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小さな村アーチル

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 「目の前にって、あんた聖女様なのかい!?」

 お爺さんは目を丸くして驚いている。
 
 「しかもお爺さんが探していた聖女ですよ。」

 「お、王妃様!?」
 
 お爺さんはさらに目を丸くした!

 「お爺さんは、見ず知らずの私にパンをくれました。お爺さんの力になりたいです……というのは建前で、私には行く所がないので、お爺さんの村に連れてってください。」

 こうして、セリシアはお爺さんの住む村アーチルへと向かう事になった。


 半日歩くとすぐにアーチルの村が見えて来た。
 
 「ここがお爺さんの住む村ですか?」

 「のどかでいい村じゃろ?村人皆が助け合って、暮らしてるんじゃよ。」

 セリシア達が村へと入ると、村人達が次々集まって来る。

 「村長!お帰りなさい!」
 「その方はもしや……!?」
 「せ、せ、せ、聖女様!?」

 村人達は目を輝かせてセリシアを見た。

 「そうじゃ!聖女セリシア様じゃ!」

 「「「うおぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」」」

 村人達はセリシアが来てくれた事に感激し、喜びの歓声をあげた。


 「ここがわしの家じゃ。狭い家じゃが、自分の家だと思ってくつろいでくれ。そこの部屋は、わしの孫のキリトの部屋じゃから、その奥の部屋を使うといい。」

 お爺さんはこの村の村長で、名はゴーシュ。息子を魔物に殺され、今は孫のキリトと二人暮しをしていた。

 「ありがとうございます。ベッドで眠れるのなんて、何日ぶりだろう……。」

 「食事もろくにしてなかったんだろう?今暖かいスープを作ってやるから、少し休みなさい。」
 
 「スープ……楽しみです。少しだけ休ませていただきますね。」

 セリシアは部屋に荷物を置くと、ベッドに横になった。

初めて、聖女でよかったって思えた。良くしてもらってるからじゃない……この村の人達の役に立つことが出来るから。

 そんな事を考えながら、セリシアは眠りについていた。

 「……シア様!セリシア様!」

 名前を呼ばれて目を開けると、見知らぬ男性が顔を覗き込んでいた!

 「……きゃっ!!」

 セリシアの悲鳴に男性は、

 「驚かせてしまいすみません。俺は村長の孫のキリトです。スープが出来たので、一緒に食べませんか?」

 「……はい。」

 テーブルに着くと、野菜たっぷりの美味しそうなスープとパンが並べられていた。

 「美味しそう……」  

 「城で出されていた豪華な食事には敵わんが、この村で育てた野菜たっぷりのスープも悪くないじゃろ?」
 
 「……こんなに美味しい食事……久しぶりです……」

 セリシアはスープを一口飲むと、涙が溢れ出していた。

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