回して回転とは逆方向へボールを投げ込みました。
カラカラと軽快にボールが回っている間、追加の確認が来ます。
すかさずシニフェ様は先ほどと同じ番号を口にしました。
「ルージュの16に追加」

すると、隣に座った初老の男が声をかけてきました。
「ずいぶん確信しているんだな」
「ええ」
「未来でも見えているのかな」
「かもしれませんね」
そんな風に会話しながら結果を見れば、ボールはしっかりとルージュの16に入っていました。
クルーピエが高らかにルージュ16を告げて掛け金を渡す中、シニフェ様は後ろを振り返り、私と目を合わせました。
ハーフマスクをつけているので表情は分かり辛いですが、ご機嫌そうに口を綻ばせていると思うと、声には出さずに口だけを動かし始めました。
『どーだ』
そんな風な仕草をされるのは、ここに来るまでの経緯が関係しています。


カジノで賭けをする。
金策を考えることになって、まず思いついたことは魔法薬の生成でした。剣術大会やエルデールに来る時に父上からいただいた薬はとても珍しい物なのでまず売れるだろうと。
これであれば材料を探す手間はありますが、私が作業をすれば良いので一番楽とも思い家に着き次第早速取りかかろうと決めました。
しかし、その案を申し上げるとシニフェ様が苦いお顔をされました。
「俺の問題なのに全部エノームにやらせるのは良くないと思う」
はっきり申し上げて、是非何もやらないでいただきたいのですがそれをはっきり申し上げられないのも事実。心苦しくなりながら、必要な資金の一部を私が作った魔法薬をプラン経由で販売することで賄うということに落ち着きました。
では大部分についてはどうするのか?
シニフェ様にも動いていただきながら、という前提のもと、私は『ゲーム』という中でこれから起きることやどうやって勇者達が生計を立てていたのかをシニフェ様に伺いました。
「そうだなぁ、モンスターを倒したり、レアな物を売ったり…あとはカジノ!そうだカジノがあるんだよ!」

そう仰られて、しかも更にとんでもない事を仰るのです。
「このカジノは攻略方法があるから俺がやるよ」
と主張して譲られませんでした。
「いやいやいや、シニフェ様ぁ。さすがにカジノに行ったら侯爵様にバレた時にマズいんじゃありませんか~?」
賭博場に赴かれるという行動はさすがにプランも止めましたが、当のご本人は問題とすら思っていらっしゃいませんでした。なおかつ侯爵夫人に相談したところ『良い社会勉強じゃない!いってらっしゃい』と快諾されたとニコニコと報告されてしまいました。
これはもう引いていただけないことを察した私たちは、せめて身分が分からないようにして行くべきと顔を隠し普段は着ないような服装を用意する事に致しました。


役柄としてはシニフェ様は成金息子、私はその従者、プランは護衛です。
またカジノでは身分が分からないように仮面が必須という情報を手に入れたので、私はシニフェ様用に顔の全面が隠れる形の仮面、バウタをご用意しました。
しかし試しに装着されたシニフェ様はすぐさま不満を口にされました。

「これは暑いし邪魔だ。こんなんじゃ飲み物も飲めない」
「しかし仮面は必須ですので我慢して頂かないと」
「エノームのみたいに目元だけのにしてよ」
「これはザンニですので、召使い用ですし…」
「顔が半分隠れていれば問題ないだろ?プランのと同じので良いじゃないか。俺の髪の色は特に珍しくもないし目元が隠せれば誰かは判別つくもんか」
「まぁ大丈夫じゃない?バレても別に捕まるわけでもないし…」


◆◆◆◆◆◆


知り合いもいないですし部屋は薄暗いので誰かに素性がバレるとの心配は杞憂でした。しかし、成金にみせるように派手な格好にアイマスク型の仮面を付けていらっしゃることで、いつもよりも気安さがでてしまったのでしょうか。
先ほどの男性もそうでしたが、入室直後のドアマンに始まり、ここに来る間にすれ違う人や隣に座った男、ご夫人方がシニフェ様に物凄い勢いで声をかけられるのです。
今のところは遠くから見守る程度で済んでおりますが、害があるような人間が近寄って来た場合を考えますと気を抜けない状況です。

などと思っていると、今度は向かいに座っている若い男がじぃっとシニフェ様を見つめていました。
相手も仮面を付けているので雰囲気だけの印象になりますが、年齢層が高いこの中で、珍しく私たちと同世代くらいの男です。
ーーどこかで見た事があるような顔な気がします。
そう思っていると、ゲームの合間に男はシニフェ様のお隣に寄ってきました。そして、なんと無礼なことに顔を近づけてくるのです。何かあったら大変ですと、すかさず私とプランも近かづいて様子をうかがいました。

「ん、っふぅ…」
「なんでしょう?」
シニフェ様は明らかに怪しげな人間が寄って来ているにも拘らず、平然と声をかけられました。
何でしょうではありませんよ。距離をとってください!

「あ、失礼しました。あの、あなたから凄く良い香りがするので、すみません、我慢できず」
「そうですか?ふふっ、面白いですね。匂いですか?自分では分からないのですが…」
「声も、ああ、その声!間違える訳がないです」
私もあなたの声に聞き覚えがあります。
小さく身悶えしている若い男を引きはがそうと現場へ向かおうとすると、私よりも先にプランがシニフェ様の横につきました。

「こんな場所であなたにお会い出来るなんてっ!今日はついています!!」
「俺の知り合いなんでしょうか?すみませんが仮面でお顔が分からなく…」
「またそんな風に!ああ本当にあなたは僕をどうしたいのですか」
鼻息荒くそう言って、さらに続けました。
「グラっーーモガっ」
「はぁーい、ウチのご主人様にこれ以上近寄らないで下さいねぇ」
事もあろうに名前を言おうとしたところでプランが男の口を塞ぎました。
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