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再訪のランス③
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ピーターが淹れてくれたハーブティーを一口飲んで、ほっと息をつく。
ジャレッド団長とランスはエールだ。ランスはこれからハノンに戻るというのに、意に介さず。水のようにエールを飲んでいる。
まぁ、ランス曰く、「極北生まれにとってエールは水だ」とのこと。
帰路の途中、馬から落ちないことを祈ろう。
そんな心配をしていると、「ところで」と、ランスがツマミに出された炙り厚切りベーコンに手を伸ばしつつ、ジャレッド団長に目を向けた。
「団長がイヴを連れてウルバスに行くわけではないんだろう?」
「ああ。寒さに強い者を代理人に、あとは冒険者の護衛を雇って出立することになっている」
「春を待たずに?」
きょとんとしたランスに、ジャレッド団長は「そうだ」と頷き、ベーコンを頬張る。
この厚切りベーコン。私の手のひらより大きいのだけど、ジャレッド団長は二口で食べてしまう。ランスも同じだ。ツマミというにはボリュームのあるそれを、ばくばくと平らげていく。
当然、木樽ジョッキに注がれたエールの減りも早い。
「早くイヴの身内を捜したい理由でもあるのか?」
ニヤニヤと笑うランスは無視だ。
ジャレッド団長も肩を竦めただけで、番の話はしなかった。
「ウルバス大公国は薬草が豊富らしいので、繋ぎが欲しいのもある」
「あそこの薬草は有名だよ。温室技術もだけど、竜害の影響もあって人里では見かけない珍しい薬草が育つんだ。新種登録されたものもあるらしい。ただ、ウルバス以外では枯れるというから、魔素が関係してるんだろうな」
残念。
株分けしてもらう目論見が潰えた。
というか、問題は魔素だ。たま~に聞くけど、詳しくは知らない。
「ねぇ、ランス。魔素って、結局は何?それが濃いと魔物がいっぱい出るとは聞いたことがあるけど…。薬草にも関係してるの?それがあれば、こっちでも薬草が維持できたりする?」
「ウルバスの薬草を植えられるかっていうと、たぶん無理。あそこは異常だからな。そもそも魔素っていうのは、お頭の言葉を借りれば”澱み”のことだよ」
「”森で澱みを報告を受けたぞ!”ってたまに聞いた。腕の立つ冒険者を何人も召集して向かわせてた。魔素のことだったんだ」
「澱みの正式名称を魔素という。んでも、ギルドでは”澱み”や”穢れ”と呼称する。ギルドっていうのは、基本的に学のない奴らが食い扶持を稼ぐために出来た組織だからな。魔素よりも”澱み”と言う方が伝わりやすいし、ヤバいなって気もするだろ?」
うんうん、と頷く。
「分かりやすく言うと、魔素は魔力の源だ。学者によると、体に影響が出ない程度の薄い魔素が世界中を覆ってるらしい。それが雨に含まれ、雨が降って地中深くに染み渡る。それを吸い上げる草木も、それを食べる生き物の体内にも魔素は巡る。仕組みは異なるが、人族や魔物は魔素を魔力へと変える器官があるんだ。その器官が発達しているのが人族で、未発達な器官を補うために魔石を作り上げるのが魔物だ。獣にはそれがなく、取り入れた魔素はそのまま排出される。獣人は、取り入れた魔素を身体能力へ全振りしているから魔法は使えない。で、均一に広がっている魔素だが、地脈に沿って滞留してしまう箇所がある。それが、ここの森のような場所だな。お頭の言う”澱みの報告”っていうのは、”帰らずの森”のような場所の中に、水溜りみたいな濃い魔素が湧いた箇所だ。魔物の死骸や魔石なんかを放置しとくと発生しやすい。んで、元カルバス皇国の危険地域は、竜によって作られた魔素の高濃度地帯だ。魔素が濃いと、人には毒になる。魔物も狂い、凶悪な魔物が発生する。だが、逆に危険レベル4の竜種なんかになると、心地良いのか、魔素の濃い場所を好む。立ち入り禁止区域の上空を飛翔する竜の目撃情報は多い」
滔々と説明してくれるランスに、何度も相槌を打つ。
ウルバス大公国が怖いのが再認識できた。
あと、獣人の身体能力値の異常さも納得だ。さしづめ属性の名前は、身体能力マシマシ属性だ。
「ついでに付け加えると、魔素は天気にも影響する。極北では、魔素が乱れると大雪が降りやすいと言われているんだ」
「こっちも”魔女の森”に沿った地域は魔素が濃く、冬の厳しさは魔素が関係しているといわれている。その魔素の乱れに敏感なのが白魔茸で、魔素が乱れ、濃度を増した年に白魔茸が大繁殖して大雪が降る。と、マッシモ・コラクの本で触れているはずだ」
「ジャレッド団長、図書室の本をすべて読んでるんですか?」
「まさか。マッシモ・コラクはここ出身だからな。”魔女の森”を中心に研究していたのもあり、彼の著書だけは図鑑を含め読んである」
「白魔茸…向こうではユキノトだが、それが敏感なんて初めて知った。だから、大雪の年は馬鹿みたいに生えるんだな」
ランスが感心しきりに頷いている。
「北は竜の棲み処が点在しているので、どうしても他の州より魔素が濃く乱れやすいからな。そのせいで、冬といえば大雪だ。ユキノトが多いと、さらにドカ雪となるけど、因果関係なんて誰も調べなかったよ」
きっと今冬の大雪は、ランスにとっては肩透かしになるのかも。
「ウルバス大公国も大雪が降る地域なら、温室は倒壊しちゃわない?」
「あそこの温室は円いんだ。クロッシュみたいな形だから雪が積もる屋根がない。ガラスの技術も抜きん出ているからこそ出来るんだろうな」
円い温室なんて、全く想像が出来ない。
「ガラスの技術もあるのか。職人を引き抜くことは…」
「無理無理。国を出るウルバス人なんてほぼいない。職人を引き抜くより、こっちの職人を向こうにやって技術を覚えさせた方が手っ取り早いぞ」
「うむ…」
ジャレッド団長は腕を組み、眉間に深い皺を刻む。
「まぁ、職人よりも、出立するのが決定しているなら、すぐ出立した方がいい。トーゴ王国で大河を渡るんだが、氷が張るんだ。上流からも氷が流れてくるから船は頑丈なんだが、氷を割って進めるほど頑丈ではないからな」
「大河…。そんなにすごい川なの?船で渡らなきゃならないくらいに?」
ハノンに流れているのは助走をつけて飛べば渡れるくらいの小川だ。
クロムウェル領にも川は流れているけど、橋を架けられる程度の川幅しかない。
想像が出来ずに首を傾げれば、ランスは「”帰らずの森”に流れてるだろ?」と器用に片方の眉を上げる。
「浅くて、馬で渡れるくらいのね」
「それの本流。実際は別々の川なんだが、同じ河口に流れ込んでるから森に流れているのは支流と呼ばれている。こっちの川が支流と言われるのは、単に川幅が狭いから。とは言っても、キャトラル王国付近で川幅が一気に狭まってるんだよ。キャトラル王国よりも海側の国は、橋も架けられないほど川幅がある。まぁ、本流と呼ばれている方は、対岸が見えないくらいだけどな。その本流が蛇行しながら、キャトラル王国のお隣さんを通過してる。ここから近いのはトーゴ王国のルベルノ波止場だ。ゴールドスタインから馬を飛ばせば3日の距離になる。未整備の道があるから馬車なら10日前後か。さらに船で対岸に着くのに半日かかるが、流氷があると恐ろしく時間がかかる。氷に囲われ、身動きができなくなると数日どころか海に押し流される危険もあるんだ」
対岸に着くまで半日もかかるなんて!
それが川なら、海はどれだけ大きいというのか想像もできない。
「ランス、詳しいね」
「ハノンに定住するまでは各地を巡ってたからな。ソロの高ランカーは行動範囲内の地形には詳しいんだよ」
地形に詳しくなると、出没する魔物の種類も経験で分かるようになるのだとか。
Aランクになると、王侯貴族から護衛や素材採取の指名依頼が入ることがあるので、ある程度の地形を頭に叩き込んでおく必要があるらしい。
こういうことを聞くと、高ランカーは腕っぷしだけじゃダメだなと思う。
「てことで、団長。まず船選びに金をケチらないことだな。次に、魔導師に金をケチらないことだ」
「魔導師?そういうのは国や、どこかの貴族家に仕えているのではないのか?」
と、ジャレッド団長。
「冒険者ギルドのような大規模なギルドではないけど、向こうには魔導師ギルドってのがある。冒険者ギルドみたいに誰でも所属できるわけじゃない。所属するには厳しい審査と、難関の魔導師資格試験を通った者だけだ。その分、依頼料は割高だけど、腕の良い者が揃ってるよ。口さがない奴らは”都落ちエリート”なんて言うけど、王城勤務の魔導士より優秀だから単なる僻みだ」
「そんなになのか?」
「ああ。王公の下に勤めるのは、能力より血筋が大事ってとこが多い。貴族であり、または貴族の後見人を得た平民しか採用されない。採用されたとしても、そういう場所に限って人間関係が複雑だから、離脱者はままいる。妾子は特に嫌がるな。貴族の子女も、誰もが社交的ではないから、そういうのを嫌った優秀な奴らはギルドに集まって、働きたい時に働いて、あとはのんびり田舎暮らしを満喫してるんだ」
へぇ~。
魔導師ギルドがあるなんて知らなかったし、貴族社会もいろいろ大変なのも知らなかった。
つくづく自分の世界の狭さに驚嘆する。
「んで、一般的な船には基本、風属性の魔法使いがいる。魔法使いってのは、魔導師でも魔導士でもない魔法が得意な雇われのことを指す。当然、魔導師に比べるべくもない。その魔法使いもいない、小さな船もある。その場合は、こちらが魔導師を同伴させるのが常識なんだ。風属性にプラスして、氷が張るような北方の船には火属性を雇う。専任魔導師が在籍している船は割高だが沈没する恐れはない。裏を返せば、ケチれば命の保証はないってことだ。注意することは、冒険者ギルド所属の魔導師はランクにバラつきがあるから当たり外れは大きいってところだな。稀に自称魔導師も紛れてるし。魔導師ギルドなら確実だ。魔導師のランクも偽造できないようになっている。まぁ、魔法使いも雇えないような船は冬季休業が多いけどな」
「船は定期便なのか?」
「チャーター便もある。定期便は波止場は選べないが、チャーター便ならウルバスに近い波止場を選べるぞ。あと、チャーター便は専任魔導師込みの代金だが、これから向かう予定なら保険として別に魔導師を確保しておいた方がいい。金があるなら魔導師ギルドでAランカーがおすすめ」
「白魔茸の影響で川の荒れ具合が分からない、か」
ジャレッド団長の独り言のような呟きに、ランスは頷きつつベーコンを頬張り、カウンター奥の厨房にいるピーターに親指を立てて賛辞を送っている。
「ああ、そうだ。馬を連れて行くならトーゴまでだ。以降は雪が深くなって、馬だと立ち往生するぞ」
「トーゴの以北は北エルバス州に接していたか」
「ああ。ウルバスに行くには、そっちじゃねぇけどな。トーゴ王国から更にマグレガー王国を経由する。マグレガーの手前まで船で上れたはずだ。そのマグレガーってのは美食の国として有名なんだ。トナカイの肉料理とチーズが絶品だぞ。んで、その上にウルバスがある。ウルバスに入ったらムースを確保する方と良い」
「ムース?」
私とジャレッド団長が首を傾げる。
「あっちは雪深いからな。車輪のついた馬車は、1年のうち2ヵ月程度しか走らない。殆どは車輪部分を橇にした馬橇だな。坂道で使うと速度が出て馬では止まることができずに事故るから、こっちで見るような大きな箱馬車じゃない。屋根もない質素なものだ。雪深くなると馬ではなく、色んな輓獣が出てくる。中でも一般的なのがジャイアントムースという巨大なシカだ。雪靴のような大きな蹄があるんだ。馬だと、雪にずぼずぼ脚が嵌って身動きが取れなくなるが、ムースは馬に比べて脚が長いし蹄がでかいから深い雪でもスムーズに走る。雪だけじゃなく泥濘にも強い。泳ぐのも得意だしな。北エルバス州の騎士は、馬とムースの両方に乗るぞ。馬ほど簡単じゃないが。特にウルバスは竜害の地が近いからな。魔素が不安定で冬は極北並みに雪深いからムースは必要なんだ」
シカを馬代わりにするなんて想像もできない。
しかも、冬は橇を牽かせるという。
ハノンで橇といえば、小さな子供の移動手段だ。これは子供が上手く歩けないため、橇に子供を乗せて親が引くのだ。雪が積もると、水路が隠れたりするので、子供が外に出る時は親が引く橇に乗るのが暗黙の了解となっている。
こっちの馬やシカは橇を牽かない。
「ジャイアントムース、欲しいな」
とはジャレッド団長だ。
「なら猶更、トーゴで大河を渡る際は船を一艘手配する必要がある。さすがに一般客はムース連れを嫌がるだろ」
「チャーターするくらいの金ならある」
お金持ちの高位貴族発言に、同じ貴族出身のランスも苦笑している。
「ムースの仕入れも追加してもらおう」
「ウルバスの冬は、こっちの大雪以上の積雪がある。平屋くらいなら埋もれかねない。でも、一番危険なのが”白い闇”だ。魔素が不安定で白い闇が起こりやすいから気をつけろよ」
「なんだ、その白い闇とは?」
「分かりやすく言えば雪煙だよ。方向感覚が分からなくなるほど、視界が真っ白になる。白い闇に遭って凍死する奴は一定数いる。まぁ、殆どが他所から来た商人や旅行者がパニックになってって感じだけどな。派遣する奴に忠告しておいた方が良い。白い闇に遭ったら、慌てず動かず。雪洞を作って白い闇が去るのを待つ。運が良ければすぐに晴れるが、運が悪ければ数時間や1日は足止めだ。無暗に歩き回れば、見知らぬ森の中に迷い込み遭難したり、崖から落ちたり、知らず薄氷の上にいて池に落水することもあるからな。パニックになる奴が一番危ない」
ウルバス大公国が父の故郷と知って興味は沸いたけど、ランスの話を聞いて、興味は急速に萎んで消えた。
竜も怖いけど、白い闇も怖い…。
その後、さらに詳しくウルバス大公国について知りたいというジャレッド団長によって、ランスは公爵家へと連れて行かれた。
公爵様を交え、3人でヘビの心臓の契約と魔物除けの香の販売価格も決めていたのは驚いた。
まぁ、材料費に加え配送料もかかるので、計算が得意ではない私は、細かな調整をしてもらえてホッとしていたのは内緒だ。
===== ちょっと長いあとがき説明 =====
今更ですが、魔導士と魔導師。魔法使いも…
一応、この世界では線引きがあります。
私も混乱するので間違えてる場合も多々ありそうですが笑
魔導士は国に仕えるエリートです。
難関校で学び、狭き門の採用試験に合格できた人たち。
魔力量の多い人たちばかりなので9割が貴族。継げる家のない次男以下が多いです。
残り1割が平民ですが、両親か祖父母あたりに貴族の血が流れているケースばかりなので根っからの平民はいないと思われます。
※人族の国の多くは、魔力量の多い魔法使いたちが国を築いた歴史があるので王侯貴族に魔力量増し増しの人たちが名を連ねています。国の体裁が整った後に魔法使いの区分けに魔導士や魔導師が誕生しました。
魔導師は国にも貴族にも仕えていないフリーランス。
上下関係や規則に雁字搦めになり、人間関係に嫌気を差した魔導士が辞表後に「魔導師」と名乗り、師として弟子を取り始めたのが始まり。
主に冒険者ギルドに所属している場合が多いですが、国によっては魔導師ギルドがあるのでそこに所属します。魔導師ギルドでは魔力量や試験をしてランク付けしますが、冒険者ギルドでは冒険者としてのランク付けしかしてません。なので、冒険者としては優秀でも魔力量的に魔導師としては…という人もいます。
魔導師ギルドは商人ギルドと同じで歴史が浅いギルドなので、冒険者ギルドのように各地に支部があるわけではありません。キャトラル王国にはありません。
※冒険者ギルドは経験値でランクが上がりますが、魔導師ギルドは魔力量と試験結果によってランクが固定されます。魔力量が上がったと思う人がランクアップの試験を受けることもあります。
魔法使いは学園で魔法を正式に学んだことはないけど、隣近所の人よりは魔法が得意という魔法を生業にした平民です。冒険者ギルドに所属している人もいれば、自警団や傭兵、万事屋みたいなことで商売している人もいます。
魔力量も威力も魔術師に劣るので、冒険者や傭兵になる魔法使いは武器必須。魔法剣士のような魔法+武器の二刀流でないと生き残れません。
魔力量が多く、学園で学ぶ機会のあった平民は魔導士か魔導師を名乗ります。
聖属性はハズレ属性なので、魔力量の多い聖属性は研究者になりポーションなどの研究を行います。研究者になるには魔力が少ない聖属性は薬師か、教会で修道士や治癒士になります。メリンダのように出奔する人もいますが国からは出ません。引きこもり聖属性なので…。イヴは逞しく育ってます。
さらに魔術というのもありますが、魔術師や魔術士はいません。
ここでは学問の1つとなっており、学園(中高にあたる教育)で魔術のさわりを、各国の最高学府の魔術学部で徹底的に魔術を学びます。
魔導士は魔力ありきですが、魔術は学問なので学力勝負です。なので、魔導士より最難関と言われています。
魔力量の少ない貴族の子息が狙う学部の1つでもあります。ただ、親の七光りが効かない完全実力主義の学部なので挫折する者は少なくありません。
ジャレッド団長とランスはエールだ。ランスはこれからハノンに戻るというのに、意に介さず。水のようにエールを飲んでいる。
まぁ、ランス曰く、「極北生まれにとってエールは水だ」とのこと。
帰路の途中、馬から落ちないことを祈ろう。
そんな心配をしていると、「ところで」と、ランスがツマミに出された炙り厚切りベーコンに手を伸ばしつつ、ジャレッド団長に目を向けた。
「団長がイヴを連れてウルバスに行くわけではないんだろう?」
「ああ。寒さに強い者を代理人に、あとは冒険者の護衛を雇って出立することになっている」
「春を待たずに?」
きょとんとしたランスに、ジャレッド団長は「そうだ」と頷き、ベーコンを頬張る。
この厚切りベーコン。私の手のひらより大きいのだけど、ジャレッド団長は二口で食べてしまう。ランスも同じだ。ツマミというにはボリュームのあるそれを、ばくばくと平らげていく。
当然、木樽ジョッキに注がれたエールの減りも早い。
「早くイヴの身内を捜したい理由でもあるのか?」
ニヤニヤと笑うランスは無視だ。
ジャレッド団長も肩を竦めただけで、番の話はしなかった。
「ウルバス大公国は薬草が豊富らしいので、繋ぎが欲しいのもある」
「あそこの薬草は有名だよ。温室技術もだけど、竜害の影響もあって人里では見かけない珍しい薬草が育つんだ。新種登録されたものもあるらしい。ただ、ウルバス以外では枯れるというから、魔素が関係してるんだろうな」
残念。
株分けしてもらう目論見が潰えた。
というか、問題は魔素だ。たま~に聞くけど、詳しくは知らない。
「ねぇ、ランス。魔素って、結局は何?それが濃いと魔物がいっぱい出るとは聞いたことがあるけど…。薬草にも関係してるの?それがあれば、こっちでも薬草が維持できたりする?」
「ウルバスの薬草を植えられるかっていうと、たぶん無理。あそこは異常だからな。そもそも魔素っていうのは、お頭の言葉を借りれば”澱み”のことだよ」
「”森で澱みを報告を受けたぞ!”ってたまに聞いた。腕の立つ冒険者を何人も召集して向かわせてた。魔素のことだったんだ」
「澱みの正式名称を魔素という。んでも、ギルドでは”澱み”や”穢れ”と呼称する。ギルドっていうのは、基本的に学のない奴らが食い扶持を稼ぐために出来た組織だからな。魔素よりも”澱み”と言う方が伝わりやすいし、ヤバいなって気もするだろ?」
うんうん、と頷く。
「分かりやすく言うと、魔素は魔力の源だ。学者によると、体に影響が出ない程度の薄い魔素が世界中を覆ってるらしい。それが雨に含まれ、雨が降って地中深くに染み渡る。それを吸い上げる草木も、それを食べる生き物の体内にも魔素は巡る。仕組みは異なるが、人族や魔物は魔素を魔力へと変える器官があるんだ。その器官が発達しているのが人族で、未発達な器官を補うために魔石を作り上げるのが魔物だ。獣にはそれがなく、取り入れた魔素はそのまま排出される。獣人は、取り入れた魔素を身体能力へ全振りしているから魔法は使えない。で、均一に広がっている魔素だが、地脈に沿って滞留してしまう箇所がある。それが、ここの森のような場所だな。お頭の言う”澱みの報告”っていうのは、”帰らずの森”のような場所の中に、水溜りみたいな濃い魔素が湧いた箇所だ。魔物の死骸や魔石なんかを放置しとくと発生しやすい。んで、元カルバス皇国の危険地域は、竜によって作られた魔素の高濃度地帯だ。魔素が濃いと、人には毒になる。魔物も狂い、凶悪な魔物が発生する。だが、逆に危険レベル4の竜種なんかになると、心地良いのか、魔素の濃い場所を好む。立ち入り禁止区域の上空を飛翔する竜の目撃情報は多い」
滔々と説明してくれるランスに、何度も相槌を打つ。
ウルバス大公国が怖いのが再認識できた。
あと、獣人の身体能力値の異常さも納得だ。さしづめ属性の名前は、身体能力マシマシ属性だ。
「ついでに付け加えると、魔素は天気にも影響する。極北では、魔素が乱れると大雪が降りやすいと言われているんだ」
「こっちも”魔女の森”に沿った地域は魔素が濃く、冬の厳しさは魔素が関係しているといわれている。その魔素の乱れに敏感なのが白魔茸で、魔素が乱れ、濃度を増した年に白魔茸が大繁殖して大雪が降る。と、マッシモ・コラクの本で触れているはずだ」
「ジャレッド団長、図書室の本をすべて読んでるんですか?」
「まさか。マッシモ・コラクはここ出身だからな。”魔女の森”を中心に研究していたのもあり、彼の著書だけは図鑑を含め読んである」
「白魔茸…向こうではユキノトだが、それが敏感なんて初めて知った。だから、大雪の年は馬鹿みたいに生えるんだな」
ランスが感心しきりに頷いている。
「北は竜の棲み処が点在しているので、どうしても他の州より魔素が濃く乱れやすいからな。そのせいで、冬といえば大雪だ。ユキノトが多いと、さらにドカ雪となるけど、因果関係なんて誰も調べなかったよ」
きっと今冬の大雪は、ランスにとっては肩透かしになるのかも。
「ウルバス大公国も大雪が降る地域なら、温室は倒壊しちゃわない?」
「あそこの温室は円いんだ。クロッシュみたいな形だから雪が積もる屋根がない。ガラスの技術も抜きん出ているからこそ出来るんだろうな」
円い温室なんて、全く想像が出来ない。
「ガラスの技術もあるのか。職人を引き抜くことは…」
「無理無理。国を出るウルバス人なんてほぼいない。職人を引き抜くより、こっちの職人を向こうにやって技術を覚えさせた方が手っ取り早いぞ」
「うむ…」
ジャレッド団長は腕を組み、眉間に深い皺を刻む。
「まぁ、職人よりも、出立するのが決定しているなら、すぐ出立した方がいい。トーゴ王国で大河を渡るんだが、氷が張るんだ。上流からも氷が流れてくるから船は頑丈なんだが、氷を割って進めるほど頑丈ではないからな」
「大河…。そんなにすごい川なの?船で渡らなきゃならないくらいに?」
ハノンに流れているのは助走をつけて飛べば渡れるくらいの小川だ。
クロムウェル領にも川は流れているけど、橋を架けられる程度の川幅しかない。
想像が出来ずに首を傾げれば、ランスは「”帰らずの森”に流れてるだろ?」と器用に片方の眉を上げる。
「浅くて、馬で渡れるくらいのね」
「それの本流。実際は別々の川なんだが、同じ河口に流れ込んでるから森に流れているのは支流と呼ばれている。こっちの川が支流と言われるのは、単に川幅が狭いから。とは言っても、キャトラル王国付近で川幅が一気に狭まってるんだよ。キャトラル王国よりも海側の国は、橋も架けられないほど川幅がある。まぁ、本流と呼ばれている方は、対岸が見えないくらいだけどな。その本流が蛇行しながら、キャトラル王国のお隣さんを通過してる。ここから近いのはトーゴ王国のルベルノ波止場だ。ゴールドスタインから馬を飛ばせば3日の距離になる。未整備の道があるから馬車なら10日前後か。さらに船で対岸に着くのに半日かかるが、流氷があると恐ろしく時間がかかる。氷に囲われ、身動きができなくなると数日どころか海に押し流される危険もあるんだ」
対岸に着くまで半日もかかるなんて!
それが川なら、海はどれだけ大きいというのか想像もできない。
「ランス、詳しいね」
「ハノンに定住するまでは各地を巡ってたからな。ソロの高ランカーは行動範囲内の地形には詳しいんだよ」
地形に詳しくなると、出没する魔物の種類も経験で分かるようになるのだとか。
Aランクになると、王侯貴族から護衛や素材採取の指名依頼が入ることがあるので、ある程度の地形を頭に叩き込んでおく必要があるらしい。
こういうことを聞くと、高ランカーは腕っぷしだけじゃダメだなと思う。
「てことで、団長。まず船選びに金をケチらないことだな。次に、魔導師に金をケチらないことだ」
「魔導師?そういうのは国や、どこかの貴族家に仕えているのではないのか?」
と、ジャレッド団長。
「冒険者ギルドのような大規模なギルドではないけど、向こうには魔導師ギルドってのがある。冒険者ギルドみたいに誰でも所属できるわけじゃない。所属するには厳しい審査と、難関の魔導師資格試験を通った者だけだ。その分、依頼料は割高だけど、腕の良い者が揃ってるよ。口さがない奴らは”都落ちエリート”なんて言うけど、王城勤務の魔導士より優秀だから単なる僻みだ」
「そんなになのか?」
「ああ。王公の下に勤めるのは、能力より血筋が大事ってとこが多い。貴族であり、または貴族の後見人を得た平民しか採用されない。採用されたとしても、そういう場所に限って人間関係が複雑だから、離脱者はままいる。妾子は特に嫌がるな。貴族の子女も、誰もが社交的ではないから、そういうのを嫌った優秀な奴らはギルドに集まって、働きたい時に働いて、あとはのんびり田舎暮らしを満喫してるんだ」
へぇ~。
魔導師ギルドがあるなんて知らなかったし、貴族社会もいろいろ大変なのも知らなかった。
つくづく自分の世界の狭さに驚嘆する。
「んで、一般的な船には基本、風属性の魔法使いがいる。魔法使いってのは、魔導師でも魔導士でもない魔法が得意な雇われのことを指す。当然、魔導師に比べるべくもない。その魔法使いもいない、小さな船もある。その場合は、こちらが魔導師を同伴させるのが常識なんだ。風属性にプラスして、氷が張るような北方の船には火属性を雇う。専任魔導師が在籍している船は割高だが沈没する恐れはない。裏を返せば、ケチれば命の保証はないってことだ。注意することは、冒険者ギルド所属の魔導師はランクにバラつきがあるから当たり外れは大きいってところだな。稀に自称魔導師も紛れてるし。魔導師ギルドなら確実だ。魔導師のランクも偽造できないようになっている。まぁ、魔法使いも雇えないような船は冬季休業が多いけどな」
「船は定期便なのか?」
「チャーター便もある。定期便は波止場は選べないが、チャーター便ならウルバスに近い波止場を選べるぞ。あと、チャーター便は専任魔導師込みの代金だが、これから向かう予定なら保険として別に魔導師を確保しておいた方がいい。金があるなら魔導師ギルドでAランカーがおすすめ」
「白魔茸の影響で川の荒れ具合が分からない、か」
ジャレッド団長の独り言のような呟きに、ランスは頷きつつベーコンを頬張り、カウンター奥の厨房にいるピーターに親指を立てて賛辞を送っている。
「ああ、そうだ。馬を連れて行くならトーゴまでだ。以降は雪が深くなって、馬だと立ち往生するぞ」
「トーゴの以北は北エルバス州に接していたか」
「ああ。ウルバスに行くには、そっちじゃねぇけどな。トーゴ王国から更にマグレガー王国を経由する。マグレガーの手前まで船で上れたはずだ。そのマグレガーってのは美食の国として有名なんだ。トナカイの肉料理とチーズが絶品だぞ。んで、その上にウルバスがある。ウルバスに入ったらムースを確保する方と良い」
「ムース?」
私とジャレッド団長が首を傾げる。
「あっちは雪深いからな。車輪のついた馬車は、1年のうち2ヵ月程度しか走らない。殆どは車輪部分を橇にした馬橇だな。坂道で使うと速度が出て馬では止まることができずに事故るから、こっちで見るような大きな箱馬車じゃない。屋根もない質素なものだ。雪深くなると馬ではなく、色んな輓獣が出てくる。中でも一般的なのがジャイアントムースという巨大なシカだ。雪靴のような大きな蹄があるんだ。馬だと、雪にずぼずぼ脚が嵌って身動きが取れなくなるが、ムースは馬に比べて脚が長いし蹄がでかいから深い雪でもスムーズに走る。雪だけじゃなく泥濘にも強い。泳ぐのも得意だしな。北エルバス州の騎士は、馬とムースの両方に乗るぞ。馬ほど簡単じゃないが。特にウルバスは竜害の地が近いからな。魔素が不安定で冬は極北並みに雪深いからムースは必要なんだ」
シカを馬代わりにするなんて想像もできない。
しかも、冬は橇を牽かせるという。
ハノンで橇といえば、小さな子供の移動手段だ。これは子供が上手く歩けないため、橇に子供を乗せて親が引くのだ。雪が積もると、水路が隠れたりするので、子供が外に出る時は親が引く橇に乗るのが暗黙の了解となっている。
こっちの馬やシカは橇を牽かない。
「ジャイアントムース、欲しいな」
とはジャレッド団長だ。
「なら猶更、トーゴで大河を渡る際は船を一艘手配する必要がある。さすがに一般客はムース連れを嫌がるだろ」
「チャーターするくらいの金ならある」
お金持ちの高位貴族発言に、同じ貴族出身のランスも苦笑している。
「ムースの仕入れも追加してもらおう」
「ウルバスの冬は、こっちの大雪以上の積雪がある。平屋くらいなら埋もれかねない。でも、一番危険なのが”白い闇”だ。魔素が不安定で白い闇が起こりやすいから気をつけろよ」
「なんだ、その白い闇とは?」
「分かりやすく言えば雪煙だよ。方向感覚が分からなくなるほど、視界が真っ白になる。白い闇に遭って凍死する奴は一定数いる。まぁ、殆どが他所から来た商人や旅行者がパニックになってって感じだけどな。派遣する奴に忠告しておいた方が良い。白い闇に遭ったら、慌てず動かず。雪洞を作って白い闇が去るのを待つ。運が良ければすぐに晴れるが、運が悪ければ数時間や1日は足止めだ。無暗に歩き回れば、見知らぬ森の中に迷い込み遭難したり、崖から落ちたり、知らず薄氷の上にいて池に落水することもあるからな。パニックになる奴が一番危ない」
ウルバス大公国が父の故郷と知って興味は沸いたけど、ランスの話を聞いて、興味は急速に萎んで消えた。
竜も怖いけど、白い闇も怖い…。
その後、さらに詳しくウルバス大公国について知りたいというジャレッド団長によって、ランスは公爵家へと連れて行かれた。
公爵様を交え、3人でヘビの心臓の契約と魔物除けの香の販売価格も決めていたのは驚いた。
まぁ、材料費に加え配送料もかかるので、計算が得意ではない私は、細かな調整をしてもらえてホッとしていたのは内緒だ。
===== ちょっと長いあとがき説明 =====
今更ですが、魔導士と魔導師。魔法使いも…
一応、この世界では線引きがあります。
私も混乱するので間違えてる場合も多々ありそうですが笑
魔導士は国に仕えるエリートです。
難関校で学び、狭き門の採用試験に合格できた人たち。
魔力量の多い人たちばかりなので9割が貴族。継げる家のない次男以下が多いです。
残り1割が平民ですが、両親か祖父母あたりに貴族の血が流れているケースばかりなので根っからの平民はいないと思われます。
※人族の国の多くは、魔力量の多い魔法使いたちが国を築いた歴史があるので王侯貴族に魔力量増し増しの人たちが名を連ねています。国の体裁が整った後に魔法使いの区分けに魔導士や魔導師が誕生しました。
魔導師は国にも貴族にも仕えていないフリーランス。
上下関係や規則に雁字搦めになり、人間関係に嫌気を差した魔導士が辞表後に「魔導師」と名乗り、師として弟子を取り始めたのが始まり。
主に冒険者ギルドに所属している場合が多いですが、国によっては魔導師ギルドがあるのでそこに所属します。魔導師ギルドでは魔力量や試験をしてランク付けしますが、冒険者ギルドでは冒険者としてのランク付けしかしてません。なので、冒険者としては優秀でも魔力量的に魔導師としては…という人もいます。
魔導師ギルドは商人ギルドと同じで歴史が浅いギルドなので、冒険者ギルドのように各地に支部があるわけではありません。キャトラル王国にはありません。
※冒険者ギルドは経験値でランクが上がりますが、魔導師ギルドは魔力量と試験結果によってランクが固定されます。魔力量が上がったと思う人がランクアップの試験を受けることもあります。
魔法使いは学園で魔法を正式に学んだことはないけど、隣近所の人よりは魔法が得意という魔法を生業にした平民です。冒険者ギルドに所属している人もいれば、自警団や傭兵、万事屋みたいなことで商売している人もいます。
魔力量も威力も魔術師に劣るので、冒険者や傭兵になる魔法使いは武器必須。魔法剣士のような魔法+武器の二刀流でないと生き残れません。
魔力量が多く、学園で学ぶ機会のあった平民は魔導士か魔導師を名乗ります。
聖属性はハズレ属性なので、魔力量の多い聖属性は研究者になりポーションなどの研究を行います。研究者になるには魔力が少ない聖属性は薬師か、教会で修道士や治癒士になります。メリンダのように出奔する人もいますが国からは出ません。引きこもり聖属性なので…。イヴは逞しく育ってます。
さらに魔術というのもありますが、魔術師や魔術士はいません。
ここでは学問の1つとなっており、学園(中高にあたる教育)で魔術のさわりを、各国の最高学府の魔術学部で徹底的に魔術を学びます。
魔導士は魔力ありきですが、魔術は学問なので学力勝負です。なので、魔導士より最難関と言われています。
魔力量の少ない貴族の子息が狙う学部の1つでもあります。ただ、親の七光りが効かない完全実力主義の学部なので挫折する者は少なくありません。
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