悪役令嬢の妹(=モブのはず)なのでメインキャラクターとは関わりたくありません! 〜快適な読書時間を満喫するため、モブに徹しようと思います〜

詩月結蒼

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第一部

86.愛されてるって……どの辺?

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 ユリとルアとお出かけ……の前に、私には参加しなければならないお茶会があった。
 それは―――

「本日はお越しいただきありがとうございます。エリアーナ様、ユリアーナ様」
「こちらこそ、お招きいただき光栄でございます。クローリス様」

 王宮のある一室にて、お茶会を開催すると知らせが来たのは少し前のことだ。
 主催者はリズ様―――王族のため、断ることなど不可能に等しい。
 よって、半強制的に私はお茶会に参加せざるを得なくなったのだった。

―――色ありの姿は初めて見た……。

 今日のリズ様は魔法を使っていない、素のリズ様なので、前回お会いした時の黒髪黒目ではなく、ライムグリーンの髪にルビーレッドの瞳だ。
 若葉色をベースにしたドレスは小さな花がところどころにあしらわれていて、花畑を連想させる。
 耳のあたりで結ばれたツインテールは、リズ様が動くたびにぴょこぴょこと跳ねた。

「どうぞこちらへ」

 リズ様に案内され、席に座る。
 目の前にはお菓子がいっぱい用意されていた。

―――おいしそう……。

 中にはくまさんやうさぎさんの形をかたどったものもあり、可愛くて食べるのがもったいないぐらいだ。
 すると―――

「失礼します。遅れて申し訳ございません」

 優しい花のいい匂いがした。

―――あ、これ、知ってる。

 何度も嗅いだことのある心地いい匂いだ。

「まだ時間前ですので、お気になさらないでください。私たちも先ほど来たばかりです、レティシア様」
「そうなのですか。少し安心しました。ありがとうございます、エリアーナ様。ユリアーナ様も、お久しぶりです」
「お久しぶりです。レティシア様」

 レティシア様はクロッカスの髪をいつものようにまとめており、瞳と同じ色合いの、パールの髪飾りはよく映えている。
 黒を基調としたドレスはプリンセスラインを描いているものの、レティシア様の威厳と、シンプルなデザインにより、甘過ぎない印象を受けた。

―――リズ様はお花の可愛いドレス、レティシア様はザ、お貴族様のクールなドレス……性格が出てるよね。

 もちろんそれは私やエリアーナも同じだ。
 エリアーナのドレスは華やかな赤色が綺麗なエンパイアラインのドレスだ。
 一言で赤といっても、深みのある落ち着いた色で大人っぽい。
 長く伸びた亜麻色の髪は三つ編みに。

―――いやぁ、美人ってなんでも似合うよね。

 私のドレスは瞳の色と同じ澄んだ青のミニ丈ドレスだ。
 動きやすさを重視したお気に入りだ。

―――さて、今日のお茶会に招待されたのは私とエリィ、レティシア様だけ。王族と公爵家のお茶会……何か重要なことを話すのかな?

 リンドール公爵家もフォーレイン公爵家も王族との関わりは少なからずあるし、社交界でも強い発言力を持つ。
 言動に気をつけなければならないのはそれが理由だ。
 ま、お貴族様なら公爵家でも子爵家でも礼儀正しくなきゃいけないんだけど。

「本日はお越しくださりありがとうございます。朝摘みの茶葉を使った紅茶です。どうぞ召し上がってください」

 リズ様に勧められ、紅茶を口に運ぶ。

―――やっぱおいしいね。さすが王族。

 そして、こんなに何もなくお茶を飲んで終わり、なんてことがあるはずがない。

「今日、お茶会を開催したのは、皆様もご存知の通り、特別な理由があるからです」
―――ごめん、わかんない。

 真剣な顔つきで話し始めたところ悪いが、まったくわからない。
 ……って、エリィもレティシア様も「うんうん」って頷いてるんだけど、もしかしてわからないの私だけ!?
 誰か教えてー!?

「それはもちろん……」
―――もちろん……?
「ユリアーナお姉様も婚約祝いですっ!」
「……え? 私? 婚約祝い??」

 てか、婚約祝いって……。

「遅くなりましたが、アルトゥール様とのが婚約おめでとうございます、ユリアーナお姉様!」
「公爵家から伯爵家へ嫁ぐことは、普通ならばありえないこと……アルトゥール様との間に、何かあるのですか?」
「ユリィったら、『アルトゥール様との婚約が決まりました』ってだけしか言ってくれないんだもの! 今日はたーっぷりと聞かせてもらうんだからね」
―――な、なんか、みんなの目が輝いてる気がするんだけど……。

 女子は恋愛大好きって言うらしいけど、本当なのかもしれない。
 なお、前世ではそんな話をするような人がいなかったので、本当かどうかはわからない。

「アルトゥール様のことは、どうなんですか?」
「え、うーん……普通?」
「普通なわけないじゃないですか! 真実を教えていただくまで、私、諦めませんからね!」
―――いや、本当にそうなんだけど……。
「アルトゥール様とは婚約以前から面識がありましたの?」
「いえ、婚約の話でお会いしたのが初めてで……」
「一目惚れ? 一目惚れなんですか?」
「してません」
―――綺麗な人だなぁとは思ったけど、あれは一目惚れじゃないし。

 顔面偏差値高いな~というのは全ての色ありキャラクターに共通することである。
(※ユリアーナは頑なに「私は色ありじゃない!」と否定しているため、自分も顔面偏差値が高いことをわかっていません)

「でもさ~、仮にユリィにその気が無くても、アルトゥール様から愛されてるよね~」
「え?」
「そうなんですか!?」
「お聞かせ願います、エリアーナ様」
―――愛されてるって……どの辺?

 結局アルトゥール様とは初めて会ったあの日から、一度も会えてない。
 手紙のやり取りはしているが、それ以外に特に何もない……はずだ。

「ユリィのこと好きなんだな~って、手紙は見てないけど、贈り物でわかるよ。断言する。ユリィはアルトゥール様から寵愛されてる」
「ちょうあい……?」
「何が贈られたんですか!?」
「どのようなお手紙が届いたのか、気になりますわね」
「お、落ち着いてください、リズ様、レティシア様」

 私はグイグイ来るリズ様とレティシア様から距離をとる。
 圧から逃れるので精一杯だ。

―――てか、寵愛ってなに!? アルトゥール様が私のことを!? ないない、絶対ない!

 私なんかが寵愛されてるわけないじゃないか。
 仮に寵愛されてるとしても、悠々自適な読書生活にはいらないので不要である。


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