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第2話。
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二〇〇五年の八月は、暑かった。異様な気候で、俺も自宅二階にいて、エアコンを絶えず、回していた。それぐらい、暑さが厳しかったのである。暑気は、絶えず蒸した。妻は、香澄という名前で、俺は、香澄さんと呼んでいた。香澄は、俺のことを、名前の祐司で呼んでいた。俺たちは、惹かれ合った。強烈なまでに。そして、香澄は、自分の連れ子の、真輔と百合を、俺に紹介した。当時、真輔は二十三歳で、うちの町の某建設会社の専属設計士をやっていた。図面を引いたり、顧客と交渉したりするのが仕事で、朝から晩まで働いていた。しかも、高卒でだ。香澄が、地元の高校を出てから、専門学校に行って、洋裁を勉強し、手に職を身に付けて、真輔を高校までやった。学費は、全額、香澄が出した。妻は、実にしっかりしていて、全く、動じない性格だったのである。俺は、実は、十七歳の頃から、町の隣にある、別の町の精神科に、月一で通っていた。病名は、統合失調症だった。当時、いい薬はなかったが、今はある。今は、起きてすぐに、食事をとって、精神安定剤を飲めば、寛解する。いい時代だ。昔は、差別病だった。精神病自体が。俺は苦しんだ。散々。大学を辞めざるを得なかったのも、症状が悪化したからだ。俺にとって、一番苦しかった。俺は、香澄と、その家族と、手を取り合うことにした。実に、いい関係だったのである。同居婚じゃなかったが、俺は通い婚で、香澄の家に通った。週末などに。俺にとって、もう一点、厄介だったのが、父親だった。統合失調症の子供の親にありがちな、毒親だったのである。実際、父親は、会社を経営していたが、六十代後半の時に倒産させてしまい、多額の借金は、実の兄である伯父が弁済した。その頃から、父は、早発性の認知症に罹り始めた。俺が見るところ、レビー小体型認知症のようだった。奇妙なことを言い出す。玄関に犬がいるとか、寝室に女の子が見えるとか……。それは、俺の患っている統合失調症とは対極的な、不治の病で、決して治らない類の病気だったのである。
二〇〇五年の八月は、暑かった。異様な気候で、俺も自宅二階にいて、エアコンを絶えず、回していた。それぐらい、暑さが厳しかったのである。暑気は、絶えず蒸した。妻は、香澄という名前で、俺は、香澄さんと呼んでいた。香澄は、俺のことを、名前の祐司で呼んでいた。俺たちは、惹かれ合った。強烈なまでに。そして、香澄は、自分の連れ子の、真輔と百合を、俺に紹介した。当時、真輔は二十三歳で、うちの町の某建設会社の専属設計士をやっていた。図面を引いたり、顧客と交渉したりするのが仕事で、朝から晩まで働いていた。しかも、高卒でだ。香澄が、地元の高校を出てから、専門学校に行って、洋裁を勉強し、手に職を身に付けて、真輔を高校までやった。学費は、全額、香澄が出した。妻は、実にしっかりしていて、全く、動じない性格だったのである。俺は、実は、十七歳の頃から、町の隣にある、別の町の精神科に、月一で通っていた。病名は、統合失調症だった。当時、いい薬はなかったが、今はある。今は、起きてすぐに、食事をとって、精神安定剤を飲めば、寛解する。いい時代だ。昔は、差別病だった。精神病自体が。俺は苦しんだ。散々。大学を辞めざるを得なかったのも、症状が悪化したからだ。俺にとって、一番苦しかった。俺は、香澄と、その家族と、手を取り合うことにした。実に、いい関係だったのである。同居婚じゃなかったが、俺は通い婚で、香澄の家に通った。週末などに。俺にとって、もう一点、厄介だったのが、父親だった。統合失調症の子供の親にありがちな、毒親だったのである。実際、父親は、会社を経営していたが、六十代後半の時に倒産させてしまい、多額の借金は、実の兄である伯父が弁済した。その頃から、父は、早発性の認知症に罹り始めた。俺が見るところ、レビー小体型認知症のようだった。奇妙なことを言い出す。玄関に犬がいるとか、寝室に女の子が見えるとか……。それは、俺の患っている統合失調症とは対極的な、不治の病で、決して治らない類の病気だったのである。
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