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番外編・才能と努力
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知り合ったばかりの森脇進に、
「おまえは、ピアノに興味があるのか?」
と訊ねたのがいけなかったらしい。
矢奈としてはただ、建築科の学生である森脇がやけに音楽科のレッスン室の周辺に出没することが不思議で、理由を訊いたつもりだったのだが、その場で顔を赤くして口ごもってしまった森脇にとっては、いわれなき侮蔑の意味のこもった質問に感じたのだそうだ。
森脇が彼のバイト先、ジャズバー『カノン』に矢奈を招待したのは、二日後のことだった。
ごく単純な照明しかなく、一人のマスターと二人のバーテンダーが目を配るのに丁度よい広さの店内では、人の品そのものが浮き彫りになるようだった。誘いに応じたものの、さほど森脇の存在を真剣に受け止めていなかった矢奈はレッスン帰りの白いシャツとジーンズのままの軽装で、大人びた店の雰囲気のなかでは、自身を迷い込んだ子供のように感じていた……のは、当人だけの戸惑いである。
こちらは手馴れたバーテンダーである森脇の目には、淡々とショットグラスの中身を干していく矢奈の姿が、こういう場に慣れきった大人のように映っており、ほどよく酔ったら長居せずに帰ってしまうような気がして不安だった。
見せたいものが始まるまでは居てほしいものの、細かい話をしたりおねだりができるほど、まだお互いに親しくはない。
店にはピアノがあった。ドラムセットと空の椅子、譜面台が二台。時間が近づくと店内が混雑し始め、矢奈のいるカウンター席からは、ピアノの蓋しか見えなくなる。
「進ちゃん」
と、マスターが森脇を呼んだ。中年の、人好きのする細面の男性だが、女のような言葉遣いが気にかかる。
「お友達に聴かせたいんでしょう? 席を移してさしあげたら?」
「矢奈……」
「ここでいい」
そう言って矢奈はまた、ショットグラスの中身を空けた。潮の匂いがするシングルモルトだった。
楽譜を手にした男と、ドラム、アコースティック・ベースのバンドが客席と同じ高さのステージに立つ。ピアノの椅子に奏者が座ったとき、森脇は矢奈の表情をうかがった。曲目はスタンダードな、ワシントン・ヤングの「マイ・フーリッシュ・ハート」から始まる。
矢奈の目が、ほんのかすかに見開かれた。濡れたショットグラスの表面を滑り下りた指がカウンターの天板に触れ、リズムをとるでもなく木目を愛撫する。
「どう?」
森脇は訊ねた。
「ああ……」
矢奈は答えたが、森脇を見ていなかった。彼の視線はジャズバンドに釘づけになっていた。まるで珍しい宝物を見つけた子供のような眼差しだ。
厳格な枠付けや決まりのない、感情をじかに揺さぶろうとする音楽がクラシックを専門とする矢奈の心に新鮮に響いたのだろうか。
しかし、三曲目の出だしでドラムスが急いだ。
ベースがリズムを戻そうと引っぱり、あいだに挟まれたピアノが無理に強い音を出す。そこからは、メチャクチャだった。森脇は手で顔を覆う。
「ひどいな」
矢奈が正直に呟いた。そこから立て直せないままバンドは演奏を止めてしまい、客席からはまばらな拍手が起こる。さっさと席を立ったピアニストがカウンターに近づき、矢奈の隣に腰を下ろした。そうして森脇にバーボンを注文しながら、新顔の客である矢奈に向かってドラムスとベースの悪口を吐き出す。
「あいつらがオレの足を引っ張ったんだ。そうだろ? 兄さん」
同意を求められた矢奈は、少し考えてから、
「いまの場合なら、ベースに合わせたほうが取り戻しやすかったと思う。数小節後にあなたのソロがあるならなおさら、無理に足並みをそろえないほうが聴きばえもしたのじゃないか?」
「偉そうな口を利くな、兄さん」
ピアニストは一気にバーボンを飲み干し、手の甲で唇を拭った。
「だけどな、バンド演奏ってのは、そんなに単純なものじゃないんだぜ。兄さん、まだ若いんだろ。ジャズなんてキース・ジャレットあたりが本物だと信じこんでるクチじゃないのかい?」
「申し訳ないが、ジャズは聴いたことがなかった」
「なんだって?」
「いまはじめて聴いたんだ。面白いものだと思った」
男はぽかん、と口をあけていたが、やがて大きな声で笑い出した。つられて微笑んだ矢奈の足元にあったトートバッグから、音大の印が押された楽譜がはみ出しているのを見つけ、それじゃあこいつを弾けるのか? と訊ねる。
「あまり上手ではない」
と矢奈は答えた。グラスを磨きながら森脇は、冗談じゃない、と呟く。
首を竦めたピアニストはすでに帰り支度をはじめていたバンドの仲間を呼び止めた。
「おい、これから音大の学生さんが、おまえらに正統派の音楽ってもんを教えてくれるってよ」
大声で言ったため、店中の客がカウンターに注目する。男が同じ言葉を繰り返すと、中途半端に終わったバンド演奏に欲求不満を募らせていた客たちのあいだから、拍手が湧き起こった。
矢奈は心底戸惑った様子で、自分はまだほんとうに学生に過ぎない、と言った。
「だから、学生さんだって説明しただろ。偉そうに薀蓄たれてくださるよか、聴かせてもらったほうが早いわな。まあ、上手なんて期待しちゃいないからさ、発表会用の曲でも一つや二つ、弾いてくださりゃお客だって満足もするさ」
「中城さん、やめてください」
森脇が厳しい口調で、ピアニストを制した。しかし、店の客達は期待の視線を矢奈に注いでいる。マスターが森脇の肩を叩いて宥め、矢奈に向かって身を乗りだした。
「無理を言うつもりはないのよ。けれど、お願いできるかしら、お客さん」
矢奈は迷ったように、爪を噛んだ。しかしピアニストの男が景気づけにバーボンを注ごうとすると、断り、立ち上がる。差し出されたレッスン用の楽譜もカウンターに残していった。
「矢奈」
森脇が呼び止める。
「……ごめん」
矢奈が笑ったように見えたのは、気のせいか。ピアノの上にはジャズピアニストの楽譜が置き去りにされていた。譜面といっても、旋律のほかにコード表しか載っていない、メモに近いものである。
矢奈がピアノの椅子に座ると、改めて拍手が起こった。それが静かになるのを待つあいだに、譜面にざっと目を通す。ピアニストの男が、カウンターでひとつ大きなしゃっくりをした。
「中城さん」
「悪い悪い、進ちゃん。しかしあんたの友だちは負けず嫌いみたいだな。なにもムリしてオレの楽譜なんて弾くこと……」
ひっく。そして、ピアニストの息が詰まった。矢奈ははじめ、右手だけで静かに旋律を辿った。ときおり和音を交えるほかは、地味な演奏に聴こえた。ただ、同じピアノを使っているというのに音の深みだけは、先ほどのバンド演奏など比較にならない。相当に強い腕の持ち主のようだ。ピアニストの中城はまだ余裕を見せようとして、震える手でタバコをくわえ、
「は、まあ学生さんらしいわな。おとなしい弾き方で」
森脇の口元が弛んだ。どこが? と視線で問う。
主旋律に和音を加え、弾き終えたところで曲調をつかんだのだろう。矢奈は突然左手を持ち上げ、低音のトリルをはじめた。
右手があくまでゆっくりと甘い旋律を奏でるあいだ、ごく低い音から最高音まで、流れるように小刻みな音を往復させる。息も吐かせぬほどの速さだった。
自然に交差される腕の動きは淀みなく、音に合わせて長めの黒髪が揺れるのを、マスターは「セクシーねえ……」とため息まじりに賛嘆した。
矢奈が調子にのってきたのがわかった。演奏に没頭してしまうといつも、たとえ傍に森脇がいようといまいと関係ないように、ただ見えない音の世界だけに心を浸していく。もともと与えられたテーマからの即興演奏は音楽科の授業では必須のもので、ただ、矢奈はさきほど聴いたばかりのジャズの奏法を聴き真似で取り入れようとしているのが、いつもの弾き方と違う理由らしい。
クラシックの均質性を引きずったタッチは曲調に比してまだ重く、手探りで展開される演奏は純粋なジャズとは違うものかもしれなかったが、酒場の雰囲気を打ち壊しにするような、押しつけがましさは微塵もなかった。矢奈は決して、壇上から見下ろす音楽を客に「弾いてやっている」のではない。音で人を楽しませようとしていた。
その思いは客たちにも伝わるのか、みなグラスを傾ける手をとめ、徐々に店全体を震わせるほど響きわたるようになった矢奈のピアノの音に、心と体を委ね、痺れさせていた。
五分ほどの幻の時間。演奏を終え、うるさいほどの拍手のなかカウンターに戻ってきた矢奈に、中城は言った。
「兄さん、上手じゃないか。だがあれはジャズじゃねえよ」
負け惜しみに過ぎなかった。森脇がグラスを磨く手に力がこもり、みしりと音を立てる。思わずなにか言いだしそうになるのを「進ちゃん」と、マスターが落ちついた声音で制した。
矢奈はピアニストの言葉に眉をあげたが、しかしすぐに首を傾げると、
「……そうかもしれない」
と呟いた。それは真剣な顔つきで、ずっと年上の中城のほうがたじろぐほどに。
後日談。図書館から出てきた矢奈が、齋藤名誉教授と鉢合わせた。
「まあ、矢奈くん。ずいぶんたくさんの借りだしだこと……ジャズのCDのようですね?」
「はい……」
「そう。様々なジャンルに興味を持つのはよいことですが――まあ、本まで!」
著名なクラシックピアニストである齋藤教授が、呆れた声をあげた。矢奈が気まずそうに抱えこんでいる本のタイトルは『ジャズの基本奏法』。クラシック一筋だったはずの生真面目な学生がなぜ新たな音楽ジャンルに目覚めたのか――もちろん、教授は理由を知らなかった。
「おまえは、ピアノに興味があるのか?」
と訊ねたのがいけなかったらしい。
矢奈としてはただ、建築科の学生である森脇がやけに音楽科のレッスン室の周辺に出没することが不思議で、理由を訊いたつもりだったのだが、その場で顔を赤くして口ごもってしまった森脇にとっては、いわれなき侮蔑の意味のこもった質問に感じたのだそうだ。
森脇が彼のバイト先、ジャズバー『カノン』に矢奈を招待したのは、二日後のことだった。
ごく単純な照明しかなく、一人のマスターと二人のバーテンダーが目を配るのに丁度よい広さの店内では、人の品そのものが浮き彫りになるようだった。誘いに応じたものの、さほど森脇の存在を真剣に受け止めていなかった矢奈はレッスン帰りの白いシャツとジーンズのままの軽装で、大人びた店の雰囲気のなかでは、自身を迷い込んだ子供のように感じていた……のは、当人だけの戸惑いである。
こちらは手馴れたバーテンダーである森脇の目には、淡々とショットグラスの中身を干していく矢奈の姿が、こういう場に慣れきった大人のように映っており、ほどよく酔ったら長居せずに帰ってしまうような気がして不安だった。
見せたいものが始まるまでは居てほしいものの、細かい話をしたりおねだりができるほど、まだお互いに親しくはない。
店にはピアノがあった。ドラムセットと空の椅子、譜面台が二台。時間が近づくと店内が混雑し始め、矢奈のいるカウンター席からは、ピアノの蓋しか見えなくなる。
「進ちゃん」
と、マスターが森脇を呼んだ。中年の、人好きのする細面の男性だが、女のような言葉遣いが気にかかる。
「お友達に聴かせたいんでしょう? 席を移してさしあげたら?」
「矢奈……」
「ここでいい」
そう言って矢奈はまた、ショットグラスの中身を空けた。潮の匂いがするシングルモルトだった。
楽譜を手にした男と、ドラム、アコースティック・ベースのバンドが客席と同じ高さのステージに立つ。ピアノの椅子に奏者が座ったとき、森脇は矢奈の表情をうかがった。曲目はスタンダードな、ワシントン・ヤングの「マイ・フーリッシュ・ハート」から始まる。
矢奈の目が、ほんのかすかに見開かれた。濡れたショットグラスの表面を滑り下りた指がカウンターの天板に触れ、リズムをとるでもなく木目を愛撫する。
「どう?」
森脇は訊ねた。
「ああ……」
矢奈は答えたが、森脇を見ていなかった。彼の視線はジャズバンドに釘づけになっていた。まるで珍しい宝物を見つけた子供のような眼差しだ。
厳格な枠付けや決まりのない、感情をじかに揺さぶろうとする音楽がクラシックを専門とする矢奈の心に新鮮に響いたのだろうか。
しかし、三曲目の出だしでドラムスが急いだ。
ベースがリズムを戻そうと引っぱり、あいだに挟まれたピアノが無理に強い音を出す。そこからは、メチャクチャだった。森脇は手で顔を覆う。
「ひどいな」
矢奈が正直に呟いた。そこから立て直せないままバンドは演奏を止めてしまい、客席からはまばらな拍手が起こる。さっさと席を立ったピアニストがカウンターに近づき、矢奈の隣に腰を下ろした。そうして森脇にバーボンを注文しながら、新顔の客である矢奈に向かってドラムスとベースの悪口を吐き出す。
「あいつらがオレの足を引っ張ったんだ。そうだろ? 兄さん」
同意を求められた矢奈は、少し考えてから、
「いまの場合なら、ベースに合わせたほうが取り戻しやすかったと思う。数小節後にあなたのソロがあるならなおさら、無理に足並みをそろえないほうが聴きばえもしたのじゃないか?」
「偉そうな口を利くな、兄さん」
ピアニストは一気にバーボンを飲み干し、手の甲で唇を拭った。
「だけどな、バンド演奏ってのは、そんなに単純なものじゃないんだぜ。兄さん、まだ若いんだろ。ジャズなんてキース・ジャレットあたりが本物だと信じこんでるクチじゃないのかい?」
「申し訳ないが、ジャズは聴いたことがなかった」
「なんだって?」
「いまはじめて聴いたんだ。面白いものだと思った」
男はぽかん、と口をあけていたが、やがて大きな声で笑い出した。つられて微笑んだ矢奈の足元にあったトートバッグから、音大の印が押された楽譜がはみ出しているのを見つけ、それじゃあこいつを弾けるのか? と訊ねる。
「あまり上手ではない」
と矢奈は答えた。グラスを磨きながら森脇は、冗談じゃない、と呟く。
首を竦めたピアニストはすでに帰り支度をはじめていたバンドの仲間を呼び止めた。
「おい、これから音大の学生さんが、おまえらに正統派の音楽ってもんを教えてくれるってよ」
大声で言ったため、店中の客がカウンターに注目する。男が同じ言葉を繰り返すと、中途半端に終わったバンド演奏に欲求不満を募らせていた客たちのあいだから、拍手が湧き起こった。
矢奈は心底戸惑った様子で、自分はまだほんとうに学生に過ぎない、と言った。
「だから、学生さんだって説明しただろ。偉そうに薀蓄たれてくださるよか、聴かせてもらったほうが早いわな。まあ、上手なんて期待しちゃいないからさ、発表会用の曲でも一つや二つ、弾いてくださりゃお客だって満足もするさ」
「中城さん、やめてください」
森脇が厳しい口調で、ピアニストを制した。しかし、店の客達は期待の視線を矢奈に注いでいる。マスターが森脇の肩を叩いて宥め、矢奈に向かって身を乗りだした。
「無理を言うつもりはないのよ。けれど、お願いできるかしら、お客さん」
矢奈は迷ったように、爪を噛んだ。しかしピアニストの男が景気づけにバーボンを注ごうとすると、断り、立ち上がる。差し出されたレッスン用の楽譜もカウンターに残していった。
「矢奈」
森脇が呼び止める。
「……ごめん」
矢奈が笑ったように見えたのは、気のせいか。ピアノの上にはジャズピアニストの楽譜が置き去りにされていた。譜面といっても、旋律のほかにコード表しか載っていない、メモに近いものである。
矢奈がピアノの椅子に座ると、改めて拍手が起こった。それが静かになるのを待つあいだに、譜面にざっと目を通す。ピアニストの男が、カウンターでひとつ大きなしゃっくりをした。
「中城さん」
「悪い悪い、進ちゃん。しかしあんたの友だちは負けず嫌いみたいだな。なにもムリしてオレの楽譜なんて弾くこと……」
ひっく。そして、ピアニストの息が詰まった。矢奈ははじめ、右手だけで静かに旋律を辿った。ときおり和音を交えるほかは、地味な演奏に聴こえた。ただ、同じピアノを使っているというのに音の深みだけは、先ほどのバンド演奏など比較にならない。相当に強い腕の持ち主のようだ。ピアニストの中城はまだ余裕を見せようとして、震える手でタバコをくわえ、
「は、まあ学生さんらしいわな。おとなしい弾き方で」
森脇の口元が弛んだ。どこが? と視線で問う。
主旋律に和音を加え、弾き終えたところで曲調をつかんだのだろう。矢奈は突然左手を持ち上げ、低音のトリルをはじめた。
右手があくまでゆっくりと甘い旋律を奏でるあいだ、ごく低い音から最高音まで、流れるように小刻みな音を往復させる。息も吐かせぬほどの速さだった。
自然に交差される腕の動きは淀みなく、音に合わせて長めの黒髪が揺れるのを、マスターは「セクシーねえ……」とため息まじりに賛嘆した。
矢奈が調子にのってきたのがわかった。演奏に没頭してしまうといつも、たとえ傍に森脇がいようといまいと関係ないように、ただ見えない音の世界だけに心を浸していく。もともと与えられたテーマからの即興演奏は音楽科の授業では必須のもので、ただ、矢奈はさきほど聴いたばかりのジャズの奏法を聴き真似で取り入れようとしているのが、いつもの弾き方と違う理由らしい。
クラシックの均質性を引きずったタッチは曲調に比してまだ重く、手探りで展開される演奏は純粋なジャズとは違うものかもしれなかったが、酒場の雰囲気を打ち壊しにするような、押しつけがましさは微塵もなかった。矢奈は決して、壇上から見下ろす音楽を客に「弾いてやっている」のではない。音で人を楽しませようとしていた。
その思いは客たちにも伝わるのか、みなグラスを傾ける手をとめ、徐々に店全体を震わせるほど響きわたるようになった矢奈のピアノの音に、心と体を委ね、痺れさせていた。
五分ほどの幻の時間。演奏を終え、うるさいほどの拍手のなかカウンターに戻ってきた矢奈に、中城は言った。
「兄さん、上手じゃないか。だがあれはジャズじゃねえよ」
負け惜しみに過ぎなかった。森脇がグラスを磨く手に力がこもり、みしりと音を立てる。思わずなにか言いだしそうになるのを「進ちゃん」と、マスターが落ちついた声音で制した。
矢奈はピアニストの言葉に眉をあげたが、しかしすぐに首を傾げると、
「……そうかもしれない」
と呟いた。それは真剣な顔つきで、ずっと年上の中城のほうがたじろぐほどに。
後日談。図書館から出てきた矢奈が、齋藤名誉教授と鉢合わせた。
「まあ、矢奈くん。ずいぶんたくさんの借りだしだこと……ジャズのCDのようですね?」
「はい……」
「そう。様々なジャンルに興味を持つのはよいことですが――まあ、本まで!」
著名なクラシックピアニストである齋藤教授が、呆れた声をあげた。矢奈が気まずそうに抱えこんでいる本のタイトルは『ジャズの基本奏法』。クラシック一筋だったはずの生真面目な学生がなぜ新たな音楽ジャンルに目覚めたのか――もちろん、教授は理由を知らなかった。
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