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第三部
第07話 会議
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馬を数頭潰して急ぎ帰ってきた王都アヴァロンはアイリス島の内乱や、帰り道に追加で仕入れた情報であるマグノリアとウィステリアの諍いなどもあってなのか嫌な雰囲気が流れていた。
俺は一度騎士団の寮に戻ると旅装を解き、この後のことも考えていつでも招集に応じられる準備を整える。
今日フェイス様の護衛はメレディスやロビンたちだ。今は会議中のようで中には入れない俺には情報が殆ど手に入らない状況だ。
急いできたとはいっても俺が王都に帰ってくるまでに結構な時間がかかっているが、それでも聖王国の対応は決まっていなかったらしい。なので今後の方針はまだわからない。
しかしアイリス島はその全土が聖王国の同盟国であるアイリス王国であるし、マグノリアは王政を廃したとはいっても聖王国の貴族であることは変わりないのでこれを放っておくわけにもいかない。王都奪還のときに助けてくれた草原の民を蔑ろにもできないだろうから、会議が長引くのは容易に想像が出来た。
部屋でじっと待っているのも落ち着かず、寮内の共有スペースに出る。俺と同じように休暇中でも落ち着かない者たちが一定数居たようで、同じ場所を行ったり来たりしている姿がいくつか見えた。
「おお、エリアス殿。ちょうど良かった、陛下がお呼びですぞ」
気持ちを落ち着けるために温かい飲み物でも貰ってこようかと思っていたところで、見知った使用人に呼び止められる。この様子だと、どちらかの戦場に調停役となる誰かの護衛として付いていくことになるのだろう。
「わかりました。すぐに向かいます」
そのまま礼を述べて廊下をまっすぐ進む。前の戦争で荒らされてしまった城内も今やすっかり元通りとまではいかないが、以前のような優美さを取り戻していた。
廊下の突き当りを曲り暫く進むと会議室へと辿り着く。警備の兵に軽く挨拶を済ませると、俺は室内に向けて参上の挨拶をし返事を受けると室内へと踏み入る。
「休暇中だったというのに、すまないな」
「いえ。この一大事に俺ひとりだけのんびりするという訳にもいきません」
「そうか、ありがとう。いきなり本題になりすまないが、此度の紛争の仲裁に入るために私とアントンでそれぞれに出向こうと思っている」
グレアム陛下に労いの言葉を貰いながら、近くにいた文官から一枚の書類を渡される。どうやら会議の概要が書かれているようだ。
「話によるとマグノリアとウィステリアの紛争の場で、竜ないしは竜族の姿が確認されたそうだ。どちらの勢力に肩入れしているのかは不明だが、念の為にもエリアスに同行を頼みたい。もちろんフェイスの了承は得た」
書類によると竜の目撃情報を仕入れたのは一年程前から王宮で働き始めた女官の手の者だ。会議室内では王弟であるアントン殿下のすぐそばに控えている。
この女官はアイリス王国に避難していたころに知り合った魔導士だそうで、世間知らずで小心者だったアントン殿下が最近は積極的に表舞台に立つようになったのは彼女の助言が原因らしく、急な立ち振る舞いの変化にミシェルたちも警戒していると聞いている。
いちおう剣の心得はあるそうなのだが、アントン殿下自体の戦闘能力は体格や普段の所作などから鑑みても大したものだと判る。だがこの女官――ジュディスからは邪悪とは違うが、他の者たちとは別の違和感のような何かを感じた。
「わかりました。お任せください」
月虹のレギンレイヴから生まれた神器には制約があり、邪竜ロキとの戦い以降は一定の期間は封印する必要があった。
通常の鍛冶師では修理不可能な伝説の武器は、然るべき場所に封印することで自己修復するらしく、戦いの中で破損したり傷んだ部分が再生するそうだ。
そういった背景から竜族に対抗できる聖王国の神器は現在使用不可能の状態だ。そうなると現在のローレッタ大陸には竜族に対抗できる手段は俺の持つ聖剣テミスしか無くなる。
「うむ。では準備ができ次第、出立する」
そうしてその場は解散となり、俺は最初の目的であったモンタギュー殿からの依頼の報告をするために廊下で彼を待つ。
親父との喧嘩やアイリス島の件などもあって予定よりも滞在は短くなってしまったのだが、それでも見てきたことは伝えたい。
少しすると細かい調整などの話が終わったのかモンタギュー殿が廊下に出てくる。
「やあ。遠いのに大変だったろう」
「この一大事じゃ仕方ないですよ。それで街の様子なんですけど――」
情報量としては少ないかもしれないが、久しぶりに帰った故郷の様子を伝える。
そのままちょっとした世間話になったところで、流石というべきか、ものの見事に親父と喧嘩してきたことを聞き出されてしまった。
「ふむ。父君と喧嘩を」
「この歳になってお恥ずかしい限りです」
「トマス殿のことは私も知っているけれど、気難しさは相変わらずのようだね」
「えっ? モンタギュー殿、親父と知り合いだったんですか?」
「娘が生まれる少し前くらいに、仕官の誘いをしたんだけど断られてしまってね。どうやら我が家は彼が嫌う人種が多すぎるらしい」
モンタギュー殿なら親父がかつてどこに仕官していたのかを知っているかもしれない。だがそれを聞こうとしたところでモンタギュー殿が他の人に呼ばれてしまい、それを見送る。
俺が子供のころにも何人かの騎士や身なりの良い男が親父を訪ねてやってきていたことがあった。ある日を境にぱったりと無くなったが、思い返してみればどれも士官の誘いだった気がする。
そうして数日後、出立の日が来た。
俺は一度騎士団の寮に戻ると旅装を解き、この後のことも考えていつでも招集に応じられる準備を整える。
今日フェイス様の護衛はメレディスやロビンたちだ。今は会議中のようで中には入れない俺には情報が殆ど手に入らない状況だ。
急いできたとはいっても俺が王都に帰ってくるまでに結構な時間がかかっているが、それでも聖王国の対応は決まっていなかったらしい。なので今後の方針はまだわからない。
しかしアイリス島はその全土が聖王国の同盟国であるアイリス王国であるし、マグノリアは王政を廃したとはいっても聖王国の貴族であることは変わりないのでこれを放っておくわけにもいかない。王都奪還のときに助けてくれた草原の民を蔑ろにもできないだろうから、会議が長引くのは容易に想像が出来た。
部屋でじっと待っているのも落ち着かず、寮内の共有スペースに出る。俺と同じように休暇中でも落ち着かない者たちが一定数居たようで、同じ場所を行ったり来たりしている姿がいくつか見えた。
「おお、エリアス殿。ちょうど良かった、陛下がお呼びですぞ」
気持ちを落ち着けるために温かい飲み物でも貰ってこようかと思っていたところで、見知った使用人に呼び止められる。この様子だと、どちらかの戦場に調停役となる誰かの護衛として付いていくことになるのだろう。
「わかりました。すぐに向かいます」
そのまま礼を述べて廊下をまっすぐ進む。前の戦争で荒らされてしまった城内も今やすっかり元通りとまではいかないが、以前のような優美さを取り戻していた。
廊下の突き当りを曲り暫く進むと会議室へと辿り着く。警備の兵に軽く挨拶を済ませると、俺は室内に向けて参上の挨拶をし返事を受けると室内へと踏み入る。
「休暇中だったというのに、すまないな」
「いえ。この一大事に俺ひとりだけのんびりするという訳にもいきません」
「そうか、ありがとう。いきなり本題になりすまないが、此度の紛争の仲裁に入るために私とアントンでそれぞれに出向こうと思っている」
グレアム陛下に労いの言葉を貰いながら、近くにいた文官から一枚の書類を渡される。どうやら会議の概要が書かれているようだ。
「話によるとマグノリアとウィステリアの紛争の場で、竜ないしは竜族の姿が確認されたそうだ。どちらの勢力に肩入れしているのかは不明だが、念の為にもエリアスに同行を頼みたい。もちろんフェイスの了承は得た」
書類によると竜の目撃情報を仕入れたのは一年程前から王宮で働き始めた女官の手の者だ。会議室内では王弟であるアントン殿下のすぐそばに控えている。
この女官はアイリス王国に避難していたころに知り合った魔導士だそうで、世間知らずで小心者だったアントン殿下が最近は積極的に表舞台に立つようになったのは彼女の助言が原因らしく、急な立ち振る舞いの変化にミシェルたちも警戒していると聞いている。
いちおう剣の心得はあるそうなのだが、アントン殿下自体の戦闘能力は体格や普段の所作などから鑑みても大したものだと判る。だがこの女官――ジュディスからは邪悪とは違うが、他の者たちとは別の違和感のような何かを感じた。
「わかりました。お任せください」
月虹のレギンレイヴから生まれた神器には制約があり、邪竜ロキとの戦い以降は一定の期間は封印する必要があった。
通常の鍛冶師では修理不可能な伝説の武器は、然るべき場所に封印することで自己修復するらしく、戦いの中で破損したり傷んだ部分が再生するそうだ。
そういった背景から竜族に対抗できる聖王国の神器は現在使用不可能の状態だ。そうなると現在のローレッタ大陸には竜族に対抗できる手段は俺の持つ聖剣テミスしか無くなる。
「うむ。では準備ができ次第、出立する」
そうしてその場は解散となり、俺は最初の目的であったモンタギュー殿からの依頼の報告をするために廊下で彼を待つ。
親父との喧嘩やアイリス島の件などもあって予定よりも滞在は短くなってしまったのだが、それでも見てきたことは伝えたい。
少しすると細かい調整などの話が終わったのかモンタギュー殿が廊下に出てくる。
「やあ。遠いのに大変だったろう」
「この一大事じゃ仕方ないですよ。それで街の様子なんですけど――」
情報量としては少ないかもしれないが、久しぶりに帰った故郷の様子を伝える。
そのままちょっとした世間話になったところで、流石というべきか、ものの見事に親父と喧嘩してきたことを聞き出されてしまった。
「ふむ。父君と喧嘩を」
「この歳になってお恥ずかしい限りです」
「トマス殿のことは私も知っているけれど、気難しさは相変わらずのようだね」
「えっ? モンタギュー殿、親父と知り合いだったんですか?」
「娘が生まれる少し前くらいに、仕官の誘いをしたんだけど断られてしまってね。どうやら我が家は彼が嫌う人種が多すぎるらしい」
モンタギュー殿なら親父がかつてどこに仕官していたのかを知っているかもしれない。だがそれを聞こうとしたところでモンタギュー殿が他の人に呼ばれてしまい、それを見送る。
俺が子供のころにも何人かの騎士や身なりの良い男が親父を訪ねてやってきていたことがあった。ある日を境にぱったりと無くなったが、思い返してみればどれも士官の誘いだった気がする。
そうして数日後、出立の日が来た。
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