〖完結〗私は誰からも愛されないと思っていました…

藍川みいな

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ボーメン男爵

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 ボーメン男爵邸へと到着したティナが馬車から降りると、

 「ティナ、よく来たね。」

 出迎えてくれたのは、ボーメン男爵。とても32歳には思えない美しい顔立ちの男性で、ボーメン男爵の青い瞳に見つめられると吸い込まれそうな程だった。

 「ガルシア様、わざわざお出迎えしていただきありがとうございます。」

 「妻を出迎えるのは当然の事。先ずは君の部屋へ案内するよ。」

 「ありがとうございます。少しお待ちいただけますか? 荷物を……」

 「荷物は後から使用人に運ばせるからそのままでいいよ。君は自分で荷物を運ぶ気だったのかい?」

 「荷物は少ないので、ミルダと2人で運べます。お気遣いに感謝致します。」

 馬車から荷物を取り出したティナの手からボーメン男爵は荷物を取り、

 「私が運ぶ。」

 「ガルシア様!? 重いですよ!?」

 「それならば余計に私が持つよ。さあ、中に入ろう。」

 ボーメン男爵はティナの荷物を運びながら、着いてくるように言った。

 不思議な方……。男性に優しくされたのは初めてで、戸惑ってしまう。

 「お嬢様、旦那様は良い方みたいですね。歳は離れてますけど、かなりの美男子ですし。」

 「えぇ……そうね。お父様が選んだ方だとは思えない。行きましょう。」

 邸の中に入ると、ボーメン男爵は部屋へと案内してくれた。

 「ここが君の部屋だ。必要なものがあったら、遠慮なく言ってくれ。それと、ミルダ……だったか? 君の部屋はここの隣りだ。ティナが新しい地で不安にならぬよう気遣ってやってくれ。」

 「ガルシア様、そんなお気遣いまでありがとうございます。」

 「妻を気遣うのは夫の務めだ。夕食の準備が出来たら使用人に呼びにこさせるから、それまではゆっくりしていなさい。」

 ボーメン男爵はそれだけ言うと、部屋から出ていった。

 「本当に優しい方ですね。このお部屋も素敵。」

 「貴族の男性は皆、お父様みたいな方なのかと思っていたから、なんだか頭の整理が出来なくて…」

 ティナは社交の場に出た事がなかった。クーバー公爵は、容姿が普通のティナを恥だと思い、公の場に出したくなかったのだ。

 「私もそう思っていました。ですが、旦那様は違うようですね。」

 「そうね。まだお会いしたばかりだけど、ガルシア様となら幸せになれるような気がする。」

 ティナのその言葉通り、ボーメン男爵との生活はとても幸せだった。

 ティナが嫁いだことに幸せを感じ、ボーメン男爵に少しづつ好意を抱き始めた頃、クーバー公爵邸では怒りに満ちた声が響き渡っていた。

 「ふざけるな!! これはどういうことなのか、納得のいく説明をしてもらいましょう。私が納得出来なかったその時は、この国の未来はないと思っていただきたい!」


 
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