悪役令嬢の妹(=モブのはず)なのでメインキャラクターとは関わりたくありません! 〜快適な読書時間を満喫するため、モブに徹しようと思います〜

詩月結蒼

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第二部

159.魔力供給の依頼→魔道具の修理

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「魔力供給、ですか⋯⋯?」

 魔力供給とは、自身の魔力を別の人間や物体に供給することだ。
 基本的には物体―――魔道具に魔力を流し込む。

「今、星詠みで使用する魔道具に魔力を流しているのですが、なかなか満たされなくて⋯⋯魔力の多い人を探していたんです」
「なるほど。あとどれぐらい魔力が必要なんですか?」
「上位魔法を10回ほど、でしょうか」

 それはかなり多い。
 私なら補えるだろうが⋯⋯いったいどうしてそんなことに?

「ほかに魔力供給に応じてくださる方はいらっしゃいますか?」
「先生方と、生徒会で行っていますが⋯⋯一般生徒には、その⋯⋯」
「内緒にしたい、と?」
「はい。サプライズなので」

 サプライズ、か。
 どんなことをするのかは分からないが、ここは協力したほうがよさそうだ。

「分かりました。私も魔力供給を手伝います」
「ありがとうございます」

 案内された場所には、とても大きな魔道具が置かれていた。
 直方体の魔道具だ。

「あれ? ユリアーナじゃん」
「こんにちは。オリビア先輩」

 魔道具の近くでオリビア先輩は休憩していた。
 魔力切れだろう。
 ロベルト様やトーマス先輩、ネロ先輩も同じようだ。

「もしかして、魔力供給をしにきてくれたの?」
「はい。魔力が足りないのですよね?」
「そうなんだよ~。ユリアーナが手伝ってくれるなら百人力だね」

 ツェツィーリア様に説明を受け、私は供給を始めた。
 だが―――

―――うわっ、なにこれ……?

 魔道具に触れてすぐに私は手を離した。

「どうかしましたか?」
「……これ、一回に吸う魔力量が多くないですか?」
「そうですね。従来のものに比べると、多いと思います」

 それだけじゃない。

―――この魔道具、魔力の底が見えなかった。

 普通、魔道具には魔力を溜める魔力器官が存在する。
 一定の魔力が溜まると、動くようになっているのだ。

―――魔力を入れているときは大体どのくらい溜まっているか感覚で分かるのに。

 でもさっき供給したときは分からなかった。
 底なし沼に足を入れてしまったかのような、気持ち悪い感覚だった。

『あとどれぐらい魔力が必要なんですか?』
『上位魔法を10回ほど、でしょうか』

 なんか、おかしい。

「ツェツィーリア様。先程、上位魔法10回分ほどの魔力が必要だとおっしゃっていましたよね? あれはどういう意味ですか?」
「どういう意味、と問われましても……そのままの意味です」
―――うーむ……。

 ツェツィーリア様が嘘を言っているようには思えない。
 だが、この魔道具には上位魔法10回分以上の魔力を消費するはずだ。
 矛盾しているのだ。

―――となると、もしかして。
「ツェツィーリア様。人払いを頼みます」
「え?」
「それと、心理カウンセラーさんを呼んできてくれませんか? カウンセラー室か、もしくは理事長室にいるはずです」
「心理カウンセラーさん⋯⋯? わ、わかりました。呼んできます」

 そして数分後、幻影魔法で姿を変えたミア様がやって来たのだった。
 人払いをしたため、現在この部屋には私とミア様しかいない。

「何かあったのか?」
「はい。今夜使用するこの魔道具が、壊れている可能性があります。みてくれませんか?」

 ミア様は筆頭魔法科学者。
 魔道具もよく作っているから、この分野のプロと呼べるお方である。

「これはあくまで予想ですが、魔力器官に大きな損傷があるかと。生徒会と数名の教員が魔力を入れたそうですが、全然溜まっていないんです」
「そうなると、魔力器官に問題があるのは確実か。分かった。調べてみる」

 そう言うと、ミア様は魔法を展開させた。

「【解析】【想像顕現】【視界共有】」

 魔道具の内部の構造が解析され、視界にミア様の想像する内部が映し出される。
 随分と複雑な構造だ。
 魔力器官に接続する管が細く、脆そうだ。
 いつ壊れてもおかしくない魔道具だと思う。

「……見つけた」

 視界が大きく動き、ある箇所に拡大される。
 これは―――魔力器官の端っこ、穴が開いていて魔力が漏れ出ている。

「ユリアーナの言った通り、魔力器官が損傷していて、魔力が溜まっていないな。それに加えてあふれた魔力が他の部品に悪影響を及ぼしている。……まずいな」

 例えるならば、魔力器官は車の燃料タンクだ。
 燃料漏れを起こすと車に不具合が起こるように、魔力漏れが起こると魔道具が正常に動かなくなる。
 最悪―――爆発する。

「ユリアーナ、結界を張れ。なるべく強固なやつで頼む」
「! 分かりました」

 あまり知識のない私でも分かる。
 この魔道具は、かなりよろしくない状態だ。

―――【結界】【強度倍増】【魔力吸収】
「【空間指定】【転移】【創造】」

 私が結界を張り、ミア様が魔道具の修理をするための工具を取り出す。

―――【多重結界】【展開】【拡大】
「【分解】【切断】【空間指定】【時間停止】【分離】……ユリアーナ。結界の展開と同時に部品の洗浄を頼む」
「分かりました」
―――【解析】【創造】【成分調整】【洗浄】【水分除去】

 結界の展開と部品の洗浄の同時並行はかなり神経を使う作業だ。
 気を抜けばすべての魔法が崩れてしまう。
 そう考えるとミア様はすごい。
 複数の作業を同時並行に、且つ効率的にこなしている。
 恐ろしいスピードだ。

―――【補強】【補填】【整地】

 常に魔法を使っているため魔力の消費が激しい。
 作業スピードと同じ……いや、それ以上で魔力圧縮を繰り返す。
 ひたすらに部品をきれいにし、ミア様に届け、結界を展開、魔力の圧縮を繰り返していく。
 展開、圧縮、展開、圧縮、展開、圧縮、展開、圧縮、展開、圧縮、展開、圧縮、展開、圧縮、展開、圧縮、展開、圧縮、展開、圧縮……。



 そして3時間後、作業は完了した。

「……もう終わっていいぞ、ユリアーナ」

 その言葉を聞いた瞬間にふっと全身の力が抜け落ち、へたり込んだ。
 魔力切れに近い状態だ。

―――しんどい⋯⋯。

 集中と緊張の糸がぷつりと切れて、もう、今日は動ける気がしない。
 今も後ろで作業を続けるミア様を見て、私は感嘆の息をついた。

―――なんでミア様は動けるんだ⋯⋯?

 それが心から不思議で仕方がない。

―――慣れてるから、とか? でも、慣れでできるようなもんじゃないでしょ、これ。

 かなりの集中力が必要となる作業だ。
 特に今回のは、気を緩めれば魔道具が爆発して被害が出る可能性もあった。
 ミア様が私に『もう終わっていいぞ』と言ったのは、爆発の危険性がゼロになったからだ。
 ミア様がまだ作業をしているのは、魔道具の修理が完全に終わってないからである。

―――ミア様が一級魔術師になれたのは、幻影魔法がすごかったからなんだよね。

 幻影魔法はすごく高度な技術と集中力を必要とする魔法だ。
 それを使いこなしているミア様だから、この魔道具の修理ができるのだろう。

「⋯⋯終わったぞ、ユリアーナ」
「! ありがとうございますミア様。長時間にわたる作業、お疲れ様です」
「おまえもな。あ~疲れた~」

 背伸びをして床に寝転がるミア様。
 ミア様も魔力切れに近い。

「これを飲んでください。回復薬です。味と効果は保証します」
「ん、ありがとな」

 一気にすべてを飲み干すと、ミア様はそのまま「少し寝る」と言って眠ってしまった。
 ミア様の少しは本当に少しだけなので、ちょっと心配になる。

「今日はもう、ゆっくり寝てくださいね、ミア様。―――【就眠】」

 その後、ユリを呼んでミア様を理事長室で休ませ、待っていたツェツィーリア様たちに報告をした。
 壊れていた魔力器官は正常に魔力を溜められると確認が取れたため、これにて解決だ。
 たくさん魔力を使ったので、残っている魔力供給は生徒会の皆さんに頼むことにした。
 3時間以上、魔道具の修理完了を待っていたから、魔力は十分あるはずだ。

「星詠みは夜の9時からとなります。お待ちしていますね」

 今は午後4時。
 星詠みまであと5時間ある。

―――よし。寝よう。

 時間になったらシャノンが部屋に来るはずだ。
 私はそれまでちゃんと寝て、魔力と体力を回復することに決めた。


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