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本編最終話 愛する人と
しおりを挟むキャシディが挨拶をしようと一歩前に出ると、静まり返っていた民衆がザワめき始めた。
「本当にあの伯爵令嬢のキャシディ様なの!?」
「美しい……こんなにも美しい女性がこの世にいるなんて……。」
「包帯の下は、こんなに美しかったなんて……!」
そのザワめきは先程とは打って変わって、キャシディの容姿を称賛するものだった。
「私は幼い頃に病を患い、その病のせいで顔の左半分に醜い痕が残っていました。その痕は3年前に消えていたのですが、ずっと包帯で隠して来た顔を出す事が怖くて……痕が消えてからも包帯を外すことが、今まで出来ませんでした。そんな時、醜い私の顔をアレックス様は目を逸らさずにじっと見つめてくださいました。アレックス様なら、どんな私でも受け入れてくれる……そう思いました。だから今日、私は包帯を外すことが出来たのです。」
キャシディは包み隠さず、自分の気持ちを正直に話した。
パチパチパチ……
拍手が少しづつ増え、
パチパチパチパチパチパチパチパチパチ……
民衆がキャシディの気持ちに応えるように、盛大な拍手へと変わって行った。
「「「キャシディ様バンザイ!!アレックス王子様バンザイ!!!」」」
キャシディは国民に受け入れられ、無事に婚約発表が終わった。
ドミニクス伯爵は、アレックス王子が現れなかったら王位を継いでいたはずだったロドリゲス公爵の命令で動いていた。ずっとロドリゲス公爵に尽くしてきたドミニクス伯爵には、アレックス王子が邪魔でしかなかった。
キャシディとの婚約が、アレックス王子を失脚させる良い機会だと考えていたのだ。
「ドミニクス伯爵の処分を言い渡す。爵位を剥奪し、国境警備の任を命じる!これからは国民の為に働いてもらおう。」
アレックス王子の妨げになりそうな者は容赦なく切り捨てて行った。
婚約発表を無事終えたキャシディが邸に戻ると、ホワイト伯爵が出迎えた。
「お父様……黙っていてごめんなさい。」
ホワイト伯爵は何も聞かず、キャシディをそっと抱きしめた。
「よかった……。本当によかった。幸せになるんだぞ。」
お父様……ありがとう。私、幸せになります。
**********************
「なあ、キャシディはなんで他の貴族とは違うんだ?」
「私は普通だよ。アレックスこそ、なんで他の子達と遊ばないの?」
ホワイト伯爵と共に孤児院に来ていたキャシディは、アレックスという子と遊んでいた。
「俺はおまえを見極めてるんだ!どうせおまえも他の貴族達みたいに、俺達をバカにしてるんだろ!?」
「どうして?どうしてアレックスをバカにするの?」
「だっておまえは貴族だろ!?」
「貴族だからとか、そんな事関係ないじゃん。だって友達だもん!」
キャシディの眩しい位無邪気な笑顔に、アレックスは一瞬で恋に落ちていた。
END
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