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015、副部長
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部室には、静けさが戻っていた。
――先輩と、二人きり。
これまで、男子部員と二人きりになるとそういう展開になってばかりだった。もしかして、目々澤部長は私と蓮華寺先輩にも、関係を持ってほしいと思って二人きりにしたんだろうか。
そんなことを考えて、頬がポット赤くなる。
私は紅茶のカップを手にしながら椅子に腰掛ける。顔色をごまかすように、一気に紅茶を飲み干す。
蓮華寺先輩は窓の外をじっと見つめていた。その横顔は普段の柔和な雰囲気とは違い、何か難しそうに考えているようだ。
「……蓮華寺先輩、大丈夫ですか?」
私が声をかけると、蓮華寺先輩はわずかに目を細めて、苦笑するように振り返った。
「ああ、ごめんね。大丈夫だよ」
私の言葉に、蓮華寺先輩はいつもの優しい笑顔に戻る。でもその笑顔は、どこか作り物めいていて、私の胸はチクチク痛む。
なにか、話したい。
でも何を言えばいいかわからなくて、先輩の顔を見つめてしまう。
「実はね、灰崎さん」
蓮華寺先輩が、私のほうを向き直る。紅茶のカップを持ち、少しだけ口をつけると、ゆっくりと話し出す。
「青慈にね、魔法少年部ののためにも、灰崎さんとしろっていいって、言われていたんだ。累くん、青慈、白人君、みんな君と関係を持って魔法少年としての能力が爆発的に上がった――それは事実だ。
でもね灰崎さん。僕は出来なかったんだ」
先輩の瞳は、いつになく真剣で。
蓮華寺先輩とそういうことをするのかとか、浮かれて考えていた自分が恥ずかしかった。
「――それは。あの、無理をしてすることじゃ、ないですから。やっぱり、魔法少年部のためとはいえ、そんな……誰とでも、することじゃない、です」
これは本音だった。
やっぱり、好きな人としたい。
好きな人とする行為、なはずだ。
その意識はずっとある。
今の私は、どういうわけか魔法少年部の部員のみんなのことが、心から好きなのだ。
そうとしか思えない。
自分の感情が、自分の思う通りに行かない不安もあるけれど、この好きという気持ちだけは確かだ。
だからと言って、それを男子部員たちに強いることはできない。
「ふふ、灰崎さんは優しいね。でもね、灰崎さんが思っているような理由じゃないんだ」
にこっと微笑む蓮華寺先輩は、優しくて、それでいて儚げで。
蓮華寺先輩は、中学のころまでは病弱だった、と目々澤部長が言っていた。そのせいか蓮華寺先輩はどこか――急に消えてしまいそうな、そんな雰囲気がある。
身長は部長よりも高いのに、身体が細くて、女の人みたいな雰囲気もある。
そんな先輩に見つめられると、なんだかドキドキする。
「私が思っているような理由じゃない……?」
蓮華寺先輩は小さくうなずく。
「うん。僕はね、僕自身が力をつけて、魔法少年として活躍することよりも、この部が平和に続いてほしいと思っているんだ。だから、僕は……」
どう、言葉にしていいかわからない。そんな風に見えた。
先輩が言いたいことは、全然わからないけれど、蓮華寺先輩の優しい気持ちが伝わってくる。
「私は、その……大丈夫ですから。えっと、どんなことがあっても、先輩が何を考えていても、何をしても、蓮華寺先輩の――そしてなにより、魔法少年部の味方です」
先輩を力づけたくて。
私は必死に言葉を重ねた。
蓮華寺先輩は、困ったように微笑む。
「灰崎さん」
「はい」
ふたりきりの部室には、痛いくらいに静かだ。
他の部活動や、放課後の生徒たちの喧騒も不思議と聞こえず、ただ先輩と私の呼吸の音が聞こえる。私の心臓の音までが届いてしまいそうだ。
「僕はね、君を壊れるくらいに愛してしまいたいと思っているんだ」
「……はい?」
予想していなかった方向の言葉に、私は思わずぽかんと口を開いてしまった。
――先輩と、二人きり。
これまで、男子部員と二人きりになるとそういう展開になってばかりだった。もしかして、目々澤部長は私と蓮華寺先輩にも、関係を持ってほしいと思って二人きりにしたんだろうか。
そんなことを考えて、頬がポット赤くなる。
私は紅茶のカップを手にしながら椅子に腰掛ける。顔色をごまかすように、一気に紅茶を飲み干す。
蓮華寺先輩は窓の外をじっと見つめていた。その横顔は普段の柔和な雰囲気とは違い、何か難しそうに考えているようだ。
「……蓮華寺先輩、大丈夫ですか?」
私が声をかけると、蓮華寺先輩はわずかに目を細めて、苦笑するように振り返った。
「ああ、ごめんね。大丈夫だよ」
私の言葉に、蓮華寺先輩はいつもの優しい笑顔に戻る。でもその笑顔は、どこか作り物めいていて、私の胸はチクチク痛む。
なにか、話したい。
でも何を言えばいいかわからなくて、先輩の顔を見つめてしまう。
「実はね、灰崎さん」
蓮華寺先輩が、私のほうを向き直る。紅茶のカップを持ち、少しだけ口をつけると、ゆっくりと話し出す。
「青慈にね、魔法少年部ののためにも、灰崎さんとしろっていいって、言われていたんだ。累くん、青慈、白人君、みんな君と関係を持って魔法少年としての能力が爆発的に上がった――それは事実だ。
でもね灰崎さん。僕は出来なかったんだ」
先輩の瞳は、いつになく真剣で。
蓮華寺先輩とそういうことをするのかとか、浮かれて考えていた自分が恥ずかしかった。
「――それは。あの、無理をしてすることじゃ、ないですから。やっぱり、魔法少年部のためとはいえ、そんな……誰とでも、することじゃない、です」
これは本音だった。
やっぱり、好きな人としたい。
好きな人とする行為、なはずだ。
その意識はずっとある。
今の私は、どういうわけか魔法少年部の部員のみんなのことが、心から好きなのだ。
そうとしか思えない。
自分の感情が、自分の思う通りに行かない不安もあるけれど、この好きという気持ちだけは確かだ。
だからと言って、それを男子部員たちに強いることはできない。
「ふふ、灰崎さんは優しいね。でもね、灰崎さんが思っているような理由じゃないんだ」
にこっと微笑む蓮華寺先輩は、優しくて、それでいて儚げで。
蓮華寺先輩は、中学のころまでは病弱だった、と目々澤部長が言っていた。そのせいか蓮華寺先輩はどこか――急に消えてしまいそうな、そんな雰囲気がある。
身長は部長よりも高いのに、身体が細くて、女の人みたいな雰囲気もある。
そんな先輩に見つめられると、なんだかドキドキする。
「私が思っているような理由じゃない……?」
蓮華寺先輩は小さくうなずく。
「うん。僕はね、僕自身が力をつけて、魔法少年として活躍することよりも、この部が平和に続いてほしいと思っているんだ。だから、僕は……」
どう、言葉にしていいかわからない。そんな風に見えた。
先輩が言いたいことは、全然わからないけれど、蓮華寺先輩の優しい気持ちが伝わってくる。
「私は、その……大丈夫ですから。えっと、どんなことがあっても、先輩が何を考えていても、何をしても、蓮華寺先輩の――そしてなにより、魔法少年部の味方です」
先輩を力づけたくて。
私は必死に言葉を重ねた。
蓮華寺先輩は、困ったように微笑む。
「灰崎さん」
「はい」
ふたりきりの部室には、痛いくらいに静かだ。
他の部活動や、放課後の生徒たちの喧騒も不思議と聞こえず、ただ先輩と私の呼吸の音が聞こえる。私の心臓の音までが届いてしまいそうだ。
「僕はね、君を壊れるくらいに愛してしまいたいと思っているんだ」
「……はい?」
予想していなかった方向の言葉に、私は思わずぽかんと口を開いてしまった。
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