朱の空

カランコロン

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待ち人は来ず

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「……寒い」


 夕食後、千穂は光に言われた通り施設の敷地内にある桜の下に来ていた。


15分程待っているが、未だに光が姿を見せることはなく、時間だけが過ぎていく。


もう4月だというのに、寒さが弱まる気配もなく、その上、光に「桜の下」と指定されてしまったので、弱まっていく夕日に当たりに行くわけにもいかず、防寒のために荷物から引っ張り出してきたカーデガンだけが唯一の救いだった。


「……にしても光、なんでここに呼び出したんだろう……変なの」


灯はそう呟いて、首を窄めカーデガンの襟を引き寄せた。


「……おい灯」


後ろから声が聞こえた。


だがそれは光のものではなかった。


「あれ、三笠?」


「あれ、じゃねーよ。なんでこんなくそ寒い所にいんだよ……」


「そうよ。もう消灯時間も近いし,さっさとかえるわよ」


そういって式が腕を掴む。


そのままひこずって行こうとするので、慌てて事情を話した。


「光が?」


事情を話したものの、二人揃って怪訝そうな表情になった。


「そんなの無視よ。今日は大事な日なんだから、さっさとかえるわよ」


「だな。こんなとこにいたら灯が風邪引く 。・・・え」


「ん?」


「どうかした?」


誰もいない門のほうを見て、三笠は立ち止まった。


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