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遺品
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「結構片付いたね」
新が埃だらけの顔で、軽々と薬箪笥を持ち上げた。
薬箪笥とは、その名の通り、小さな引き出しが並ぶ箪笥だ。昔の薬屋や医者が使用していたが、使い勝手が良いので一般家庭でも使われていた。衣装箪笥よりは軽いが、総桐の和箪笥だ。30キロ近くはあるだろうに、新の顔からは重量感が感じられない。
「おい。下ろせ。それは普通、人間2人で抱える代物だ。見られでもしたら厄介だろう」
「ああ、そうか」
ごめんごめん、と苦笑しながら、そろりと薬箪笥を下ろす。
適当に抽斗を外し、そこに手を突っ込み、人間らしく「いち、にいのさん」の掛け声で薬箪笥を持ち上げる。
「私が前を行くよ」
新は言って、足元に注意を払いながら後ろ歩きで出口に向かう。
軽やかな足取りは厳禁だ。
眉間に皺を刻み、歯を食いしばった表情を作るのが好ましい。更には、細心の注意を払っていますという演技が出来れば、そこそこ人間っぽいと思う。
2人がかりで薬箪笥を蔵から運び出す。
蔵の手前には、例のコレクションが幾つか放置されているが、薬箪笥は違う。蔵から離れた、北の間の正面に作られた作業スペースまで運ばなければならない。そこにはコレクション以外の物が、ブルーシートに並んでいる。
農具は地面に、木箱に納まった茶器や花瓶、掛け軸、葛籠、蔓籠などはブルーシートの上に広げられている。
蔵の床に散乱していた釘や糸鋸などの工具は、バケツに入れ、粗雑な望海から離れた場所に置いてある。
北の間を見れば、カラフルなピクニックシートを広げて簾戸が4張り置かれている。腰板に透かし彫りを入れた簾戸は、アンティークとしての価値もあるだろう。
処分せずに店で使うのだという。
それらを精査し、記録するのは青砥真治郎だ。その隣で、妻の香澄と望海が並び、運び出した荷物を乾拭きしている。
青砥香澄はショートヘアの長身な女性だ。背丈は170cmはあるだろうか。加えて、骨太なのだろう。太っている訳でないが、女性にしては体格が良い。夫と共に猟銃を手に、山の中を駆け回っているせいかもしれない。化粧っ気はないが、笑った時の八重歯が愛らしさを引き立たせる。
青砥香澄の隣で談笑している望海は、時折背後を気にしながらも、危なっかしい手つきで蔓籠を磨いている。傍らには、泰心から受け取ったボロボロの紙袋だ。
「ああ!済みません。重いでしょう!」
慌てて駆け寄る青砥真治郎を笑顔で制し、ブルーシートの隅に薬箪笥を置く。
「前回は気づきませんでしたが、立派な薬箪笥ですね」
「ええ、祖父のものだったと思います。この薬箪笥も、そこの蔓籠なんかも、祖父の友人の工房から買ったものですよ。薬箪笥は、援助のつもりで買い取ったのだと聞いています」
なるほど、と頷きながら、外した抽斗を元に戻す。
「私、拭きますね」
望海が張り切って立ち上がった。
骨董品に躓かないか、はらはらと見守ってしまうのは仕方ない。茶器を壊して弁償にでもなれば、実質タダ働きとなりかねないのだ。新も思うことは同じらしい。無精髭の埃を拭いながら、ちょこちょこと歩いている望海を見守っている。
あいつが動くと心臓に悪い。
僕たちがそんなことを思っているとは露知らず、3人は和やかだ。
「日向さん、済みません。子供にも手伝わせるべきなのでしょうが……部活や塾に行ってしまってて」
「大丈夫ですよ。掃除、大好きですから」
思わず呆れ顔を作れば、望海がムッとした顔で睨んで来る。
それを無視して、僕は青砥真治郎に向き直った。
「青砥さん。2階の大物は明日になりそうなのですが、家具も下ろしますか?それとも中身だけにしますか?」
「2階…。箪笥と長持…ですよね?」
「そうです」
「あ…では…中身だけお願いします」
青砥真治郎は恐縮気味に頭を下げる。
「それじゃあ、空の段ボールの用意をお願いしますね」と、新。
「使えそうなものを探してみます。なければ、農協で貰って来ます」
青砥香澄が立ち上がり、望海に二言三言を声をかけて駆けて行った。
「あの…本当に済みません。ありがとうざいます」
「仕事なのでお気遣いなく」
軍手に付いた埃を叩き落とし、新に目配せして蔵に戻る。
「今のところ、平和に頑張っているね」
何が、と訊くまでもない。
望海のことだ。
「僕が一番恐れているのは、茶器の割れる音だ」
そう言えば、新は苦笑する。
「望海だけじゃない。お前も心配だよ」
嘆息して、蔵へと足を踏み入れる。
「今回は大丈夫なのか?」
鼻を指させば、新は無精髭を掻き、困惑の顔で天井を仰ぎ見た。
適当に、4ヶ所に懐中電灯を立て掛けているが、照明というには頼りない。闇が勝っているので、天井は不気味な暗がりに包まれている。
新は闇を注視し、首を傾げた。
「それが、今日はしないんだよね」
くんくん、と鼻孔を広げ、豪快にくしゃみをする。
「埃が…凄いだけ」と、洟を啜り上げた。
「鬼も埃でくしゃみするんだな」
「するよ!差別反対」
新は不貞腐れた様子で鼻をぐずつかせ、「マスクが欲しいよ」と手を振って空中に漂う埃を払っている。
「お前が潔癖じゃなくて助かるよ」
改めて1階を見渡す。
残りの荷物は、コレクションだと目星をつけた物だ。外に出し、最終判断を下すのは青砥真治郎だが、九割方は間違いないと思う。
まず、色褪せた絵柄がプリントされた段ボール箱が5つ。拙くも力強い字で、”カツヤスのたからもの”や”勝甚の私物”と書かれている。勝甚とは青砥真治郎の父親で、家族から嫌厭される骨董のコレクターだ。
数が多いのは、大小様々な木箱だ。木箱の表題通りなら、面や人形が納まっているはずだ。ただ、額面通りに受け止めて良いのかは微妙なところだ。1つ1つ蓋を開けて中を確認した方が賢明だろう。
「そういえば、御神体が何か訊いていなかったけど…なに?」
「鉧だ」
「まんまだね…」
新は苦虫を噛み潰した顔で2階を見上げた。
2階は虫籠窓があるが、格子が邪魔で開かない。そのせいで、2階は闇の中だ。
それは単純に照明不足なだけじゃない。
「相変わらず、酷い澱みだね」
新が口角を歪めた。
「目星はついてるの?」
「恐らく、2階にある長持の中だな。その中の、一番奥のやつが怪しかったよ」
「惟親くんは、よくあの澱の中に行ったと思うよ。血のなせる業かな」
感嘆の息を漏らす新に、僕は顔を顰める。
「私は、その繋がりは強みだと思うんだけどね」
「無駄話はここまでだ。手を動かすぞ」
「そうだね」
新は苦笑し、年寄り臭く「どっこいしょ」と腰を下ろした。
手近な木箱を開け、茶碗を取り出し、高台裏や高台の周りを確認する。銘が捺されるのは、高台の周囲だと決まっている。
「無銘だけど、これは望海ちゃん行きかな」
新は茶碗を木箱に仕舞い、別の木箱を手繰り寄せる。
僕は段ボール箱に手を付ける。1つ目は、スーパーで売っていそうな不揃いの茶碗ばかりが出て来た。縁が欠けていたり、罅が入っていたりと、まさにガラクタだ。クッションを使うこともなく、適当に積み重ねているだけなので、下の方の茶碗やグラスは割れていた。
「単に、物を捨てられない人間だった可能性もあるな」
「かもね。古い雑誌も山積みだったし。でも、そんな中にコレクションが紛れてるんだよね」
厄介というか、面倒というか。
僕と新は同時にため息を吐いた。
ガラクタ茶碗を段ボール箱に戻し、次の段ボール箱を開封する。
折れた柘植の櫛がある。
赤いクレヨン。これは棒紅という昔の口紅だ。水で溶いて使用される。
レトロな小瓶に入った水銀。
赤い背景に2頭の鹿や虎のイラストが印刷された燐寸箱。
円い菓子缶を開ければ、乾涸びた蜘蛛や蟷螂、蜈蚣、蜥蜴が死んでいる。これは”男の子だから”で済ますような、可愛げのある所業ではない。他にも、長方形の靴箱の中には、黄ばんだ紐で括られた黒髪の束が何束も詰め込まれている。緑色のプラスチックの虫籠には、大量の蝉の抜け殻を詰め込むといった狂気もある。
「新」
僕は菓子缶を、「これを知ってるか?」と新にパスした。
新は作業の手を止め、菓子缶を受け取ると、首を傾げながら蓋を開いた。そして、菓子缶の中を見据え、怯んだように首を窄める。
「それは故意かい?」
「さぁ、どうだろうな。だが、蠱毒だ」
食い殺された虫の脚や触覚が散らばっているが、勝者は出なかったらしい。多くが窒息死してしまっている。青砥勝甚がやろうとしたのは、稚拙ながら立派な呪術だ。
「蠱毒や蝉の抜け殻は違うが、他は女のものだ」
「櫛と棒紅はそうだろうけど、水銀と燐寸は違うんじゃない?髪だって性別は分からない。というか、どういう意図で集めていたんだろうね。私には一貫性がないように見えるよ」
「水銀と燐寸は聞いたことがないか?」
何を察したのか、新が眉尻を目いっぱい下げた。
「昔、中絶に使っていたんだ。水銀を飲んで子を下ろす。燐寸は頭の部分を幾つか飲み込み、やはり子を下ろすのに使った。母体もただじゃ済まない。中絶に失敗すれば、奇形の子が産まれる。リスクしかないが、昔は今ほど簡単ではなかった。階段から飛び降りた女を見たことがあるし、雪の降る日に川の中で震える女も見た」
「そういう話は嫌いだよ。男であることが申し訳なくなるから……」
時代だった、と一蹴しないのが新らしい。
新はしょんぼりと俯き、「あ」と段ボール箱の中を指さした。
「惟親くん。紙があるよ」
段ボール箱の底。蓋の折り込み部分に、紙が入り込んでいる。
なんだろうかと引っ張れば、二つ折りにした作文用紙だ。かなり古く黄ばんでいる。升目に”あおとかつはる”と消しゴムで消した跡がある。昔の消しゴムなので、綺麗には消えない。むしろ、黒ずみで汚れてしまっている。それが嫌だったのか、一面に大きく×印を書いている。捨てなかったのは、作文用紙1枚でも勿体なかったからだろう。
×印を書いた後も、色々と書き込んでは消すの繰り返しだったようだ。
黒ずみだらけながらに、はつ、まなみ、とよ、しんじ、やすし、いつき、かよ、きみことあかちゃん、と跡が残る。
「きみことあかちゃんって…キミコという女性と赤ちゃんってこと?」
新が作文用紙を覗き込む。
「だろうな」
懐中電灯の明かりを、角度を変えて照らしてみると、他にも書き込んだ跡が見つかった。
じんすけ、じんごに×印。
とよちゃんかわいそう。
このいえはこわい。
そして、”もやそう”という痕跡を見つけた。
新が顔を強張らせ、段ボール箱の中の燐寸箱を見た。
作文用紙を裏返すと、拙い絵が所狭しと描かれている。丸と線で描かれた人間ばかりだ。ぼさぼさの髪では男女の区別は付かないが、女には乳房がある。乳首も描かれているので裸だ。女には男が対となり、寝ているものあれば、立っているものもある。
「これって…」
「セックスしているんだろうな」
セックスの意味が分かっていただろうか。
幼いながらも、分かっていたのだろう。男の顔は怒ってばかりだが、女の顔は涙を描き込んだものばかりだ。
「まるで強姦じゃないか…」
「そうだな。だが、これは違う」
隅に書かれた絵を指さす。
「これは首吊りだ」
思わず顔を顰めてしまう。
「青砥真治郎が言っていたな。父は自分たちには見えない何かが見えていたと思う、と」
「この作文用紙は、私たちが処分しよう。見せるのは酷だよ」
「ああ」
作文用紙を小さく折り畳み、青砥真治郎が確認しないだろう段ボール箱の折り込み部分に戻した。
次の段ボール箱の封を開く。
頭蓋骨を模した陶器だ。どこかの外国土産だろう。木彫りの原住民らしき置物もある。十字に組み合わせた木に、麻の紐をぐるぐる巻きに肉付けしたブードゥー人形も出て来た。
青砥勝甚は、よほど家が嫌いだったらしい。
「惟親くん。鬼が出始めた原因、これじゃない?」
新が床から薄汚れ、中途半端に破れた半紙を拾い上げた。
黒い鬼の木乃伊が描かれた呪符だ。木乃伊は胡坐を組み、ぎょろりとした目玉がある。額の一本角が、上部に書かれた魔除け文字に伸びている。
この呪符が、蔵の中にある御神体を隠していたのだ。
「くくり罠を探す際、きっと破いちゃったんだろうね」
「それ自体が、見よう見真似で描いて、まぐれ当たりしたって感じだな」
僕が言えば、新は苦笑しながら段ボール箱に呪符を放り投げた。
その他の細々した物を段ボール箱に入れ、蓋を閉じる。外に運び出せば、新も確認を終えた木箱を外に移動させる。
黙々と、蔵と外の往復だ。
「これはどっちだろうね」
新が木箱を6箱ほど抱えて首を傾げている。
中身は般若と小面だ。般若は鬼の面で、小面は糸目に赤い唇をした女の面になる。
「2階にも怪士や恵比寿があったな。あれは向こうに持って行ったぞ」
「それじゃあ、純粋なコレクションかもね」
「僕たちより望海の方が敏感なんだ。何か感じれば、向こうで弾くだろ」
「じゃあ、望海ちゃんに託すよ」
新は言って、木箱を運んで行く。
残りの木箱は3つ。作りは頑丈だが、手作りの品だ。蓋を開ければ、人形が出て来た。2体は日本人形。1体はフランス人形。3体ともぼさぼさ髪で、瞳孔が開き、今にも動き出しそうなおちょぼ口をしている。
「これはこっちだな」
蓋を閉め、木箱を抱えて蔵を出る。
「それは何だったの?」
戻って来た新が、興味津々といった顔で木箱を覗き込む。
「日本人形とフランス人形だ。夜、枕元に置いておけば話し相手になるぞ」
僕の冗談に新が渋面を作る。
それが聞こえてしまったのか、段ボール箱とガムテープを運んで来た青砥香澄は顔面蒼白で目を背けた。
「あ、あの、色々と探したんですけど、5箱しかありませんでした。あと何箱必要ですか?」
怖ず怖ずとした視線は、積み上げたコレクション入り段ボール箱と人形の入った木箱に向けられる。
僕は軍手を外すと、のんびり蔵の中に目を向けた。
「そうですね。まだ2階は手付かずなんです。長持や箪笥の中を見てみないと分かりませんが、とりあえず5箱で大丈夫でしょう。足りないようなら、先に運び出した箱を空にして順繰り使いまわしましょう」
「分かりました」
青砥香澄の手から、新が段ボール箱とガムテープを受け取る。
「1階は終わりましたよ」
新は人当たりが良い笑みを湛え、視線をブルーシートで四苦八苦している2人に向ける。
「あとは整理だけですね。それで丁度良い時間でしょう」
「そうですね」
青砥香澄は2人に視線を馳せた後、赤らみ始めた空を仰ぐ。
日が暮れる前に家の中に入らなければと、焦燥した目をしている。
「もう蔵は閉じます。あっちの上にはシートを被せ、明日、必要な物だけ蔵に戻しましょう」
僕の言葉を聞きながら、新は段ボール箱を持って蔵の中に入って行った。
「こちらの確認もお願いします。終わった物から、順次車に積み込みます」
「は…はい…」
ごくり、と青砥香澄が息を呑む。
怯えた視線は人形の納まる木箱に釘付けだ。
人間というのは人形を可愛いと言う一方で、人形に畏れを抱く。実に奇妙な習性だと思う。
実際にヤバイのは、人形ではない。
菓子缶の蠱毒でも、蝉の抜け殻でもない。
黒髪の束だ。あれは恐らく、恨みつらみを抱いた女の遺髪。
そんな物が段ボール箱に納まっているとは知らない青砥香澄は、「マサさん」と声を上げて駆け足で去って行った。
「惟親くん。鍵をかけても良いかい?」
懐中電灯を4本抱えて、僕を見ている。
「ああ、構わない」と言えば、新は戸を閉め、鍵をかけた。
「それにしても、勝甚さんって何がしたかったのかな?」
「僕が人間の心理に精通しているように見えるか?」
新を見上げれば、新は「だよね」とキャスケット越しに頭を掻いた。
それでもなんとなく、青砥勝甚がこの家を呪っていたのだけは分かった。
新が埃だらけの顔で、軽々と薬箪笥を持ち上げた。
薬箪笥とは、その名の通り、小さな引き出しが並ぶ箪笥だ。昔の薬屋や医者が使用していたが、使い勝手が良いので一般家庭でも使われていた。衣装箪笥よりは軽いが、総桐の和箪笥だ。30キロ近くはあるだろうに、新の顔からは重量感が感じられない。
「おい。下ろせ。それは普通、人間2人で抱える代物だ。見られでもしたら厄介だろう」
「ああ、そうか」
ごめんごめん、と苦笑しながら、そろりと薬箪笥を下ろす。
適当に抽斗を外し、そこに手を突っ込み、人間らしく「いち、にいのさん」の掛け声で薬箪笥を持ち上げる。
「私が前を行くよ」
新は言って、足元に注意を払いながら後ろ歩きで出口に向かう。
軽やかな足取りは厳禁だ。
眉間に皺を刻み、歯を食いしばった表情を作るのが好ましい。更には、細心の注意を払っていますという演技が出来れば、そこそこ人間っぽいと思う。
2人がかりで薬箪笥を蔵から運び出す。
蔵の手前には、例のコレクションが幾つか放置されているが、薬箪笥は違う。蔵から離れた、北の間の正面に作られた作業スペースまで運ばなければならない。そこにはコレクション以外の物が、ブルーシートに並んでいる。
農具は地面に、木箱に納まった茶器や花瓶、掛け軸、葛籠、蔓籠などはブルーシートの上に広げられている。
蔵の床に散乱していた釘や糸鋸などの工具は、バケツに入れ、粗雑な望海から離れた場所に置いてある。
北の間を見れば、カラフルなピクニックシートを広げて簾戸が4張り置かれている。腰板に透かし彫りを入れた簾戸は、アンティークとしての価値もあるだろう。
処分せずに店で使うのだという。
それらを精査し、記録するのは青砥真治郎だ。その隣で、妻の香澄と望海が並び、運び出した荷物を乾拭きしている。
青砥香澄はショートヘアの長身な女性だ。背丈は170cmはあるだろうか。加えて、骨太なのだろう。太っている訳でないが、女性にしては体格が良い。夫と共に猟銃を手に、山の中を駆け回っているせいかもしれない。化粧っ気はないが、笑った時の八重歯が愛らしさを引き立たせる。
青砥香澄の隣で談笑している望海は、時折背後を気にしながらも、危なっかしい手つきで蔓籠を磨いている。傍らには、泰心から受け取ったボロボロの紙袋だ。
「ああ!済みません。重いでしょう!」
慌てて駆け寄る青砥真治郎を笑顔で制し、ブルーシートの隅に薬箪笥を置く。
「前回は気づきませんでしたが、立派な薬箪笥ですね」
「ええ、祖父のものだったと思います。この薬箪笥も、そこの蔓籠なんかも、祖父の友人の工房から買ったものですよ。薬箪笥は、援助のつもりで買い取ったのだと聞いています」
なるほど、と頷きながら、外した抽斗を元に戻す。
「私、拭きますね」
望海が張り切って立ち上がった。
骨董品に躓かないか、はらはらと見守ってしまうのは仕方ない。茶器を壊して弁償にでもなれば、実質タダ働きとなりかねないのだ。新も思うことは同じらしい。無精髭の埃を拭いながら、ちょこちょこと歩いている望海を見守っている。
あいつが動くと心臓に悪い。
僕たちがそんなことを思っているとは露知らず、3人は和やかだ。
「日向さん、済みません。子供にも手伝わせるべきなのでしょうが……部活や塾に行ってしまってて」
「大丈夫ですよ。掃除、大好きですから」
思わず呆れ顔を作れば、望海がムッとした顔で睨んで来る。
それを無視して、僕は青砥真治郎に向き直った。
「青砥さん。2階の大物は明日になりそうなのですが、家具も下ろしますか?それとも中身だけにしますか?」
「2階…。箪笥と長持…ですよね?」
「そうです」
「あ…では…中身だけお願いします」
青砥真治郎は恐縮気味に頭を下げる。
「それじゃあ、空の段ボールの用意をお願いしますね」と、新。
「使えそうなものを探してみます。なければ、農協で貰って来ます」
青砥香澄が立ち上がり、望海に二言三言を声をかけて駆けて行った。
「あの…本当に済みません。ありがとうざいます」
「仕事なのでお気遣いなく」
軍手に付いた埃を叩き落とし、新に目配せして蔵に戻る。
「今のところ、平和に頑張っているね」
何が、と訊くまでもない。
望海のことだ。
「僕が一番恐れているのは、茶器の割れる音だ」
そう言えば、新は苦笑する。
「望海だけじゃない。お前も心配だよ」
嘆息して、蔵へと足を踏み入れる。
「今回は大丈夫なのか?」
鼻を指させば、新は無精髭を掻き、困惑の顔で天井を仰ぎ見た。
適当に、4ヶ所に懐中電灯を立て掛けているが、照明というには頼りない。闇が勝っているので、天井は不気味な暗がりに包まれている。
新は闇を注視し、首を傾げた。
「それが、今日はしないんだよね」
くんくん、と鼻孔を広げ、豪快にくしゃみをする。
「埃が…凄いだけ」と、洟を啜り上げた。
「鬼も埃でくしゃみするんだな」
「するよ!差別反対」
新は不貞腐れた様子で鼻をぐずつかせ、「マスクが欲しいよ」と手を振って空中に漂う埃を払っている。
「お前が潔癖じゃなくて助かるよ」
改めて1階を見渡す。
残りの荷物は、コレクションだと目星をつけた物だ。外に出し、最終判断を下すのは青砥真治郎だが、九割方は間違いないと思う。
まず、色褪せた絵柄がプリントされた段ボール箱が5つ。拙くも力強い字で、”カツヤスのたからもの”や”勝甚の私物”と書かれている。勝甚とは青砥真治郎の父親で、家族から嫌厭される骨董のコレクターだ。
数が多いのは、大小様々な木箱だ。木箱の表題通りなら、面や人形が納まっているはずだ。ただ、額面通りに受け止めて良いのかは微妙なところだ。1つ1つ蓋を開けて中を確認した方が賢明だろう。
「そういえば、御神体が何か訊いていなかったけど…なに?」
「鉧だ」
「まんまだね…」
新は苦虫を噛み潰した顔で2階を見上げた。
2階は虫籠窓があるが、格子が邪魔で開かない。そのせいで、2階は闇の中だ。
それは単純に照明不足なだけじゃない。
「相変わらず、酷い澱みだね」
新が口角を歪めた。
「目星はついてるの?」
「恐らく、2階にある長持の中だな。その中の、一番奥のやつが怪しかったよ」
「惟親くんは、よくあの澱の中に行ったと思うよ。血のなせる業かな」
感嘆の息を漏らす新に、僕は顔を顰める。
「私は、その繋がりは強みだと思うんだけどね」
「無駄話はここまでだ。手を動かすぞ」
「そうだね」
新は苦笑し、年寄り臭く「どっこいしょ」と腰を下ろした。
手近な木箱を開け、茶碗を取り出し、高台裏や高台の周りを確認する。銘が捺されるのは、高台の周囲だと決まっている。
「無銘だけど、これは望海ちゃん行きかな」
新は茶碗を木箱に仕舞い、別の木箱を手繰り寄せる。
僕は段ボール箱に手を付ける。1つ目は、スーパーで売っていそうな不揃いの茶碗ばかりが出て来た。縁が欠けていたり、罅が入っていたりと、まさにガラクタだ。クッションを使うこともなく、適当に積み重ねているだけなので、下の方の茶碗やグラスは割れていた。
「単に、物を捨てられない人間だった可能性もあるな」
「かもね。古い雑誌も山積みだったし。でも、そんな中にコレクションが紛れてるんだよね」
厄介というか、面倒というか。
僕と新は同時にため息を吐いた。
ガラクタ茶碗を段ボール箱に戻し、次の段ボール箱を開封する。
折れた柘植の櫛がある。
赤いクレヨン。これは棒紅という昔の口紅だ。水で溶いて使用される。
レトロな小瓶に入った水銀。
赤い背景に2頭の鹿や虎のイラストが印刷された燐寸箱。
円い菓子缶を開ければ、乾涸びた蜘蛛や蟷螂、蜈蚣、蜥蜴が死んでいる。これは”男の子だから”で済ますような、可愛げのある所業ではない。他にも、長方形の靴箱の中には、黄ばんだ紐で括られた黒髪の束が何束も詰め込まれている。緑色のプラスチックの虫籠には、大量の蝉の抜け殻を詰め込むといった狂気もある。
「新」
僕は菓子缶を、「これを知ってるか?」と新にパスした。
新は作業の手を止め、菓子缶を受け取ると、首を傾げながら蓋を開いた。そして、菓子缶の中を見据え、怯んだように首を窄める。
「それは故意かい?」
「さぁ、どうだろうな。だが、蠱毒だ」
食い殺された虫の脚や触覚が散らばっているが、勝者は出なかったらしい。多くが窒息死してしまっている。青砥勝甚がやろうとしたのは、稚拙ながら立派な呪術だ。
「蠱毒や蝉の抜け殻は違うが、他は女のものだ」
「櫛と棒紅はそうだろうけど、水銀と燐寸は違うんじゃない?髪だって性別は分からない。というか、どういう意図で集めていたんだろうね。私には一貫性がないように見えるよ」
「水銀と燐寸は聞いたことがないか?」
何を察したのか、新が眉尻を目いっぱい下げた。
「昔、中絶に使っていたんだ。水銀を飲んで子を下ろす。燐寸は頭の部分を幾つか飲み込み、やはり子を下ろすのに使った。母体もただじゃ済まない。中絶に失敗すれば、奇形の子が産まれる。リスクしかないが、昔は今ほど簡単ではなかった。階段から飛び降りた女を見たことがあるし、雪の降る日に川の中で震える女も見た」
「そういう話は嫌いだよ。男であることが申し訳なくなるから……」
時代だった、と一蹴しないのが新らしい。
新はしょんぼりと俯き、「あ」と段ボール箱の中を指さした。
「惟親くん。紙があるよ」
段ボール箱の底。蓋の折り込み部分に、紙が入り込んでいる。
なんだろうかと引っ張れば、二つ折りにした作文用紙だ。かなり古く黄ばんでいる。升目に”あおとかつはる”と消しゴムで消した跡がある。昔の消しゴムなので、綺麗には消えない。むしろ、黒ずみで汚れてしまっている。それが嫌だったのか、一面に大きく×印を書いている。捨てなかったのは、作文用紙1枚でも勿体なかったからだろう。
×印を書いた後も、色々と書き込んでは消すの繰り返しだったようだ。
黒ずみだらけながらに、はつ、まなみ、とよ、しんじ、やすし、いつき、かよ、きみことあかちゃん、と跡が残る。
「きみことあかちゃんって…キミコという女性と赤ちゃんってこと?」
新が作文用紙を覗き込む。
「だろうな」
懐中電灯の明かりを、角度を変えて照らしてみると、他にも書き込んだ跡が見つかった。
じんすけ、じんごに×印。
とよちゃんかわいそう。
このいえはこわい。
そして、”もやそう”という痕跡を見つけた。
新が顔を強張らせ、段ボール箱の中の燐寸箱を見た。
作文用紙を裏返すと、拙い絵が所狭しと描かれている。丸と線で描かれた人間ばかりだ。ぼさぼさの髪では男女の区別は付かないが、女には乳房がある。乳首も描かれているので裸だ。女には男が対となり、寝ているものあれば、立っているものもある。
「これって…」
「セックスしているんだろうな」
セックスの意味が分かっていただろうか。
幼いながらも、分かっていたのだろう。男の顔は怒ってばかりだが、女の顔は涙を描き込んだものばかりだ。
「まるで強姦じゃないか…」
「そうだな。だが、これは違う」
隅に書かれた絵を指さす。
「これは首吊りだ」
思わず顔を顰めてしまう。
「青砥真治郎が言っていたな。父は自分たちには見えない何かが見えていたと思う、と」
「この作文用紙は、私たちが処分しよう。見せるのは酷だよ」
「ああ」
作文用紙を小さく折り畳み、青砥真治郎が確認しないだろう段ボール箱の折り込み部分に戻した。
次の段ボール箱の封を開く。
頭蓋骨を模した陶器だ。どこかの外国土産だろう。木彫りの原住民らしき置物もある。十字に組み合わせた木に、麻の紐をぐるぐる巻きに肉付けしたブードゥー人形も出て来た。
青砥勝甚は、よほど家が嫌いだったらしい。
「惟親くん。鬼が出始めた原因、これじゃない?」
新が床から薄汚れ、中途半端に破れた半紙を拾い上げた。
黒い鬼の木乃伊が描かれた呪符だ。木乃伊は胡坐を組み、ぎょろりとした目玉がある。額の一本角が、上部に書かれた魔除け文字に伸びている。
この呪符が、蔵の中にある御神体を隠していたのだ。
「くくり罠を探す際、きっと破いちゃったんだろうね」
「それ自体が、見よう見真似で描いて、まぐれ当たりしたって感じだな」
僕が言えば、新は苦笑しながら段ボール箱に呪符を放り投げた。
その他の細々した物を段ボール箱に入れ、蓋を閉じる。外に運び出せば、新も確認を終えた木箱を外に移動させる。
黙々と、蔵と外の往復だ。
「これはどっちだろうね」
新が木箱を6箱ほど抱えて首を傾げている。
中身は般若と小面だ。般若は鬼の面で、小面は糸目に赤い唇をした女の面になる。
「2階にも怪士や恵比寿があったな。あれは向こうに持って行ったぞ」
「それじゃあ、純粋なコレクションかもね」
「僕たちより望海の方が敏感なんだ。何か感じれば、向こうで弾くだろ」
「じゃあ、望海ちゃんに託すよ」
新は言って、木箱を運んで行く。
残りの木箱は3つ。作りは頑丈だが、手作りの品だ。蓋を開ければ、人形が出て来た。2体は日本人形。1体はフランス人形。3体ともぼさぼさ髪で、瞳孔が開き、今にも動き出しそうなおちょぼ口をしている。
「これはこっちだな」
蓋を閉め、木箱を抱えて蔵を出る。
「それは何だったの?」
戻って来た新が、興味津々といった顔で木箱を覗き込む。
「日本人形とフランス人形だ。夜、枕元に置いておけば話し相手になるぞ」
僕の冗談に新が渋面を作る。
それが聞こえてしまったのか、段ボール箱とガムテープを運んで来た青砥香澄は顔面蒼白で目を背けた。
「あ、あの、色々と探したんですけど、5箱しかありませんでした。あと何箱必要ですか?」
怖ず怖ずとした視線は、積み上げたコレクション入り段ボール箱と人形の入った木箱に向けられる。
僕は軍手を外すと、のんびり蔵の中に目を向けた。
「そうですね。まだ2階は手付かずなんです。長持や箪笥の中を見てみないと分かりませんが、とりあえず5箱で大丈夫でしょう。足りないようなら、先に運び出した箱を空にして順繰り使いまわしましょう」
「分かりました」
青砥香澄の手から、新が段ボール箱とガムテープを受け取る。
「1階は終わりましたよ」
新は人当たりが良い笑みを湛え、視線をブルーシートで四苦八苦している2人に向ける。
「あとは整理だけですね。それで丁度良い時間でしょう」
「そうですね」
青砥香澄は2人に視線を馳せた後、赤らみ始めた空を仰ぐ。
日が暮れる前に家の中に入らなければと、焦燥した目をしている。
「もう蔵は閉じます。あっちの上にはシートを被せ、明日、必要な物だけ蔵に戻しましょう」
僕の言葉を聞きながら、新は段ボール箱を持って蔵の中に入って行った。
「こちらの確認もお願いします。終わった物から、順次車に積み込みます」
「は…はい…」
ごくり、と青砥香澄が息を呑む。
怯えた視線は人形の納まる木箱に釘付けだ。
人間というのは人形を可愛いと言う一方で、人形に畏れを抱く。実に奇妙な習性だと思う。
実際にヤバイのは、人形ではない。
菓子缶の蠱毒でも、蝉の抜け殻でもない。
黒髪の束だ。あれは恐らく、恨みつらみを抱いた女の遺髪。
そんな物が段ボール箱に納まっているとは知らない青砥香澄は、「マサさん」と声を上げて駆け足で去って行った。
「惟親くん。鍵をかけても良いかい?」
懐中電灯を4本抱えて、僕を見ている。
「ああ、構わない」と言えば、新は戸を閉め、鍵をかけた。
「それにしても、勝甚さんって何がしたかったのかな?」
「僕が人間の心理に精通しているように見えるか?」
新を見上げれば、新は「だよね」とキャスケット越しに頭を掻いた。
それでもなんとなく、青砥勝甚がこの家を呪っていたのだけは分かった。
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