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壊れた王子様

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 頭の中でバチンと、何かがはじける音で俺の意識は覚醒させられた。
「あ゛……?」
 口の中は酷い味が残ってるし、何か不快感が酷かった。
 腹の中がなんかぐずぐずするというか、よく分からないのと、尻の穴が開いてるのかなんかスースーする。
「ニュクス様、準備が整いましたので目を覚まさせていただきました」
 アルゴスの言葉に、目を覚ましたばっかりの俺の頭は混乱する。

 準備?
 なんのだっけ?

「ええ、ニュクス様が寝ている間に、リアン様の雄を受け入れられる状態にさせていただきました、ですので、後孔の方もリアン様にお捧げ下さい」
 俺の顔は引きつった、思い出したのだ。
 王子様が俺の尻の穴に突っ込もうとしているという事とか全部。
 腰を掴まれるのを感じると同時に、尻の穴の所に少しだけ、何かが入る。
 俺は息を飲んで体をこわばらせた。
「そう緊張なさらないでください、力を抜いてください、ほら……」
 アルゴスの囁きに、何故が体に力が一気に抜けた、というか力が全く入らない。
「っ――……」
 腹の中にソレが入ってくる感触に、腹の中がぞわぞわし出す。
 尻に何かがぶつかる感触に、全部入ったのが分かった。
 締め付けてしまってるのかソレの――雄の形がはっきりと分かった。

 背中や肩を噛みつかれ、吸われる感触はあるが、俺の処女を王子様にやる羽目になった時同様、王子様は腰を動かそうとしない。
 王子様の呼吸はかなり苦しそうで可哀そうに感じた。

 だが、俺も割ときつい。
 腹の中がそういう行為で快楽得れるようになってるのに、ただ突っ込まれているだけで動いてくれないというのは地味に辛い。
 俗にいうアレだ、生殺し状態。

「リアン様――」
 アルゴスが何か言おうとする前に、もう恥とか色々ぶん投げて限界になった俺が声をだした。

「り、あん……た、のむから……うご、い、て……んひぃ?!」
 今まで全く動く気配のなかった王子様がいきなり、腰を動かして腹の奥を突き始めた。
 ぐずぐずになって、欲しがってた俺の腹の中は漸く来た刺激に強い快感を感じて、馬鹿になった頭が余計馬鹿になっていく。
「あ゛……あ゛!!」
 頭の中が真っ白になるような感覚に、頭を反らす。
 液体が腹の中に吐き出される感触も気持ちよくて本当おかしくなった。


 王子様が満足するまで、俺の尻に自分のソレツッコんで精液中に出しまくって、それで満足できたのか、俺の体の動きを制限していた拘束具が外されると俺は漸く普段に近い状態の思考に戻ってわずかに体を動かしてから――
 にこやかにほほ笑んでいるアルゴスの顔面殴って倒して馬乗りになって殴った。

 ちなみに、王様が来るまで俺は素っ裸のままアルゴスの事を殴り続けていた。


 王様はとりあえず服を俺に着るように言った。
 俺が服を着て王子様とアルゴスから警戒するように壁に寄りかかったのを見て、王様は額をおさえてため息をついてから鋭い眼差しをアルゴスに向けた。
「――アルゴス、お前の気持ちは分からぬでもない――だが、私はそこまでニュクスにはまだ頼んでおらぬ、先走りすぎだ」
「も、申し訳ございません」
 王様に言われてアルゴスの奴明らかに顔色悪くしてやがる、ざまぁみろと思った。
「そしてニュクス、色々すまぬ――が、其方も少々やりすぎだ」
「アルゴスが悪いからあやまらんぞ俺は」
「……まぁ、そうだな」
 王様は額をおさえながら再度ため息をつき、ベッドの上で少しびくついてる王子様の頭を撫でてから手を握って話しかけ始めた。
「リアン、私がお前を早く見つけることが出来なかった故お前の心と体に癒えぬ傷をつけてしまった、それ故未だ苦しみ続けているのも分かる、だが――」

「お前は、自分の妻に無理強いをしたいのか?」

 王様の言葉に、王子様は酷い暗い表情になって首を小さく横に振った。
「まだお前の妻はお前に嫁いで二日すら経っておらぬのだ、それにお前の欲の為にお前の元に来てもらったわけではない、それは覚えておくように」
 王様はそう言って王子様から離れた。
「アルゴス、お前は当分そのような事にかかわるな、食事を持ってくるなどの最小限の行動だけにせよ――我が子の妻をお前は性処理道具になってればいいとでも思っているのか?」
「いいえ、そんな事はありません」
「ならば、今後はそのような行為はするな、良いな。行くぞ」
 王様はアルゴスを連れて部屋から出て行った、部屋の扉に鍵が掛かる音がした。
 俺は重い空気が漸くなくなったのでふーっとため息をついて椅子に腰を掛けた。
 と、同時に額を抑えた、重い空気は消えたが気まずい空気が消えたわけではない。
 言いたくはないが、俺が経験した性行為、普通に考えると強姦とかそれに近い。

 だって俺はしたいと思わなかった、されたいと思わなかったから。

「……」
 色々考えたら、腹が痛くなってきた。
 急いでトイレに向かう、どういう仕組みになってるかは知らないが、スイッチを押すと水が流れその水で排泄物を集める場所に流す仕組みになってるらしい。

 ちなみに、出たのは白い液体だった。
 王子様の精液で腹が痛くなったのが分かった。

 俺は憂鬱な表情でトイレから出ると、王子様は四つん這いになって其処にいた。
「?!」
 俺は思わず後ずさる。
 王子様の考え何て全く分からない、だって俺が此処に来てから王子様が言葉らしい言葉をしゃべったのは、王子様の為の食事を運んできた女性を見て発狂した時だけだ。
 それ以外は、喘ぎ声とか、言葉らしい言葉ではない。
 アルゴスとだって会話らしい会話なんてしてない、アルゴスが察してなんかしてただけ。
 王様とも会話らしい会話はない、頷くとか首を振るとかそう言う程度でまともに言葉らしい言葉を発していない。
 言葉を話せない訳ではないのは分かる、だが一言も俺は王子様と会話はしていない。
 怯える王子様に話しかけたくらいで、王子様は何も喋ってない。
 王子様がされた行為も細かくはしらない、凌辱がどんなものだったのか、拷問がどんなものだったか――分かりたくない。

 想像したくない、俺には荷が重すぎる。

 不安げな顔をしている王子様の傍にいるのが辛くて、王子様を無視して部屋の隅の椅子に座った。

 正直言って、前の生活の方が気が楽だった。
 家族を守ることだけを考えていればいいから、自分は「魔の子」だ。
 だからいつかは居なくなるのが正解だと思っていた。
 それだけを考えていれば良かった。

 でも今は、酷く面倒な立場にいる。
 一国の王子様の妻、だけれど王子様は心と体共に目に見えない「傷」を追って、その世話をできるのが自分だけ。
 王子様の傷に寄り添う自身はない、俺は俺の「傷」だって未だに癒せてないんだ。

『生まれてきて、ごめんなさい』

 気分が悪くなる。
 幼心に何度も思った事か、自分が「魔の子」でなければ確かに義父と母は結ばれなかったし、弟や妹も生まれなかった。
 だが、「魔の子」だから、家族は命を狙われ続ける羽目になっていた。
 逃げても逃げても追いかけてくる、安住の地なんてどこにもなかった。
 いつも人目を気にしてびくびくして、怖くてたまらなかった。
 それを忘れるかのように、戦えるようになってからはひたすら家族を守ることばかり考えるようになった。
 傷だってできた、けど「魔の子」だから傷跡は残らなかった。
 普通と違うんだというのが分かって余計自棄になった。

『ああ、神様、俺を殺してください、その代わり家族を幸せにしてください』

 何度祈った事か。
 でも、叶えられなかった――そんな苦しみを抱えているのに、神様って奴は酷すぎる。

 だったら、王子様がああなる前に助けろよ。        
 だったら俺を普通にしてくれよ、「祝福の子」?
 そんな慰めみたいな呼び方はいらない!!
 ああ、苦しい、泣きたい、でもできない。

 気持ち悪くなった。
 でもベッドで寝たくない、あんな性行為をして汚れてるあんな場所には近づきたくない。
 王子様にもできれば近寄ってほしくない、傷ついて壊れたのは可哀そうだと思うが、俺はアンタがケダモノに見えて近づきたくない。
 アルゴスは当分顔も見たくない。

 俺は腕を枕替わりにしてテーブルに突っ伏して目を閉じる。
 心も体も疲れ切っていた、本当はちゃんとした所で寝たいけど、今はあのベッドでは寝たくない、と言うか当分ベッドにも近づきたくないから俺はそのままテーブルに突っ伏したまま目を閉じた。


 目を開けると変な空間にいた、なんだろう遠目で見た神殿みたいな空間なのに周囲は色んな色が混じり合ってるのに混じり合ってないという訳の分からない色の空間。
 そこに、あの人物が居た。
『困ったなぁ、これでは夫婦生活は破綻してしまうぞ?』
 声は同じだが、口調がまるっきり違うソイツに俺は怒鳴りつけた。
「――最初から破綻してるわ!!」
『まぁまぁ、祝福の子――いや、その呼び名はお前には何の慰めにもならぬな、ニュクス』
「……」
『お前の傷を癒すことはできんし、リアンの傷を癒すことはできん。それやると色々と不味いことになるのでな』
「本当、テメェ勝手だなアンタは!!」
『それはすまん。ただな、リアンの事は我慢してくれ、アレはお前に無視されたのが原因で精神がまた軋み始めてる』
「無視したくもなるわ!!」
 俺は怒鳴った、我慢しろってか、ふざけるな、そういう気持ちが強い。
『そう言うな』
 ソイツは俺に近づいてきた、口元が笑っているのが見える。
『お前の家族の事もある、其処は我慢してくれ』
「ぐ……この最悪だなテメェは!!」
『ああ、それは否定できない。何で魔の一族以外がこうも不出来で私の言葉をはき違えたりするようになったのか全く分からないんだ』
「……」
『まぁ、とりあえず、しばらくは我慢してくれ、頼む――』
 その声を聞いた直後、俺の視界がぐにゃりと歪んで真っ暗になった――




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