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第一部
第十三話 好感度が意外と高かったようだ
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気が付いたら俺は医務室のベッドで横になっていた。寒気は相変わらずあるが、先ほどよりは落ち着いている。
「気が付かれましたの?」
「ミシェル?」
俺が起きたことに気が付いたミシェルが顔を覗き込んでくる。
大好きな彼女の顔が近づいてきてドキドキするところのはずなんだが、風邪で寝込んでいる時のような倦怠感が強くそれどころではなかった。
「勇者さまの体には、私の魔力は刺激が強すぎたみたいですの。本当にごめんなさい」
どうやら俺は、彼女の魔力が付与されたアイテムを使用したことで、熱を出し倒れたらしい。
医務室にはミシェルが運んでくれたそうだ。運んだといっても、ワープを使って空いているベッドの上に転移させたらしい。
昼過ぎに倒れてからだいぶ時間が経ったのか、窓の外からは夕日が差し込んでいた。
「熱はだいぶ落ち着いてきましたけど、無理をしてはいけませんわ。私が責任をもって看病いたしますので、ゆっくり休んでくださいませ」
額で熱を測っているのか、手袋を外した彼女の手が触れた。とても冷たい手だが、熱にうなされている今の俺にはとても心地がいい。
手が離れてしまうのが名残惜しくて、思わず手首をつかむ。少し力を入れたら折れてしまいそうな細さだ。
「もう少し……このままで」
「結構甘えん坊さんなんですのね」
離れようとした手が再び俺の額に乗ると、優しくなでられた。本当に冷たくて気持ちがいい。
困ったような表情のミシェルを眺めながら俺は再び眠りについた。
翌朝――俺の体調不良は完治していた。身体が軽いし寒気も悪寒もきれいさっぱりだ。とはいえ服は昨日のまま、しかも熱を出して汗をかいたから着替えたいのだが、何故か右手をミシェルに握られている。俺としては全く身に覚えがない。
とうの彼女は椅子に座った状態で、ベッドのふちにうつ伏せになって寝ていた。まさか寝ずに看病してくれていたのだろうか?
原作でも責任感が強かったミシェルのことだから、昨日のことを考えればおかしくはない話だ。しかし大貴族の令嬢が、そんなことして大丈夫なのだろうか。本人は良くても外聞がよろしくないんじゃないか?
とりあえず、このままの体制のままだと寝苦しいだろうし、俺はベッドから降りるとミシェルの体を持ち上げた。
彼女が身に着けているのは鎖骨のあたりは露出しているが、それ以外はがっちりガードされた服なので、触る場所に困るというのはまずない。
なので起こさないよう、丁寧にベッドへ寝かせて毛布を掛けておく。しかし仰向けに寝かせてもこのボリュームとか本当に大きいな。
部屋に戻る前に、サイドテーブルに書き置きを残しておこうと、書くものを探していたところでミシェルが目を覚ました。
「ん……むぅ。…………はっ!?」
「おはようミシェル。昨晩はありがとう。おかげで元気になったよ」
「それはよかったですわ」
ベットから慌てて飛び起きると、ミシェルは衣服を確認した。たしかに今さっきも胸を見てたけど、俺ってそんなに信用無いんだろうか。
俺が勝手に落ち込んでいるうちに、彼女は軽く髪を整えながら佇まいを直すといつもの様子に戻った。
「勇者さまも元気になったことですし、私は戻ります」
「あっ、それなんだけどさ」
「なんですの?」
「勇者さまっていうの、やめてくれないかな?」
ここで俺がずっと気になっていたことを告げた。
人に紹介するときは名前を言ってくれるのに、彼女が俺を呼ぶときは『勇者さま』だなんて他人行儀というかなんというか。ようするに寂しい。
「ではエリアス様?」
「様はいらないって。元傭兵だからか、そういうのってなんか慣れないんだ」
「では、これからはエリアスとお呼びしますわね。私のことはミシェル様とお呼びなさい」
名前で呼んでくれるようになったのは嬉しいけど、今度はすごくいい笑顔で自身に対する呼び名を改めるよう言われてしまった。
そうだよな。今まで普通に呼び捨てにしてたし、タメ口きいてたもんな。相手は王家の傍系であるリリエンソール家の一人娘にして魔導兵団長。そりゃあ怒られるよ。
「ミシェル様」
「ふふふっ、冗談よ。ミシェルでよろしいわ」
あれ? 揶揄われたってことは好感度が結構高いのか。まだまだ利用価値とかの選別中だと思ってたけど嬉しいな。
原作通りの関係はミシェルの性別がゲームと違うので無理だろうけど、お近づきになるって目標はまずは達したんじゃないだろうか。
「さて、それでは今度こそ失礼しますわ」
「うん。ゆっくり休んで」
ミシェルを見送ると、俺も自分の部屋に戻り身支度を整えた。
そこでふと、命のしずくの効果を確認していないことに気が付いたので、ステータスを見ることにした。
最大HPが6増えている。これは元の効果より少し高いだけなので許容範囲だ。というか魔力が力より高くなってるんだけど。へたな魔導士より高いってどうなってんだ。俺の兵種は物理攻撃専門だぞ。
しかし何故か魔防が2、技が3増えている。ミシェルの様子からして、俺が倒れた後に他のアイテムを使ったとは思えないし、あとで確認しておいたほうがよさそうだ。
とりあえず食堂で腹ごしらえしようと部屋を出ると、なんだか少し騒がしい。
「帝国が?」
「そんなまさか。邪竜なんてお伽噺だろ」
帝国といえば、この大陸には一つしかない。リンデン帝国のことだ。しかしこのタイミングで、その名を聞くとは思ってもみなかった。
邪竜がどうとか聞こえるし、復活の儀式でも始めたのだろうか?
とはいえ話している連中はあまり交流がないものたちなので話に混ざれるわけでもなく、俺はそのまま食堂を目指す。
ロビンにでも聞けば、何が噂になっているのか詳細を教えてくれるだろう。
「おはよー。昨日はミシェルとなにしてたんだ?」
「実験に付き合ってたんだよ。それにしても朝から騒がしいけど何かあったのか?」
食堂で朝食をとっていたロビンは、昨日俺が倒れたことを知らないのか反応はいつも通りだ。
俺の問いに「知らないの!?」と返してくると、彼の口から先ほど聞いた噂話の詳細を聞くことができた。
「気が付かれましたの?」
「ミシェル?」
俺が起きたことに気が付いたミシェルが顔を覗き込んでくる。
大好きな彼女の顔が近づいてきてドキドキするところのはずなんだが、風邪で寝込んでいる時のような倦怠感が強くそれどころではなかった。
「勇者さまの体には、私の魔力は刺激が強すぎたみたいですの。本当にごめんなさい」
どうやら俺は、彼女の魔力が付与されたアイテムを使用したことで、熱を出し倒れたらしい。
医務室にはミシェルが運んでくれたそうだ。運んだといっても、ワープを使って空いているベッドの上に転移させたらしい。
昼過ぎに倒れてからだいぶ時間が経ったのか、窓の外からは夕日が差し込んでいた。
「熱はだいぶ落ち着いてきましたけど、無理をしてはいけませんわ。私が責任をもって看病いたしますので、ゆっくり休んでくださいませ」
額で熱を測っているのか、手袋を外した彼女の手が触れた。とても冷たい手だが、熱にうなされている今の俺にはとても心地がいい。
手が離れてしまうのが名残惜しくて、思わず手首をつかむ。少し力を入れたら折れてしまいそうな細さだ。
「もう少し……このままで」
「結構甘えん坊さんなんですのね」
離れようとした手が再び俺の額に乗ると、優しくなでられた。本当に冷たくて気持ちがいい。
困ったような表情のミシェルを眺めながら俺は再び眠りについた。
翌朝――俺の体調不良は完治していた。身体が軽いし寒気も悪寒もきれいさっぱりだ。とはいえ服は昨日のまま、しかも熱を出して汗をかいたから着替えたいのだが、何故か右手をミシェルに握られている。俺としては全く身に覚えがない。
とうの彼女は椅子に座った状態で、ベッドのふちにうつ伏せになって寝ていた。まさか寝ずに看病してくれていたのだろうか?
原作でも責任感が強かったミシェルのことだから、昨日のことを考えればおかしくはない話だ。しかし大貴族の令嬢が、そんなことして大丈夫なのだろうか。本人は良くても外聞がよろしくないんじゃないか?
とりあえず、このままの体制のままだと寝苦しいだろうし、俺はベッドから降りるとミシェルの体を持ち上げた。
彼女が身に着けているのは鎖骨のあたりは露出しているが、それ以外はがっちりガードされた服なので、触る場所に困るというのはまずない。
なので起こさないよう、丁寧にベッドへ寝かせて毛布を掛けておく。しかし仰向けに寝かせてもこのボリュームとか本当に大きいな。
部屋に戻る前に、サイドテーブルに書き置きを残しておこうと、書くものを探していたところでミシェルが目を覚ました。
「ん……むぅ。…………はっ!?」
「おはようミシェル。昨晩はありがとう。おかげで元気になったよ」
「それはよかったですわ」
ベットから慌てて飛び起きると、ミシェルは衣服を確認した。たしかに今さっきも胸を見てたけど、俺ってそんなに信用無いんだろうか。
俺が勝手に落ち込んでいるうちに、彼女は軽く髪を整えながら佇まいを直すといつもの様子に戻った。
「勇者さまも元気になったことですし、私は戻ります」
「あっ、それなんだけどさ」
「なんですの?」
「勇者さまっていうの、やめてくれないかな?」
ここで俺がずっと気になっていたことを告げた。
人に紹介するときは名前を言ってくれるのに、彼女が俺を呼ぶときは『勇者さま』だなんて他人行儀というかなんというか。ようするに寂しい。
「ではエリアス様?」
「様はいらないって。元傭兵だからか、そういうのってなんか慣れないんだ」
「では、これからはエリアスとお呼びしますわね。私のことはミシェル様とお呼びなさい」
名前で呼んでくれるようになったのは嬉しいけど、今度はすごくいい笑顔で自身に対する呼び名を改めるよう言われてしまった。
そうだよな。今まで普通に呼び捨てにしてたし、タメ口きいてたもんな。相手は王家の傍系であるリリエンソール家の一人娘にして魔導兵団長。そりゃあ怒られるよ。
「ミシェル様」
「ふふふっ、冗談よ。ミシェルでよろしいわ」
あれ? 揶揄われたってことは好感度が結構高いのか。まだまだ利用価値とかの選別中だと思ってたけど嬉しいな。
原作通りの関係はミシェルの性別がゲームと違うので無理だろうけど、お近づきになるって目標はまずは達したんじゃないだろうか。
「さて、それでは今度こそ失礼しますわ」
「うん。ゆっくり休んで」
ミシェルを見送ると、俺も自分の部屋に戻り身支度を整えた。
そこでふと、命のしずくの効果を確認していないことに気が付いたので、ステータスを見ることにした。
最大HPが6増えている。これは元の効果より少し高いだけなので許容範囲だ。というか魔力が力より高くなってるんだけど。へたな魔導士より高いってどうなってんだ。俺の兵種は物理攻撃専門だぞ。
しかし何故か魔防が2、技が3増えている。ミシェルの様子からして、俺が倒れた後に他のアイテムを使ったとは思えないし、あとで確認しておいたほうがよさそうだ。
とりあえず食堂で腹ごしらえしようと部屋を出ると、なんだか少し騒がしい。
「帝国が?」
「そんなまさか。邪竜なんてお伽噺だろ」
帝国といえば、この大陸には一つしかない。リンデン帝国のことだ。しかしこのタイミングで、その名を聞くとは思ってもみなかった。
邪竜がどうとか聞こえるし、復活の儀式でも始めたのだろうか?
とはいえ話している連中はあまり交流がないものたちなので話に混ざれるわけでもなく、俺はそのまま食堂を目指す。
ロビンにでも聞けば、何が噂になっているのか詳細を教えてくれるだろう。
「おはよー。昨日はミシェルとなにしてたんだ?」
「実験に付き合ってたんだよ。それにしても朝から騒がしいけど何かあったのか?」
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