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リンドール家のハロウィン
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※第二部も読み始めた人向けです。
――――――――――――
「エリィ姉さん、フィル。ハロウィンしよ!」
「「はろうぃん?」」
私の妹、ユリィは、時々こうして変なことを言い出す。
決してふざけているわけではなく、むしろかなり真面目に話し始めるので、いったい何をするつもりなのかといつも思う。
「ハロウィンっていうのはね、仮装して、お菓子をもらうの!」
「仮装? なんの?」
「おばけにだよ! ミイラとか、吸血鬼とか!」
―――みいら? きゅーけつき??
ユリィの話す言葉は、初めて聞くものも多い。
それが何を指す言葉なのか、見当もつかないので、理解に至るまで時間がかかる。
「あー⋯⋯ミイラは包帯でぐるぐる巻きになったおばけで、吸血鬼は人間の生き血を吸う生き物。マントを被ってて、牙もあるよ」
「ユリアーナ姉さま。かそうってものをすると、おかしをもらえるのですか?」
「そうだよ。トリックオアトリートって言って、お菓子をもらいに行くの。もらえなかったらイタズラするんだよ」
「いたずら?」
「うん。お菓子くれなきゃイタズラするぞ~って」
―――それ、脅迫しているようなものでは⋯⋯?
だが、ユリィの話している様子を見ると、脅し等の類ではないのだと思う。
というより、そう信じたい。
「姉さま。ぼく、はろうぃんやりたいです」
「ほんと? じゃあ仮装はどうしよっか。あっ、ジャック・オー・ランタンとかどう?」
「じゃっくおー⋯⋯ごめんなさい。もう一度おねがいします」
「ジャック・オー・ランタン。かぼちゃのおばけよ」
ジャック・オー・ランタン⋯⋯これも知らない。
本に出てきたおばけだろうか。
「【創造】」
「! わあぁっ!」
ユリィの魔法でフィルの服が変わる。
オレンジ色の服に⋯⋯かぼちゃの被り物?
これがジャック・オー・ランタンなのだろうか。
「フィル、すっごく可愛い! 似合ってるよ~!」
「おばけなのにかわいくていいのですか?」
「いいのいいの~!」
―――いいんだ⋯⋯。
でも、これで『ハロウィン=脅し』の仮説が消えた。
こんな可愛いフィルにお菓子をねだられても、誰も脅しだとは思わないだろう。
「エリィ姉さんはどうします?」
「私? うーん⋯⋯ユリィがさっき言ってた、きゅーけつきっていうのがいいかな」
ハロウィン自体、私にはよく分からないので、ユリィの言っていた仮装が一番いいと思ったのだ。
ミイラは⋯⋯包帯の衣装というのが想像つかないのと、包帯の無駄遣いをしそうなので遠慮しておく。
「吸血鬼ですね。こんなのでどうでしょう? ―――【創造】」
「!」
白のブラウスに黒のスカート、内側が赤色のマントの衣装だ。
頭に違和感があって触れると、そこにはツノのようなものがあった。
これがきゅーけつき⋯⋯?
「エリィ姉さんもとっても似合ってます! すごく可愛いです!」
「エリアーナ姉さま、素敵です」
「そうかしら⋯⋯? ありがとう」
となると、あとはユリィの仮装だけど⋯⋯ユリィは何を着るのかしら?
「ユリアーナ姉さまは何のかそうをするのですか?」
「そうだなぁ⋯⋯あっ、魔女とかいいかも!」
「えっ、魔女?」
「え?」
「「え?」」
魔女と言えば、〈三英雄〉のひとり〈紅の魔女〉を表す言葉だ。
―――〈紅の魔女〉の仮装って、どうなのかしら?
そもそもに〈紅の魔女〉はおばけじゃない。
神話の時代の英雄だ。
「ユリアーナ姉さま。〈紅の魔女〉はおばけじゃないです」
「そうよユリィ。それに、言い方を変えれば魔法使いでしょ? ユリィは一級魔術師なんだから、魔法使いが魔法使いの仮装って、なんか矛盾してない?」
「⋯⋯たしかに」
ユリィは賢いはずなのに、たまに耳を疑うような発言をする。
変なところで抜けてるんだよね、ユリィって。
「んー、じゃあ、何がいいかな⋯⋯狼男、は私は女だから変か」
〈狼に仮装するのですか、主人?〉
「! レン⋯⋯!」
レンは氷雪狼という狼の種族で、ユリィの使役獣。
ふさふさの毛が特徴である。
「狼女? にはなれるけど、あの毛のふさふさ感を表現するのは難しいのよねぇ」
〈では、我の毛を【複製】すればよかろう?〉
「⋯⋯たしかに! レン、あなた天才ね!」
ユリィは早速レンに触れて、レンの毛を【複製】【顕現】する。
まるでレンをまとってるかのようなユリィの姿はとても愛らしい。
「ユリアーナ姉さま、すごいです! レンとそっくりです!」
「本当ね⋯⋯すごくふわふわしてる」
「むっふっふ。レンの毛はすごいのよ」
〈そうだ。我の毛はすごいのだ〉
こうして仮装すると、私たちはリンドールの家中を回ってお菓子をもらいに行った。
行く先の使用人たちは皆、飴やクッキーを持っていて、「トリックオアトリート」と言うと、すぐにお菓子をくれた。
―――多分、お母様が私たちの話を聞いていたんだわ。
お母様は〈精霊の愛子〉なので、〈精霊〉と話をすることができる。
きっと、この部屋にいた〈精霊〉がお母様に話の内容を教えて、それを使用人に伝えたのだろう。
子どもたちが来たらお菓子をあげて、と。
「豊作豊作~」
「すごく楽しかったです、ユリアーナ姉さま」
「そうね。とても楽しかったわ」
「そうでしょそうでしょ? 来年もまたやりましょう」
突飛な発言の多い不思議な妹だけれど、ユリィは私たち姉弟をいつも笑顔にしてくれる。
ハロウィンかぁ。
ユリィのおかげでまたひとつ、新しいことを知れた。
来年もまた、できるといいな。
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「エリィ姉さん、フィル。ハロウィンしよ!」
「「はろうぃん?」」
私の妹、ユリィは、時々こうして変なことを言い出す。
決してふざけているわけではなく、むしろかなり真面目に話し始めるので、いったい何をするつもりなのかといつも思う。
「ハロウィンっていうのはね、仮装して、お菓子をもらうの!」
「仮装? なんの?」
「おばけにだよ! ミイラとか、吸血鬼とか!」
―――みいら? きゅーけつき??
ユリィの話す言葉は、初めて聞くものも多い。
それが何を指す言葉なのか、見当もつかないので、理解に至るまで時間がかかる。
「あー⋯⋯ミイラは包帯でぐるぐる巻きになったおばけで、吸血鬼は人間の生き血を吸う生き物。マントを被ってて、牙もあるよ」
「ユリアーナ姉さま。かそうってものをすると、おかしをもらえるのですか?」
「そうだよ。トリックオアトリートって言って、お菓子をもらいに行くの。もらえなかったらイタズラするんだよ」
「いたずら?」
「うん。お菓子くれなきゃイタズラするぞ~って」
―――それ、脅迫しているようなものでは⋯⋯?
だが、ユリィの話している様子を見ると、脅し等の類ではないのだと思う。
というより、そう信じたい。
「姉さま。ぼく、はろうぃんやりたいです」
「ほんと? じゃあ仮装はどうしよっか。あっ、ジャック・オー・ランタンとかどう?」
「じゃっくおー⋯⋯ごめんなさい。もう一度おねがいします」
「ジャック・オー・ランタン。かぼちゃのおばけよ」
ジャック・オー・ランタン⋯⋯これも知らない。
本に出てきたおばけだろうか。
「【創造】」
「! わあぁっ!」
ユリィの魔法でフィルの服が変わる。
オレンジ色の服に⋯⋯かぼちゃの被り物?
これがジャック・オー・ランタンなのだろうか。
「フィル、すっごく可愛い! 似合ってるよ~!」
「おばけなのにかわいくていいのですか?」
「いいのいいの~!」
―――いいんだ⋯⋯。
でも、これで『ハロウィン=脅し』の仮説が消えた。
こんな可愛いフィルにお菓子をねだられても、誰も脅しだとは思わないだろう。
「エリィ姉さんはどうします?」
「私? うーん⋯⋯ユリィがさっき言ってた、きゅーけつきっていうのがいいかな」
ハロウィン自体、私にはよく分からないので、ユリィの言っていた仮装が一番いいと思ったのだ。
ミイラは⋯⋯包帯の衣装というのが想像つかないのと、包帯の無駄遣いをしそうなので遠慮しておく。
「吸血鬼ですね。こんなのでどうでしょう? ―――【創造】」
「!」
白のブラウスに黒のスカート、内側が赤色のマントの衣装だ。
頭に違和感があって触れると、そこにはツノのようなものがあった。
これがきゅーけつき⋯⋯?
「エリィ姉さんもとっても似合ってます! すごく可愛いです!」
「エリアーナ姉さま、素敵です」
「そうかしら⋯⋯? ありがとう」
となると、あとはユリィの仮装だけど⋯⋯ユリィは何を着るのかしら?
「ユリアーナ姉さまは何のかそうをするのですか?」
「そうだなぁ⋯⋯あっ、魔女とかいいかも!」
「えっ、魔女?」
「え?」
「「え?」」
魔女と言えば、〈三英雄〉のひとり〈紅の魔女〉を表す言葉だ。
―――〈紅の魔女〉の仮装って、どうなのかしら?
そもそもに〈紅の魔女〉はおばけじゃない。
神話の時代の英雄だ。
「ユリアーナ姉さま。〈紅の魔女〉はおばけじゃないです」
「そうよユリィ。それに、言い方を変えれば魔法使いでしょ? ユリィは一級魔術師なんだから、魔法使いが魔法使いの仮装って、なんか矛盾してない?」
「⋯⋯たしかに」
ユリィは賢いはずなのに、たまに耳を疑うような発言をする。
変なところで抜けてるんだよね、ユリィって。
「んー、じゃあ、何がいいかな⋯⋯狼男、は私は女だから変か」
〈狼に仮装するのですか、主人?〉
「! レン⋯⋯!」
レンは氷雪狼という狼の種族で、ユリィの使役獣。
ふさふさの毛が特徴である。
「狼女? にはなれるけど、あの毛のふさふさ感を表現するのは難しいのよねぇ」
〈では、我の毛を【複製】すればよかろう?〉
「⋯⋯たしかに! レン、あなた天才ね!」
ユリィは早速レンに触れて、レンの毛を【複製】【顕現】する。
まるでレンをまとってるかのようなユリィの姿はとても愛らしい。
「ユリアーナ姉さま、すごいです! レンとそっくりです!」
「本当ね⋯⋯すごくふわふわしてる」
「むっふっふ。レンの毛はすごいのよ」
〈そうだ。我の毛はすごいのだ〉
こうして仮装すると、私たちはリンドールの家中を回ってお菓子をもらいに行った。
行く先の使用人たちは皆、飴やクッキーを持っていて、「トリックオアトリート」と言うと、すぐにお菓子をくれた。
―――多分、お母様が私たちの話を聞いていたんだわ。
お母様は〈精霊の愛子〉なので、〈精霊〉と話をすることができる。
きっと、この部屋にいた〈精霊〉がお母様に話の内容を教えて、それを使用人に伝えたのだろう。
子どもたちが来たらお菓子をあげて、と。
「豊作豊作~」
「すごく楽しかったです、ユリアーナ姉さま」
「そうね。とても楽しかったわ」
「そうでしょそうでしょ? 来年もまたやりましょう」
突飛な発言の多い不思議な妹だけれど、ユリィは私たち姉弟をいつも笑顔にしてくれる。
ハロウィンかぁ。
ユリィのおかげでまたひとつ、新しいことを知れた。
来年もまた、できるといいな。
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