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終末
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お待たせいたしました。漸く完結のめどが立ちました……!
ここからはさっくり進むと思います。
********
真宮家崩壊のニュースはすぐに知れ渡った。長いこと君臨し続けた王者の失墜は、多くの者に驚きを齎した。その中には喜びの声を上げた者もいた。
「それだけの大ニュースだったからねぇ」
「あはははは」
教室で新聞を睨みつけながら蓮は唸る。彼もまた資産家の子である。時流には敏感で、第一報を聞いた時にはひっくり返ったという。彼の家からすれば真宮は雲の上の存在で直接的なつながりはないものの、やはり少なくない影響があるという。
なんで突然、と呻く彼を前に当事者の中心たる聖月は乾いた笑いを零して視線を泳がせる事しか出来なかった。どうしたものか、と考えていた聖月。ため息をついて新聞をたたんだ蓮を見て片肘を突いたのだが。
「そう言えば、聖月が休んでた時だよねコレ」
「あはははは」
何気ない一言に思い切りえぐられる。これは察しているのいないの、と注意深く様子を窺った聖月だが、当の蓮は本当に何気なく言っただけらしい。その意識は別な所に飛んでいるようだ。
「なんか調子狂う」
「えっと蓮君?話が飛躍し過ぎてついていけないんだけど?」
「だって、イベント事に目がない聖月が全く反応してないんだもん」
意味ありげに見られて聖月は苦笑する。まったく、校内もざわついてるじゃんとぼやきながら蓮が出してきた紙に書いてあったのは。
「らんきんぐ?」
「ああ、まさか知らなかったからあの反応?」
失敗したかも、と蓮が一人反省会を始める。それは、校内人気ランキングの詳細だった。
「と言う訳で、今年もあの狂ったランキングの次期がやって来たわけだ」
どことなくやつれた顔でそう言ったのは竜崎。ここは風紀室。風紀委員を集めた彼は、これからの予定を発表していたのだ。真剣な顔をして聞いているのは風紀委員たち。仕事をしっかりやらなければ、という緊張感と総長・副総長が揃っている事への高揚から何時もより気合が入っているようだ。流石にNukusに所属している者達で構成されていると思うべきか。
そんな中、ソファに寝そべって詳細資料を呼んでいた聖月がはいはーい、と手を上げた。
「なんだ」
「なんで俺はここに居るの?」
「喧しい。お前は風紀委員だからだ」
「まって初耳」
本人としては茶々を入れただけなのだが、予想の斜め上を行く解答を返され絶句する。どういう事?!と飛び起きると、眼前に委嘱状が突き付けられた。それを持っているのは満面の笑顔の颯斗。
「戻って来たんだもん。きちんと仕事してもらうよ」
「おぉう」
ばっちり自分の名前が入っている事を確認し、渋々委嘱状を受け取る。どこか恨めし気に竜崎に視線を投げるが、本人は全く無視して説明を続けている。聖月は力なくソファに逆戻りした。
例の事件の後、聖月は本人の希望もあり第九学園に復帰していた。本来ならば復帰する事は出来なかったはずなのだが、条件付きで許されたのだ。
帰ってきたとき、心配していた蓮に泣かれて抱き着かれる……と思いきや、勢いよく突進され拳骨を貰ったかと思ったら正座での説教大会二時間コースとなった。その溜め込んだ黒々しいものと言ったら、怒り狂った颯斗と同等のものを感じさせる。その勢いの良さと聖月を問答無用で従わせた圧力に竜崎が感心して風紀に誘ったのは余談である。
そして、学業の事やクラスメイトへのフォローに追われている間に風紀に入る事が決定していたらしい。ちゃっかりしているというか何というか。主に、恋人を傍に置いておきたい竜崎、脱走が得意な友人を監視下に置きたい怜毅・高宮・嵯峨野、書類仕事にうんざりした颯斗が結託した結果である。
どうにか回避する方法を考えた聖月は、一瞬の思考の後頭を抱えた。性格の問題はさておき成績優秀な聖月は学校側としても問題ないと判断するだろうし、風紀のメンツは聖月の信奉者しかいないし、生徒会はこれ以上引っ掻き回されて堪るかと聖月を監視して縛り付ける気満々である。学園祭の女装と体育祭の活躍の噂が広まった結果、生徒たちからも歓迎の声が上がっている。最後の砦と思い浮かべる親衛隊はというと、既に竜崎達が洗脳済みで寧ろ泣いて喜ばれた記憶あり。
つまり外堀内堀全て埋められているという事。逃げ道なし、とすぐに察したのだ。
「以上が説明だ。何か質問は」
「はいはーい、しっつもーん」
「……無い様だな」
「ちょっと?!」
サクッと無視され非難の声を上げる聖月。面倒くさそうに一瞥され半眼になる。扱い酷いんじゃない、と抗議するが散々振り回され続けた彼らとしては時自業自得だと言いたくなる。ため息をついてなんだ、と聞かれ聖月は頬を膨らませる。
「このランキングってなんなの?」
「そっからか……」
忘れていた、と額に手を当てて天を仰ぐ竜崎。怜毅と颯斗は顔を見合わせて、そう言えば外部生と呟いた。
ここからはさっくり進むと思います。
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真宮家崩壊のニュースはすぐに知れ渡った。長いこと君臨し続けた王者の失墜は、多くの者に驚きを齎した。その中には喜びの声を上げた者もいた。
「それだけの大ニュースだったからねぇ」
「あはははは」
教室で新聞を睨みつけながら蓮は唸る。彼もまた資産家の子である。時流には敏感で、第一報を聞いた時にはひっくり返ったという。彼の家からすれば真宮は雲の上の存在で直接的なつながりはないものの、やはり少なくない影響があるという。
なんで突然、と呻く彼を前に当事者の中心たる聖月は乾いた笑いを零して視線を泳がせる事しか出来なかった。どうしたものか、と考えていた聖月。ため息をついて新聞をたたんだ蓮を見て片肘を突いたのだが。
「そう言えば、聖月が休んでた時だよねコレ」
「あはははは」
何気ない一言に思い切りえぐられる。これは察しているのいないの、と注意深く様子を窺った聖月だが、当の蓮は本当に何気なく言っただけらしい。その意識は別な所に飛んでいるようだ。
「なんか調子狂う」
「えっと蓮君?話が飛躍し過ぎてついていけないんだけど?」
「だって、イベント事に目がない聖月が全く反応してないんだもん」
意味ありげに見られて聖月は苦笑する。まったく、校内もざわついてるじゃんとぼやきながら蓮が出してきた紙に書いてあったのは。
「らんきんぐ?」
「ああ、まさか知らなかったからあの反応?」
失敗したかも、と蓮が一人反省会を始める。それは、校内人気ランキングの詳細だった。
「と言う訳で、今年もあの狂ったランキングの次期がやって来たわけだ」
どことなくやつれた顔でそう言ったのは竜崎。ここは風紀室。風紀委員を集めた彼は、これからの予定を発表していたのだ。真剣な顔をして聞いているのは風紀委員たち。仕事をしっかりやらなければ、という緊張感と総長・副総長が揃っている事への高揚から何時もより気合が入っているようだ。流石にNukusに所属している者達で構成されていると思うべきか。
そんな中、ソファに寝そべって詳細資料を呼んでいた聖月がはいはーい、と手を上げた。
「なんだ」
「なんで俺はここに居るの?」
「喧しい。お前は風紀委員だからだ」
「まって初耳」
本人としては茶々を入れただけなのだが、予想の斜め上を行く解答を返され絶句する。どういう事?!と飛び起きると、眼前に委嘱状が突き付けられた。それを持っているのは満面の笑顔の颯斗。
「戻って来たんだもん。きちんと仕事してもらうよ」
「おぉう」
ばっちり自分の名前が入っている事を確認し、渋々委嘱状を受け取る。どこか恨めし気に竜崎に視線を投げるが、本人は全く無視して説明を続けている。聖月は力なくソファに逆戻りした。
例の事件の後、聖月は本人の希望もあり第九学園に復帰していた。本来ならば復帰する事は出来なかったはずなのだが、条件付きで許されたのだ。
帰ってきたとき、心配していた蓮に泣かれて抱き着かれる……と思いきや、勢いよく突進され拳骨を貰ったかと思ったら正座での説教大会二時間コースとなった。その溜め込んだ黒々しいものと言ったら、怒り狂った颯斗と同等のものを感じさせる。その勢いの良さと聖月を問答無用で従わせた圧力に竜崎が感心して風紀に誘ったのは余談である。
そして、学業の事やクラスメイトへのフォローに追われている間に風紀に入る事が決定していたらしい。ちゃっかりしているというか何というか。主に、恋人を傍に置いておきたい竜崎、脱走が得意な友人を監視下に置きたい怜毅・高宮・嵯峨野、書類仕事にうんざりした颯斗が結託した結果である。
どうにか回避する方法を考えた聖月は、一瞬の思考の後頭を抱えた。性格の問題はさておき成績優秀な聖月は学校側としても問題ないと判断するだろうし、風紀のメンツは聖月の信奉者しかいないし、生徒会はこれ以上引っ掻き回されて堪るかと聖月を監視して縛り付ける気満々である。学園祭の女装と体育祭の活躍の噂が広まった結果、生徒たちからも歓迎の声が上がっている。最後の砦と思い浮かべる親衛隊はというと、既に竜崎達が洗脳済みで寧ろ泣いて喜ばれた記憶あり。
つまり外堀内堀全て埋められているという事。逃げ道なし、とすぐに察したのだ。
「以上が説明だ。何か質問は」
「はいはーい、しっつもーん」
「……無い様だな」
「ちょっと?!」
サクッと無視され非難の声を上げる聖月。面倒くさそうに一瞥され半眼になる。扱い酷いんじゃない、と抗議するが散々振り回され続けた彼らとしては時自業自得だと言いたくなる。ため息をついてなんだ、と聞かれ聖月は頬を膨らませる。
「このランキングってなんなの?」
「そっからか……」
忘れていた、と額に手を当てて天を仰ぐ竜崎。怜毅と颯斗は顔を見合わせて、そう言えば外部生と呟いた。
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