精霊の国に嫁いだら夫は泥でできた人形でした。

ひぽたま

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第17話

1・誰が行くか

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 巨木を燃やしたときと劣らない爆風が琥珀たちに襲いかかる。
 エルクウァルが杖をかざすと、彼を取り巻いていた精霊が琥珀とディランも巻き込み、上空の穴から外へ逃がした。一気に雲に届く高さまで飛び、空の広さに一瞬ほっとしたものの、下を見るなり息を呑む。
 エリウの美しい緑の島のど真ん中に、赤黒い炎の揺らぐ大穴が穿たれていた。
「なに……あれは……」
 まるで巨大な目玉だ。大穴から噴きあがる炎が、周囲の草原を舐めて広がる。
 丘をとり囲んでいたコルマクの軍が火の粉に襲われ、馬が暴れて逃げだそうとしていた。戦車が横倒しになる。
 ディランは助けに行きたいらしいが、動けない。炎の勢いが強すぎて、うかつに高度を下げると黒焦げにされそうだ。
「……エルクウァル、いったいなにが起こっているんだ!」
「メイヴが、剣に残っていた魔法を自らに還したんです。英雄ルーの力、精霊王バロールを滅ぼすだけの魔法、長年積み重ねてきたドルイドの祈りの力。残滓に過ぎないとしても、我々に一矢報いるくらいは造作もない」
「でも、どうやって。メイヴはもう精霊を従えられないのでしょうっ……?」
 琥珀はディランの腕越しに炎に目を凝らした。真っ赤に燃える炎の中心に、より暗く赤い人型の影が揺らめいている。
(あれは……メイヴなの?)
 影と目が合った。笑った、と思った瞬間、炎の手が琥珀めがけて伸びてくる。
「琥珀!」
 ディランも同じものを見たらしい。琥珀を腕のなかに庇ったが、炎は容赦なく二人を絡めとろうとする。エルクウァルが杖をかざし、風を起こした。より高く逃げようとしたのに、雲を越えたところでふいに周りを取り巻く風が消え、三人そろって宙に投げだされる。
「なっ……どうしたんだ!」
「わかりませんっ……、急に精霊たちが消えた!」
「落ちる―――……!」
 炎の穴に真っ逆さま。炎に舐められる寸前、横から吹いた突風が三人をさらった。落下地点がそれて丘を転がる。さんざんな扱いに慣れている琥珀やディランはともかく、エルクウァルまでも一緒に草まみれになるのは珍しい。
「エルクウァル、大丈夫? 助かったわ、ありがとう」
「いまの風を起こしたのは僕じゃありませんよ」
「え? でも――」
 琥珀は魔法使いではないし、ディランも精霊を扱えない。だったら誰がと周りを見回していると、琥珀が組み敷いていたディランが急に低い声を出した。
『我だ』
「きゃ……っ」
 びっくりして飛びのいたものの、すぐに思いだす。精霊使いの王、バロールだ。もはや体も命も失っている千年前の王は、再びディランの体を借りながらゆっくりと起きあがった。
『我が風を招いた――が、かわいそうなことをした。あの炎は触れた精霊の命を吸いとり、我がものとしてしまうらしい。メイヴが操っているのは魔法ではなく、ルーの剣の力だ』
 バロールが草地に触れる。琥珀も真似して手を置いてみると、緑の草はまだ色が残っているものの、地面が恐ろしいほどに熱い。
『奪われた精霊の命は、精霊使いを殺す毒に変わる。我がかつて大木としてエリウの地に根を張りめぐらせたように、メイヴは炎の腕をじわじわと地下に広げておるな。あの女はもはや女王であることを諦め、エリウの大地そのものに成り変わろうとしている』
「そうしたら……どうなるの?」
『エリウの地から精霊が消え、精霊使いは死に絶える。この島は草木一本生えぬ炭のかたまりと化すだろうな』
「止めなきゃ!」
 空気が熱い。息をするのも苦しかったが、黙っていられなかった。
「エリウを滅ぼしたって、メイヴの救いにはならないもの。あの人はただ駄々っ子みたいに、手に入らないものを欲しがっているだけ。英雄ルーの剣がメイヴに力を与えているなら、まだ間に合ううちにあの場所に戻って、剣を抜いてくるわ」
「そうですね。でも琥珀姫はこのまま海まで逃げて、虹の国に帰ってください」
 なにを言いだすのかと目を剥く琥珀の腕をつかみ、エリクウァルは炎の熱から守るように杖をかざす。
「そこまでは精霊たちをもたせます。あなたはまだ子供だし、そもそもこの国の問題とは無関係だ。もう充分です、このようなところで無駄に命を落とすことはな……ぅっ」
 熊の手だったらぶん殴れたのに、いかんせん非力な手では、殴る代わりにローブの襟首をつかむのが精一杯だった。琥珀は自分よりもほっそりしたエルクウァルの首を引き寄せて、間近から睨む。蜜色の目に涙が宿っていた。
「それ以上くだらないことを言ったら、あなたの杖を炎にくべてやるから。無関係って、なに? わたしは虹の国の王女で、エリウの王太子ディランの婚約者です。わたしの役目はディランを支えることと、嫁ぎ先のエリウの国を守ること。それができなくて、おめおめ国に帰るつもりなんてないんだから!」
「おれが行く」
 いまの言葉は――ディランだ。バロールが乗り移っているのが気持ち悪いように胸を押さえて顔をしかめていたが、琥珀とエルクウァルと目が合うと、首を竦めて笑ってみせた。
「あの火に飛びこんで、英雄の剣を引っこ抜いてくりゃいいんだろ? あんなんでも一応は母親みたいなものだし、親の不始末は子の責任として片づけてやるよ」
「なにバカなこと言いだすのよ……あんな火に飛びこんだりしたら、死んじゃう!」
「そのバカなことを言いだしたのはあんただろうが。だいいち、おれは死なねえよ。泥でできた体が燃えるわけねえし」
「藁は燃えるわよ。髪がなくなって、頭がつるつるになっちゃうかも」
「そうなっても愛してくれるんだろ? おれの婚約者は」
 ディランの眼差しが優しい。エルクウァルの紫でもなく、バロールの緑の光でもなく、炭色の落ちついた黒が彼自身の瞳だ。その目に映る、ぱちぱちと爆ぜる火の粉。琥珀は草のしおれた大地を一度きゅっと握りしめ、離した。
「わかったわ。じゃあ、一緒に行きましょう」
「はあっ?」
 驚かれるのはわかっていた。反対されるのも。でも、譲らない。
「エリウの地でルーの剣に触れるのは、わたしとディランだけだわ。だけどディランは燃えなくても、メイヴに壊されるかもしれない――万が一そうなっても、わたしは絶対に剣までたどりつく。この魔法の国を壊させたりしない」
 ディランが顔をしかめたのは、琥珀の懸念と同じものを彼も隠していたからだろう。メイヴのもう一人の息子、アリルは琥珀たちの目の前であっさりと砕かれてしまったのだから。
 もう時間がない。身を乗りだしてディランの返事を待つ琥珀の上に、ふいに重いものが被せられた。
「それを被っておいきなさい」
 振りあおぐと、黒髪の美女が立っていた。いつも身にまとっているマントを琥珀に被せたせいで、熊のラブが不審そうに美女の匂いを嗅いでいる。
「アルティオさん……!」
 アルティオの後ろにはシアヴィルもいた。神殿から無事に逃げ出せたのだ、よかった。錦糸の衣に、次々に飛んできてはまとわりつく火の粉を払い落しながらぶつぶつ言っている。
「ああ、もう、これしか着替えるものがないのに焦がしてしまったらどうすればいいのよ。せっかく解放された古代の精霊たちもどんどん炎に囚われていってしまうしーー地下にはダナー神族の国があるのよ。メイヴ女王陛下はそこまでも燃やし尽くしてしまうおつもりかしら」
 口調は軽いが、表情は深刻だ。シアヴィルはダナー一族であり、地下に閉じ込められているのは彼女の同胞なのだから。
「琥珀姫。事情は、精霊たちが教えてくれました」
 アルティオが、ラブをなだめるように撫でながら言った。
「メイヴがルーの剣を使って、エリウを滅ぼそうとしているのね……言うとおりにならないのなら壊してしまおうだなんて、あの女王らしい。私たちはもう生きるのに飽いていますが、エリウの地は違う。支配する一族が変わっても、この島は変わらずに在らなければならないものです。琥珀姫……エリウを守るために、あなたの命をかけてくれますか?」
「もちろんです。だってこの国はわたしが憧れた魔法の国で、ディランの国でもあるから」
 大好きな国で、大好きな……人が愛する国を守るためなら、がんばれる。琥珀はすっくと立ちあがった。
 アルティオの毛皮は湿っていて、重たいけれど温かい。獣臭さは落ちつく香りだ。頭からすっぽり被り、胸元を掻き合わせると、まるで全身が熊になったように力が溢れる気がした。
「その毛皮なら、しばらくはメイヴの炎を防げるでしょう。ルーの剣さえ抜いてしまえば、女王を保つものはなくなります」
「上空から行くと炎の直撃を受けてしまって、だめよ。剣の神殿の吹き抜けからなかに入れるから、迷路の壁を越えて女王陛下のもとに行って」
 シアヴィルが指さす先に、石垣があった。心強い味方の助言に琥珀は素直に喜び、勇んで歩きだそうとしたのに、ディランはまだ動かない。シアヴィルの本心を伺うように、じっと顔を見つめている。
「……メイヴを倒してもいいのか? シア。あんたはダナー神族の予言者なのに」
 ディランの言葉に笑みを返し、シアヴィルは懐から石のナイフを取り出した。豊かな金の巻き毛に押し当て、さく、と軽い音を立てて根元から断つ。
 目を丸くしている琥珀に片目を瞑ってみせてから、シアヴィルはディランの上に金髪をかざし、手を放した。
「怒りの炎に取り巻かれた女王陛下はほとんど目が見えないはずよ。私の気配をまとっていけば、すぐ近くまであなただと気づかれない」
 巻き毛が宙に漂うなり黄金の鱗粉に変わる。きらめきに包み込まれたディランは咽せ込んだ。
「シアヴィル……あなたも、まさか」
 人間ではない? 切った髪がかたちを変えるということは……。
「私は自由になりたいのよ、琥珀」
 短くなった巻き毛が、ほっそりしたうなじを彩る。ダナー神族はみんな美しいのかもしれないが、髪の短くなったシアヴィルは格別にきれいだ。
「千年生きても、同じところに縛られて掃除をするだけの毎日なんて生きているとは言えないわ。教えてあげましょうか? いまは小さな精霊たちももともとは、このエリウの地を統べる民だったの。バロール率いる精霊使いの民に滅ぼされて姿かたちは変わってしまったけれど、彼らは今もエリウの地でちゃんと生きている」
 シアヴィルにつられて空を見上げれば、空気の精霊がくるくる回りながら炎の舌と鬼ごっこしているのが見えた。草のなかから大地の精霊がぽこぽこ顔を出し、様子を伺うようにきょろきょろしている。シアヴィルはその中の一人をつかまえ、逃げるようにと風下へ押しやった。
「誰がこの地を支配しようとどうでもいい。ただ、私はふわふわでもふもふの生き物が大好きなの。女王陛下がそれまでも滅ぼしてしまおうとするなら、止めてくれるほうに与するだけ」
「……わかった。がんばるね」
 琥珀が毛皮に包まれた両手を握りしめて誓うと、ディランがぷっと吹きだした。
「なにがおかしいの?」
「いや……なんだ、ついに全身熊になっちまったな、と」
 アルティオの毛皮は熊丸々一頭分あるので、いまの琥珀の見た目はもはや、ただの熊だった。船の上で苺を食べてから、手が熊になり、肘まで熊になり、ついに全身、と。
 シアヴィルが急に頬を火照らせて、強く同意する。
「そう! そうなのよ、今の琥珀は全身もふもふの熊そのもの……ああ、我慢していたのに言われちゃったらもう、耐えられない。琥珀、ちょっとだけブラッシングさせて、それからお腹に顔を埋めさせてくれないかしら」
「あ、あとでね、シアヴィルーーわたしたち、もう行かなきゃならないから」
「そうだな」
 ディランもようやく腰をあげ、琥珀の毛皮の肩を抱いた。シアヴィルを振り返り、頷く。
「シア。これまであんたが、おれが剣を抜こうとするのを止めずに見守ってくれたことを忘れない。できっこないってわかっていたんだろうに、挑戦させてくれたことが希望だったよ……行こうぜ、琥珀。メイヴを止めてエリウを救えるのは、おれたちだけだ」
「……うん!」
 おれたち、だ。仲間として認めてくれた。琥珀は勢いよく走りだしたつもりだったが、熊の足が爪先に引っかかっていきなりつんのめった。
「おっと」
 と、ディランが抱きとめてくれたものの、シアヴィルに教えられた石垣が途方もなく遠く感じられる。
「しっかり走れよ。生まれたての子熊じゃねえんだから」
 そう言われても、毛皮は重いし、足に絡まるのだ。いっそ這って走ろうかと身構えていると、
「手伝いますよ」
 エリクウァルが杖を構えた。大地から頭だけ出していた精霊たちが次々に飛び出てきて、琥珀とディランの周りにわらわら集まる。みんなほのかに赤い顔をしているのは、メイヴの炎の熱のせいか。そしてエルクウァルまでが涼やかな目元を赤く火照らせていた。
「大地の精霊は力持ちですから、彼らに入り口まで運ばせます。ただし――忘れないでくださいよ、ディラン。あなたが無事に戻ってこなければ、僕がコナハトの王太子として琥珀と結婚しますからね」
 エルクウァルはコナハト王の王子であり、ディランよりも王太子となる資格はある――けれど、それとこれとは別。
「わたしの結婚相手はディランって決まっているのよ」
「ふられるのはもう慣れました。ここから先はただ僕も、自分のやるべき義務を果たすだけです」
「きゃ……」
 琥珀の体が浮いた。お尻のあたりが温かい。毛皮が邪魔で足元が見えないので、隣のディランを見ると、赤い顔をした大地の精霊たちが大勢集まって彼を担いでいた。たぶん琥珀も同じように持ちあげられているのだろう。ディランの目が面白そうにこちらを見ている。そして、
「剣の神殿まで。幸運を祈ります」
 エルクウァルが命じたとたん、大地の精霊たちが一斉に走り出す。
「き……きゃ―――っっ!」
 わっせ、わっせとすごい早さだ。飛ぶほど高くはないが浮いているので、丘の上をふわふわの橇で滑っていく心地。草の海が周りを流れていく。戸惑いが抜けると不謹慎でも楽しい気持ちが湧いてきて、隣を見ればディランも笑っていた。
「あんたら、もうおれを恐れないのかっ?」
 そういえば、いままで精霊たちは彼を見れば逃げだしていたのだった。問いかけに、大地の精霊たちは口々に答える。
『精霊使いの匂い、する』『バロールの匂い、する』『ダナーの女王の臭い、するな』『でも』
「でも……?」
『おまえの体、エリウの土でできている。エリウから生まれた戦士なら、怖くない』
「ああ、そうだな!」
 ディランが笑っていた。いつもの自虐の消えた、心からの笑顔で、
「おれはエリウの戦士だ!」
(よかった)
 彼はちゃんと、母親が見つかったのだ。そして自分自身が誰かわかったのだ。エリウの子であり、エリウの戦士。そして琥珀は、そんなディランがますます好き。どんどん草は流れ、吹き抜けの石垣が近づいてくる。琥珀はこれだけは言っておきたくて、叫んだ。
「ディラン、あのね、あのね……わたし、この国に来てよかった!」
「おれも。あんたに出会えて、心からよかったよ」
 風を切る音のなかでも、ちゃんと聞こえた。琥珀が欲しかった言葉だ。ほっとして、心が決まる。これから先なにが起ころうと、どうなろうと迷わない。琥珀は、ディランと目を見交わし――彼の炭色の目に見惚れたその時に。
『わっせ――!』
 大地の精霊たちが一斉に、石垣の穴に向かって琥珀とディランを投げこんだ。
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