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勇者視察に行く②

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するとシルヴァの緊張が一気に解け
「なんだ、きみ達か」
ふわりと優しい笑顔に変わり、ドアを開けて外に出た。
「シルヴァ王子、又遠征ですか?」
「シルヴァ王子、次はいつ戻られますか?」
「シルヴァ王子、旅中に食べて下さい」
子供数十人に囲まれ、シルヴァが楽しそうに子供達と会話している。
シルヴァを見つめる子供達の目は、キラキラ輝いている。
シルヴァは一人一人の頭を撫でながら
「父上の仕事は順調か?」
「母上の病は良くなったか?」
「兄弟喧嘩はしていないか?」
「何か困った事は無いか?」
と声を掛け
「西の街に視察へ行くだけだ。直ぐに戻る」
シルヴァの言葉に、子供達を遠くから見つめていた親の1人が近付いて来て
「シルヴァ王子、西で困った事が起きたらルシェという男を訪ねると良い。俺の名前を出したら力になってくれる筈だ」
厳つい男性に言われ、シルヴァは笑顔を返し
「ラシュアの知人なら信頼出来るな。ありがとう」
そう言って
「そろそろ行くな。みんな、ありがとう」
手ぶらで外に出た筈のシルヴァの手には、カゴに入った食べ物や飲み物でいっぱいになっている。
俺は馬車から降りて、シルヴァを囲む人達に一礼した。
すると
「シルヴァ王子!あの方が、シルヴァ王子の?」
と、俺に視線が集まる。
(う……視線が痛い)
苦笑いしていると
「でもあの人、勇者様の従者様じゃない?」
女の子が呟くと
「あれ? シルヴァ王子は勇者様がお相手では無いのですか?」
恋愛話は例え子供でも、女子は好きらしい。
俺が困った顔をしていると、シルヴァは優しく微笑んで
「さぁ、どうだろうね」
と答えて、ゆっくり俺の隣に並ぶと
「時間を取らせてすみませんでした」
そう言って先に馬車に乗り込み、俺に手を差し出す。
「いや、大丈夫だ。一人で乗れる」
ぶっきらぼうに答える俺の手を強引に掴み、馬車へと誘導する。
普段は優男なのに、時折見せる強引さに戸惑いながら馬車に乗ると、シルヴァはドアを閉めて窓から手を振ってみんなと分かれた。
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