野花のような君へ

古紫汐桜

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人形の家

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僕の記憶は、3歳から始まる。
いつも冷たい眼差しを送る母と、我儘で自由奔放な兄2人。
父は婿養子らしく、もの静かな人だった。
兄達は母と良く外出しており、僕は留守番ばかりだった。
お手伝いさんに可愛がって貰ってはいたが、僕は兄達に向ける母の優しい眼差しが欲しかった。
「そ~う!」
いつも部屋で本を読んでいると、2つ年上の従兄弟の美鈴が遊びに来ては
「創、そんなに本ばっかり読んでいたら、もやしになるわよ!」
僕の手を引き、外に連れ出してくれた。
ひまわりのように明るい彼女の笑顔に、何度となく救われた。
小学校に入り、兄達がテストで良い点を取ると褒められていたのを見て、僕も小学校に入学してから勉強を頑張って100点を取った。
きっと、いつも冷たい母も
「偉いわね、創」
って、兄達にするように僕の頭を撫でてくれると信じていた。
でも現実は
「何?100点を見せびらかして、嫌な子!」
と、蔑む視線を向けられるだけだった。
(母様、僕はただ……あなたに微笑んで欲しかっただけなのに……)
100点のテスト用紙を握り締め、何度も何度も涙を流す日々を送っていた。
そんな僕の唯一の救いは、美鈴ただ1人だけだった。
「創!凄いじゃない!100点なんて、凄い凄い!!」
美鈴は僕を手放しに褒めてくれた。
「創は見た目が綺麗なだけじゃくて、頭も良くて私の自慢だよ!」
いつしか、僕にとって美鈴は掛け替えの無い存在になっていた。
(従姉妹なら結婚出来るよな)って、僕は彼女との未来を夢見ていたんだ。
そんな僕の淡い夢は、10歳で打ち砕かれた。
長男の秀一兄さんが15歳。
次男の勝兄さんが13歳になった夏。
部屋で寝ていた僕は、2人に犯されたのだ。
怖くて痛くて、ただ終わるのをジッと黙って待つ事しか出来なかった。
少し空いていたドアから、偶然通りかかった父親が僕の部屋の中を見て驚いた顔をしたので
「助けて……」
救いを求めて伸ばした手は、見えないフリをして通り過ぎて行く父の背中を見つめながら絶望を噛み締めて虚しくくうを掴んだ。
この家には、僕を助けてくれる人は誰も居ない。
僕は10歳にして、この家には誰も味方が居ないのだと悟った。
そしてこの日から、兄達の歪んだ欲望を叩き付けられるだけの無慈悲な人形の日々が始まった。
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