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第一部おまけ
メテオライト01.故郷の地シスル
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※40話頃のメテオライト視点。
実に不本意ではあるが、僕は今こうして故郷であるシスル王国の地を踏んでいる。十年以上は帰ってきていなかったので、知り合いなど片手で足りる程度が生存していればいいほうかもしれない。ひとまずはローレッタとの国境沿いの砦に駐屯していると思われる知り合い――母方の親戚に会いに行くつもりだ。
ミシェル経由でオニキスからの手紙を貰った時は一体何事かと思ったものだが、彼はエリアスと違い父上や弟の助命は特に考えておらず僕に都合のいい舞台を準備してくれていた。
「お~い! お~い!」
マーリン様に国境近くまでワープで送ってもらいはしたが、以降は徒歩だと想定していた。なので、ここで声をかけてくれる存在は貴重だ。遠目だが見た感じ正規軍の騎士のようだし、旅の吟遊詩人を名乗れば近くの街くらいまでは案内してくれるだろう。
御誂え向きにシスル王国民が大好きな『翠緑の勇者の英雄譚』を誰よりも詳しく語ることができる。
「あっ、やっぱりメテオライト様だ! 俺です俺、ヘリオドールっす!」
「お懐かしゅうございます。子供のころ遊び相手をつとめていたジェイドです」
ある程度まで騎士たちが近づいてきたところで、僕の持つ『軍師の眼』が懐かしい友人たちの名を映し出した。彼ら二人は僕が国を追われる前までは、共に過ごすことが多かった友人たちだ。
「オブシディアン様が言っていた通りだったなジェイド」
「こうしてまたメテオライト様にお会いできて……このジェイド、感涙の極みです」
「オニキス将軍が手紙を出してからの期間とか情勢とか色々考えたら、今日か明日辺りにこの辺りにいらっしゃるんじゃないかって言ってたんですよ。いや~、流石はオブシディアン様。名推理っすね」
なるほど。二人が僕を迎えに来た理由は分かった。しかし外見に関しては、そこまで情報がいっていたのだろうか? 少し前にハイドランジア王国でオニキスに会ったが、あの時とは僕の服装も違う。
「それはそうと、十年以上会っていなかったのによく僕だと判ったね」
シスル王国を歩き回るには、いつもの吟遊詩人の衣装では寒い。なので少し前まで修行用に使っていた魔導士の装束に、いつものストールとターバンを重ねたものをマント代わりにあわせてきた。オニキスから服装の説明を受けていたとしたら、なぜ僕の姿を遠目で見ただけで判別できたのだろう。
「ああ、メテオライト様ちっこいですから」
「ヘリオドール、それは失礼すぎるだろう!」
ヘリオドールの無礼な一言を叱りつけながらジェイドが頭を下げさせている。慣れているのかその手並みは鮮やかなものだ。
シスル王国で成人男性の平均身長は180cmほどである。しかし僕の身長はそれには遠く及ばない165cmほどしかない。身体が小さいとは昔からよく言われいたが、子供のころはさほど身長差を感じなかったこの二人との身長差は現在、頭一個分近くに及んでいる。なので正直、何というか、そう――
「頭が高い!」
じゃれ合っている幼馴染たちを見ていたら、なんだか昔が懐かしくなった。僕は冗談めかしながらヘリオドールの頭を軽く叩く。ヘリオドールも子供のころと同じように笑い、それに釣られたジェイドも思わずといった様子で笑みをこぼす。
「近くにリリエンソール渓谷から撤収してきた部隊が駐屯してるので、そちらまでご案内いたします」
ジェイドの馬に乗せてもらい進んでいくと、砦に辿り着くよりも先にミスルトー侯爵家の者が使いとして現れた。そのまま騎士団の駐屯場所ではなく、近くの街にあるミスルトー家の邸に案内される。
辿り着くなり叔父上に捕まると服を仕立てるための採寸や、すき放題に伸ばしっぱなしで傷んだ髪を手入れされたりした。最低限、王子らしい身なりに整えるまでは砦に顔を出せないのだろう。今も仕立て屋とデザイン面で揉めているのか、ただでさえ怖い叔父上の顔が更に恐ろしいものに見える。この先、彼が部下になるのは恐怖でしかない。顔的な意味でだが、本当に怖い。思わず背筋が伸びるし、敬語も飛び出してくるほどだ。
しかし叔父上は礼儀作法や上下関係に厳しい男だ。いくらオニキスに担がれて仕方なくとはいえ、表舞台に出てきたからには上司として振る舞わないと後で叱責される。子供のころは敬語で話しかけていたが、こればかりは今後も続くだろうから慣れるしかない。
「ああ、そうだ。オニキスが神槍ゲイレルルを欲しがっていたから回収しに行きたいんだけど、この二人を借りて行っても大丈夫かな?」
「承知いたしました。急ぎ準備をさせます」
「それと……周辺諸侯で邪魔してきそうなところの処理は任せたよ」
「御意のままに」
現状で邪魔になるのは、父上の後妻であるヘレンの息がかかったマラカイト将軍派の者たちだ。
対するオニキスは僕が国を離れた以降に騎士となったのだが、その活躍は原作通り目覚ましく、かつてない速さで騎士団での地位を強めていった。僕が帰還した際に動きやすくなるようにと、母上の実家であるラナンキュラス家や、その周辺の騎士たちを上手いこと自分の派閥に引き込んで来たらしい。
「さてと、ヘリオドールとジェイドは僕と登山しようか」
目指すは霊峰ガリアの頂にある封印の祠だ。ここに神槍ゲイレルルが封じられている。
平地だと今はまだ雪が降り積もっていないが、さすがに山頂付近となれば雪があるはず。登りだけでも最低で五日はかかるだろうが、帰り道はマーリン様に手伝ってもらって良いものを準備してあるので楽ができる。
準備が整うと霊峰ガリアに近い麓の村までワープの杖で送ってもらう。流石に平地とは気温差があるようだ。吐き出す息は白い。防寒着を身に着け必要な荷物を背負うと、山頂を目指して歩き始めた。
実に不本意ではあるが、僕は今こうして故郷であるシスル王国の地を踏んでいる。十年以上は帰ってきていなかったので、知り合いなど片手で足りる程度が生存していればいいほうかもしれない。ひとまずはローレッタとの国境沿いの砦に駐屯していると思われる知り合い――母方の親戚に会いに行くつもりだ。
ミシェル経由でオニキスからの手紙を貰った時は一体何事かと思ったものだが、彼はエリアスと違い父上や弟の助命は特に考えておらず僕に都合のいい舞台を準備してくれていた。
「お~い! お~い!」
マーリン様に国境近くまでワープで送ってもらいはしたが、以降は徒歩だと想定していた。なので、ここで声をかけてくれる存在は貴重だ。遠目だが見た感じ正規軍の騎士のようだし、旅の吟遊詩人を名乗れば近くの街くらいまでは案内してくれるだろう。
御誂え向きにシスル王国民が大好きな『翠緑の勇者の英雄譚』を誰よりも詳しく語ることができる。
「あっ、やっぱりメテオライト様だ! 俺です俺、ヘリオドールっす!」
「お懐かしゅうございます。子供のころ遊び相手をつとめていたジェイドです」
ある程度まで騎士たちが近づいてきたところで、僕の持つ『軍師の眼』が懐かしい友人たちの名を映し出した。彼ら二人は僕が国を追われる前までは、共に過ごすことが多かった友人たちだ。
「オブシディアン様が言っていた通りだったなジェイド」
「こうしてまたメテオライト様にお会いできて……このジェイド、感涙の極みです」
「オニキス将軍が手紙を出してからの期間とか情勢とか色々考えたら、今日か明日辺りにこの辺りにいらっしゃるんじゃないかって言ってたんですよ。いや~、流石はオブシディアン様。名推理っすね」
なるほど。二人が僕を迎えに来た理由は分かった。しかし外見に関しては、そこまで情報がいっていたのだろうか? 少し前にハイドランジア王国でオニキスに会ったが、あの時とは僕の服装も違う。
「それはそうと、十年以上会っていなかったのによく僕だと判ったね」
シスル王国を歩き回るには、いつもの吟遊詩人の衣装では寒い。なので少し前まで修行用に使っていた魔導士の装束に、いつものストールとターバンを重ねたものをマント代わりにあわせてきた。オニキスから服装の説明を受けていたとしたら、なぜ僕の姿を遠目で見ただけで判別できたのだろう。
「ああ、メテオライト様ちっこいですから」
「ヘリオドール、それは失礼すぎるだろう!」
ヘリオドールの無礼な一言を叱りつけながらジェイドが頭を下げさせている。慣れているのかその手並みは鮮やかなものだ。
シスル王国で成人男性の平均身長は180cmほどである。しかし僕の身長はそれには遠く及ばない165cmほどしかない。身体が小さいとは昔からよく言われいたが、子供のころはさほど身長差を感じなかったこの二人との身長差は現在、頭一個分近くに及んでいる。なので正直、何というか、そう――
「頭が高い!」
じゃれ合っている幼馴染たちを見ていたら、なんだか昔が懐かしくなった。僕は冗談めかしながらヘリオドールの頭を軽く叩く。ヘリオドールも子供のころと同じように笑い、それに釣られたジェイドも思わずといった様子で笑みをこぼす。
「近くにリリエンソール渓谷から撤収してきた部隊が駐屯してるので、そちらまでご案内いたします」
ジェイドの馬に乗せてもらい進んでいくと、砦に辿り着くよりも先にミスルトー侯爵家の者が使いとして現れた。そのまま騎士団の駐屯場所ではなく、近くの街にあるミスルトー家の邸に案内される。
辿り着くなり叔父上に捕まると服を仕立てるための採寸や、すき放題に伸ばしっぱなしで傷んだ髪を手入れされたりした。最低限、王子らしい身なりに整えるまでは砦に顔を出せないのだろう。今も仕立て屋とデザイン面で揉めているのか、ただでさえ怖い叔父上の顔が更に恐ろしいものに見える。この先、彼が部下になるのは恐怖でしかない。顔的な意味でだが、本当に怖い。思わず背筋が伸びるし、敬語も飛び出してくるほどだ。
しかし叔父上は礼儀作法や上下関係に厳しい男だ。いくらオニキスに担がれて仕方なくとはいえ、表舞台に出てきたからには上司として振る舞わないと後で叱責される。子供のころは敬語で話しかけていたが、こればかりは今後も続くだろうから慣れるしかない。
「ああ、そうだ。オニキスが神槍ゲイレルルを欲しがっていたから回収しに行きたいんだけど、この二人を借りて行っても大丈夫かな?」
「承知いたしました。急ぎ準備をさせます」
「それと……周辺諸侯で邪魔してきそうなところの処理は任せたよ」
「御意のままに」
現状で邪魔になるのは、父上の後妻であるヘレンの息がかかったマラカイト将軍派の者たちだ。
対するオニキスは僕が国を離れた以降に騎士となったのだが、その活躍は原作通り目覚ましく、かつてない速さで騎士団での地位を強めていった。僕が帰還した際に動きやすくなるようにと、母上の実家であるラナンキュラス家や、その周辺の騎士たちを上手いこと自分の派閥に引き込んで来たらしい。
「さてと、ヘリオドールとジェイドは僕と登山しようか」
目指すは霊峰ガリアの頂にある封印の祠だ。ここに神槍ゲイレルルが封じられている。
平地だと今はまだ雪が降り積もっていないが、さすがに山頂付近となれば雪があるはず。登りだけでも最低で五日はかかるだろうが、帰り道はマーリン様に手伝ってもらって良いものを準備してあるので楽ができる。
準備が整うと霊峰ガリアに近い麓の村までワープの杖で送ってもらう。流石に平地とは気温差があるようだ。吐き出す息は白い。防寒着を身に着け必要な荷物を背負うと、山頂を目指して歩き始めた。
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