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第3話。
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「祐司。お父さん、変ね」
香澄が、その年の八月下旬に会ったとき、言った。俺も頷いた。確かに変だよ、と。妻は、義理の父親の認知症、とりわけ、レビー小体型認知症の症状に気付いていたのである。当時から、父親の挙動不審は目立った。何と言うか、幻覚とか、幻視、妄想、その他、感情の変化、激昂など、全部が、その悪い病気、いわゆる、レビー小体型認知症に起因するものだった。はっきり言って、最低最悪だった。当時から、血糖値も、尿酸値も、コレステロール値も検査項目は全部悪く、夜は、酒を浴びるほど飲んで、十時間とか寝る。実際、手の付けようがなかった。俺も、迷うことがあった。結局、認知症、とりわけ、予後が悪いレビー小体型認知症は、十年生存率が二パーセント程度で、はっきり言って、助からないのである。妻は言った。「お父さんを入所させたら?老人施設に」と。俺は言い返した。「簡単に言わないでよ。金掛かるんだからさ。俺だって、オヤジに出す金なんか、もったいなくて、しょうがないし……」すると、妻が、「じゃあ、デイサービスとか、通所は?それなら、いいでしょ?」と言ってきた。それも簡単じゃない。難しい。そう考えるしか、結論が出なかった。俺は、高校生の頃から、父親の毒親ぶりというのを、痛いほど味わってきたし、はっきり言って、どうだってよかったのである。朝起きても、歯も磨かないし、髭も剃らない、顔も洗わない……、それが、実に、レビー小体型認知症の人間の行動パターンなのである。俺にはそれが分かっていた。父親が七十になったとき、早くも、記憶障害が出始めた。いよいよ、悪化してきた。俺にとって、そして、香澄にとっても、戦闘の始まりだったのである。
「祐司。お父さん、変ね」
香澄が、その年の八月下旬に会ったとき、言った。俺も頷いた。確かに変だよ、と。妻は、義理の父親の認知症、とりわけ、レビー小体型認知症の症状に気付いていたのである。当時から、父親の挙動不審は目立った。何と言うか、幻覚とか、幻視、妄想、その他、感情の変化、激昂など、全部が、その悪い病気、いわゆる、レビー小体型認知症に起因するものだった。はっきり言って、最低最悪だった。当時から、血糖値も、尿酸値も、コレステロール値も検査項目は全部悪く、夜は、酒を浴びるほど飲んで、十時間とか寝る。実際、手の付けようがなかった。俺も、迷うことがあった。結局、認知症、とりわけ、予後が悪いレビー小体型認知症は、十年生存率が二パーセント程度で、はっきり言って、助からないのである。妻は言った。「お父さんを入所させたら?老人施設に」と。俺は言い返した。「簡単に言わないでよ。金掛かるんだからさ。俺だって、オヤジに出す金なんか、もったいなくて、しょうがないし……」すると、妻が、「じゃあ、デイサービスとか、通所は?それなら、いいでしょ?」と言ってきた。それも簡単じゃない。難しい。そう考えるしか、結論が出なかった。俺は、高校生の頃から、父親の毒親ぶりというのを、痛いほど味わってきたし、はっきり言って、どうだってよかったのである。朝起きても、歯も磨かないし、髭も剃らない、顔も洗わない……、それが、実に、レビー小体型認知症の人間の行動パターンなのである。俺にはそれが分かっていた。父親が七十になったとき、早くも、記憶障害が出始めた。いよいよ、悪化してきた。俺にとって、そして、香澄にとっても、戦闘の始まりだったのである。
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