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第一章 九月の嵐

前途多難3

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 日が暮れる。
 あまり長く麻由子を引き止めるわけにもいかない。
 子どもたちもいるし、車はコインパーキングだ。

 ルナを預かる決意はしたものの、麻由子が帰るとなると再び不安が頭をもたげた。
 夕暮れ時の雰囲気も手伝って泣きたくなる。

 麻由子を送りに外へ出た頃には、もう街路灯にオレンジ色の灯が光っていた。
 麻由子は、また来るからと言って帰っていく。

 「どこ行ってたの?」

 疲れた気分で薄暗い部屋に戻ると、ルナの声がした。
 えらく不満そうである。

 「赤ちゃんを放置しないでよ、ママのくせに」

 電気をつけると、ルナは身体に掛けていたバスタオルを蹴飛ばした。
 いつから目を覚ましていたのだろう。
 それにしても、ちょっと玄関先へ出ていただけで大袈裟な。

 「ママじゃないし」

 拳がバキッと音をたてた。
 ルナは気怠けだるそうに身体をよじる。

 「合格してママになりたいんでしょ。
 そのための契約よ」

 イヤな予感がしてきた。

 「ねえ。合格したら、ここに住むとか言わないよね?」

 距離を取ったままで確認する。
 麻由子にレクチャーしてもらったばかりなのに、もう何もできる気がしない。
 ルナは仰向けの状態でぺちぺち手を打つと、意地悪そうに鼻をうごめかせた。

 「知らないで引き受けたの? バカなの?」

 「あんたが言う……!?」

 九月二十五日。
 赤ちゃんを預かることにした。

 後日。
 この決断がとんでもない騒動を引き起こすことを、私はまだ知らなかった──。
 
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