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嫁ぎます。
しおりを挟む「良かったな。お前のような醜い者でも、嫁にもらってくれるそうだ。」
そうですね。この邸にいて、使用人よりも酷い扱いを受けるくらいなら、嫁いだ方が幸せかもしれません。
「一つだけお願いがあります。ミルダを連れて行きたいのです。」
「別にいいんじゃない? 反抗的な使用人がいても役に立たないし。」
「そうだな、連れていくといい。お前は明日、ボーメン男爵に嫁ぎなさい。」
明日? 随分と急なのですね。私がこの邸にいると、困る事でもあるのでしょうか?
でも、1日も早くこの邸を出られるのなら……
「わかりました。荷造りがありますので、これで失礼します。」
この人達と一緒に食事をしたくなかった私は、話しが終わるとすぐに部屋へと戻った。
ティナが部屋へと戻った後、3人はバカ笑いをしていた。
「わははは! これで邪魔者はいなくなる!」
「ふふふ。そうですね。これでデルダン王子との婚約は、イライザで決まりです。」
「私、隣国の王妃になるのね!」
ティナを急いで嫁がせたかった理由は、隣国の国王から第一王子デルダンとの縁談を申し込まれたからだった。
申し込まれたのは長女ティナとの縁談だったが、ティナは結婚が決まっていた事にし、イライザとの縁談を進めようとしていた。
「お嬢様、ありがとうございます! 私を連れて行きたいって仰っていただいた時、本当に嬉しくて嬉しくて……」
「良かった。ミルダに相談もしないで勝手に連れて行きたいだなんて言ったから、ミルダはこの邸に残りたいと思っていたらどうしようかと思っていたの。」
「私がお仕えしたいのはお嬢様だけです。お嬢様は行き場のなかった私に優しくしてくださいました。奥様とお嬢様がいなかったら、私は今頃生きてはいません。生涯お嬢様にお仕え致します!」
ミルダは10歳の時に食べることに困った両親に捨てられ、橋の下で物乞いをしながら1人で暮らしていた。捨てられて3ヶ月が経った頃、8歳のティナがミルダを見つけた。泥だらけでやせ細ったミルダを、クレアとティナは邸へと連れ帰り使用人として雇ったのだった。
「私はミルダがいてくれたから、あの人達に虐げられても生きようと思えた。だから、お互い様ね。」
そう言って笑ったティナを見ながら、その笑顔を守りたいとミルダは思っていた。
翌朝、ボーメン男爵からの迎えの馬車が到着し、ティナとミルダはその馬車でボーメン男爵邸へと向かって行った。
「やっと邪魔者がいなくなったわ。あんなボンクラと結婚してあげたのに、邪魔なコブがいて不愉快だったのよね。」
「お母様ったら、お義父様が可哀想よ。ふふふっ。」
「イライザだって笑ってるじゃない。あなたは隣国の王妃になるのだから、この結婚も悪くなかったわね。」
2人はクーバー公爵が出かけていて、いないのをいい事に言いたい放題言っていた。
後日、デルダン王子の怒りを買う事になる事も知らずに……。
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