悪役令嬢の妹(=モブのはず)なのでメインキャラクターとは関わりたくありません! 〜快適な読書時間を満喫するため、モブに徹しようと思います〜

詩月結蒼

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第二部

126.早朝の侵入者

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―――よく寝たぁ⋯⋯。

 今日は異学年交流魔法戦当日。
 身体は準備万端。
 いつでも動ける。

―――制服よし。ローブは⋯⋯あった。

 街に出かけた時に買った、アルトゥール様とおそろいのローブだ。
 おそろい⋯⋯前は特に意識してなかったけど、相手がアルトゥール様ってこともあって、なんだか変な気持ちだ。
 アルトゥール様とおそろいなのが嫌ってことじゃない。
 なんだろ⋯⋯嫌じゃないんだけど、変な感じ。
 うまく言葉にできない。

―――あっ⋯⋯。

 その瞬間、全身がぞくりと震えた。
 気持ち悪い手つきで触れられたような、そんな心地がした。

―――今のは、もしかして⋯⋯!

 エトワールには大きな防御結界が張られている。
 外部からの侵入を防ぐための特別な結界だ。
 私には結界外から誰かが侵入した時、体に異変が起こるようにリュカ様から特別な施しを受けていた。

―――【空間指定】【展開】【映像補佐】

 結界付近を視ると、怪しい動きをしたグループが見つかった。
 あれはおそらく、侵入者だ。

―――【転移】

 昼頃までエヴァとユリはノイア・ノアールの仕事で出かけていて、学校の警備をしていない。
 だから侵入者は私が対処しなくてはならないのだ。
 そもそもそれが、私がエトワールに入学した理由なのだ。

「あなたたち、侵入者ですね」
「!? 誰だ⋯⋯!」

 相手は5、6人の男。
 変装もせず、堂々と侵入してるところを見ると、随分と安い金で雇われているようだ。

―――【創造】【促成】【拘束】
「ぐわっ!」
「なんだ、これ!? 離れねぇ⋯⋯!」

 植物を大きくして拘束する。
 この程度でやられるとは、弱っちいなぁ。

「目的は何ですか? 誰に雇われたのですか?」
「っ、誰がお前なんかに言うかよ、!」
「⋯⋯チビ? 誰のことかしら?」
「お前のことに決まってんだろ! んなことも分からねぇのか? 頭悪すぎだろ。ばーかばーか!」
「そーだそーだ! これも何かの間違いだ! 小細工してたんだろ、てめぇ!」
「早く俺らを解放しな!」
「⋯⋯」

 抑えろ、私。
 こんな底辺のクソ野郎に語彙力のない悪口を言われて怒るようじゃ、まだまだ子供だ。
 抑えろ、抑えろ⋯⋯。

「チビチービ!」
「ブッサイクな女!」
「バカ女!」
「貧乳ロリ!!」

 ん、やっぱ抑えんのやめよ。

「【凍れ】」
「ぎゃあぁぁっ!!」
「冷たっ! ちょっ、何すんだお前!!」
「それは私のセリフなんだけど? たしかに私は低身長だけど、成績は悪くないしブサイクでもないわよ! あと、貧乳ロリって言ったやつ!! あんただけは絶対殺すから」
「ひぃっ!」

 その後、半殺しにしていたところを警備員に発見され、侵入者たちは連れて行かれた。

―――チッ、こんなことになるならラディアさんのところに転移させて拷問させればよかった⋯⋯っ。

 一級魔術師のラディアさんはヤベェ人殺しなどを拷問して情報を吐き出す仕事をしている。
 情報を吐かせたあとも生き地獄にさせているらしく、一級魔術師に就任したときに『誰か拷問させたいやつがいたら、妾《わらわ》に言うがよい』と言っていた。
 今こそ、ラディアさんを頼る時だったのに⋯⋯!
 私はなんてことをしてしまったのだろう。

「どしたのユリユリ?」
「えっ⋯⋯ノエル先輩⋯⋯!?」
「おはよ。ユリユリがこんなところにいるなんて珍しいね。なんかあった?」
「侵入者を捕らえて警備員の方に引き渡したところです。⋯⋯今は引き渡したことを後悔しています」
「あ~。あるよね、そういうとき。こっそりどこかに閉じ込めで死んだほうがマシって思わせるべきだったって後悔しちゃうんでしょ?」
「はい⋯⋯」

 ん、ちょっと待て私。
 今の私、ノエル先輩と同レベルのヤバい人では?

「そういうときはね、前に作戦会議した山の頂上らへんに埋めとくといいよ。授業が終わった後、そこを掘って取り出して、気が済むまで殴って蹴ってボコボコにすれば、すっきりするよ!」
「⋯⋯助言、感謝します」
「ユリユリなら全然構わないよ! じゃ、私、ランニングの途中だから。またあとでね~!」
「はい。また、あとで」

 風のごとく走り去るノエル先輩を見て、怒りで思考が物騒になっていた私が落ち着きを取り戻す。

―――寮に、帰るか。

 仕事はした。
 部屋に戻って本でも読もう。
 うん、それがいい。
 再び【転移】すると、私は愛読書の『星の神子リル』シリーズを読み始めた。



――――――――――――
著者から/
 約3ヶ月分のストックがあったはずなのですが、一気に消えました。たったの1ヶ月、週2投稿から毎日投稿にしただけなのですが⋯⋯恐ろしいですね。ストックを取り戻すため、前よりも1話が短くなっておりますが、これまで通りテンポ良く進めようと思っています。
 よろしくお願いします。
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