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デルダン王子の怒り
しおりを挟む「縁談を持ちかけてきたのはそちらなのに、なぜそんなにお怒りに??」
「私が縁談を申し込んだのは、クーバー公爵の長女ティナのはずだが?」
「ですからティナは、すでに嫁いでしまったのです。姉のティナよりも、妹のイライザの方が美しいのに、なぜお怒りになっているのか分かりません。」
「それが理由だと言うのだな? ティナが嫁いだのは数日前という話ではないか。しかも急遽決まったとか……。私がティナを指名したのに、なぜ男爵になど嫁がせたのだ? 貴様らは私を愚弄する気か!?」
「愚弄するなどとんでもない! イライザがいるではありませんか!」
「イライザなどどうでもよい! 私の妻に相応しいのは、王族の血を引くティナだ! なぜこの私が、お前の後妻の連れ子などと婚約せねばならんのだ!? この私を愚弄したのだから覚悟しておくんだな!!」
王子が欲しかったのは、王族の血を引くティナだけだった。ティナを急いで嫁がせたクーバー公爵を、デルダン王子は許すことは出来ず、そのままデイモン王へと抗議しにサチアーナ城へと向かった。
「お義父様! これはどういう事ですか!? どうして私があんなに侮辱されなくてはならないのですか!?」
「そうよ! 私のイライザを侮辱するなんて、あんな王子に嫁がなくて良かったわ! 旦那様、ちゃんと隣国に抗議してくださいますよね!?」
「うるさい!! お前達は黙っていろ!! クソっ!お前達のせいで私はもう終わりだ……」
隣国ブレディントは、この国サチアーナよりも大国だった。その大国の次期国王であるデルダン王子に覚悟しておけと言われた事で、クーバー公爵は取り返しのつかないことをしてしまったのだと気づいた。
クーバー公爵が容姿の優越で女性を選ぶのと同じように、デルダン王子は血統で女性を選んでいた。
サチアーナには年頃の王族はティナしかいなかった。そのティナはすでに婚姻をしてしまったのだから、デルダン王子が激怒するのも無理はない。
「デイモン王の弟である、セルドア・クーバーの爵位を剥奪し、国を追放していただきたい!」
抗議をしにサチアーナ城を訪れたデルダン王子は、デイモン王にクーバー公爵を追放するよう言った。
「それは一体……」
挨拶もなしに、いきなり弟を追放して欲しいと言われたデイモン王は困惑していた。
「あの者は私を愚弄し、あろう事か後妻の連れ子などを私と婚約させようと企てたのです! 絶対に許す事は出来ません! 聞き入れていただけないのでしたら、分かっていますよね?」
デルダン王子の申し出を受け入れない選択肢などない。もしも拒絶したならば、サチアーナはブレディントに侵略されるであろう。
「……分かった。我が弟セルドア・クーバーの爵位を剥奪し、国外追放とする!」
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