【完結】改稿版 ベビー・アレルギー

キツナ月。

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第一章 九月の嵐

前途多難2

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 私の体質を知る麻由子からすれば当然の疑問だが、さすがに真実は伝えられない。

  「て、手が空いてるの私だけなの。
 遠い親戚の子で、母親が病気なんだけどね」

 後ろ暗さから目線をさまよわすと、ソファの下に例の紙を見つけた。
 “三ヶ月後の審判”について書かれているやつである。

 こんな物を見せたら怪しまれてしまう……!

 足でそれを引き寄せ、手の中でグシャリとつぶす。
 
 「他に誰かいなかったわけ? 近い親戚とかさ。
 大体、あんた仕事探さなきゃならないでしょ」

 麻由子は、まだ難しそうな顔ののままだ。

 「ずっとって訳じゃないから。
 仕事も今、見つからないしさ」

 後ろ手で、ソファの座面と背もたれの間に紙をじ込む。
 とりあえず、ここに隠しとこう。

 「それにしても、着替えもオムツもなく赤ちゃんだけ寄越してくるなんて。
 非常識な親戚ね」

 麻由子は、眠ったルナを見やって腕組みする。
 痛いところを突かれた。
 ルナは肌着を一枚まとっていたのみ。
 預かったと言うには不自然だった。

 ちな因みに、私の親戚は非常識ではない。

 「なんか、絵美の親戚って感じ」

 友よ。どんな目で私を見てきた?
 ごめんなさい、親戚の人たち。私のせいです。

 「ま、まぁね。あははは」

 しかし、ここは話を合わせるしかない。
 顔を見られないように立ち上がり、冷蔵庫を開ける。

 窓から差す光が少し傾いてきた。
 部屋に一脚だけあるスツールが、影を伸ばし始めている。

 「こうなった以上、やるしかないわね」

 烏龍茶の入ったグラスを私から受け取り、麻由子は言った。

 「私も、できる限り協力するから」

 友よ……!
 やはり、持つべきものは育児経験のある親友である。
 ガバッと彼女に抱きついた。

 「ありがとう、麻由子! 頼りにしてる!」

 「ぅおっと……調子に乗らない!」

 麻由子は慌ててグラスを持ち直す。
 中身の烏龍茶は、かろうじてこぼれずに済んだ。

 ルナが「ひん」と短い声を上げる。
 いつもの調子で大きな声を出しすぎたか。
 二人して身構えたが、ルナはむにゃむにゃと手を動かして再び寝入ってしまった。
 
 「三ヶ月くらい?」

 麻由子は烏龍茶に少し口をつけ、今度は声を落とした。

 「へ? 私、その話したんだっけ?」

 「見りゃ分かるわよ。生後三ヶ月くらいかなぁって」

 「ああ、そっち? そうなんだ?」

 「そっちって何よ」

 しまった。
 “後の審判”が頭の中を占めすぎていた。
 案の定、麻由子は眉間を狭めて私をうかがっている。

 「な、何でもない! 三ヶ月……って聞いてる」

 麻由子に何か言われる前にそう言い、烏龍茶を一気に喉へ流し込んだ。
 ベビーには詳しくない。
 でも彼女が言うなら、ルナは生後三ヶ月なのだろう。
 
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