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決して恋では無い!

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数日後
キラキラ王子ことシルヴァに連れられて、俺は城下街から農村地帯までを視察していた。
やはり南に向かうにつれて、土地が枯れている。
「なぁ、シルヴァ。お願いがあるんだ。まず、川があった場所を教えてくれ。それから、水鳥の羽とコップ位の大きさで良いから、水鳥の羽が入る位の器を同じ数だけ揃えられるか?」
そう聞くと、シルヴァは首を傾げながら
「可能だが?」
と呟いたいた。
「了解。じゃあ、準備出来次第に、川があって干からびた場所に案内してくれ」
俺の言葉に、シルヴァはメモを取って部下に手渡した。
王宮の貴族やら、西側を視察に行っていた王様達の相手は(もちろん俺も王様と王妃様に会ったけど、さすが二人の両親。キラキラしたイケオジと美魔女だった!)和久井に頼み、ババ様にも和久井を勇者のままにしておいてくれと頼んだ。
和久井はむちゃくちゃ嫌がったが、エリザ姫との恋を応援してやると交換条件を出したら簡単に承諾しやがった。
面倒臭い表仕事は和久井が。
裏方仕事を俺が受け持つ事にした。

俺達がこの異世界に呼ばれたのは、かんばつで干からびたこの世界に水や食料をもたらす事が出来る勇者として呼ばれたらしい。
(勇者って言うから、魔族とかと戦うのかと思ったよ!)
実際、この世界のあちこちでかんばつは起こっているらしい。
つい何年か前までは、この国もそれはそれは美しい緑と水に恵まれた国だったそうだ。
しかし、ある日を境に雨が降らなくなってしまったんだとか。
その状態が3年続き、美しかったこの国もあっという間にこの状態らしい。

「俺、雨男なんだけどさ。此処じゃ関係ないのかな?」
って笑うと
「そう! その話をババ様から聞いた!  雨を呼ぶ男が居るって」
元からキラキラしてる瞳を、益々キラキラさせてシルヴァは叫んだ。
「いや、男だけじゃねぇよ。女だって居るぜ。俺の知り合いには、台風女が居てさ。そいつが居ると、旅行が絶対台風で中止になるんだよ」
笑って話していると
「台風?」
と、シルヴァが不思議そうな顔をした。
「あぁ……。まぁ、嵐だよ」
そう話すと
「嵐は困るな……」
って苦笑いしている。
「あ……じゃあ、俺が明日を楽しみにすれば、雨が降るとか?」
何気なく呟くと、シルヴァが笑いながら
「水鳥の羽実験、明日にしますか?」
と呟いた。
「お!  良いねぇ!  水鳥の羽実験は、乾いた大地でしか出来ないからな。さぁ、俺の雨男パワーが勝つか!かんばつが勝つか!」
楽しくなってシルヴァに話していると、シルヴァがニコニコしながら俺を見つめている。
「な……なんだよ」
「いや。この世界に来て、初めて楽しそうにしているなぁ~と思って」
優しい笑顔を浮かべて言われ、ドキマギしてしまう。……で、ドキマギしてる自分を叱咤する毎日を過ごしているのだ。
……あの日、危うくキスしそうになった日から、俺の中でシルヴァが特別に見えて戸惑ってしまう。
(異世界に来て、優しくされたからだ! 決して惚れたのでは無い!!)
そう自分に言い聞かせている。
この17年間、誰にも好かれた事など無かったこの俺を、12年という月日を掛けて待ち続けていたと後から聞かされたから絆されたんだ。と、そう言い聞かせていた。
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