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第二部
164.美しさは一定値を超えると直視できなくなる
しおりを挟むシャノンとカレンのいるはずの部屋へ行くと、そこには黒髪黒目の脇役メイド、ユリがいた。
どうやらひとりでお片付けをしているようである。
「シャノンとカレンは?」
「おふたりなら大広間へ行きましたよ。ドレス、とても似合っていました。ですが、やはりご主人様のお姿には勝てませんね」
「いやいや、ふたりのほうが絶対かわいいって。でも、ありがとユリ」
ユリに教えられた通り大広間へ行くと、そこにはシャノンとカレンの姿があった。
「シャノン。カレン」
「あっ、ユリアーナ~!」
「ユリアーナ⋯⋯!」
シャノンは淡いミントグリーンのドレスを着て、こちらへやって来る。
裾の広がりが少なく、縦ラインを描くドレスで、すっきりコンパクトな見た目のスレンダーラインのドレスは、シャノンにとても良く似合っていた。
肩から腕にかけてのフリル袖が特徴的なオフショルダーデザインで、胸元からウエストにかけては繊細なレースや刺繍が施されている。
スカート部分にはチュールやオーガンジーなどの軽やかな素材が何層にも重なっていて、優雅な印象を受けた。
普段おさげにしている茶色の髪はひとつのお団子にされ、全体的に大人っぽい雰囲気を纏っていた。
「シャノン、とっても素敵よ。⋯⋯眼鏡は取らなくていいの?」
「あっ、はい。眼鏡は外したくない、です」
「眼鏡を取ったほうが絶対可愛いよ? いいの?」
「い、いいんです。これは、私の大事なもの、なので」
そこまで言うなら強制はしないが⋯⋯そんなにその眼鏡はシャノンにとって大切なものなのか。
知らなかった。
「カレンも。すごくよく似合ってるわ」
「ありがとうございます。ユリアーナ」
カレンは瞳と同じ青色のエンパイアラインのドレスを着ていた。
私の星のドレスよりは薄めの青である。
バストラインのすぐ下からストンと流れるスカートが特徴の、ハイウエストのドレスだ。
シャノンと同じチュールスカートで、だんだんと淡い青へと変化するグラデーションは美しい。
チュール素材により軽やかでボリュームのあるシルエットとなっている。
ウエスト部分のビーズやスパンコールのような装飾は華やかさを加えており、カレンの謙虚な明るさを表しているようだった。
―――ふたりとも、最高だわ⋯⋯。
もともとの容姿がいいので、それにアナスタシアの最高峰のドレスを着ることによって、それがより引き立てられている。
はわぁ⋯⋯眼福だわ、こりゃあ。
「ユリアーナのドレスも、とてもとても素敵です! まさに星詠みの夜の舞踏会のために作られたドレスですね」
「うんうん。今のユリアーナ、すっごくきれい!」
「ありがとう。カレン。シャノン」
すると、「あ~!」と聞き馴染みのある声が聞こえた。
ノエル先輩だ。
―――⋯⋯って、え?
その瞬間、私はその人が誰なのか判別できなかった。
ストレートに整えられたワインレッドの髪。
上半身から腰、太ももにかけて体にフィットし、膝下から裾にかけて広がるマーメイドラインを描いたタイトな黒のドレス。
肩を露出するオフショルダーに、Vネックの胸元。
足首まで隠れる丈ではあるも、深いサイドスリットにより太ももまで見えた脚。
「えっ、と⋯⋯ノエル、先輩?」
「ん? そーだけど? どしたのユリユリ」
なんだこの色気ダダ漏れの姿は。
いつもは明るくて自由奔放で幼気のある元気っ娘というイメージなのに、今日は可愛さよりもカッコよさよりも美しさが勝っている。
あの時折見せる妖艶さが、今は全面に出ている。
「や、あの、ちょっと、あんまり近づかないでください⋯⋯」
「え? なに? なんで??」
―――ノエル先輩の大人の色気にやられるからです⋯⋯っ!
普段の制服姿でノエル先輩のスタイルの良さは十分に分かっていた。
いや、分かっていたつもりだった。
だがここまで色々とアレなところが露出されていると目のやり場がないというか、なんというか⋯⋯。
「もしかして、服に照れてるの? 見えそうで見えなくて、際どいなぁって?」
「わ、分かってるなら言わないでください!」
「ふふふ。そんなこと言われたら、もっと意地悪したくなっちゃうじゃないかぁ~」
「いくらノエル先輩でもやっていいことと悪いことがあると思います! こ、これ以上近づくなら、氷漬けにしますよ!」
「おっと。それは怖い怖い」
ゆっくりと私から距離をとるノエル先輩。
よかった⋯⋯離れてくれた。
「たまにこういうドレスを着るのも悪くないね。ユリユリをからかえるし」
「もう、やめてくださいノエル先輩」
「ごめんごめん」
すると、カルムとフォルツァ先輩がやって来た。
―――おぉう⋯⋯こっちもすごいわ。
ふたりとも黒をベースにしたタキシード姿だ。
カルムは赤、フォルツァ先輩はオリーブ色の差し色だ。
―――私に顔面偏差値が高い人への耐性があってよかったわ⋯⋯。
もし耐性が弱ければ、きっとこの空間には居られない。
正直、私はこの場から去りたい。
みんなから放たれている美しさ⋯⋯キラキラオーラを受け続けるのはつらいのだ。
―――美しさは一定値を超えると直視できなくなるんだよね。
今がそうである。
特にノエル先輩は別の理由もあって、ほんと、目を合わせられない。
「シャノン」
「カルム⋯⋯。すっごく似合ってるよ」
「ありがとう。シャノンも、とても綺麗だ」
「っ⋯⋯そ、そうかな?」
「あぁ」
急に恋愛シーンを始めた、だと?
これが主要人物の力なのか⋯⋯?
私には理解できん。
どういう仕組みでできているのだ、これは。
「ユリアーナ様」
「! カガリさん!」
「そろそろ時間ですわ」
「分かりました。会場に転移しますね」
私はカレン、シャノン、ノエル先輩、カルム、フォルツァを指定し、魔法陣を展開、発動させる。
【空間指定】を応用した魔法陣だ。
―――魔法陣は正常、魔力も十分行き渡っている。転移対象も体調面等々に問題なし。⋯⋯よし。いける。
転移に必要な魔力を魔法陣に流し込み、想像を膨らませる。
そして―――
―――【転移】
私たちは無事、会場に転移した。
――――――――――――
補足/
ユリアーナの転移魔法について補足します。普通、転移魔法はものすごく難しいので、発動させるまでに時間を要します。ユリアーナは当たり前のように使っていますが、それは何度も使いまくっているからで、普通は魔力消費も激しいので使いません。ユリアーナのことをよく知る人物以外は「異常だろ」と思います。それが普通です。
異学年交流魔法戦でユリアーナが使った大規模転移魔法は、早く発動させないと死人が出るとユリアーナが判断したため「とにかく急げ!!」で人と場所を指定して観客を転移させました。質より速さを重視したため転移したあとの人間は数人が山になって重なってしまいましたが、一応無事でした。
このことをあとでミアから報告を受けたユリアーナは、今後、自分以外を転移させる時はちゃんと安全性を確保して使おうと決めました。そのため、今回の舞踏会へ行く時の転移は少し(と言っても本当に少し)時間をかけました。
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