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私の主人、危ない人物の熱視線を受ける
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興奮した若い男はプランに口を押さえられてもなお話をし続けようとするので、モガモガとした音を聞き周囲の人が少々こちらを見ていました。
「失礼しましたぁ。突然うちのご主人様に近寄って来ましたので怪しい者と思ってしまいました~」
プランは周囲に説明をするようにそう言うと、男をシニフェ様から引き離します。
これ以上騒いで悪目立ちしてしまうのを避けるように、私たちは一度遊技場から出てサロンの方へ向かう事にしました。しかし、若い男も一緒にこちらに来るのです。
「ちょっとさぁ、いい加減につきまとうの止めてよ」
苛立ったプランがそう言うと、若い男は大げさに悲しげな仕草で答えました。
「いいじゃないですか。こんなところで知り合いに会えるとは思いませんでしたし、僕もあなた方の仲間に入れて下さいよ」
「冗談じゃないよ。君は君でやる事があってわざわざここへ来たんでしょ?自分のやりたいことをやりなよ。あ、もしこれを弱みにでもしたいのなら、ここにいるのはお互い様なんだから、これを学校に告げ口しようっていっても…」
「学校??プランこの人と知り合いなのか?」
珍しく剣呑な雰囲気のプランでしたが、そこにシニフェ様が割って入られます。
「そんなっ?!ご主人様、僕です!クーラッジュです!あなたのクーラッジュです」
「えっ?俺のクーラッジュ…???」
「ぐっ!!」
シニフェ様がクーラッジュの言葉の意味を解さずにそのまま鸚鵡返しをしてしまったが故の発言に、クーラッジュは心臓を押さえて壁にもたれました。
「シニフェ様あまり見てはいけませんよ」
「おっ、おう。なんか具合悪いのかな。酒でも飲んだのかな」
「そうなのかもしれませんねぇ~。酔っぱらいには関わらない方が良いですよぉ」
浅い呼吸を繰り返しながら血走った目でシニフェ様を見つめている視線が気持ちが悪いので、この隙に辻馬車まで走っていけませんかね。
非常に気分を害されましたし、出来るのであれば強制的な猥褻をされたとして起訴して差し上げたいですが、そんな罰則はないので今は諦めるしかないのが悔やまれます。
きっと同じように困っている方もいらっしゃるでしょう。新たに法律を作るべきと侯爵に具申いたしましょう。
「クーラッジュ、具合が悪いのなら誰か呼んで来ようか?」
私たちの心配をよそに、シニフェ様は壁に寄りかかるクーラッジュにそんなお優しい提案をされました。
「とっ、尊い。尊過ぎます。ありがとうございます、ありがとうございます。僕なら大丈夫です。あ、もし心配してくれるのなら、是非僕の手を、この手を握って下さい」
「手?手なんかで良いのか?それなら俺よりエノームの方が…」
「いいえ!!ご主人様の御手が、その白魚のようなお手手が良いのですっ!!」
厚顔無恥なクーラッジュのそんな申し出に理解が出来ないとのお顔をされつつも、お優しいシニフェ様は手を伸ばそうとされましたので慌ててその手をお止めしました。
「グロワ様、体調が芳しくないようでしたら是非こちらの魔法薬をお飲みください。さぁ、ぐいっと!ぐいっとどうぞ」
「クーラッジュついてるね~。これはねぇ、滅多に市場に出回らないやつなんだよぉ。ウチの商会でもお得意様の更に上得意様でも順番待ちしてるくらい。効果は保証するよ~」
「おお!それを持って来てたのか。お前達さすがだな!俺が手を握るくらいじゃ体調が悪いのは治らないが、この薬なら大丈夫だ。クーラッジュ良かったな!」
満面の笑みをクーラッジュに向けられると、それを直視したクーラッジュは穏やかな顔して床に仰向けで倒れ込みました。
その顔の満足そうなこと。
そんな風に倒れ込んだクーラッジュを見下ろして数秒の間を置いて、私たち3人はお互いに顔を見合わせました。
「さて、帰りましょうか~。もう辻馬車も待っているでしょうし、僕らに出来る事はこれ以上ありません。クーラッジュについては店の人に伝えておきましょ~」
プランは驚いているシニフェ様の背中を推してエントランスの方へ歩き出させました。
「失礼しましたぁ。突然うちのご主人様に近寄って来ましたので怪しい者と思ってしまいました~」
プランは周囲に説明をするようにそう言うと、男をシニフェ様から引き離します。
これ以上騒いで悪目立ちしてしまうのを避けるように、私たちは一度遊技場から出てサロンの方へ向かう事にしました。しかし、若い男も一緒にこちらに来るのです。
「ちょっとさぁ、いい加減につきまとうの止めてよ」
苛立ったプランがそう言うと、若い男は大げさに悲しげな仕草で答えました。
「いいじゃないですか。こんなところで知り合いに会えるとは思いませんでしたし、僕もあなた方の仲間に入れて下さいよ」
「冗談じゃないよ。君は君でやる事があってわざわざここへ来たんでしょ?自分のやりたいことをやりなよ。あ、もしこれを弱みにでもしたいのなら、ここにいるのはお互い様なんだから、これを学校に告げ口しようっていっても…」
「学校??プランこの人と知り合いなのか?」
珍しく剣呑な雰囲気のプランでしたが、そこにシニフェ様が割って入られます。
「そんなっ?!ご主人様、僕です!クーラッジュです!あなたのクーラッジュです」
「えっ?俺のクーラッジュ…???」
「ぐっ!!」
シニフェ様がクーラッジュの言葉の意味を解さずにそのまま鸚鵡返しをしてしまったが故の発言に、クーラッジュは心臓を押さえて壁にもたれました。
「シニフェ様あまり見てはいけませんよ」
「おっ、おう。なんか具合悪いのかな。酒でも飲んだのかな」
「そうなのかもしれませんねぇ~。酔っぱらいには関わらない方が良いですよぉ」
浅い呼吸を繰り返しながら血走った目でシニフェ様を見つめている視線が気持ちが悪いので、この隙に辻馬車まで走っていけませんかね。
非常に気分を害されましたし、出来るのであれば強制的な猥褻をされたとして起訴して差し上げたいですが、そんな罰則はないので今は諦めるしかないのが悔やまれます。
きっと同じように困っている方もいらっしゃるでしょう。新たに法律を作るべきと侯爵に具申いたしましょう。
「クーラッジュ、具合が悪いのなら誰か呼んで来ようか?」
私たちの心配をよそに、シニフェ様は壁に寄りかかるクーラッジュにそんなお優しい提案をされました。
「とっ、尊い。尊過ぎます。ありがとうございます、ありがとうございます。僕なら大丈夫です。あ、もし心配してくれるのなら、是非僕の手を、この手を握って下さい」
「手?手なんかで良いのか?それなら俺よりエノームの方が…」
「いいえ!!ご主人様の御手が、その白魚のようなお手手が良いのですっ!!」
厚顔無恥なクーラッジュのそんな申し出に理解が出来ないとのお顔をされつつも、お優しいシニフェ様は手を伸ばそうとされましたので慌ててその手をお止めしました。
「グロワ様、体調が芳しくないようでしたら是非こちらの魔法薬をお飲みください。さぁ、ぐいっと!ぐいっとどうぞ」
「クーラッジュついてるね~。これはねぇ、滅多に市場に出回らないやつなんだよぉ。ウチの商会でもお得意様の更に上得意様でも順番待ちしてるくらい。効果は保証するよ~」
「おお!それを持って来てたのか。お前達さすがだな!俺が手を握るくらいじゃ体調が悪いのは治らないが、この薬なら大丈夫だ。クーラッジュ良かったな!」
満面の笑みをクーラッジュに向けられると、それを直視したクーラッジュは穏やかな顔して床に仰向けで倒れ込みました。
その顔の満足そうなこと。
そんな風に倒れ込んだクーラッジュを見下ろして数秒の間を置いて、私たち3人はお互いに顔を見合わせました。
「さて、帰りましょうか~。もう辻馬車も待っているでしょうし、僕らに出来る事はこれ以上ありません。クーラッジュについては店の人に伝えておきましょ~」
プランは驚いているシニフェ様の背中を推してエントランスの方へ歩き出させました。
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